豊橋事件
豊橋事件（とよはしじけん）とは1970年に愛知県豊橋市で発生した放火殺人事件であるが、犯人として逮捕された人物が、新聞記者や現職の警官の活躍により冤罪事件であったことが裁判で認められ、1審で無罪判決が確定した裁判史上稀有な事件である。
事件の概要
1970年（昭和45年）5月15日、豊橋市で起こった火災現場で親子3名の他殺体が発見された。母親は強姦されたうえに殺害され、現場を放火したために子供2人は焼死していたという残酷極まりない犯行であった。
被疑者
3ヵ月後の8月28日に被疑者として21歳の男性が逮捕され、9月には強姦致死・殺人・放火・窃盗で起訴された。11月に行われた初公判では容疑を認めたが、翌年3月に行われた2回目公判からは否認に転じた。
最初は極刑が予想される恐怖から態度を変えたかと思われたが、無罪確定後5年して明るみに出た物証では、犯人のものと思われるB型の精液が付いたサルマタが現場から発見されていたが、当初捜査機関は家族の夫のものと弁解していた。
しかし被害者の夫は非分泌型の血液型のため精液から血液型が判明するはずも無く、被疑者の血液型はA型であったため、無罪なのは明白であった。
裁判
被告人の男性の無罪の訴えに対し、私選弁護人3人も無罪の論陣を張った。また1973年12月に行われた公判では捜査時の刑事（当時定年退職後）が弁護側の証人として招聘することに成功した。元刑事は被告人が真犯人であるとの疑念は消えないと証言したが、捜査が物証に基づかないものであったと批判した。
前述のように検察側は被告人が無罪との明白なる証拠があったが、公判では隠匿され死刑を求刑した。
しかしながら捜査本部が冤罪を作り上げた過程を証明したため、1974年6月12日に無罪判決が宣告されそのまま確定した。