ノースカロライナ級戦艦
この記事には独自研究が含まれているおそれがあります。 |
ノースカロライナ級戦艦 | ||
---|---|---|
![]() | ||
艦級概観 | ||
艦種 | 戦艦 | |
艦名 | 州名。一番艦はノースカロライナ州に因む。 | |
起工地 | ノースカロライナ:ニューヨーク海軍造船所 | |
ワシントン:フィラデルフィア海軍造船所 | ||
竣工 | ノースカロライナ:1941年4月9日 | |
ワシントン:1941年5月15日 | ||
退役 | 共に、1947年6月27日 | |
前級 | サウスダコタ級戦艦 (1920) | |
次級 | サウスダコタ級戦艦 (1939) | |
性能諸元 | ||
排水量 | 基準排水量:35,000t | |
満載排水量(1942年時):42,000t | ||
全長 | 222m | |
全幅 | 32.98m | |
吃水 | 9.64m | |
機関 | 蒸気タービン方式, 4軸推進(最大 121,000hp) | |
バブコック・アンド・ウィルコックス式重油専焼水管缶 | 8基 | |
GE式ギヤード・タービン | 4基 | |
燃料 | 最大7,554t(重油) | |
速力 | 28ノット | |
乗員 | 1,880名 | |
兵装 | Mk.6 16インチ45口径砲 (3連装砲塔として搭載) |
9門 |
Mk.12 5インチ38口径高角砲 (連装砲塔として搭載) |
20門 | |
1.1インチ75口径機関砲 (4連装砲塔として搭載) |
16門 | |
M2 12.7mm機銃 | 12丁 | |
艦載機 | カタパルト×1基 | |
水上機 | 3機 |
ノースカロライナ級戦艦(ノースカロライナきゅうせんかん、North Carolina-class battleships)は、アメリカ海軍がワシントン海軍軍縮条約以後始めて建造した戦艦2隻の艦級。本級は弩級戦艦フロリダ級の代艦として建造された艦である。
概要
アメリカ海軍初の高速戦艦でワシントン海軍軍縮条約の条約明けにともない建造された。従来よりアメリカ海軍は戦艦設計にあたり、伝統的に速力よりも火力と防御力を重視しており、コロラド級戦艦が21ノットを発揮できたが、これは艦隊速度よりも海外の拠点へ無寄航で航行可能な航続性能に重点を置いたためである。
しかし、海軍休日時代の技術発展により小型で高出力と高燃費を兼ねそろえる機関を開発できたため、ノースカロライナ級は機関出力を一挙に4倍に増強し、前時代の巡洋戦艦並の速力28ノットを発揮できた。
また、主砲配置はネヴァダ級からコロラド級に至るまで、前後の主砲門数は均等に配置されていたが、本級から前部に2基、後部に1基の門数比率は2対1となり前方火力を重視している。外観上の特色としてはアメリカ戦艦の特徴として知られている籠マスト型前檣から脱却して、上部構造物は二重防御式の円柱型艦橋を採用した。この円柱マストは真珠湾攻撃で大損傷を負った旧式戦艦や条約型戦艦にも修理と並行して近代化改装し、設置された。
しかし、ノースカロライナ級は速度や艦橋の変更よりも外見で判断できない飛躍的進化を遂げた箇所があり、マーク I 射撃管制コンピュータと呼ばれる世界初のコンピュータ統合を行っている。これにより、艦艇が全速力で航行する時でも急旋回を実施する時でも、射撃管制システムは安定した照準を維持することができた。しかしその耐久度は低く、自艦の発砲の衝撃で容易く故障してしまうものであった。
ノースカロライナ級の持つ弱点は、第二次ロンドン軍縮条約の影響によるものである。米英は、日本に対して建造中のポスト条約型戦艦の主砲口径が16インチであるかどうか質問し、返答がなければ16インチと判断して自国の戦艦も16インチ砲搭載とする手はずであった。結果として日本が返答しなかったため、建造中であった14インチ4連装砲搭載戦艦ノースカロライナ級を急遽16インチ3連装砲に換装した。もともと換装を想定した設計であったので変更は容易であったが、施されている装甲は対14インチ砲用のものであったため16インチ砲での砲撃戦には防御力が不足することになった。なお、同時期に建造されていたイギリス海軍のキング・ジョージ5世級戦艦は設計変更がきかず、14インチ砲のままで忍んだ。しかし、日本が米英の質問を無視して建造した戦艦の主砲は16インチどころかさらに強大な18インチ(46センチ=大和型戦艦)であった。
主砲
本級の主砲は第二次ロンドン軍縮会議で主砲の口径は14インチ(35.6cm)砲とする事がほぼ確定しており、本級も35.6cm砲搭載艦として砲塔の設計が開始されていた。問題は砲塔の数で従来艦のように砲塔の数を前級よりも1基少ない3基としていたことである。戦艦設計のセオリーでは主砲の門数は前級よりも少ない事は火力的に好ましくないとされていた為、仮に三連装砲塔ならば3基で9門となり25%の減少となってしまう恐れがあった。しかし、アメリカ設計陣にはそれを解決するアイディアがあった。それこそが四連装砲塔である。これを搭載するならば四連装砲3基で門数12門を達成することができ、旧式戦艦と比べて火力は同等である。
アメリカ海軍には本級の設計以前にも一つの砲塔に4門の砲身を収めるアイディアがあり、それは前弩級戦艦時代においてキアサージ級戦艦とバージニア級戦艦で採用されていた。これらは主砲塔の上に副砲塔を配置するというアイディアで、主砲二門と副砲二門で合計四門という擬似的な物であったものの砲塔数を減らしてその分を防御重量に回す事ができるという意欲的な発想であった。しかし発想はよかったものの、主砲と副砲の爆風が相互に干渉しあって悪影響を与えるという点においてあまり成功した形式ではなかった。
しかし、その後は主砲塔自体を多連装化する時代にはいり、1910年代後半にはフランス海軍が超弩級戦艦ノルマンディー級戦艦において、一つの砲塔に主砲身を四門搭載する四連装砲塔を列強に先駆けて開発した。ノルマンディー級は第一次世界大戦の勃発により完成しなかったものの、同海軍では設計を煮詰めて1931年に起工されたダンケルク級において実際に搭載することが発表された。また、ノルマンディー級の四連装砲塔は列強海軍の各国で主砲塔開発に波紋を呼び、新戦艦に取り入れた国の一つがアメリカである。
本級においてアメリカ海軍では再び四連装砲塔の開発に着手することとなった。砲塔の基本形式は旧式戦艦のそれを踏襲し、固定角装填方式で仰角5度に改められた。各砲身は個別に俯仰可能であり、通常使用時はクラッチで接続して連動して上下することもできるのは旧式戦艦と同様である。主砲身はテネシー級戦艦で搭載された「Mark 11 35.6cm(50口径)砲」を改良した「Mark B 35.6cm(50口径)砲」を採用している。性能的に重量578kgの主砲弾を最大仰角30度で射距離33,650mまで届かせる事ができる性能であった。射程18,000m以内で舷側装甲349mmを、射程32,000m以上で甲板装甲177mmを抜く能力があったと記録に残っている。発射速度は毎分2発、仰角は30度/俯角5度で動力は電動であった。 しかし、前述のとおり本級の主砲口径は16インチへと変更され、この砲塔設計は日の目を見なかった。
建造途中に主砲塔は35.6cm四連装砲塔から40.6cm三連装砲塔へと変更された。主砲身は新設計の「Mark 6 40.6cm(45口径)砲」を採用し、主砲塔形式は連装砲から三連装砲へと変更された。その性能は前級の重量1,016 kgよりも209kgも重い重量1,225 kgの主砲弾を最大仰角30度で射距離32,000mまで届かせる事ができる性能であった。射程18,000m以内で舷側装甲406mmを、射程32,000m以上で甲板装甲203mmを抜く能力があり、35.6cm砲と比べて主砲門数こそ減少したものの、威力は桁違いとなった。しかし砲弾重量がかさんだために、発射速度は毎分1.5発と遅くなってしまった。仰角は30度/俯角4度で動力は電動のままであった。
副砲・対空装備等
アメリカ海軍戦艦の副砲は弩級戦艦フロリダ級から超弩級戦艦コロラド級に至るまでMarks 7~9, 14,15 12.7cm(51口径)速射砲」を採用しており、また、高角砲は「Marks10,11,13,17 12.7cm(25口径)高角砲」を採用していた。しかし、本級からアメリカ海軍は船体を小型化するために副砲と高角砲の役割を一元化して武装重量を減らす試みを採った。発想のアイディア的に本級の設計検討中にフランスのダンケルク級で両用砲を列強に先駆けて採用しており、机上の空論に終わらない発展性もあった。
本級以前のアメリカ戦艦では主砲塔間に挟まれた船体中央部の広い範囲にケースメイト配置で副砲を配置し、その空いた場所に高角砲を設置するのが列強海軍では普通であったが、この場合は副砲は広い射界を有するものの、高角砲は艦橋や煙突など上部構造物に射界を阻まれ、効果的な対空射撃を行えない恐れがあった。そこで副砲に高角砲の役割を兼任させて解決させようと試みたのである。
新設計の両用砲として「Mark 12 12,8cm(38口径)両用砲」を採用した。この砲は発射速度は毎分12~15発、仰角は85度・俯角15度と広範囲に指向できた。最大射程は重量25kgの砲弾を仰角45度で射距離15,903m、最大仰角で高度11,887mまで届かせることが出来る優秀砲である。なお、この砲は厳密に言えば砲塔ではなく、連装式の砲架の上に対機関砲弾防御の45mm装甲でできたカバーを被せているだけである。また、副砲の砲身が38口径と既存の51口径よりも短く感じるが、これは当時のモーターの性能では、装甲を施した砲塔に長砲身の大砲を載せて戦闘機を追従できる高出力のものを開発するのが困難であった事が理由のひとつで、意図的に砲身を短く設計していた。なお、本級と同じく両用砲を採用したイギリスのキング・ジョージ5世級では50口径という長砲身砲を搭載しているが、対空戦闘において両用砲の旋回能力の不足が指摘されており、本級は副砲としての性能よりも高角砲としての使い勝手を優先したといえる。これを二本煙突の両脇に内側に3基、外側に2基の方舷5基の計10基を搭載した。この配置により前後方向に最大8門、左右方向に最大10門が指向でき、対空火力で見れば同排水量クラスでは最大といえるもので、後継艦もこの配置を採用しているので一つの完成型といえる。
他に対空火器としてMark 2 28mm(75口径)四連装機関砲を4基、近接対空防御用に12.7mm単装機銃を12丁装備していた。更に1942年にエリコン20mm(70口径)機銃と12.7mm機銃の追加装備が行われたが、第二次世界大戦当時には28mm機関砲は旧態化していたため、スウェーデンのボフォース社製「40mm(56口径)機関砲」への更新が行われた。この40mm四連装機関砲を10基搭載したが、更に15基にまで増強された。
機関
本級は当初は巡洋戦艦並の速力30ノット以上が切望されたが、設計段階で主砲塔の換装や防御力の強化等で機関に充てられる重量が制限されたため、速力27ノットの中速戦艦として設定された。それでも、限られた機関重量で要求性能を満たすために積極的に新技術を投入した。本級の機関は駆逐艦用として開発されたものを更に改良したもので、蒸気圧力42kg/平方cm、蒸気温度371度という高熱蒸気を用いるバブコックス&ウィルコックス式高温高圧缶で、これを8基搭載した。これに新開発の二段階減速ギアを持つGE製ギヤード・タービンと組み合わせた。他国では信頼性を考えて一段減速ギヤード・タービンを採用していたが、アメリカ海軍では意欲的な新技術を採用した。その実力は公試において機関出力100%で最大出力121,000馬力を発揮し、燃料消費量から15ノットで16,230海里を航行出来ると計算された。
機関配置はボイラー缶2基とギヤード・タービン1基を1セットとして並列に4セット並べられ、1セットごとにボイラー缶とタービンの順番が前後に入れ替わる『シフト配置』を採用している。この配置方式は日独戦艦で用いられた「全缶全機配置」と比べ、機関室が複雑化するが被害時の機関の生存性能が段違いに高い利点があった。
防御
本級の垂直防御は15度傾斜させた305mmで、対35.6cm砲弾の場合では理論上17,400~27,400mの広範囲で耐えうると判断されている。また、対40.6cm砲弾への防御では安全距離は20,000~25,000mと一挙に安全距離が狭まってしまうが、元が35.6cm砲戦艦であったために致し方ない物であった。
艦体
当初ノースカロライナ級は主力戦艦として考えられたが、大部分の作戦行動は後継に建造されたサウスダコタ級戦艦やアイオワ級戦艦とともに高速空母を主力とした機動部隊の護衛として運用された。当初やや冗長とみられた船体は結果的に対空火器の増備に適し、その意味では歓迎された。
ノースカロライナは彼女の名前の由来であるノースカロライナ州の博物館に変わったが、ワシントンは第二次世界大戦が終結した後、解体処分された。
装甲
- 装甲帯:305mm+STS装甲 19mm, 傾斜 15度、下端部 168mm+STS装甲 19mm
- 隔壁:282mm ~ 28mm
- 砲座
- 前部:373mm
- 側面:406mm
- 後部:292mm
- 砲塔
- 前面:406mm
- 側面:249mm
- 肯面:300mm
- 天蓋:178mm
- 甲板中央線(計180mm)
- 主装甲:37mm
- 二段:36mm + 91mm
- 三段:16mm
- 舷側甲板(計196mm)
- 主装甲:37mm
- 二段:36mm + 104mm
- 三段:19mm
同型艦
関連項目
参考文献
- Friedman, Norman: U.S. Battleships: An Illustrated Design History, Naval Inst Pr, ISBN 978-0870217159