「H-IIBロケット8号機」の版間の差分

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[[ファイル:H-2Bロケット8号機打上げ.jpg|thumb|right|300px|打ち上げられるH-2Bロケット8号機]]
'''H-IIBロケット8号機'''(H2Bロケット8ごうき)は、[[宇宙航空研究開発機構]] (JAXA) が開発・運用する[[H-IIBロケット]]の8号機である。[[2019年]]([[令和元年]])[[9月25日]]1時5分5秒に[[種子島宇宙センター]]から打ち上げられた<ref name="kounotori8">[http://www.jaxa.jp/press/2019/09/20190925a_j.html “宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV8)の打上げ結果について”]. [[JAXA]] (2019年9月25日). 2019年10月19日閲覧。</ref>。2018年11月15日の[[宇宙活動法]]施行後初の民間([[三菱重工]])による打ち上げであった<ref name="9月25日H-IIB8会見">2019年9月25日に種子島宇宙センターの竹崎展望台にて行われたH-IIBロケット8号機の打ち上げ後会見より。</ref><ref name="マイナビ H-IIB8公開">{{Cite web|url=https://news.mynavi.jp/article/20190703-852718/|title=三菱重工、H-IIBロケット8号機を公開 - 成功を生み出す前向きな執念|publisher=マイナビニュース|date=2019-07-03|accessdate=2019-11-05}}</ref>。
 
== ロケット諸元 ==
*形式: H-IIBロケット{{R|Impress H-IIB8 報道公開}}
**1段目 [[LE-7A]]エンジン×2基(再生冷却長ノズル、[[液体酸素]]・[[液体水素]]燃料ロケットエンジン)
**2段目 [[LE-5B|LE-5B-2]]エンジン(液体酸素・液体水素燃料ロケットエンジン)
**1段目 固体ロケットブースター [[SRB-A|SRB-A3]]×4基
**フェアリング 5S-H型(HTV用)
 
== ペイロード ==
*[[こうのとり8号機]]([[宇宙ステーション補給機]])
 
== 飛行計画 ==
{| class="wikitable sortable"
|-
|+ H-IIBロケット8号機の飛行シークエンス<ref name="Impress H-IIB8 報道公開">{{Cite web|url=https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1193047.html|title=三菱重工、こうのとり8号機を乗せて宇宙へ向かう「H-IIBロケット8号機」を報道公開。H-IIBロケット機体色の驚きの理由も判明|publisher=[[Impress]]|date=2019-06-27|accessdate=2019-11-02}}</ref>
!事象
!打ち上げ後経過時間<br />(計画値)
!高度<br />(計画値)
|-
|リフトオフ
|0分0秒
|0km
|-
|固体ロケットブースター(SRB-A)燃焼終了<br />(燃焼室圧が最大値の10%時点)
|1分47秒
|47km
|-
|固体ロケットブースター(SRB-A)第1ペア分離<br />(スラスト・ストラットの切断)
|2分4秒
|61km
|-
|固体ロケットブースター(SRB-A)第2ペア分離<br />(スラスト・ストラットの切断)
|2分7秒
|63km
|-
|衛星フェアリング分離
|3分40秒
|120km
|-
|第1段主エンジン燃焼停止<br />(Main Engine Cut Off:MECO)
|5分47秒
|184km
|-
|第1段・第2段分離
|5分54秒
|189km
|-
|第2段エンジン推力立上がり<br />(Second Engine Lock In:SELI)
|6分5秒
|196km
|-
|第2段エンジン燃焼停止<br />(Second Engine Cut Off:SECO)
|14分20秒
|289km
|-
|こうのとり8号機分離
|15分11秒
|287km
|-
|第2段エンジン第2回始動<br />(Second Engine IGnition-2 idol:SEIG2i)<br />(第2段エンジン燃焼開始2回目アイドル燃焼モード)
|1時間39分5秒
|307km
|-
|第2段エンジン第2回燃焼停止<br />(Second Engine Cut Off-2:SECO2)
|1時間39分58秒
|305km
|}
 
HTVを分離した後、第2段機体を180度回転させ向きを逆にしてから第2段エンジンの2回目の燃焼を行い、速度を落として[[南太平洋]]への制御落下を行う{{R|Impress H-IIB8 報道公開}}。また、この第2段機体最下部のノズルの付け根の近くに、7号機に続いて「ロケット再突入データ取得システム」が搭載されており、8号機でも同様に実験が行われる{{R|マイナビ H-IIB8公開}}。これは[[大気圏]]に[[再突入]]する第2段機体の状態を調べるのを目的として、温度センサーや歪みセンサーなどが入った再突入モジュールを第2段機体と共に大気圏に再突入させ、圧力や温度などを測る他、7号機と同じ装置を使うことにより再現性の確認も行う{{R|マイナビ H-IIB8公開}}。自然に分離した後は[[パラシュート]]によって海に降り、[[衛星電話#イリジウム|イリジウム衛星携帯電話]]でデータを送った後に海に沈む{{R|マイナビ H-IIB8公開}}。
 
[[ファイル:H-ⅡBロケット8号機.jpg|thumb|right|300px|射点に据え置かれた火災事故前日のH-2Bロケット8号機]]
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== 火災事故 ==
=== 事故当日の推移 ===
当初の打ち上げ予定日時の9月11日6時33分29秒{{R|mhi 190911}}の打ち上げに向けて、ターミナルカウントダウン作業が行われていた<ref name="マイナビH-IIB8火災1">[https://news.mynavi.jp/article/20190924-898784/ “H-IIBロケットの発射台火災はなぜ起きたのか? - MHIが調査結果を公表 1ページ 原因は静電気による断熱材の発火か - 考えられるシナリオ”]. マイナビニュース (2019年9月24日). 2019年10月19日閲覧。</ref>同日3時5分頃(監視カメラの画像の表示時刻では3時4分54秒{{R|マイナビH-IIB8火災1}})に移動発射台(ML3)の開口部付近で火災が起きた{{R|mhi 190911}}。
 
監視カメラで火災の発生を確認<ref name="9月23日H-IIB8会見">2019年9月23日に種子島宇宙センターの竹崎展望台にて行われたH-IIBロケット8号機の打ち上げ前会見より。</ref>、2分後の3時7分頃に消火活動が始まり、4時17分に打ち上げの中止が決まった{{R|9月23日H-IIB8会見|マイナビH-IIB8火災1}}。その後、5時10分にモニター上で火炎が見えないことを確認した後、6時19分に放水を終えている{{R|9月23日H-IIB8会見|マイナビH-IIB8火災1}}。6時過ぎにJAXAと三菱重工による緊急記者会見で状況説明が行われた<ref>[https://news.mynavi.jp/article/20190911-892617/ “H-IIBロケット8号機、打ち上げを中止 - 移動発射台から火災が発生”]. マイナビニュース (2019年9月11日). 2019年10月19日閲覧。</ref>。11時頃に液体酸素と液体水素の排液作業等の安全化処置を終えて、18時頃に安全点検を行った後、ロケットの機体を整備組立棟(VAB)へ返送している{{R|9月23日H-IIB8会見}}{{R|マイナビH-IIB8火災1}}。
 
打ち上げ時は警戒区域をとっ設けて安全確保をしているため、この火災事故による特別な警報などの発報は行っていない{{R|9月23日H-IIB8会見}}。
 
=== 事故原因 ===
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=== 対策 ===
事故の起因は静電気であることから根本的な対策として静電気の[[帯電]]を防ぐ措置が講じられている{{R|9月23日H-IIB8会見|マイナビH-IIB8火災2}}。断熱材には延焼防止のため[[アルミ]]シートを一周巻き付けるように施工を行った{{R|9月23日H-IIB8会見|マイナビH-IIB8火災2}}。耐熱材には帯電防止の為、2層構造になっている断熱材の内、耐熱材側の方の断熱材と一緒にアルミシートを巻き付けるように施行を行った{{R|9月23日H-IIB8会見|マイナビH-IIB8火災2}}。これらの対策は長崎研究所で行った試験で有効性を確認しており、更に[[アース]]をることによって万全を期している{{R|9月23日H-IIB8会見|マイナビH-IIB8火災2}}。ただこの一連の対策は9月20日に完了しているが<ref>{{Cite web|url=https://www.mhi.com/jp/products/space/archive_h2bf8.html|title=MHI 打上げ輸送サービス: H-IIB 8号機 カウントダウンレポート|publisher=三菱重工|date=2019-09-25|accessdate=2019-11-06}}</ref>、耐熱材の割れには対応しきれないとしており、次号機以降に向けて改善策がないか検討するという{{R|9月23日H-IIB8会見|マイナビH-IIB8火災2}}。H-IIAロケット専用のML1にも一部に断熱材施工部があることから対策を今後検討するとしている{{R|9月23日H-IIB8会見|マイナビH-IIB8火災2}}。
 
また、打ち上げ後に再発防止策を施した部分の検証を行う予定で、不適合の除去に関しては今までの機体の不適合のみならず設備側を含む機体と接する部分の不適合についても点検を行う考えで、今回の火災事故で得られた知見は[[H3ロケット]]にも反映していくという{{R|9月25日H-IIB8会見}}。なお、今回の火災事故に関する責任の所在については打ち上げ後に検討するという{{R|9月23日H-IIB8会見|マイナビH-IIB8火災2}}。
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* [http://www.jaxa.jp/ JAXA公式サイト]
* [https://fanfun.jaxa.jp/countdown/htv8/ 宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機 特設サイト]
* [https://www.mhi.com/jp/products/space/archive_h2bf8.html MHI 打上げ輸送サービス: H-IIB 8号機 カウントダウンレポート]
* [http://www.sacj.org/openbbs/ 宇宙作家クラブ ニュース掲示板] - 2019年9月24日(火)17時52分投稿の「No.2306 :H-IIBロケット8号機再プレスブリーフィング 」にて、9月23日に行われた打ち上げ前会見の質疑応答のまとめなどが掲載されている。