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[[ファイル:Alpheratz.gif|thumb|恒星]]
'''恒星'''(こうせい、{{Lang-en-short|fixed stars}}、{{Lang-la-short|asteres aplanis}})とは、
'''恒星'''(こうせい)は、自ら[[光]]を発し、その[[質量]]がもたらす[[重力]]による収縮に反する[[圧力]]を内部に持ち支える、[[ガス]]体の[[天体]]の総称である{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=95-96}}。[[人類]]が住む[[地球]]から一番近い恒星は、[[太陽系]]唯一の恒星である[[太陽]]である{{sfn|水谷仁|2009|pp=30-31}}。
*(古典的な定義)夜空に輝く星のうち、その見かけの相対位置の変化の少ないもののこと<ref name="nipponica">『日本大百科全書』(ニッポニカ)</ref>。
*([[天体物理学|天体の物理(天体物理学)]])自ら[[光]]を発し、その[[質量]]がもたらす[[重力]]による収縮に反する[[圧力]]を内部に持ち支える、[[ガス]]体の[[天体]]の総称{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=95-96}}。
 
== 定義 ==
[[理想気体]]の[[理想気体の状態方程式|状態方程式]]が示す通り、ガス体の天体は重力に対抗するために内部が高温・高圧にならなければならない。しかし、その一方で[[宇宙空間]]の[[温度]]は3[[ケルビン|K]]にすぎず、必ず[[エネルギー]]が全方位に流れ出ることになる。これが恒星が輝く理由であり、そのためにエネルギーを供給する源が必要になる{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=95-96}}。
 
「恒星」という日本語は、[[英語]]「fixed star」の和訳であり、[[地球]]から肉眼で見た際に[[太陽]]や[[月]]または[[太陽系]]の惑星に見られるような動きを見せず、[[天球]]に恒常的に固定された星々という意味で名づけられた{{sfn|尾崎洋二|2010|p=71}}。(なお、相対的に動かない恒星に対し、[[天球]]上を移動していく星のことを「さまよう人」という意味で「[[惑星]]」と名づけられたといわれる{{sfn|水谷仁|2009|p=4}}。)
そのエネルギー源は誕生直後の恒星では自己の[[ケルビン・ヘルムホルツ機構|重力収縮]]であるが、やがて[[水素]]の[[原子核融合]]をエネルギー源とするようになり、一生のほとんどをその状態で過ごす{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=95-96}}。重い恒星では、一生の終わり近くになると核融合する元素を水素から[[ヘリウム]]へ変え、順次[[原子番号]]の大きな元素を使うようになり、その過程で収縮と膨張を繰り返す{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=103-104}}。
 
惑星が地球を含む[[太陽系]]内の小天体であるのに対し、恒星はそれぞれが太陽に匹敵する大きさや[[光度]]をもっているが非常に遠方にあるために、小さく暗く見えている<ref name="nipponica" />。
== 語源 ==
「恒星({{Lang-la-short|asteres aplanis}})」という言葉は、[[英語]]「fixed star」の和訳であり、[[地球]]から肉眼で見た際に[[太陽]]や[[月]]または[[太陽系]]の惑星に見られるような動きを見せず、[[天球]]に恒常的に固定された星々という意味で名づけられた{{sfn|尾崎洋二|2010|p=71}}。これに対し、天球上を移動していく星のことを「さまよう人」という意味で「[[惑星]]」と名づけられたといわれる{{sfn|水谷仁|2009|p=4}}。このような性質から、古代の人々は恒星の配置に[[星座]]を見出してきた{{sfn|尾崎洋二|2010|p=71}}。
 
;相対位置の変化が少なく見える理由
== 観測 ==
そもそも、見かけの相対位置に変化が少ないものを「恒星」と呼び分けたわけである。
=== 名称 ===
比較的明るい恒星は、固有名がつけられたが地方によって名称はさまざまだった。星表が作られるようになると、代表的な星表につけられた名前が次第に使われるようになった。現在は、[[クラウディオス・プトレマイオス|プトレマイオス]]がまとめた星表の名称が多く使われる。[[ギリシャ神話]]に由来する名称が多いが、アラビア語のものもある。これはプトレマイオスの著書がアラビア語に訳され、そこから広まったと考えられている。
 
(たしかに)恒星の見かけ上の位置変化はほとんど変化しないように見える{{sfn|岡村定矩|2001|pp=45-46}}。なぜか?(現代人ならば、その理由を説明する知識にアクセスできるわけであるが)これは、太陽以外の恒星は地球から数[[光年]]以上の離れた場所にあるためである{{sfn|尾崎洋二|2010|p=71}}。(なお、恒星に対して人類にまず「惑星」と呼ばれることになった、[[太陽系]]内の惑星は、それぞれ太陽の周囲を楕円軌道でそれぞれの周期で公転していたので、見かけ上も相対的に複雑な経路で移動していた、という知識にも現代人はアクセスできる。)
それほど明るくない恒星は、おもに[[ヨハン・バイエル]]のバイエル星表に記載された記号で呼ばれる。これは[[バイエル符号|バイエル記号]]と呼ばれる。星座ごとに明るい順にα星、β星とギリシャ語の記号をつけるもので、足りなくなると小文字のローマ字のアルファベットが、それでも足りないとローマ字の大文字が使われた。バイエルの死後、星座の境界が変更されたため、たとえばα星がない星座などが存在する。また、必ずしも明るい順につけられているわけでもない。具体的には、ギリシャ語のアルファベットと星座名をあわせ、「[[ベガ|こと座 α星]]」などと呼ぶ。国際的にはラテン語を使い、α Lyraeと書く。このとき星座名は[[属格]]に活用変化させる。3文字の略符を使い、α Lyr と書いてもよい。4文字の略符もあるがまったく使われない。バイエルは混乱を防ぐため、たとえばローマ文字のa星を作らなかった。また、もっとも星の多い星座でもQ星までしかつけなかったため、R以降の文字は変光星などの特殊な天体につけられる。
 
しかし、恒星は天球上で完全に静止しているわけではなく、わずかに固有運動を持つ{{sfn|尾崎洋二|2010|p=71}}。明るい恒星では年間0.1[[秒 (角度)|秒角]]以下の固有運動を持つが、太陽に近い星はより速く動き、これらは高速度星と呼ばれる。その中でも[[バーナード星]](HIP87937)は10.36秒角/年の速度で移動し、100年間で[[満月]]の[[半径]]にほぼ相当する17.2分角を移動する{{sfn|岡村定矩|2001|pp=45-46}}。そのため、特に注意を払っていなければ数十年から数百年程度の時間では肉眼で変化を確認することは難しい(その結果、「恒星」という古典的分類ができたわけである)。
これよりさらに暗い星は、[[ジョン・フラムスティード]]の星表に記されたフラムスティード番号で呼ばれる。恒星を西から順に1番星、2番星と数字の符号をつけるものである。ただし、フラムスティード番号は、南天の星座にはつけられていないなどの弱点がある。フラムスティード番号で、上記のこと座α星を表すと、こと座3番星(3 Lyrae、または 3 Lyr)となる。この番号は、フラムスティードの望遠鏡で見たところ、こと座で西端から3番目にあった星ということになる。
 
よく、バイエルが命名しなかった暗い星に順番に番号が振られたといわれることがあるが、誤りである。たとえば、オリオン座α星([[ベテルギウス]])は、フラムスティード番号ではオリオン座58番星となる。多くの恒星が両者によって命名がされている。ただし、現在はバイエル符号がおもに使われ、フラムスティード番号はおもにバイエル名のついていない星に使われる。これよりもさらに暗い星は、さらにそののちに決定された星表([[ヘンリー・ドレイパーカタログ|HD]]など)でつけられた番号や記号で呼ばれる。
 
== 命名、カタログ化、見かけの明るさによる分類 ==
=== 固有運動 ===
;命名、リスト化、カタログ化
太陽系内の惑星は地球との距離が近く、互いの公転による見かけ上の位置変化が大きい。そのため、[[季節]]ごとで天球上の場所が大きく変わる。しかし、ほかの恒星の見かけ上の位置変化([[固有運動]])ほとんど変化しないように見える{{sfn|岡村定矩|2001|pp=45-46}}。これは、太陽以外の恒星は地球から数[[光年]]以上の離れた場所にあるためである{{sfn|尾崎洋二|2010|p=71}}。
(恒星の性質(「相対的に動かない」という性質)から)古代の人々は恒星の配置に[[星座]]を見出してきた{{sfn|尾崎洋二|2010|p=71}}。
 
人類は、恒星の中でも比較的明るい恒星から命名してきた歴史がある。
しかし、恒星は天球上で完全に静止しているわけではなく、わずかに固有運動を持つ{{sfn|尾崎洋二|2010|p=71}}。明るい恒星では年間0.1[[秒 (角度)|秒角]]以下の固有運動を持つが、太陽に近い星はより速く動き、これらは高速度星と呼ばれる。その中でも[[バーナード星]](HIP87937)は10.36秒角/年の速度で移動し、100年間で[[満月]]の[[半径]]にほぼ相当する17.2分角を移動する{{sfn|岡村定矩|2001|pp=45-46}}。
 
夜空に、きまった相対的配置で、きまった星々が登場するのを、毎晩毎晩 見ていれば、人類は自然とそれらの星々の中から、ひとつ、またひとつ、と個々の星を見分けることができるようになり、ひとつひとつの星に[[名前]]([[固有名詞|固有名]])をつけて「呼び分け」たくなるわけである。命名し呼び分けることで、ひとつひとつの星について個別に語ることができるようになり、他者とそれについて話題にすることができるようになる。(当然だが、たいていの固有名というのは、最初はひとりひとりが自分の得た印象で思いつきの名前を与えたり、誰か身近な人が口にした名前をそのまま受け入れたりするわけで、太古の昔は、また古代でも、集落ごと、地域ごとに個々の星につけられた名称は、おおむね「さまざま」だったであろうことは想像に難くない)
 
(星に限らず)ひとつひとつ区別がつき命名されたものの数が(あまりに)増えてくると、次に人はそれを[[リスト]]化したり、「一覧表」化したり、[[カタログ]]化して整理整頓したくなるものである。かくして[[星表]]が作られるようになった。
 
星表の中にも、良くできたものとそうでないものがあったわけだが、比較的質の良い星表が人々の間で書き写されるようになるわけで、そうした星表で採用された名前が、広範囲の人々の間に広まり定着することになる。現在は、[[クラウディオス・プトレマイオス|プトレマイオス]]がまとめた星表の名称が多く使われ続けている。これは[[ギリシャ神話]]に由来する名称が多いが、[[アラビア語]]のものもある。これはプトレマイオスの著書がアラビア語に翻訳され、そこから広まったと考えられている。
 
;現代の固有名
現代では、それほど明るくない恒星に関しては、おもに[[ヨハン・バイエル]]の「バイエル星表」に記載された記号で呼ばれる。これは「[[バイエル符号|バイエル記号]]」と呼ばれる。星座ごとに明るい順にα星、β星とギリシャ語の記号をつけるもので、足りなくなると[[ラテン文字|ローマ字(ラテン文字)]]のアルファベットの[[小文字]]が、それでも足りないとローマ字の[[大文字]]が使われた。バイエルの死後、星座の境界が変更されたため、たとえば「α星が無い星座」なども存在する。また、必ずしも明るい順につけられているわけでもない。具体的には、ギリシャ語のアルファベットと星座名をあわせ、「[[ベガ|こと座 α星]]」などと呼ぶ。国際的にはラテン語を使い、α Lyraeと書く。このとき星座名は[[属格]]に活用変化させる。3文字の略符を使い、α Lyr と書いてもよい。4文字の略符もあるがまったく使われない。バイエルは混乱を防ぐため、たとえばローマ文字のa星を作らなかった。また、もっとも星の多い星座でもQ星までしかつけなかったため、R以降の文字は変光星などの特殊な天体につけられる。
 
これよりさらに暗い星は、[[ジョン・フラムスティード]]の星表に記されたフラムスティード番号で呼ばれる。恒星を西から順に1番星、2番星と数字の符号をつけるものである。ただし、フラムスティード番号は、南天の星座にはつけられていないなどの弱点がある。フラムスティード番号で、上記のこと座α星を表すと、こと座3番星(3 Lyrae、または 3 Lyr)となる。この番号は、フラムスティードの望遠鏡で見たところ、こと座で西端から3番目にあった星ということになる。
 
よく、バイエルが命名しなかった暗い星に順番に番号が振られたといわれることがあるが、誤りである。たとえば、オリオン座α星([[ベテルギウス]])は、フラムスティード番号ではオリオン座58番星となる。多くの恒星が両者によって命名がされている。ただし、現在はバイエル符号がおもに使われ、フラムスティード番号はおもにバイエル名のついていない星に使われる。これよりもさらに暗い星は、さらにそののちに決定された星表([[ヘンリー・ドレイパーカタログ|HD]]など)でつけられた番号や記号で呼ばれる。
 
そのため、特に注意を払っていなければ数十年から数百年程度の時間では肉眼で変化を確認することは難しい。恒星たちは、地球の自転によって互いの位置関係を保ったまま天球上を回転しているように見える。
 
=== ;見かけの明るさ ===による分類
{| class="floatright wikitable" style="text-align:right;"
|+ 見かけの等級別の<br />星の数
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で表され、これをボグソンの式という{{sfn|岡村定矩|2001|pp=3-4}}。
 
=== 性質恒星の一覧 ===
当百科事典でも恒星を一覧を作成している。
恒星は[[水素]]や[[ヘリウム]]をおもな成分とした[[気体|ガス]]の塊である。恒星の中心部では、[[原子核融合]]によりエネルギーが生み出されており、中心から表層へかけて[[密度]]・[[温度]]が次第に減少する構造になっている。これによって恒星の内部には[[圧力]]差が発生し、多くの場合は自己の重力による圧縮との釣り合いが保たれている。また、熱エネルギーは高温部から低温部へ移動するため、中心部で発生した熱は[[放射]]・[[対流]]によって表層へ向けて運ばれ、最終的には光エネルギーとして宇宙空間に放出される<ref>斉尾 p.13-16</ref>。
 
恒星は惑星と比べて質量が大きく表面温度も高い。人類にとってもっとも身近な恒星である太陽は、[[地球]]の33万倍の質量と109倍の半径、5,780K(5,510℃)の表面温度を持つ<ref>{{cite web
| title=Sun Fact Sheet | url=http://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/sunfact.html | publisher=[[アメリカ航空宇宙局|NASA]] NSSDC | accessdate=2010-02-25
}}</ref>。太陽系最大の惑星である[[木星]]と太陽を比べても、質量は1,000倍、半径は10倍の差がある。
 
恒星の性質にはさまざまなものがあるが、太陽のように安定した段階にある恒星([[主系列星]])では、質量が大きいほど[[半径]]が大きく高温になるという単純な関係が見られる。たとえば太陽と同じ質量の主系列星はいずれも太陽と似た半径や温度を持つことになり、太陽の7倍の質量を持つス[[スペクトル分類|ペクトル型]]B5の主系列星では、半径は太陽の4倍、温度は1万5,500K前後になる<ref>斉尾 p.43 表1</ref>。ただし恒星が主系列星から脱して[[巨星]]化すると温度の低下と半径の膨張が起き、この法則から逸脱する。
 
質量が太陽の8%程度<ref name="Ledrew" />より小さい天体は、中心部が軽水素の核融合反応が起きるほど高温にならないため、恒星ではなく[[褐色矮星]]に分類される。この値は恒星質量の下限値といえる。また、質量が太陽の100倍を超えるような恒星も強烈な[[恒星風]]によって自らを吹き飛ばしてしまうため、形成されうる恒星の質量には上限が課せられる。
 
褐色矮星と恒星の境界付近の質量を持った恒星では、半径は太陽の10分の1程度になる。主系列星段階を終えた恒星は非常に巨大化し、例えば[[おおいぬ座VY星]]という[[赤色超巨星]]は太陽の1,000倍を超える半径を持つと考えられている。太陽自体も数十億年後に巨星の段階を迎えると現在の100倍以上にまで膨れ上がると予想されている。
 
恒星が誕生する際には、質量の小さい恒星ほど形成される可能性が高い。[[銀河系]]に存在する恒星の大部分は、太陽より質量の小さい[[K型主系列星|K型]]や[[赤色矮星|M型]]の主系列星だと考えられている。しかし低質量の星は暗いために地球に近いものしか観測できない。夜空に見える明るい星の多くは、遠くにある大質量の主系列星や赤色巨星などの数量的には稀だが極端に明るい天体の姿である<ref name="Ledrew">{{cite journal | author=Ledrew, G. | year=2001 | title=The Real Starry Sky | journal=Journal of the Royal Astronomical Society of Canada | volume=95 | pages=32 | url=http://adsabs.harvard.edu/abs/2001JRASC..95...32L}}</ref>。
 
恒星は、質量の10分の1ほどの水素原子がヘリウム原子に変わるまで、[[主系列星]]でいる<ref>「徹底図解 宇宙のしくみ」、[[新星出版社]]、2006年、p108</ref>。
 
== 形成と進化 ==
恒星は、周囲より僅かに物質の密度が高い(それでも地球上の実験室で作ることができる真空よりはずっと希薄な)領域である[[分子雲]]から生まれる。分子雲の近くで[[超新星]]が爆発したり恒星が近くを通過したりするなどして分子雲に擾乱が起こると、その衝撃波や密度揺らぎによって分子雲の中に圧縮される部分が生じ、重力的に不安定になり収縮していく。大質量星が作られると、その周囲の分子雲が星からの紫外光で電離されて[[散光星雲]]([[輝線星雲]])を作ったり、強烈に照らし出されて[[反射星雲]]として観測されたりするようになる。このような星雲の例として、有名な[[オリオン大星雲]]や[[プレアデス星団]]の周囲の青い星雲などが知られている。
 
ガス塊の質量が十分大きい場合、[[熱放射]]でエネルギーを失うと自己重力によって収縮し温度はかえって上昇する。このような系を「有効比熱が負の系」という{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=95-96}}。[[重力ポテンシャル]]のエネルギーのうち半分は[[赤外線]]で放射され{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=96-97}}、残りは天体内部の温度上昇に寄与する{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=95-96}}。こうして熱放射はますます盛んになり、やがて輝くようになる。これが[[原始星]]である。
 
原始星の中心温度が数百万度から約1,000万K{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=99-101}}に達すると、中心で水素の核融合反応が始まる。すなわち、4個の水素原子を1個のヘリウム原子に変え、エネルギーを発生させることができるようになる。するとこれが熱源となって圧力を発生し、重力による収縮が止まる。この段階の恒星を[[主系列星]]という。恒星は一生のうち約90%の時間を主系列星として過ごす。
 
質量が太陽の約8%よりも小さく、核融合反応を持続することができない星([[褐色矮星]]と呼ばれる)は、自らの重力により、数千億年(宇宙が誕生してから現在までの時間よりも長い)というきわめて長い時間をかけて、[[位置エネルギー]]を[[熱エネルギー]]に変換しながらゆっくりと収縮していく。最後にはそのままゆっくりと暗くなっていき、[[黒色矮星]]へと移っていく。
 
褐色矮星よりも重いが質量が太陽の46%よりは小さい恒星([[赤色矮星]]と呼ばれる)は、核反応が遅く数千億年から数兆年かけて燃料である水素を使い果たしたあと、ヘリウム型の[[白色矮星]]になるとされている。
 
[[ファイル:Evolved star fusion shells.svg|thumb|right|赤色巨星の断面図]]大部分の恒星は、燃料となる中心部の水素をほぼ使い果たすと、外層が膨張し巨大な赤い恒星に変化していく。これは[[赤色巨星]]と呼ばれる(約50億年後、太陽が赤色巨星になった時には、[[金星]]を呑み込むほどに膨張すると言われる)。やがて核の温度と圧力は上昇し、ヘリウムが炭素に変わる核融合が始まる。恒星が十分な質量を持っている場合は、外層はさらに膨張して温度が下がる一方、中心核はどんどん核融合が進み、[[窒素]]、[[酸素]]、[[ネオン]]、[[マグネシウム]]、[[ケイ素]]、[[鉄]]というように、重い元素が形成されていく。
 
太陽程度の、平均的な質量を持った恒星では、中心核での核融合反応は窒素や酸素の段階で止まり、外層のガスを放出して[[惑星状星雲]]を形成する。中心核は外層部の重力を支えきれず収縮し、収縮するとエネルギーを生じ再び膨張する。こうして膨張収縮を繰り返す[[脈動変光星]]となる。高密度になったものの、もはや核融合を起こすことができなくなると[[フェルミ縮退|縮退]]物質が残る。これは[[白色矮星]]と呼ばれる。白色矮星はゆっくりと熱を放出していき、きわめて長い時間をかけて黒色矮星になっていく。
 
太陽の8倍よりも質量が大きい恒星では、密度が比較的小さいために中心核が縮退することなく核融合反応が進んで次々と重い元素が作られて行く。最終的に鉄が生成されたところで、鉄原子は安定であるためそれ以降は核融合反応が進まなくなり、重力収縮しながら温度が上がっていく。中心温度が約100億度に達すると[[光崩壊|鉄の光分解]]という吸熱反応が起き、中心核の圧力が急激に下がって[[重力崩壊]]を起こす。その反動で恒星は[[超新星爆発]]と呼ばれる大爆発を起こす。これは宇宙で起こる現象の中で、人間的なタイムスケールで起こる数少ないものである。恒星の質量の大部分は爆発で吹き飛ばされ、[[かに星雲]]のような[[超新星残骸]]を作る。このとき恒星は急激に明るくなり、明るさでおよそ1億倍、[[視等級|等級]]で約20等も増光し、数週間の間、超新星ひとつが銀河全体と同じ明るさで輝くことも多い。
 
歴史上、超新星は、今まで星が何もなかったところに突如出現した「新しい星」として「発見」されてきた。超新星爆発が起こったあとの中心核の運命は恒星の元の質量により異なる。太陽の20倍程度以下の質量を持った恒星の場合、中心核は[[中性子星]]([[パルサー]]、[[X線バースター]])と呼ばれる天体となる。さらに重い恒星の場合には中心核が完全に重力崩壊を起こして[[ブラックホール]]となる。
 
重元素を多く含む、吹き飛ばされた恒星の外層は、やがて再び分子雲を作り、新しい恒星や惑星を作る材料となる。このように、超新星から放出された物質や巨星からの[[恒星風]]は、恒星間の環境を形成するのに重要な役割を果たしている。
 
恒星の形成と死について、より詳しい説明は[[恒星進化論]]を参照のこと。
 
== おもな恒星 ==
{{see|恒星の一覧}}
 
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太陽質量の5倍以上の恒星は表面対流を起こしておらずコロナやフレアが生じないためX線は放射しないと考えられていたが、[[X線天文衛星]][[HEAO-2]]はこのような星からX線を観測した。大質量星は多くの質量を星風の形で放出しており、これが周囲のガスと衝突すると高温のプラズマが発生し、X線を放射している。これらの観測は星間ガスの分布を知るうえで有用である{{sfn|岡村定矩|2001|pp=57}}。なお、大・中質量星でもフレアのような磁力線由来のX線と思われるX線が観測された例もあるが、そのメカニズムはわかっていない{{sfn|岡村定矩|2001|pp=57}}。
 
== 恒星と天体物理学 ==
;天体物理学での定義
[[天体物理学|天体の物理(天体物理学)]]という観点からは、
[[尾崎洋二]]は「自ら[[光]]を発し、その[[質量]]がもたらす[[重力]]による収縮に反する[[圧力]]を内部に持ち支える、[[ガス]]体の[[天体]]の総称{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=95-96}}」と解説している。
 
[[人類]]が住む[[地球]]から一番近い「恒星」は、[[太陽系]]唯一の恒星である[[太陽]]{{sfn|水谷仁|2009|pp=30-31}}。
 
;恒星の物理
[[理想気体]]の[[理想気体の状態方程式|状態方程式]]が示す通り、ガス体の天体は重力に対抗するために内部が高温・高圧にならなければならない。しかし、その一方で[[宇宙空間]]の[[温度]]は3[[ケルビン|K]]にすぎず、必ず[[エネルギー]]が全方位に流れ出ることになる。これが恒星が輝く理由であり、そのためにエネルギーを供給する源が必要になる{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=95-96}}。
 
そのエネルギー源は誕生直後の恒星では自己の[[ケルビン・ヘルムホルツ機構|重力収縮]]であるが、やがて[[水素]]の[[原子核融合]]をエネルギー源とするようになり、一生のほとんどをその状態で過ごす{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=95-96}}。重い恒星では、一生の終わり近くになると核融合する元素を水素から[[ヘリウム]]へ変え、順次[[原子番号]]の大きな元素を使うようになり、その過程で収縮と膨張を繰り返す{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=103-104}}。
 
恒星は[[水素]]や[[ヘリウム]]をおもな成分とした[[気体|ガス]]の塊である。恒星の中心部では、[[原子核融合]]によりエネルギーが生み出されており、中心から表層へかけて[[密度]]・[[温度]]が次第に減少する構造になっている。これによって恒星の内部には[[圧力]]差が発生し、多くの場合は自己の重力による圧縮との釣り合いが保たれている。また、熱エネルギーは高温部から低温部へ移動するため、中心部で発生した熱は[[放射]]・[[対流]]によって表層へ向けて運ばれ、最終的には光エネルギーとして宇宙空間に放出される<ref>斉尾 p.13-16</ref>。
 
恒星は惑星と比べて質量が大きく表面温度も高い。人類にとってもっとも身近な恒星である太陽は、[[地球]]の33万倍の質量と109倍の半径、5,780K(5,510℃)の表面温度を持つ<ref>{{cite web
| title=Sun Fact Sheet | url=http://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/sunfact.html | publisher=[[アメリカ航空宇宙局|NASA]] NSSDC | accessdate=2010-02-25
}}</ref>。太陽系最大の惑星である[[木星]]と太陽を比べても、質量は1,000倍、半径は10倍の差がある。
 
恒星の性質にはさまざまなものがあるが、太陽のように安定した段階にある恒星([[主系列星]])では、質量が大きいほど[[半径]]が大きく高温になるという単純な関係が見られる。たとえば太陽と同じ質量の主系列星はいずれも太陽と似た半径や温度を持つことになり、太陽の7倍の質量を持つス[[スペクトル分類|ペクトル型]]B5の主系列星では、半径は太陽の4倍、温度は1万5,500K前後になる<ref>斉尾 p.43 表1</ref>。ただし恒星が主系列星から脱して[[巨星]]化すると温度の低下と半径の膨張が起き、この法則から逸脱する。
 
質量が太陽の8%程度<ref name="Ledrew" />より小さい天体は、中心部が軽水素の核融合反応が起きるほど高温にならないため、恒星ではなく[[褐色矮星]]に分類される。この値は恒星質量の下限値といえる。また、質量が太陽の100倍を超えるような恒星も強烈な[[恒星風]]によって自らを吹き飛ばしてしまうため、形成されうる恒星の質量には上限が課せられる。
 
褐色矮星と恒星の境界付近の質量を持った恒星では、半径は太陽の10分の1程度になる。主系列星段階を終えた恒星は非常に巨大化し、例えば[[おおいぬ座VY星]]という[[赤色超巨星]]は太陽の1,000倍を超える半径を持つと考えられている。太陽自体も数十億年後に巨星の段階を迎えると現在の100倍以上にまで膨れ上がると予想されている。
 
恒星が誕生する際には、質量の小さい恒星ほど形成される可能性が高い。[[銀河系]]に存在する恒星の大部分は、太陽より質量の小さい[[K型主系列星|K型]]や[[赤色矮星|M型]]の主系列星だと考えられている。しかし低質量の星は暗いために地球に近いものしか観測できない。夜空に見える明るい星の多くは、遠くにある大質量の主系列星や赤色巨星などの数量的には稀だが極端に明るい天体の姿である<ref name="Ledrew">{{cite journal | author=Ledrew, G. | year=2001 | title=The Real Starry Sky | journal=Journal of the Royal Astronomical Society of Canada | volume=95 | pages=32 | url=http://adsabs.harvard.edu/abs/2001JRASC..95...32L}}</ref>。
 
恒星は、質量の10分の1ほどの水素原子がヘリウム原子に変わるまで、[[主系列星]]でいる<ref>「徹底図解 宇宙のしくみ」、[[新星出版社]]、2006年、p108</ref>。
 
=== 天体物理学での恒星の形成、進化、死 ===
 
{{Main|恒星進化論}}
 
恒星は、周囲より僅かに物質の密度が高い(それでも地球上の実験室で作ることができる真空よりはずっと希薄な)領域である[[分子雲]]から生まれる。分子雲の近くで[[超新星]]が爆発したり恒星が近くを通過したりするなどして分子雲に擾乱が起こると、その衝撃波や密度揺らぎによって分子雲の中に圧縮される部分が生じ、重力的に不安定になり収縮していく。大質量星が作られると、その周囲の分子雲が星からの紫外光で電離されて[[散光星雲]]([[輝線星雲]])を作ったり、強烈に照らし出されて[[反射星雲]]として観測されたりするようになる。このような星雲の例として、有名な[[オリオン大星雲]]や[[プレアデス星団]]の周囲の青い星雲などが知られている。
 
ガス塊の質量が十分大きい場合、[[熱放射]]でエネルギーを失うと自己重力によって収縮し温度はかえって上昇する。このような系を「有効比熱が負の系」という{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=95-96}}。[[重力ポテンシャル]]のエネルギーのうち半分は[[赤外線]]で放射され{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=96-97}}、残りは天体内部の温度上昇に寄与する{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=95-96}}。こうして熱放射はますます盛んになり、やがて輝くようになる。これが[[原始星]]である。
 
原始星の中心温度が数百万度から約1,000万K{{sfn|尾崎洋二|2010|pp=99-101}}に達すると、中心で水素の核融合反応が始まる。すなわち、4個の水素原子を1個のヘリウム原子に変え、エネルギーを発生させることができるようになる。するとこれが熱源となって圧力を発生し、重力による収縮が止まる。この段階の恒星を[[主系列星]]という。恒星は一生のうち約90%の時間を主系列星として過ごす。
 
質量が太陽の約8%よりも小さく、核融合反応を持続することができない星([[褐色矮星]]と呼ばれる)は、自らの重力により、数千億年(宇宙が誕生してから現在までの時間よりも長い)というきわめて長い時間をかけて、[[位置エネルギー]]を[[熱エネルギー]]に変換しながらゆっくりと収縮していく。最後にはそのままゆっくりと暗くなっていき、[[黒色矮星]]へと移っていく。
 
褐色矮星よりも重いが質量が太陽の46%よりは小さい恒星([[赤色矮星]]と呼ばれる)は、核反応が遅く数千億年から数兆年かけて燃料である水素を使い果たしたあと、ヘリウム型の[[白色矮星]]になるとされている。
 
[[ファイル:Evolved star fusion shells.svg|thumb|right|赤色巨星の断面図]]大部分の恒星は、燃料となる中心部の水素をほぼ使い果たすと、外層が膨張し巨大な赤い恒星に変化していく。これは[[赤色巨星]]と呼ばれる(約50億年後、太陽が赤色巨星になった時には、[[金星]]を呑み込むほどに膨張すると言われる)。やがて核の温度と圧力は上昇し、ヘリウムが炭素に変わる核融合が始まる。恒星が十分な質量を持っている場合は、外層はさらに膨張して温度が下がる一方、中心核はどんどん核融合が進み、[[窒素]]、[[酸素]]、[[ネオン]]、[[マグネシウム]]、[[ケイ素]]、[[鉄]]というように、重い元素が形成されていく。
 
太陽程度の、平均的な質量を持った恒星では、中心核での核融合反応は窒素や酸素の段階で止まり、外層のガスを放出して[[惑星状星雲]]を形成する。中心核は外層部の重力を支えきれず収縮し、収縮するとエネルギーを生じ再び膨張する。こうして膨張収縮を繰り返す[[脈動変光星]]となる。高密度になったものの、もはや核融合を起こすことができなくなると[[フェルミ縮退|縮退]]物質が残る。これは[[白色矮星]]と呼ばれる。白色矮星はゆっくりと熱を放出していき、きわめて長い時間をかけて黒色矮星になっていく。
 
太陽の8倍よりも質量が大きい恒星では、密度が比較的小さいために中心核が縮退することなく核融合反応が進んで次々と重い元素が作られて行く。最終的に鉄が生成されたところで、鉄原子は安定であるためそれ以降は核融合反応が進まなくなり、重力収縮しながら温度が上がっていく。中心温度が約100億度に達すると[[光崩壊|鉄の光分解]]という吸熱反応が起き、中心核の圧力が急激に下がって[[重力崩壊]]を起こす。その反動で恒星は[[超新星爆発]]と呼ばれる大爆発を起こす。これは宇宙で起こる現象の中で、人間的なタイムスケールで起こる数少ないものである。恒星の質量の大部分は爆発で吹き飛ばされ、[[かに星雲]]のような[[超新星残骸]]を作る。このとき恒星は急激に明るくなり、明るさでおよそ1億倍、[[視等級|等級]]で約20等も増光し、数週間の間、超新星ひとつが銀河全体と同じ明るさで輝くことも多い。
 
歴史上、超新星は、今まで星が何もなかったところに突如出現した「新しい星」として「発見」されてきた。超新星爆発が起こったあとの中心核の運命は恒星の元の質量により異なる。太陽の20倍程度以下の質量を持った恒星の場合、中心核は[[中性子星]]([[パルサー]]、[[X線バースター]])と呼ばれる天体となる。さらに重い恒星の場合には中心核が完全に重力崩壊を起こして[[ブラックホール]]となる。
 
重元素を多く含む、吹き飛ばされた恒星の外層は、やがて再び分子雲を作り、新しい恒星や惑星を作る材料となる。このように、超新星から放出された物質や巨星からの[[恒星風]]は、恒星間の環境を形成するのに重要な役割を果たしている。
 
== 脚注 ==