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== ストーリーの概略 ==
時代は北宋末期、汚職官吏や不正がはびこる世の中。様々な事情で世間からはじき出された108人の好漢(英雄)
ストーリーの詳細については[[#内容]]を参照。人物については[[#登場人物]]、「[[水滸伝百八星一覧表]]」、または「[[:Category:水滸伝の登場人物]]」を参照。
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水滸伝の物語は実話ではない。しかし[[14世紀]]の[[元 (王朝)|元代]]に編纂された歴史書『[[宋史]]』には、徽宗期の[[12世紀]]初めに[[宋江]]を首領とする36人が実在の梁山泊の近辺で反乱を起こしたことが記録されている。講談師たちは[[12世紀]]中頃に始まる[[南宋]]の頃には早くも宋江反乱の史実をもとに物語を膨らませていったと推定され、[[13世紀]]頃に書かれた説話集『[[大宋宣和遺事]]』には、宋江以下36人の名前と彼らを主人公とする物語が掲載されている。
[[15世紀]]頃にまとめられた水滸伝では、36人の豪傑は3倍の108人に増やされた{{Efn|数は明確でないが、頭目の下に「小頭目」というのがおり、その下にさらに兵士的な手下が相当数いる。この手下の正確な数は不明だが、第六十八回にて総勢が2万2千人であることが確認できることから、おそらく数万人はいたとされる{{Sfnp|長尾光之|1976|p=133}}。}}。また、荒唐無稽で暴力的な描写や登場人物の人物像を改め、梁山泊は朝廷への忠誠心にあふれる宋江を首領とし、反乱軍でありながらも宋の朝廷に帰順し忠義をつくすことを[[理想]]とする集団と設定され、[[儒教]]道徳を兼ね備え[[知識人]]の[[読書]]にも耐えうる文学作品となった。とはいえ、反乱軍を主人公とする水滸伝は、儒教道徳を重んじる知識人にはあまり高く評価されず、もっぱら「民衆の読む[[大衆小説|通俗小説]]」として扱われた。その風潮の中で、明末の[[陽明学|陽明学者]]で儒者の[[偽善]]を批判した[[李卓吾]]が、水滸伝のような通俗小説を高く評価したことはよく知られている。同じ時期に「農民反乱を扇動する作品である」として禁止令が出されており、また[[清代]]には[[京劇]]の題材にとられ、108人が'''皇帝に従う'''という展開が[[西太后]]などに好まれた。
[[中国共産党]]では、「投降主義」的であると見なされ、降伏経験のある幹部や原則主義的な立場から見て妥協的であるとされる幹部への間接的な批判として水滸伝批判が行われた。<!-- 新中国成立後の[[文化大革命]]初期時には禁書処分を受ける事となったようだが、-->1975年の[[毛沢東]]の名による水滸伝批判では、「宋江が前首領の[[晁蓋]]を棚上げして実権を握り、自ら首領となった挙句に朝廷に帰順したことが[[革命]]への裏切りである」として非難され、批判的に読むための[[連環画]]形式のものも出版された。これは後に「[[四人組 (中国史)|四人組]]による[[周恩来]]批判であった」と[[解釈]]された。
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== 日本における受容 ==
[[Image:Happinata_Koju_on_a_rearing_horse.jpg|right|thumb|200px|日本で描かれた水滸伝の豪傑。[[歌川国芳]]「{{Zh-tw|通俗水滸伝豪傑百八人之一個・八臂那吒項充}}」]]
日本へは[[江戸時代]]に輸入され、[[岡島冠山]]により『通俗忠義水滸伝』として和訳され{{Efn|ただし'''出版されたのは冠山の没後'''であることから、訳者に関しては真偽が問われている
[[19世紀]]には、[[浮世絵師]]の[[歌川国芳]]や[[葛飾北斎]]が、[[読本]]の[[挿絵]]や[[錦絵]]に描いた<ref>{{Cite web|和書|date=2003-03-20|url=https://www.rekihaku.ac.jp/outline/publication/rekihaku/117/witness.html|title=歴博 第117号 歴史の証人 『水滸伝』の幕末維新|publisher=国立歴史民俗博物館|accessdate=2009-09-24}}</ref>。[[曲亭馬琴]]が『新編水滸画伝』として[[翻訳]]を開始した際にも{{
江戸時代後期の[[侠客]]である[[国定忠治]]の武勇伝は、のちに水滸伝の影響を受けて脚色された。[[浪曲]]や[[講談]]で知られる『天保水滸伝』は、侠客[[笹川繁蔵]]と[[飯岡助五郎]]の物語に水滸伝の名を冠したものである。
===日本語訳書===
[[明治|明治・大正期]]以降も百二十回本や百回本を元とする『水滸伝』の翻訳や翻案が生み出された<ref group="注釈">
; 以下は主な日本語訳の一覧。
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[[:Category:水滸伝を題材とした作品]]も参照。
=== 小説 ===
* [[金瓶梅]] - [[蘭陵笑笑生]]の小説。水滸伝第23 - 27回の内容を大幅に拡張した[[スピンオフ]]作品で{{Sfnp|駒林麻理子|1981|pp=68-69}}、水滸伝とともに[[四大奇書]]の1つに数えられる。
* 新・水滸伝 - [[吉川英治]]の小説。未完だが70回本としては完了。現:[[吉川英治歴史時代文庫]] 全4巻。
* 柴錬水滸伝 われら梁山泊の好漢 - [[柴田錬三郎]]の小説。未完。
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{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist|2}}
=== 出典 ===
{{Reflist|
== 参考文献 ==
;単行本
*{{Cite book|和書|author=[[高島俊男]]|title=水滸伝の世界|publisher=[[大修館書店]]|date=1987-10|isbn=4469230448|ref =harv}}([[ちくま文庫]]、2001年12月。{{ISBN|4480036865}})
*{{Cite book|和書|author=高島俊男|title=水滸伝
*{{Cite book|和書|author=
*{{Cite book|和書|author=
;雑誌論文
*{{Cite journal|和書|author=
*{{Cite journal|和書|author=長尾光之|title=「水滸」集団の形成と性格|journal=福島大学教育学部論集:人文科学|volume=28|issue=2|date=1976-11|pages=129-138|url=https://hdl.handle.net/10270/1287|ref=harv}}
*{{Cite journal|和書|author=駒林麻理子|title=「金瓶梅」と「水滸伝」:二つの作品における変化と比較|journal=東海大学教養学部紀要|issue=12|date=1981-09|pages=67-84|url=https://opac.time.u-tokai.ac.jp/webopac/TC20000452|ref=harv}}
*{{Cite journal|和書|author=笠井直美|title=『水滸』における「対立」の構図|journal=東洋文化研究所紀要
*{{Cite journal|和書|author=笠井直美|title=李宗侗(玄伯)旧蔵『忠義水滸傳』|journal=東洋文化研究所紀要|issue=131|publisher=東京大学東洋文化研究所|date=1996-11|pages=27-104|url=https://doi.org/10.15083/00027106|ref=harv}}
*{{Cite journal|和書|author=
*{{Cite journal|和書|author=中村綾|title=『通俗忠義水滸伝』をめぐる諸問題|journal=国際日本文学研究集会会議録|issue=22|date=2007-03|pages=7-28|url=https://doi.org/10.24619/00002723|ref={{SfnRef|中村綾|2007a}}}}
*{{Cite journal|和書|author=中村綾|title=和刻本『忠義水滸伝』と『通俗忠義水滸伝』|journal=近世文藝|issue=86|date=2007-07|pages=27-40|url= https://doi.org/10.20815/kinseibungei.86.0_27|ref={{SfnRef|中村綾|2007b}}}}
*{{Cite journal|和書|author=中村綾|title=『通俗忠義水滸伝』翻訳者の問題:正編・拾遺編の相違点を通じて|journal=国語国文|volume=77|issue=1|date=2008-01|pages=19-36|ref=harv}}
*{{Cite journal|和書|author=馬場昭佳|title=清代における『水滸伝』七十回本と征四寇故事について|journal=東京大学中国語中国文学研究室紀要|issue=7|date=2004-04|pages=74-97|url=https://doi.org/10.15083/00035311|ref=harv}}
*{{Cite journal|和書|author=林雅清|title=『水滸伝』における「好漢」の概念|journal=關西大學中國文學會紀要|issue=27|date=2006-03|pages=89-105|url=https://hdl.handle.net/10112/12609|ref=harv}}
*{{Cite journal|和書|author=[[葛綿正一]]|title=傾城水滸伝を読む:馬琴の小説手法|journal=沖縄国際大学日本語日本文学研究|volume=18|issue=2|date=2014-03|pages=39-74|url=https://hdl.handle.net/2308/914|ref=harv}}
*{{Cite journal|和書|author=孫琳淨|title=『南總里見八犬傳』における『水滸傳』の受容:犬田小文吾を中心に|journal=和漢語文研究|issue=14|date=2016-11|pages=80-108|ref=harv}}
*{{Cite journal|和書|author=孫琳淨|title=『新編水滸畫傳』「校定原本」諸本の研究:『水滸傳』諸版本との關係を中心に|journal=和漢語文研究|issue=15|date=2017-11|pages=163-198|ref=harv}}
*{{Cite journal|和書|author=孫琳淨|title=馬琴手澤本『忠義水滸傳』の語釈書入について|journal=和漢語文研究|issue=16|date=2018-11|pages=95-120|ref=harv}}
*{{Cite journal|和書|author=孫琳淨|title=『南總里見八犬傳』における『水滸傳』の受容:犬坂毛野を中心に|journal=和漢語文研究|issue=17|date=2019-11|pages=89-114|ref=harv}}
*{{Cite journal|和書|author=孫琳淨|title=『新編水滸畫傳』における『通俗忠義水滸傳』の利用|journal=和漢語文研究|issue=18|date=2020-11|pages=74-87|ref={{SfnRef|孫琳淨|2020a}}}}
*{{Cite journal|和書|author=孫琳淨|title=『八犬伝』犬士列伝の構想に関する考察:『水滸伝』の受容を通して|journal=京都府立大学学術報告・人文|issue=72|date=2020-12|pages=259-275|url=https://kpu.repo.nii.ac.jp/records/6236|ref={{SfnRef|孫琳淨|2020b}}}}
=== 関連文献 ===
* 井坂錦江『水滸傳と支那民俗』[[大東出版社]]、1942年
* 井波律子『中国の五大小説(下) 水滸伝・金瓶梅・紅楼夢』[[岩波書店]]〈[[岩波新書]]〉、2009年3月。{{ISBN|4004311284}}
* [[稲田篤信]]編『『水滸伝』の衝撃:東アジアにおける言語接触と文化受容』[[勉誠出版]]〈アジア遊学131〉、2010年3月。{{ISBN|9784585104285}}
* 大阪市立大学中国文学研究室編『中国の八大小説:中国近世小説の世界』平凡社、1965年6月。
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* [[佐竹靖彦]]『梁山泊:水滸伝・108人の豪傑たち』[[中央公論新社|中央公論社]]〈[[中公新書]]〉、1992年1月。{{ISBN|4121010582}}
* 中鉢雅量『中国小説史研究:水滸伝を中心として』汲古書院〈汲古叢書8〉、1996年2月。{{ISBN|4762925071}}
* 中原理恵『百二十回本『水滸傳』の研究』汲古書院、2023年2月。{{ISBN|9784762967245}}
* 林雅清『中國近世通俗文學研究』汲古書院、2011年12月。{{ISBN|9784762929717}}
* 松村昂・小松謙『図解雑学:水滸伝』[[ナツメ社]]、2005年4月。{{ISBN|9784816338090}}
* [[宮崎市定]]『水滸伝:虚構のなかの史実』中央公論社〈中公新書〉、1972年8月。{{ISBN|4121002962}}([[中公文庫]]、1993年12月、改版2017年3月。{{ISBN|4122063892}})
* U-PARL・荒木達雄編『なぜ古い本を網羅的に調べる必要があるのか:漢籍デジタル化公開と中国古典小説研究の展開』[[文学通信]]、2023年12月。{{ISBN|9784909658647}}
== 関連項目 ==
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