「ヴォルフガング・パウリ」の版間の差分

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[[1929年]]5月、パウリは[[カトリック教会|ローマ・カトリック教会]]を脱退し、12月にケーテ・マルガレーテ・デプナーと結婚した。この結婚は長く続かず、[[1930年]]に離婚している。
 
離婚後間もない[[1931年]]初め、[[ニュートリノ]]の仮説を提唱する直前に、パウリは深刻な精神的不調に悩まされた。彼は精神科医・心理学者で、パウリと同じく[[チューリッヒ]]近郊に住んでいた[[カール・グスタフ・ユング]]の診察を受けた<ref>アーサー・I・ミラー著、阪本芳久訳「137- 物理学者パウリの錬金術・数秘術・ユング心理学をめぐる生涯」(草思社、2010年)</ref>。パウリはすぐに自分の「[[元型]]夢」の解釈を始めるようになり、難解な心理学者ユングの最高の生徒となった。間もなく彼は、ユング理論の認識論について科学的な批評を行なうようになり、ユングの思想、特に[[シンクロニシティ]]の概念についての説明を与えた。これらについて二人が行なった議論はパウリ=ユング書簡として記録されており、''Atom and Archetype''(『原子と元型』)というタイトルで出版されている。
 
1928年、パウリはスイスの[[チューリッヒ連邦工科大学]]の理論物理学の教授に任命された。
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パウリは[[1940年]]にアメリカへ移住し、[[プリンストン大学]]の理論物理学の教授となった。
 
戦争が終わった[[1946年]]に彼はアメリカ合衆国に[[帰化]]したがせずその後チューリッヒに戻り、その後の生涯の大半をここで過ごした。
 
[[1958年]]、[[膵臓癌]]を発病した。パウリの最後の助手を務めたチャールズ・エンツがチューリッヒのロートクロイツ病院に入院していたパウリを見舞った時、パウリは彼に「部屋の番号を見たかね?」と尋ねた。彼の病室の番号は 137 だった。彼は生涯を通じて、[[微細構造定数]]が 1/137 に近い値を持つのは何故か、という疑問を考え続けていた。1958年[[12月15日]]、パウリはこの病室で没した。享年58歳。
 
== 業績 ==
パウリは物理学者として、特に量子力学の分野で数多くの重要な業績を残した。彼は、ほとんど論文を執筆せず、するよりも同僚(特に親しかった[[ニールス・ボーア]]や[[ヴェルナー・ハイゼンベルク]]など)との間で長い手紙をやり取りするのを好んだ。彼のアイデアや成果の多くは、論文としては発表されず書簡にのみ残され、手紙を受け取った人物によってコピーされたり回覧されたりすることが多かった。それゆえ、パウリは自分の研究成果が彼の名前で紹介されないことになっても気にしなかったようである。以下に挙げる成果はパウリの業績として名前が残されているもののうち最も重要な仕事である。
 
[[1924年]]、パウリは分子線[[スペクトル]]の観測結果と当時発展しつつあった量子力学との間にあった矛盾を解決するために、新たな量子[[自由度]]のモデルを提案した。おそらく彼の仕事の中で最も重要な[[パウリの排他原理]]である。この原理は同じ[[量子状態]]には2個以上の[[電子]]が存在できないというものであった。その後、[[スピン角運動量|スピン]]のアイデアが[[ラルフ・クローニッヒ]]によって考案され、翌年に[[ジョージ・ウーレンベック]]と[[サミュエル・ゴーズミット]]によってパウリの提唱したこの自由度が電子のスピンに相当することが明らかとなった。
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* Enz, Charles, P. (2002): ''No Time to be Brief, A scientific biography of Wolfgang Pauli'', Oxford Univ. Press.
* Enz, Charles, P. (1995): "Rationales und Irrationales im Leben Wolfgang Paulis", in: Atmanspacher, H. et al (1995): ''Der Pauli-Jung-Dialog'', Springer, Berlin.
* Pauli, W., Jung, C.G. (1955): ''The Interpretation of Nature and the Psyche'', Random House.
* Pauli, W., Jung, C.G. (2001): ''Atom and Archetype, The Pauli/Jung Letters'', 1932-1958, ed. C.A. Meier, Princeton, Univ. Press, Princeton, New Jersey.
* Lindorff, David (1994): ''Pauli and Jung: The Meeting of Two Great Minds'', Quest Books.
* Keve, Tom (2000): ''Triad: the physicists, the analysts, the kabbalists'', Rosenberger & Krausz, London (historical fiction).
* Pais, Abraham (2000): "The Genius of Science", Oxford Press, Oxford.
* Miller, Arthur, I. (2010): ''137: Jung, Pauli, and the Pursuit of a Scientific Obsession'', W. W. Norton & Company, London.
 
== 関連項目 ==