勧善懲悪委員会

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勧善懲悪委員会(かんぜんちょうあくいいんかい、アラビア語: هيئة الأمر بالمعروف والنهي عن المنكر‎、英語: Committee for the Promotion of Virtue and the Prevention of Vice[1]、略称: CPVPV)は、サウジアラビア宗教警察。別名はムタワ

勧善懲悪委員会
設立 1927年
種類 宗教警察
本部 サウジアラビアの旗 サウジアラビア
公用語 アラビア語
関連組織 サウジアラビア王国政府
ウェブサイト 勧善懲悪委員会公式サイト
特記事項 サウジアラビア宗教警察
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概要

正式名称は「徳の奨励と悪徳の禁止の省」となる。サウジアラビアの国教であるイスラム教ワッハーブ派の三大教義の一つである「勧善懲悪の実施」を行う政府機関として宗教警察の役割を持ち、国内の思想統制に大きな力を発揮している。一般にはイスラム社会における宗教警察を表す「ムタワ」の略称で呼ばれている。

代表者は長年にわたりシャイフ・イブラヒム・ビン・アブダラ・アルガイス (Sheikh Ibrahim Bin Abdullah Al-Ghaithが務めていたが、2009年に解雇され、穏健派指導者へと代えられている。

ターリバーン政権下のアフガニスタンにも同様の組織として勧善懲悪省が存在していた。

歴史

現在の名称になったのは1940年であるが、組織の発足は1927年のイフワーンの反乱にまでさかのぼる。1912年頃、サウード家アラビア半島に支配権を確立して現在のサウジアラビアの基礎ができた当時、宗教的な取締りの役目はイフワーンが担っていた。しかし、1926年にイフワーンがエジプトから来たメッカ巡礼団を異教徒として襲撃した事件が問題になり、襲撃事件がイラククウェートにまで越境して深刻な問題に発展したことから、イフワーンから襲撃の大義名分を奪う目的で国王の勅令により勧善懲悪委員会の前身となるムタワが設置された。イフワーンの反乱が鎮圧され、イフワーンが実質的に壊滅してからは現代に至るまで勧善懲悪委員会が宗教警察としての役目を担っている。

元々は地域住民への生活指導などを行うボランティア組織的なものであり、懲罰といっても小さなで軽く叩く程度であったが、湾岸戦争以降、西洋文化の流入が進むと態度を硬化させるようになり、取締りの過激化が進み、違反者の逮捕処刑まで行うようになった。

組織と活動

イスラム宗教庁の内部委員会であり、日本の省庁でいうところの局に相当する位置にある組織である。

サウジアラビアでは3,500人の職員と多数のボランティアによって運営されており、総人数は4,000人から5,000人と言われている。委員には王族に知事や副知事、宗教指導者まで幅広い権力者が在籍しており、サウジアラビア国内における影響力は非常に大きく、イスラムにおける倫理委員会の役目を果たしている。

勧善懲悪委員会自体は司法警察権や裁判権は持っていないため、正規の警察官と二人一組で活動している。実際に逮捕を行うのは警察官である。逮捕した相手に対する告発を行うだけで裁判そのものは裁判官が執り行うが、実質的に警察裁判所も勧善懲悪委員会の威光には逆らえない。

湾岸戦争以降に流入するようになった西洋文化に対して非常に強い拒否反応を示しており、彼らの考える「イスラムの教義」に合わない欧米文化の排除に積極的に活動している。

魔法部

電話魔法相談を受け付けている魔法部は勧善懲悪委員会の内部組織である。ただし、魔法部の担当者はウラマー一人しか居ない。

活動

インターネットサイトの監視やペットとして飼うことを禁止したり[2]バレンタインデーを禁止して市内の店舗からバレンタイン関連の商品を撤去させたりしている[3]

近年で悪名高い活動の一つに2002年3月11日メッカの女学院が火事になった際の対応が挙げられる。当時、委員会は「女子生徒たちのセーラー服が規則違反だから外に出てはならない」という理由で燃えさかる炎の中に女子生徒たちを閉じ込め、さらに消火活動にきた消防隊に「女学院に男子は立ち入ってはならない」と言って消火活動を妨害した。その結果、15人が死亡、50人が負傷する事態になった[4][5][6][7][8]en:2002 Mecca girls' school fireを参照。

2005年5月には霊媒師の女性を魔術を使用して男性を性的不能にしたとして逮捕し、殴る蹴るの暴行を加えて自供を強制、死刑判決が出された。このため、欧米では悪名高い人権侵害組織として批判されている。

あまりに過激化する活動から近年ではサウジアラビア内部でも批判されるようになり、内務省は活動を制限しようとしている。そのため、外国人が多い地域や外国人向けのショッピングモールなどでは勧善懲悪委員会の立ち入りを制限するなどの動きも出始めている。

2008年には逆に一般市民が勧善懲悪委員会メンバーに集団暴行を行うという事件まで起きている。

2008年に、メディナへの聖地巡礼に来ていたレバノンの霊能力者(en:Ali Hussain Sibat)を魔法を使った罪で逮捕告発し、死刑判決が出されている。死刑判決を受けた人物はレバノンではテレビに出演し、霊能力と称して人生相談などを行う番組を持っていた有名なタレントであるが、もちろん本当に魔法使いだったわけではない。

関連項目

脚注

外部リンク