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[[平山朝治]] (2003) は、人間は[[ネオテニー]][[進化]]を経た存在であるという見解について触れ、ボノボやチンパンジーでは性的に成熟した息子が母親と性交することはまず見られないものの、性的に成熟していなければ母親と性交する現象が確認できることから、ネオテニーの子供の場合では母親が息子のことをまだ子供だと錯覚しているため、より母と息子の近親交配が起こりやすいという仮説を立てている<ref>{{Cite journal|和書|url=https://www.tsukuba-g.ac.jp/library/kiyou/2003/12.HIRAYAMA.pdf |format=PDF |author=平山朝治 |title=人間社会と精神の起源 |journal=[https://www.tsukuba-g.ac.jp/library/kiyou/2003/index-j.html 東京家政学院筑波女子大学紀要] |issn=13426451 |publisher=筑波学院大学 |year=2003 |volume=7 |pages=159-177 |naid=110000074567 |accessdate=2021-05-10}}</ref>。実際にボノボの母と息子の交尾類似行為を観察した橋本千絵と[[古市剛史]]は、この行為は母親に性的興味があってやっているというよりも、母親にかまって欲しくてやっている行為のようだと論じている<ref>『霊長類学を学ぶ人のために』(西田利貞・上原重男編、1999年) 240頁 ISBN 4-7907-0743-1</ref>。
 
桑村哲生は、クマノミ類は親子のように見える三匹には実は血縁関係はなく、雌がいなくなると雄が雌に[[性転換]]し未成熟な第三個体と交配するという特性を持つと指摘した上で、[[カクレクマノミ]]を扱った『[[ファインディング・ニモ]]』を実際の話に置き換えると、育ての父親が母親になって育ての息子とカップルになる話になってしまうと論じている<ref>『性転換する魚たち サンゴ礁の海から』(桑村哲生、岩波書店、2004年) 22~24頁 ISBN 4-00-430909-3</ref>。[[元村有希子]]は桑村哲生の『ファインディング・ニモ』のたとえ話について、父親と息子が愛し合い子供をもうけることが問題視されるのは人間の世界の話であり、魚の世界の価値観に基づくものではないと指摘している<ref>『気になる科学』(元村有希子、KADOKAWA、2016年、原書2012年発行) 309頁 ISBN 978-4-04-601325-5</ref>。
 
[[尾本恵市]] (2017) は、一般論としては身近な相手に性的魅力を感じないといっても、娘を犯す異常な父親は実際に存在すると山極寿一に指摘する<ref>『日本の人類学』(山極寿一・尾本恵市著、筑摩書房、2017年) 205頁 ISBN 978-4-480-07100-2</ref>。核家族間の交配を含む近親交配の事例は人以外の動物でも、[[ウタスズメ]]、[[ガラパゴスフィンチ]]、[[プレーリードッグ|オグロプレーリードッグ]]、その他類人猿などでも確認されており、一定数存在するこれらの近親交配がその種にとって有利な選択になる可能性が指摘されている。まず、血縁者同士で儲けた子供の方が非血縁者同士で儲けた子供よりも自分の遺伝子のコピーを多く受け継ぐというものである。その結果、生存する子が両方同じ数である場合、個体が後代に残せる遺伝子が血縁者同士で子供を儲けた場合の方が多く残すことが出来る。また、血縁者同士の交配は、非血縁者同士の交配よりも比較的若い年齢で始まることが指摘されている。その結果、その個体の生涯における繁殖成功度が非血縁者同士の交配よりも、血縁者同士の交配の方が高まる。現代社会における結婚年齢は、夫婦が非血縁者同士である場合よりも、いとこ同士である場合の方が低いという。そのためか、いとこ婚の夫婦の子供の出生率は相対的に高い傾向がある。ローマ期エジプトの兄妹婚においても、若い夫婦が多く、非血縁者同士の男女よりも兄妹の方が早く結婚していた可能性が指摘されている。血縁者同士の交配の方が若くで始まる傾向があるということは人以外の動物でも観察され、ウタスズメは、繁殖開始年齢を下げるために近親交配をしているという。[[東京大学大学院理学系研究科・理学部|東京大学大学院理学系研究科]]教授の青木健一は、これらの理論をもとに集団生物学的にその種の集団間に存在する一定数の兄妹交配がその種にとって利益をもたらすものであり、その利益に与るために集団間に一定数兄妹交配の夫婦が存在するように適応進化したかどうかを解析するモデルを構築した結果、兄妹交配を行う性向が進化するための条件が満たされている可能性があると言及している{{Sfn|川田|2001|pp=37 - 45}}。