Technics SL-1200

レコードプレイヤーの製品シリーズ

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Technics SL-1200(テクニクス エスエル せんにひゃく)は、パナソニック株式会社および旧・松下電器産業株式会社が製造し、同社の高級音響機器用ブランドTechnics」で販売していたレコードプレーヤーの製品名である。のちに初代機と看做される製品のみならず同名を冠した後継機も製造販売されたため、当然ながら当初は(のちに初代機と看做される)単一の製品を指す名称であったが、後継機種が世代を重ね販売されるに連れ「同名を冠する製品シリーズ全般」を指す用語としても用いられるようになった。すなわちTechnics SL-1200とは、狭義には初代機自体の製品型番そのものであり、広義には初代機を筆頭とする製品シリーズ全般を指す。本項では明記しない限り、広義の「製品シリーズ全般」として記述する。

Technics SL-1200 MK2

製品シリーズ全般の累計販売台数は全世界で約350万台[1]

概要

トルクの強さ(回転の安定性及びスクラッチ、手で止めるなどに向く)、堅牢(耐久)性、レコード再生後の立ちあがりの速さ(0.7秒)、±8%、±16%(±16%は、SL-1200MK5G、SL-1200GLDモデルのみ)のピッチコントロール(ミックスにおけるリズムキープのための調整)、ストップブレーキのスピード調整が調整できるなどの特徴により、世界中のクラブディスコで使われているアナログレコードターンテーブル機材である。

本シリーズは全機種フォノイコライザアンプ非搭載なので、ミニコンポなどの「AUX IN(LNE IN)」端子に本シリーズを繋ぐ場合は市販のフォノイコライザが別途必要(フォノイコライザを介さず直接AUX IN端子に本シリーズを繋ぐと音が小さくなり、かつ、標準的なLPレコードの場合で、周波数1kHzの音に対して、20kHzでは19.62dB大きく、20Hzでは19.27dB小さくなる。これは、メーカーを問わず、SL-1200シリーズ以外のプレーヤーでも同じ。パナソニックもかつてフォノイコライザを補修部品扱いで生産しておりサービスルート扱いで購入出来たが、1200シリーズ生産終了に伴い2010年を以てフォノイコライザ生産も終了)。またミニコンポ・CD&MDラジカセなどの外部入力(AUX INまたはLINE IN)端子がミニジャック(M3)や大型ジャック(M6)の場合は(フォノイコライザに加え)市販のピンコード中継アダプタ&ピンプラグ→ミニプラグ変換ケーブル、またはピンプラグ→ミニプラグ変換延長ケーブルが別途必要(本機の出力コードは全てステレオRCAピンプラグ)。

さらにカートリッジをMC型に交換した場合、カートリッジ切替スイッチ非搭載(MMカートリッジ使用プレーヤー専用)アンプにそのまま繋ぐと音が小さくなるので市販の昇圧トランスが別途必要(普及型フルオートタイプとは異なりカートリッジは全機種別売、ヘッドシェル・カートリッジ取付ネジ・軽量カートリッジ用の錘のみ付属)。さらにヘッドホン端子も全機種非搭載なので、ヘッドホンや外部アクティブスピーカーはアンプやDJミキサーを経由して接続する形となる。

歴史

SL-1200(SLのSはステレオ事業部、Lはプレーヤーを意味している)が最初に登場したのは1972年である。以降シリーズはMk6までリリースされている。1970年代の同社ダイレクトドライブレコードプレーヤは「SL-1XXX」という型式名で商品展開をしており(各型式名は機能により規則性があった)、当初のSL-1200はその商品群の中のひとつであった。

初代はクオーツシンセサイザがまだ搭載されておらず、時間が経つと回転速度のブレが生じるため、ピッチコントローラが搭載されたのはその回転速度を調節するのが目的だった[2]。その後開発者たちが初代モデルを使っているDJ達を目撃し、大きな指で小さなつまみを操作していた様子から「スライドさせたほうが、よりダイナミックなプレイができるのではないか」として、Mk2からスライダータイプに変更された[2]。また初代はインシュレーターも非搭載だったためハウリングが起きやすかったが、Mk2からインシュレーターに加えて筐体内部にもゴムを入れることで、下からの振動を極力ピックアップに伝えないようにした[2]

当時の開発部長がアメリカ合衆国のクラブDJに意見聴取に赴きSL-1200の不具合箇所は無いか尋ねると「このままで良い、これ以上触って欲しくない。」と言う回答を得た[3]。このためMk2からMk6まで主な外観や、主要装備は変わっていない。電圧の異なるヨーロッパ向けには220/240V切替が可能な「SL-1210」が発売されているが、SL-1210についてはSL-1200Mk2相当のものが長期にわたって生産された[1](ただしMk5・Mk5Gについては欧州モデルも存在する)。また北米向けにもMk2が販売終了まで生産されていたため、北米でMk3以降の製品は(中古品も含め)ほとんど出回っていないという[1]

なおMk3D・Mk5・Mk6の各シリーズは、DJ操作性を高める目的からダストカバーにヒンジ(蝶番)が付いていない。さらに演奏中のカートリッジを照らして高級感を演出するLEDスポットライト「スタイラスイルミネーター」も搭載されている(イルミネーター横のボタンを押せばスポットライト部が上がりランプが点灯。収納する場合はライト部の先端を押し込む。MK5以前のシリーズは黄色LED、MK5G・GLD・MK6シリーズは青色LEDを採用)。

MK3からMK6までのシリーズは「Technics」ロゴが描かれたターンテーブルシートと透明ビニールシートが付属されており、これらを敷いた上にレコード盤を載せるとDJプレイ時に滑らかなスリップ感が得られる(但し通常のレコード再生時にこれらシートを敷くとレコード盤が正常に回転しない場合あり)。なおDJプレイ時はテクニクス純正DJカートリッジ「EPC-U1200」を用いるよう推奨されている(DJプレイ非対応カートリッジは針先の寿命を縮めレコード盤を痛めるので「EPC-U1200」以外のカートリッジはテクニクス・パナソニック製であってもDJプレイ使用不可)。

関連商品

パナソニックは1200シリーズの一員として、かつてDJミキサー(各系統スライド式音量つまみ・マイク入力・ヘッドホン出力端子付)も生産しており、そちらはPHONO端子を2系統或いは3系統搭載していた(アース端子は1系統のみでプレーヤー2台或いは3台で共用。フォノイコライザアンプ代わりにも使えAUX IN端子にも接続可。但し本機はカートリッジ切替スイッチ非搭載で直接繋げるのはMMカートリッジ使用プレーヤーのみのため、MCカートリッジ使用プレーヤーを繋ぐ場合は市販の昇圧トランス経由でないと音が小さくなる)。

さらに同じ1200シリーズの一員として、デジタルターンテーブル(SL-DZ1200)や高級DJヘッドホン(RP-DJ700/DJ1200/DH1200)も生産していたが、本家のレコードプレーヤー生産撤退に伴い2010年を以てDJ関連機器生産も終了している。前述のDJカートリッジも生産終了しているため新品での入手は困難だが、交換用レコード針については元々ナガオカのOEM品だったため、2014年現在もナガオカから相当品(GC28-1200CS)が販売されている[4]

モデル

  • SL-1200 1972年発売
    • SL-120 トーンアーム部が別売りとなっており、同社の製品内から任意のものを選択して装着できるレスオプションモデル
  • SL-1200 Mk2 1979年発売 - クオーツシンセサイザ搭載、ピッチコントローラがスライド式に変更
  • SL-1200 Mk3 1989年発売 - ロングセラー機
  • SL-1200LTDモデル 1995年9月発売 生産台数5,000台
漆黒&24金メッキ仕様。ピッチを瞬時に±0%に戻せるリセットスイッチを装備。ピュアオーディオ用途も考慮されている。「Technics」ロゴステッカー付属。
Mk3のDJ向けシルバーモデル。リセットスイッチ装備。DJの操作性を高めるため、本機のみダストカバーにヒンジ(蝶番)が無い。
  • SL-1200 MK4 1997年発売
シリーズで唯一SP盤の再生に対応し(ただしSP盤再生には対応カートリッジが別途必要)、出力ケーブル着脱式のピュアオーディオ向けモデル。
  • SL-1200 MK5 2002年発売
  • SL-1200 MK5G 2002年発売
  • SL-1200GLD 生産累計300万台達成記念ゴールド仕様モデル 全世界3,000台限定発売し、うち日本国内で500台限定で2004年3月発売
  • SL-1200 MK6K1 35周年日本国内1000台限定プレミアムモデル 2007年12月発売 日本国内1000台限定。「松下電器産業株式会社」の社名が書かれたモデルとしては最終機種。
  • SL-1200 MK6 2008年発売 2010年12月生産終了。「パナソニック株式会社」の社名が書かれた唯一(最初で最後)のモデル。

その他

脚注

外部リンク