H&K P9S

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H&K P9Sは、ドイツの銃器メーカーであるヘッケラー&コッホ社(Heckler & Koch GmbH)が1970年代に開発した、同社初の9mm×19弾使用の拳銃である。SIG SAUER P220とほぼ同時期に登場し、戦後開発のダブルアクションオートの先駆けの一つとなった。

特徴は、銃身のライフリングにポリゴナル・ライフリングを採用した事、作動方式として拳銃では珍しいローラーロッキング方式を採用したことが挙げられる。またダブルアクションオートの欠点である「ダブルアクション時のトリガープルが重い」という点を解決するために、トリガーメカニズムに非常に凝ったシステムを採用している。その結果ダブルアクションオートとしては他に例のない滑らかで軽いトリガープルを実現している。また銃のグリップの左側前方(トリガー直後)の位置に押し下げるタイプのレバーが付いているが、これは外観、位置的に酷似しているSIG SAUER P220のそれとは違い、ハンマーをコックする為の「コッキングレバー」となっている(P220のそれは逆の役割を持つ「デコッキングレバー」)。これはP9Sのハンマーが内蔵式であるために、直接手ではコッキングできないために装備されているものである。ちなみにP9Sはスライド上にセフティを備えているが、これは撃針をロックするだけのものでしかなくデコッキングの機能はない。そのため、デコッキングする為にはセフティを掛けた状態でトリガーを引いてハンマーを落とす手段しかない。この時ハンマーが内蔵式であるために、指でハンマーを押さえたままゆっくり戻すという手段も使えない。

P9Sのメカニズムは他の多くの拳銃と比べても際だって複雑で部品点数も多い。内部はシートメタル製の部品が複雑に絡み合い、精密な機械時計を思わせる。しかしこれは兵器としてはあまりに複雑すぎ、よほどの知識と工具がない限りは日常分解以上のことは難しくなっている。そのため、しばしば「オーバーエンジニアリング」と評される事が多い。

P9SはP9の制式名称でドイツ警察に一部採用されたが、より新世代のP5、P6、P7が主流となった為に広くは使用されなかった。一方で特殊部隊装備としては人気が高く、GSG-9が長く使用していた他に日本のSATの結成当時の装備拳銃であったとも言われている。