湧水
湧水(ゆうすい)とは地下水が地表に自然に出てきたもののことである。湧き水(わきみず)や泉(いずみ)、湧泉(ゆうせん)とも言う[1]。大規模な湧水はそのまま川の源流となることもある。
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a2/Cercidiphyllum_japonicum05s3200.jpg/205px-Cercidiphyllum_japonicum05s3200.jpg)
湧出機構
山間部に降った雨や雪が、地表を流出せず、山滝部から湧き出すもので、地下水の水頭(地下水ポテンシャルと大気圧の平衡する高さ)が地表よりも高く、かつその地下水が地表に出てくる地質条件が満たされている場所において、地下水が湧出し、水が湧き出る(湧泉)。このような地形は、沢の谷頭(こくとう、たにがしら)部、山地と平地(へいち)の境目、台地や河成段丘の崖線沿い、扇状地の末端(扇端部)、火山周辺の溶岩流末端などが多い。また、石灰岩等の炭酸塩岩類の洞窟は地下水による浸食で形成されたものであり、現状においても内部に水流が見られることが多いことから、鍾乳洞(石灰洞)の洞口も湧水地点となることがある。
気象条件・人為作用などにより地下水位が上下することで、湧出量が増減したり、時には枯渇したりする。しかしその変動は、一般的には河川水におけるそれよりも小さく、得られる水量が気象条件によって左右される度合いが少ない、言い換えれば安定した水資源となっている例が多い。
湧出の利用と管理
湧水は地表水に比べると安定した供給が見込まれることから、古くから飲料、洗濯、農業などに広く利用され、地域住民の生活や生業に深く結びついた存在である。
沖縄県のように河川の水資源に乏しい島々では、地域住民が湧水を特に大切に利用、管理してきた。また、開発途上国にあっても、上水道が未整備な地域や安全な水へのアクセスが制限されている地域が広範に残っているために、湧水は井戸とならんで住民にとって大切な生活用水となっている。
湧水の農業用水としての利用も広い範囲で行われている。近年では低位にある河川などの真水をポンプを用いて汲み上げて配水し農業使用する場合が多い。しかし、高位に湧き出る真水は、量さえ確保できれば高低差を利用して容易に配水することができる。そのため、湧水は古くから動力を用いないで済む農業用水として利用されてきた。ただし、高所に降った雨や雪を起源とする湧水は、そのままでは農業用水としては水温が低すぎる場合があり、この場合はわき出た水をいったん池にためて水温を上げるという工夫が必要になることがある。
このように湧水は伝統的に地域コミュニティの住民によって共有資源、すなわちローカル・コモンズとして利用管理されていた。しかし、上水道や農業用水路の整備、大規模な工業用水など地下水の汲み上げ利用にともなって、湧水の利用、管理は地域住民の手から離れつつあり、そのために住民の参加しなくなった湧水、水源の荒廃が危惧されている。こうした中で地域住民を湧水の利用者、管理者として評価しようという草の根民活論が注目されている。1985年選定の名水百選(環境庁(当時))、および2008年選定の平成の名水百選(環境省)は、そのような現状をふまえ、地域の暮らしにとけ込んだ水資源のうち「地域住民等による主体的かつ持続的な水環境の保全活動が行われているもの」[2]を顕彰する目的で選定が行われ、選定対象の大半は湧水であった。
なお、湧水を利用した給水システムを江戸時代に完成し、現在に至るまでその維持活動が活発に行われている地域(名水百選の中では、宗祇水を代表とする岐阜県郡上市(旧八幡町)の水利システム、轟水源を利用した轟水道をもつ熊本県宇土市、秋田県美郷町(旧六郷町)の六郷湧水群など)もある。
各所の湧水で水の持ち帰りを行えるが、あまり大量の水を持ち帰るのは勧められない。
湧水の大半は何の処理もされていない天然の物なので時間が経過すると共に雑菌類が繁殖し飲用に適さなくなるためである。
よって汲んだ場合はできるだけ早く使うのが望ましい。
湧水のさまざまな呼び方
湧水は地域とその歴史などから、日本では古来からさまざまな呼び方がされている。これらには「清水(しょうず、しみず)」、「お清水(おしょうず)」、「生水(しょうず)」[3][4]、「出水(いでみず、でみず)」、「涌水(ゆうすい、わきみず)」[5][6]、「泉水(せんすい)」、「どっこん水(すい)」[7]などがある。
名所
- 大雪旭岳源水(北海道上川郡東川町) 平成の名水百選
- 羊蹄のふきだし湧水(北海道虻田郡京極町) 名水百選
- 龍泉洞地底湖の水(岩手県下閉伊郡岩泉町) 名水百選
- 尚仁沢湧水(栃木県塩谷町と矢板市) 名水百選
- 妙音沢(埼玉県新座市) 平成の名水百選
- ハケの湧水(東京都)
- 落合川と南沢湧水群(東京都東久留米市) 平成の名水百選
- 忍野八海(山梨県南都留郡忍野村) 名水百選
- 黒部川扇状地湧水群(富山県黒部市生地) 名水百選
- 安曇野わさび田湧水群(長野県安曇野市) 名水百選
- 湧玉池(静岡県富士宮市) 平成の名水百選 特別天然記念物
- 白糸の滝(静岡県富士宮市)日本の滝百選 名勝及び天然記念物
- 柿田川湧水群(静岡県駿東郡清水町) 名水百選
- 瓜割の滝(福井県三方上中郡若狭町) 名水百選
- 桐原水(京都府宇治市)
- 瀞川平「かつらの千年水」(兵庫県美方郡香美町) 平成の名水百選
- 紀三井寺の三井水(和歌山県和歌山市) 名水百選
- 布勢の清水(鳥取県鳥取市) 平成の名水百選
- 錦竜水(徳島県徳島市)
- うちぬき(愛媛県西条市) 名水百選
- 稲積水中鍾乳洞(大分県豊後大野市) 名水百選
- 竹田湧水群(大分県竹田市) 名水百選
- 水前寺江津湖湧水群(熊本県熊本市) 平成の名水百選
関連項目
脚注
- ^ 詳しくは、わき出る場所が「湧泉」、わき出た水が「湧水」、わき出る作用が「湧出」であるが、湧水と湧泉は混同して使われることが多い
- ^ 「平成の名水百選」について(環境省)
- ^ お清水(おしょうず)、福井県大野市、環境省サイト
- ^ 石川県の代表的な湧水、環境省サイト
- ^ 千葉の湧水
- ^ 出水(でみず)観音池、宮崎県えびの市
- ^ きのと観光物産館(どっこん水の里)、新潟県公式観光情報サイト