ライチョウ

キジ目キジ科の動物

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ライチョウ雷鳥、学名:Lagopus mutus)とはキジ目ライチョウ科ライチョウ属の日本産固有亜種のである。日本では特別天然記念物であり、長野県岐阜県富山県の県鳥。ライチョウは冬でも高山で暮らす日本で唯一の鳥である。英語圏では、冬に白い羽となるライチョウ属の種をPtarmigan、羽の色を変化させない種はGrouse と呼び区別される。

ライチョウ
夏羽のライチョウ
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: キジ目 Galliformes
: ライチョウ科 Tetraonidae
: ライチョウ属 Lagopus
: ライチョウ L. muta
学名
Lagopus muta
Montin, 1781
和名
ライチョウ
英名
Ptarmigan

分布

ライチョウ科の鳥は世界に6 属17種が生息し(但し分類には諸説ある[1])、ユーラシア大陸北部と北米大陸北部に広く分布する。日本には亜種とされるニホンライチョウ(Lagopus mutus japonicus)が本州の高山地帯のみに生息する。日本は生息地のうち、最も南に位置する。なお、北海道には別属(Bonasa 属)のエゾライチョウTetrastes bonasia)が生息する。

同属の Lagopus属は他に2種あり、カラフト(樺太)、アラスカ、カナダ、北アメリカ、ノルウェーに生息するカラフトライチョウ (Lagopus lagopus, Willow Ptarmigan ) と、アメリカ大陸西北部、北部千島列島アリューシャン列島ツンドラ地帯に生息するオジロライチョウ( Lagopus leucurus , White-tailed Ptarmigan )で、北海道にLagopus属 が生息しない理由は分かっていない。

日本国内の、現在の分布北限は新潟県頸城山塊火打山焼山、分布南限は南アルプスイザルガ岳である。

過去の生息地

かつては生息していたが、絶滅してしまった山塊について。岐阜石川県境に位置する白山大正初期を最後に確認が途絶え、絶滅したとされた。しかし70年後の2009年6月2日に石川県白山自然保護センターが雌1羽を確認した[2]。このライチョウが白山に「生息」しているのか、他の生息山系から移動してきたのかは未確定で今後の研究が待たれる。 中央アルプス1960年代まで生息が確認されていたが、駒ヶ岳ロープウェイの開通後数年で絶滅したとみられている(因果関係は不明)。八ヶ岳蓼科山にもかつて生息していた記録がある。

本来ライチョウの繁殖活動が確認されていない八ヶ岳東天狗岳飯縄山戸隠連峰高妻山で、1960年代以降数回にわたり登山者により写真撮影されたり、糞が確認されたことがある。これは、本来の生息地である高山帯の生息環境が悪化した事によって、新しい生息場所を求めて飛来した個体と考えられる[3]

1980年代に行われた縄張りの垂直分布調査から、『年平均気温が3℃上昇した場合、日本のライチョウは絶滅する可能性が高い』ことが指摘されている。

現在のニホンライチョウの生息地
19世紀中頃のニホンライチョウの生息地

日本に生息する種の起源

ライチョウが日本にやってきたのはおよそ2万年前の氷河期の遺存種でその後、温暖になり大半のライチョウは寒い北へ戻ったがごく一部が日本の高山に残った。現在は北極周辺が主な生息地域である。日本のライチョウは一番南の端ということになる。ミトコンドリアDNAの解析結果では、北アルプスに2系統、南アルプスに2系統の種が生息している[4]。南部の生息地ほど遺伝的多様性に欠けている。

同属の Lagopus属の分布で物理的な距離が最も近いのはカラフトであり、日本に生息する種は物理的にも隔絶されている。

生息数

日本では2005年の調査によれば新潟県[頸城山塊の火打山と新潟焼山に約25羽、北アルプス朝日岳から穂高岳にかけて約2000羽、乗鞍岳に約100羽、御嶽山に約100羽、南アルプス甲斐駒ヶ岳から光岳にかけて約700羽生息しているとみられる。日本国内では合わせて約3000羽程度が生息していると推測されている。2007年には南アルプス北岳で絶滅したとの報告があったが2008年には生息が再確認されていることから多くの野生生物の個体数調査同様、調査精度はかなり低いと見られる。[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。

天敵の猛禽類や動物に捕食される以外に、山小屋などから排出されるゴミに混じる病原体やヒトが持ち込むサルモネラ菌ニワトリなどの感染症であるニューカッスル病、ロイコチトゾーン感染により国内のライチョウが減少することが懸念されている。また、登山者の増加に伴い登山道周辺のハイマツ帯が踏み荒らされ劣勢となり次第に減少している、それに伴いライチョウの生息数も減少している。卵及び幼鳥やメスはオコジョテンキツネなどの天敵に捕食されやすいと考えられ、オスの比率が高い地域は絶滅の前兆とされている[3]

温暖化に伴い、ニホンジカキツネニホンザルの生息域が高山帯に拡大することでシカ、ニホンサルとの餌の競合や、キツネに捕食されることにより生息数は減少している。

名前の由来と信仰

イヌワシなど猛禽類の天敵を避けるため朝夕のほかにの鳴るような空模様で活発に活動することが名前の由来と言われているが、実際のところははっきりしていない。古くは「らいの鳥」と呼ばれており江戸時代より火難、雷難よけの信仰があったが「らい」がはじめから「雷」を指していたかは不明である。

生態・形態

は褐色・は純白と季節によって羽毛の色が変化するのが特徴である。夏期は標高2,000~3,000メートルのハイマツ帯に分布し、繁殖期にはつがい毎に直径300~400m程度の縄張りを形成する。日本ではライチョウの分布とハイマツの分布には正の相関関係があるが、世界の別な地域に生息するライチョウ科にはこの様な特長は見られない。厳冬期は餌を確保するために森林限界付近まで降下し、ダケカンバの冬芽やオオシラビソの葉を餌としている姿が観察されている。

一般的に登山者の間では「ガスの出ているような天候の時に見ることが多い」と言われている。 もともと寒冷な地域を生活圏とする鳥であるため夏場の快晴時には暑さのためにハイマツ群落内、岩の隙間、雪洞の中などに退避しているという可能性、天敵から身を隠しているという2つの可能性からこのようなことが言われていると考えられるが、この点について詳しく調査した事例はない。[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。寒さが得意なライチョウは逆に夏の暑さが苦手で気温が26℃以上になると呼吸が激しくなり、体調を崩したという報告もある。

生態

体重は400~600g程度で、成鳥の採食物は植物食で主に木本の高山植物の冬芽、葉、果実、草本の高山植物の葉、花、種子、蘚苔類、昆虫など多種多様な採食物が報告されている。幼鳥は動物質の餌も多く採食していると考えられる。

飛ぶことはあまり得意ではないといわれており、基本的には地上を徘徊する。飛翔能力については、十分な解明されていないが、前述の様に本来の生息域外の山塊で発見されていることから、低山帯を中継しながら15~30Km程度の距離を飛ぶ能力は有していると考えられる。

産卵用の巣は30cm程度の比較的背の低いハイマツやシャクナゲ類の陰に作られることが多く、産卵は5月下旬~7月上旬、淡黄灰色の暗褐色の大小の斑点がある25g程度の卵を5個から10個程度産み、メスのみが抱卵を行う。孵化日数は3週間程度で孵化後は巣には戻らない。孵化から1ヶ月で100gを越える大きさに成長し、幼鳥は4ヶ月程度メスに保護され、10月には親鳥と同じ程度まで成長し親離れすると共に白色の冬羽へと変化を始める。

孵化直後のヒナは背丈およそ6センチメートルほどで、足は体と比較して大きい。他のキジ類の鳥類と同じように生まれて半日も経たないうちに巣を離れ自分の足で歩き出し、採食も始める。柔らかい新芽が好物である。他の鳥は親鳥がヒナに餌を巣にもって帰り与えるがライチョウは地上で暮すため、キツネや猛禽類などの天敵に襲われやすくヒナは親と一緒行動するほうが安全なのである。しかも高山では冬が早くやってくるので自分で急いで採食し、成長する必要がある。

春は黒い羽毛が混じりはじめる。目の上には赤色の肉冠がある。これはオスの特徴で興奮しているサインである。ハイマツやお花畑の周辺に集まり採食する。鳴き声はカエルに似ている。ハイマツ周辺ではオス同士の縄張り争いが行われ、5~6月のハイマツの縄張り形成期に縄張りに侵入してくるオスと激しい空中戦を行うことがある。メスは背中が茶色になる。オスは黒い尾羽を広げるときは求愛のポーズである。孵化後はオスの縄張り活動はなくなり、単独またはオスだけの群れを形成する。

冬は羽毛の中に空気をたっぷり蓄えて体温を逃さないようにしている。羽毛は軸が2つに分かれその軸に突いた細かい密度がとても高いため、空気をたくさん含むことができる。冬のライチョウはめったに飛ばない。ゆっくり歩いて雪の中で体力を温存する。夜、休む時には雪を掘り首だけ出して休む。また、脚に羽毛を持つのは他のキジ類にない特徴である。

保護

1955年、国の特別天然記念物に指定。生態研究の為、1963年より長野県大町市の大町山岳博物館、1966年より富山県、1969年より山梨県が飼育研究を行っていた。しかし、寄生虫や家禽類起源の感染症、サルモネラ菌、トリアデノウイルスなどにより死滅する例が多く、安定した増殖には繋がっていない。また、2004年には大町山岳博物館で飼育鳥の全てが死滅し現在は飼育されていない。

生息地拡大のため1960年8月に白馬岳で捕獲したオス1羽、メス2羽、ヒナ4羽の合計7羽のライチョウが富士山に運ばれた。一時期は繁殖に成功し1966年に10羽が確認されたが1970年以降の目撃情報はない[5]。また、1967年7月南アルプス北岳から金峰山に5羽が移植されたが、定着しなかった。

Sibley分類体系上の位置

シブリー・アールキスト鳥類分類
キジ小目 Phasianida
キジ上科 Phasianoidea

種の保全状態評価

全世界
日本国内

地方公共団体の鳥に指定している自治体

ギャラリー

出典

脚注

  1. ^ 世界のライチョウ 7属16種
  2. ^ “「白山では絶滅」したはずのライチョウを確認…70年ぶり”. 読売新聞Yomiuri Online. http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20090606-OYT1T00013.htm 2009年6月7日閲覧。 
  3. ^ a b 山岳地帯の環境破壊による鳥類の分布と生態の変化について : 特にライチョウを中心として 日本生態学会誌 24(4) pp.261-264 19741231
  4. ^ ニホンライチョウの遺伝的多様性と分化 ニホン鳥類学会
  5. ^ ライチョウ(雷鳥)
  6. ^ BirdLife International (2004). "Lagopus muta". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2006. International Union for Conservation of Nature. 2006年5月11日閲覧 Database entry includes justification for why this species is of least concern
  7. ^ RDB種情報(動物)種の詳細情報 - ライチョウ

関連項目

外部リンク