削除された内容 追加された内容
12行目:
ルサンチマンを持つ人は社会的弱者であり、自身では社会的格差を解消できず、一般的な価値観を否定したり、逆転した価値判断を行っている。如何ともしがたい社会的格差を前にして、価値判断を転倒させ、自分の無力を正当化し、社会的強者を攻撃してしまう精神性は、[[反社会的行動]]にも繋がって行く。社会的強者であれば、権力を行使して自身を取り巻く状況を改善することが出来るため、仮にルサンチマンを持ったとしても、短期的に解消可能である。こうしたルサンチマンの表れの例として、敵を想定し、その対比として自己の正当性を主張する[[イデオロギー]]にある。こういったイデオロギーは、敵が悪の元凶とし、だから反対に自分は道徳的に優れていると主張する。「彼らは悪人だ、従ってわれわれは善人だ」ということになる。敵として想定される存在は、自分が無力だと感じさせる対象が選ばれる。例えば、貧困状態に無力を感じるルサンチマンの敵としては[[資本家]]が設定される。
 
ルサンチマンを持つ人の敵が拡大を続けると、最終的には社会全体を敵と見做すようになる。「世界はどうしようもなく悪によって支配されている。したがってわれわれのほうが世界より優れている」と拡大解釈されるようにもなる。このような状況に至ると人は[[陰謀論]]や[[急進主義]]、[[刹那|刹那主義]]や[[否認主義]]を受け入れ易い心理に陥る。また、人によってはそうした不満以上に「この世界では(自分は)報われない」という厭世観や自己の無力感を持つようになり、[[放蕩]]や[[引きこもり]]、果ては[[自傷行為]]や[[自殺]]に至る場合もある。異なる価値観を持つ人間対しても攻撃的になる傾向があり、同類を集めて[[反社会的勢力]]を結成したり、[[テロリズム|テロ行為]]に及ぶ可能性もことがある。
 
なお、[[ギリシア哲学]]研究で著名な[[田中美知太郎]]は、[[プラトン]]の対話編『[[ゴルギアス]]』での[[カリクレス]]の主張―弱者たる多数派による法律に飼い馴らされた状態から、充分な天性を授かった人間(奴隷にしておいた主人)が立ち上がり、自然の正義が燦然と輝き出る、というもの―には、ルサンチマン概念の変奏曲の如きものが認められると指摘した(田中美知太郎責任編集『世界の名著 プラトン I』[[中央公論社]])。