削除された内容 追加された内容
m セクションリンク切れの修正
Cewbot (会話 | 投稿記録)
m bot: 解消済み仮リンクトマス・カイトリーを内部リンクに置き換えます
34行目:
「メロウ」の呼称が用いられる2編の人魚譚は、いずれも『([[ウィリアム・バトラー・イェイツ|イエイツ]]編)ケルト妖精物語』([[井村君江]]訳)に所収されるが、初出は[[トマス・クロフトン・クローカー]]による民話集『南アイルランドの妖精物語と伝説』(第2巻、1828年)である{{r|"kinahan"}}{{Refn|group="注"|キナハンはクローカーが1825年~1828年に刊行した数巻としているので精度に欠けるが<ref name="kinahan"/>、クローカーは1825年に第1巻、1826年にその第2版、そして1828年に新たな物がありを収載させた第2巻を刊行した<ref name="hennig"/>。メロウの内容が加わったのがこの第2巻であるのことは確認できる。}}。このうち「[[魂の籠]]」は採集民話ではなく創作だったことが判明している{{sfnp|Keightley|1850|page=536n}}
 
クローカーによるメロウの注釈は、その後の民俗学的なメロウ論の礎石となった。同書は[[グリム兄弟]]によりドイツ訳されることで注視された。そののち{{仮リンク|[[トマス・カイトリー|en|Thomas Keightley}}]]、{{仮リンク|ジョン・オハンロン (作家)|en|John O'Hanlon (writer)|label=ジョン・オハンロン}}牧師、[[ウィリアム・バトラー・イェイツ|イェイツ]]などがメロウを含む「妖精」の解説書を出しているが、その内容の多くはクローカーより流用されている{{r|"kinahan"}}。これら19世紀の作家群によるメロウ論を集約すると、概ね次の通りとなる。
 
===性質===
50行目:
 
===男のメロウ===
アイルランド民承における男性のメロウについては「[[魂の籠]]」という物語がある。魚人が航海で溺れた人たちの魂を籠({{仮リンク|ロブスターポット|en|lobster pot}}に似た籠)に封じ込め、それらを飾って眺めて暮らしている、という設定である{{sfnp|Keightley|1850|pp=527–536}}{{sfnp|イエイツ|井村|1986|loc=『ケルト妖精物語』, 137–160頁}}。ただしこれは語り手から採集された真正の民話ではなかった。後年になって、物語の提供者である{{仮リンク|[[トマス・カイトリー|en|Thomas Keightley}}]]が、これがみずからの創作(ドイツ民話「水の精と農夫」の翻案<ref group="注">グリム兄弟{{仮リンク|ドイツ伝説集|en|Deutsche Sagen|label=『ドイツ伝説集』}}所収「男の水の精〔ヴァッサーマン〕と農夫」"Der Wassermann und der Bauer"'。カイトリーは"The Peasant and the Waterman"として英訳している。</ref>)だったことを暴露した。ただ、カイトリーは、[[コーク県]]や[[ウィックロー県]]では偶然にも自分の創作と合致する内容の民話が伝搬していた、と釈明した{{sfnp|Keightley|1850|p=536n}}{{r|markey}}。
 
「魂の籠」に登場する男のメロウは、名をクーマラといい(Coomara ;「海の犬」の意{{sfnp|Croker|1828|loc='''II''', 55}})、体も髪も歯も緑色をしており、鼻は赤く、目は豚似で、鱗に覆われた下肢のあいだからは魚の尾を生やしており、腕は鰭(ひれ)のように短かった{{sfnp|イエイツ|井村|1986|loc=『ケルト妖精物語』, 140, 141, 321頁}}{{sfnp|九頭見|2007|p=50}}。クローカーは、同じ特徴(緑色の毛髪や葉、赤鼻、豚似の目)は、すべての男のメロウに通ずるものとしており、男のメロウは総じて醜いものと結論づけている。その結論は、オハンロン牧師やイエイツ、ケネディに受け継がれた{{sfnp|Kennedy|1866|p=121}}{{sfnp|Kinahan|1983|p=260}}。