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産廃問題の専門家委員会による今後の予定案を追記
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'''豊島'''(てしま)は [[瀬戸内海]]の東部、[[小豆島]]の西方3.7[[キロメートル|km]]に位置する[[島]]<ref name=watashitachi/>。[[直島諸島]]に属す。
 
行政区分は[[香川県]][[小豆郡]][[土庄町]]に属し、島内の[[大字]]には{{読み仮名|豊島家浦|てしまいえうら}}、{{読み仮名|豊島唐櫃|てしまからと}}、{{読み仮名|豊島甲生|てしまこう}}の3つがある。[[国勢調査 (日本)|国勢調査]]によると豊島の人口は、867人(2015年)、1,018人(2010年)、1,141人(2005年)、1,327人(2000年)、1,471人(1995年)とゆるやかに[[過疎化]]傾向となっている。<ref>{{Cite web|url=https://www.pref.kagawa.lg.jp/chiiki/seto-island/statistics/|title=離島統計情報|accessdate=2020.3.30|publisher=香川県}}</ref>
 
{{TOC limit|3}}
== 概要 ==
瀬戸内海の島々のなかでも[[標高]]340mもの高い壇山があるため[[湧水]]が豊富にあり[[棚田]]が広がり[[稲作]]が盛んである島、かつ[[ママカリ]]等の豊富な漁場が近くにあった事から豊かな島「豊島」と名付けられる由来となった。[[第二次世界大戦]]後間もない頃までは[[乳牛]]が飼われており、また乳児院があったことから「ミルクの島」と呼ばれていた。次いで[[特別養護老人ホーム]]、[[知的障害者更生施設|知的障害者更正施設]]等が作られたことから「福祉の島」と呼ばれ、さらに産廃業者による不法投棄が問題となった後には「ゴミの島」と呼ばれるようにもなった(「[[#豊島事件(産廃不法投棄)]]」で詳述)。近年では、不法投棄問題の解決に向けた動きが進む一方で、「[[瀬戸内国際芸術祭]]」の会場となり、島内でアート作品が造られたことから「アートの島」と呼ばれることが増えている。
 
島の西、東、南に[[集落]]があり、かつては稲作、[[ミカン]]栽培、[[酪農]]などの[[第一次産業]]が中心の島であった<ref name="watashitachi" />。[[ノリ]]や[[ハマチ]]の[[養殖]]も行われ<ref name="watashitachi" />、「豊島石」と呼ばれる石材も採取される<ref name="watashitachi" />。いずれの第一次産業も衰退傾向にあり、[[平成]]22年(2010年)の国勢調査では第一次産業従事者は19.8%、[[第二次産業]]従事者は19.5%、[[第三次産業]]従事者は60.3%となっている。[[高齢者率]]は、2015年(平成27年)時点で50.3%を超えている<ref name="watashitachi" />。 
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香川県では唯一の[[乳児院]](いわゆる孤児院)である「[[豊島神愛館]]」(出典によっては「親愛館」<ref name="watashitachi" />)が1947年に設置されていたが、老朽化により2015年に[[坂出市]]に移転し、「かがわ子ども・子育て支援センター」<ref>{{Cite web|title=神愛館(乳児院):かがわ子ども・子育て支援センター(香川県坂出市)|url=http://www.kagawa-kids.org/nyujiin.html|website=www.kagawa-kids.org|accessdate=2020-04-01}}</ref>に統合された(跡地は、[[ゲストハウス]]「mamma」<ref>{{Cite web|title=mamma|ゲストハウス|瀬戸内海・豊島|url=https://teshimamma.com/|website=mamma|ゲストハウス|瀬戸内海・豊島|accessdate=2020-04-01|language=ja}}</ref>として活用されている<ref>[https://www.asahi.com/articles/ASL2G420JL2GPLXB00B.html 香川)豊島の元乳児院、ゲストハウスに生まれ変わる][[朝日新聞デジタル]](2018年2月26日03時00分)2019年9月3日</ref>)。現在は、[[特別養護老人ホーム]]を運営している「ナオミ荘」<ref>{{Cite web|url=https://www.ans.co.jp/n/naomi/index2.html|website=www.ans.co.jp|accessdate=2020-04-01|title=ナオミ荘|publisher=ナオミ荘}}</ref>、[[知的障害者更生施設]]、知的障害者地域生活援助([[グループホーム]])、知的障害者短期入所を運営している「みくに園」<ref>{{Cite web|title=みくに園とは|url=http://teshimamikunien.com/info.html|website=teshimamikunien.com|accessdate=2020-04-01}}</ref>がある。<ref name="watashitachi" /> 
 
1975年以降、豊島総合観光開発が起こした国内最大級の産業廃棄物投棄事件、いわゆる「豊島事件」は2020年代の現在に至るまで半世紀も島民を悩ませている。不法投棄および産業廃棄物の野焼きが終わったのが1990年まで16年間、産業廃棄物と汚染土の総計91万3000トン全量撤去搬出完了終わった20182019まで43年間さらに土壌汚染水浄化装置回復工事が終わる2025年(稼働終了予定)まで約50は20233月で、その後の長期にわたって、監視が続く予定である<ref name="毎日20210820">[https://mainichi.jp/articles/20210819/k00/00m/040/296000c 「豊島の住民を悩ませることになった 22年度処理終了/専門家委了承 水浄化施設停止へ]」『[[毎日新聞]]』朝刊2021年8月20日(社会面)2021年8月23日閲覧</ref>
 
2010年[[瀬戸内国際芸術祭]]の会場に選定され、[[直島町|直島]]に次いで2番目に来場者数の多い人気の「アートの島」となった。以降、レストランやホテルなどアートの島として観光客がかつてないほど訪問し、関連施設が増え、島に賑わいをもたらしている。
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== 地理と自然 ==
=== 檀山 ===
[[標高]]340m。壇山は瀬戸内海に浮かぶ豊島にある山。 豊島は大綿津見神(海神)豊玉彦を祀る島で、壇山の「壇」とは神を祀り儀式を行う場所であった。島のほぼ中央に位置し、頂上からは瀬戸内の島々を一望できる。天気の良い日であれば、[[瀬戸大橋]]や[[淡路島]]も見ることができる。山頂付近には[[樹齢]]100年から250年前後と見られる[[スダジイ]]の群生林が見られ、麓には[[クヌギ]]林が広がっている。ごく最近まで人の手が入っていたようで、[[里山]]の様相を呈する
 
島のほぼ中央に位置し、頂上からは瀬戸内の島々を一望できる。天気の良い日であれば、[[瀬戸大橋]]や[[淡路島]]も見ることができる。
 
山頂付近には[[樹齢]]100年から250年前後と見られる[[スダジイ]]の群生林が見られ、麓には[[クヌギ]]林が広がっている。ごく最近まで人の手が入っていたようで、[[里山]]の様相を呈する。
 
==== 家浦地区(いえうらちく) ====
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==== 唐櫃岡地区(からとおかちく) ====
唐櫃浜地区から直線で300m岡に上がった、[[棚田]]が広がり、[[豊島美術館]]のある地区である。
 
==== 甲生地区(こうちく) ====
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=== 唐櫃の清水 ===
唐櫃岡(からとおか)地区にわき出る[[湧水]]。喉の渇きを覚えた[[空海|弘法大師(空海)]]が杖で地面を掘ったところ、清水がわき出たとの伝承がある。古くから地区住民の生活・交流の場として用いられてきた。
 
壇山の麓に広がる[[クヌギ]]林が豊かな水を涵養していると見られ、[[河川]]、[[ため池]]、水路などの水面面積は他の離島より多く、瀬戸内海では唯一、[[米]]を島外に出荷できたほどであった。
 
== 遺跡 ==
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== 産業 ==
=== 豊島石 ===
「豊島石」という石材を産出する。塩基性[[凝灰角礫岩|角礫凝灰岩]]<ref name=watashitachi/>。耐火性に優れ、多くは生活用品に加工された。また[[苔]]が付きやすい特性のために、[[灯籠]]などの石材にも重用された。『豊島村史』によれば[[平安時代]]末期からおよそ1,000年にわたって石の採掘が行われていたという
 
『豊島村史』によれば[[平安時代]]末期からおよそ1,000年にわたって石の採掘が行われていたという。
 
=== 第一次産業 ===
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== 過去にあった教育・福祉施設 ==
*乳児院「神愛館」<ref>{{Cite web|url=http://www.kagawa-kids.org/shinaikan.html|title=豊島神愛館のあゆみ|accessdate=2020.4.1|publisher=かがわ子供支援センター}}</ref>(1947年~2015年)- キリスト教社会運動家[[賀川豊彦]]によって、[[第二次世界大戦]]前の[[サナトリウム]]跡を利用して設立された乳児院。2015年以降は坂出市内に移転した。また神愛館跡地はゲストハウスとして利用されている。
* 農民福音学校<ref>{{Cite web|url=https://fukutake-foundation.jp/archives/archive_seto/650|title=「豊島農民福音学校の歴史に関する調査研究と史料保存」|accessdate=2020.4.1|publisher=福武財団}}</ref> (1947年~1982年)- 賀川豊彦によって設立された農民学校で、[[セツルメント論]]に基づく教育が行われ、今日の大学レベルの[[農学]]が教えられていた。現在は閉所しているものの、定期的に集まりが開催されている。
 
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* レモン
* オリーブ
* [[素麺|そうめん]]
* 海苔
 
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* 勝者はいない─マルチ・バスケットボール(te14)イオベット&ボンズ
* 心臓音のアーカイブ(te15-B)[[クリスチャン・ボルタンスキー]]
* 豊島八百万ラボ  運命の赤い糸をつむぐ蚕ーたまきの恋(te16-B)[[Sputniko!|スプツニ子!]]・[[成瀬友梨]]、[[猪熊純]] 閉館
* 遠い記憶(te17)[[塩田千春]]+[[田根剛]] 撤去済
 
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産廃物の量は、香川県が2017年1月に88万8千トンとする最終的な推計値を発表した<ref>{{Cite news|url=http://mainichi.jp/articles/20170121/k00/00m/040/057000c |title=不法投棄の産廃量ほぼ確定 88.8万トン |newspaper=『[[毎日新聞]]』|date=2017-01-21|accessdate=2017-01-21}}</ref>。しかし搬出期限が迫る中、その後の精密測量調査で次々と新たな産廃が発掘されて、最終的な産廃量は当初の推定50万トンを大きく上回る91万2373トン<ref name="asahi2017710">{{Cite news | title = 豊島産廃無害化処理完了の式典 直島 | newspaper = 『[[朝日新聞]]』 | date = 2017-07-10 | author = | publisher = 朝日新聞社 | page = 朝刊 香川全県版 }}</ref>、[[体積]]61万6525[[立方メートル]]にも達し、国内最大級の不法投棄事件となった<ref name="toyosima300" />。2017年3月末までに費やされた公費も、約727億円にも及んだ。撤去量が当初の推定よりも増えた一因は、産廃から漏れ出た[[ベンゼン]]などにより汚染された土壌も除去したためであり、これでもなお地下水の汚染問題が残っている<ref>[https://mainichi.jp/articles/20170727/ddm/005/070/002000c 【記者の目】香川・豊島の産廃問題=植松晃一(高松支局)進まない地下水浄化]『毎日新聞』朝刊2017年7月27日</ref><ref>[http://www.asahi.com/articles/DA3S13095891.html(360゜)豊島「再生」、埋まらぬ溝 住民の思い「元の里山に戻して」]『朝日新聞』朝刊2017年8月21日</ref>。公害調停に基づく撤去事業の期限(2017年3月末)後の2018年にも、深く埋められていたなどの理由で未発見だった廃棄物300トンが新たに発見されている<ref name="toyosima300">[https://mainichi.jp/articles/20180510/ddn/041/040/012000c 「豊島 続く産廃退治/撤去終了後 300トン確認/香川県再調査 業者が深く掘り投棄か」]『毎日新聞』朝刊2018年5月10日(社会面)</ref>。
 
2020年時点、不法投棄跡地は土がむき出しの状態になっており、汚染地下水が海に漏れ出すのを防ぐ遮水壁が地中に設置されている。住民会議は2019年10月、遮水壁を撤去して自然の力で海岸の環境を修復することを求める要望書を香川県へ提出した<ref>[https://mainichi.jp/articles/20200607/ddm/041/040/060000c 「美しい豊島 少しずつ/住民と香川県 公害調停20年/産廃撤去 なお地下水汚染」]『毎日新聞』朝刊2020年6月7日(社会面)2020年6月9日閲覧</ref>。専門家によるフォローアップ委員会(委員長・[[早稲田大学]][[名誉教授]]永田勝也)は2021年8月19日、地下水浄化のめどがついたとして浄化施設を2023年3月で停止される案を了承したが、その後も汚染水を池にためるなど作業は続く見通しで、「廃棄物対策豊島住民会議」も監視継続を求めている<ref name="毎日20210820"/>。
 
2017年7月22日から[[サンポートホール高松]]で、「豊かな島よみがえれ 産業廃棄物不法投棄と闘った豊島の42年展」が開催された<ref>[http://teshima.ne.jp/wordpress/?p=374 「豊かな島よみがえれ 産業廃棄物とたたかった豊島の42年展」] 廃棄物対策豊島住民会議(2017年7月18日投稿)2020年6月9日閲覧</ref>。
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| NTLU-020010(7) || '''※【 10 】※'''<ref>[http://www.kubota-ksk.co.jp/column/10/index.html/ クボタ環境HP 社会が注目する緊張の現場 』欄内の、『 豊島からの運ばれて来た廃棄物を受け入れます 』より。( ※写真クリックで拡大 )]</ref>||
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| NTLU-020014(9) || 【 14 】||
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!'''※33※'''<ref>[https://www.nipponkaiun.com/news/wp-content/uploads/2017/04/fc33d25c4e9b35f250ceb8f0408d02c7.jpg/ 日本海運HP 特別管理産業廃棄物運搬船「太陽」の運航終了 』より。( ※写真クリックで拡大 )]</ref>
| NTLU-020015(4) || 【 15 】||
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=== 産廃特措法適用 ===
[[特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法]](産廃特措法)に基づき、2003年12月9日、不法投棄事案として環境大臣同意<ref>[http://www.env.go.jp/recycle/ill_dum/tokuso.html 産廃特措法に基づく特定支障除去等事業について”[http://www.env.go.jp/recycle/ill_dum/tokuso.html] -環境省]</ref>。概算費用は281億円。
 
行政責任として、[[公害調停]]の最終合意に際して、廃棄物の[[認定]]を誤り原因者(豊島開発)に対する適切な[[指導]][[監督]]を怠ったことを認め、申請人を含めた豊島住民に対して知事から直接謝罪した<ref>香川県・豊島事案・豊島廃棄物等処理事業 [http://www.pref.kagawa.jp/haitai/teshima/KENMIN.HTM -香川県HP“・豊島事案・豊島廃棄物等処理事業 県民のみなさまへ”(2003] 香川県(2003年1月)]</ref><ref>豊島廃棄物等の処理にかかる実施計画 [http://www.pref.kagawa.jp/haitai/teshima/shiryo/jissikeikaku230602.pdf -香川県豊島廃棄物等の処理にかかる実施計画 pdf21(pdf21頁以降]香川県</ref>。
 
== 参考文献 ==