H&K P9S

これはこのページの過去の版です。125.175.107.205 (会話) による 2009年4月5日 (日) 06:23個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

H&K P9Sは、ドイツの銃器メーカーであるヘッケラー&コッホ社(Heckler & Koch GmbH)が1970年代に開発した、同社初の9mm×19弾を使用する拳銃である。SIG SAUER P220とほぼ同時期に登場し、ダブルアクション方式の自動式拳銃としては先駆け的な存在である。

概要

特徴は、まず銃身のライフリングにポリゴナル・ライフリングを採用した事である。ポリゴナル・ライフリングの銃身は、通常の銃身と比べて寿命が長いという利点がある。

次に、作動方式として拳銃では珍しい「ローラーロッキング方式」を採用したことが挙げられる。ローラーロッキング方式はヘッケラー&コッホ社のG3ライフルや、MP5サブマシンガンに用いられている作動方式であり、射撃時の反動が少なく、連射でも高い命中精度を保つことができる。

またダブルアクション方式の自動式拳銃は、射撃の際、引き金の引き(トリガープル)が重いという欠点がある。P9Sは複雑な発射構造を採用することでこの欠点を解決し、ダブルアクション方式の自動式拳銃としては他に例のない滑らかで軽いトリガープルを実現している。

銃把(グリップ)の引き金直後の位置に押し下げるタイプのレバーが付いているが、これは外観、位置的に酷似しているSIG SAUER P220のレバーとは異なり、撃鉄を起こす(コックする)ための「コッキングレバー」となっている。このレバーはP9Sの撃鉄が内蔵式であり、直接手では撃鉄を起こせないために装備されている。 一方、P220のレバーは、起きた状態の撃鉄を安全に(弾を発射させずに)降ろす「デコッキングレバー」である。

なお、P9Sの試作1型は撃鉄が露出しており、コッキングレバーの代わりにスライドを固定するストップレバーと、フルオート機構を備えていた[1]

P9Sはスライド上に安全装置を備えているが、これは撃針をロックするだけのもので、撃鉄を降ろす機能はない。そのため、撃鉄を降ろす際には、安全装置を掛けた状態で引き金を引かなければならない。また撃鉄が内蔵式であるために、指で撃鉄を押さえたまま引き金を引き、ゆっくりと撃鉄を降ろすという手段も使えない。

P9Sの構造は、他の自動式拳銃と比べても際だって複雑で部品点数も多い。内部はシートメタル製の部品が複雑に絡み合い、精密な機械時計を思わせる。しかしこれは兵器としてはあまりに複雑すぎ、よほどの知識と工具がない限りは日常分解以上のことは難しくなっている。そのため、しばしば過剰性能と評される事が多い。

P9Sは、「P9」という名称で西ドイツ警察の一部に採用されたが、1976年に、西ドイツ警察がより新世代の自動式拳銃であるP5P6P7を採用したため、広くは使用されなかった。 一方で、特殊部隊の装備としては人気が高く、GSG-9(国境警備隊第9部隊)が長く使用していた他、警視庁特殊部隊(当時の部隊名称は特科中隊もしくはSAP、現在のSAT)の基幹拳銃であったとされている[2]。また、アメリカ海軍SEALSに採用されていた事が確認されている。

バリエーション

  • P9-P10
スライドの安全装置が省略され、デコッキング機能を備えたもの
  • P9K 
45ACP弾を用いる仕様が存在する
  • P9S
3連射機能あり

脚注

  1. ^ Manfred Kersten,Walter Schmid 共著「HECKLER & KOCH」p47.p49に記載
  2. ^ 「警視庁・特殊部隊の真実」著者 伊藤鋼一 大日本絵画

関連項目