削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
10行目:
啓蒙思想はあらゆる[[人間]]が共通の[[理性]]をもっていると措定し、世界に何らかの根本法則があり、それは理性によって認知可能であるとする考え方である。方法論としては[[17世紀]]以来の[[自然科学]]的方法を重視した。理性による認識がそのまま[[科学]]的研究と結びつくと考えられ、[[宗教]]と科学の分離を促した一方、啓蒙主義に基づく自然科学や[[社会科学]]の研究は[[認識論]]に著しく接近している。これらの研究を支える理論哲学としては[[イギリス経験論]]が主流であった。
 
啓蒙主義は科学者の[[理神論]]的あるいは[[無神論]]的傾向を深めさせた。イギリスにおいては[[自然神学]]が流行したが、これは自然科学的な方法において[[聖書]]に基づくキリスト教[[神学]]を再評価しようという考え方である。この神学は[[神]]の計画は合理的であるという意味で既存の聖書的神学とは異なり、啓蒙主義的なものである。自然神学の具体例としてはフランイギリスの[[トーマス・バーネット|バーネット]]をあげることができる。バーネットは聖書にある([[ノアの方舟]]物語における)「大洪水」を自然科学的な法則によって起こったものであると考え、[[ルネ・デカルト|デカルト]]の地質学説に基づいて熱心に研究した。また啓蒙主義の時代には聖書を[[聖典]]としてではなく歴史的[[資料]]としての文献として研究することもおこなわれた。キリスト教的な歴史的地球観とは異なった定常的地球観が主張され、自然神学などでも支持された。
 
啓蒙主義は[[進歩主義]]的であると同時に回帰的である。これは啓蒙主義の理性絶対主義に起因する。理性主義はあらゆる領域での理性の拡大を促し、さまざまな科学的発見により合理的な進歩が裏付けられていると考えられた。しかし自然人と文明人に等しく理性を措定することは、[[文明]]の進歩からはなれて自然に回帰するような思想傾向をも生み出した。この時代の思想に[[ローマ]]や[[ギリシャ]]の古典時代を重視する[[ルネサンス]]的傾向が見られることも、このような回帰的傾向のあらわれである。また時間的な一時代の生活形態が空間的などこかに存在しうるというようなことを漠然と仮定する考え方も指摘できる。具体的な例を挙げれば、地理上の発見により明らかにされた[[インディアン|アメリカ原住民]]を未開的段階にあるとし、[[ヨーロッパ]]的文明社会の前史的な原始状態であるとする考え方である。それが[[ユートピア]]的幻想を伴って原始社会や[[古典古代]]を美化する思想をはぐくんだ。とはいえ全体としてみれば思想の主流は進歩主義的であったといえる。