S&W M19

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S&W M19は、S&W社が開発した回転式拳銃1955年の発売当初はコンバットマグナムCombat Magnum)と称されており[2]1957年にモデルナンバー制度が導入されたあとも、引き続き通称として用いられている[3]

S&W M19[1]
S&W M19(4インチモデル、ニッケルフィニッシュ)
概要
種類 回転式拳銃
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
設計・製造 S&W
性能
口径 約9mm(.38口径、.357口径)
銃身長 64mm(2.5インチモデル)
102mm(4インチモデル)
152mm(6インチモデル)
ライフリング 6条右回り
使用弾薬 .38スペシャル弾
.357マグナム弾
装弾数 6発
作動方式 シングル/ダブルアクション
全長 205mm(2.5インチモデル)
241mm(4インチモデル)
重量 905g(2.5インチモデル)
1,021g(4インチモデル)
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スイングアウトされたシリンダー

また、本銃をもとにステンレス鋼を導入した派生型であるS&W M66も本項で扱う。

来歴

1930年代に登場した.357マグナム弾は、先行する38-44 HV弾と同様、基本的には.44スペシャル弾のために設計された頑丈な拳銃小口径化するかたちで運用されていた。スミス&ウェッソン社でも、.357マグナム弾と同時に、その名前を冠して発表した後のM27は、大型のNフレームにもとづいている[4]。しかし、このような大型拳銃は、特に法執行官が日常業務で携行するのは困難であった。このことから、コンバットシューティングの第一人者であり、自身もアメリカ国境警備隊(USBP)英語版で法執行任務に携わっていたビル・ジョーダン大佐の意見を取り入れて、従来は.38スペシャル弾用のミリタリー&ポリスなどで用いられてきたKフレーム・リボルバーをもとに、.357マグナム弾を使えるように強化して開発されたのが本銃である[2]

設計

上記の経緯より、本銃はKフレームをもとに、ヨーク(シリンダーの保持機構)部分をわずかに拡張したKターゲット・フレームを用いて設計されている。Kフレームと同様に4スクリュータイプであり、シリンダーも同じく6連発であるが、シリンダー長は42mm(1,67インチ)となった。銃身長は、当初は4インチのみであったが、後に2.5インチおよび6インチが追加された。リアサイトは調整可能となっており、フロントサイトは抜き撃ちに優れるランプタイプ。グリップは木製で角を落としていない末広がりの長方形のスクウェアバット型、表面処理はブルーフィニッシュとニッケルフィニッシュから選択できた[2][3]。また、M19はトラディショナルな炭素鋼製であったが、1970年には、ステンレス鋼製としたM66も発表された[5]

なお、小型のKフレーム・リボルバーで強力な.357マグナム弾を常用すると、銃・射手ともに負担が大きいという指摘があった。これは銃自体が軽量であるため反動が強いのに加え、元々小型なKフレームのシリンダーで6発の.357マグナム弾を収めるため、フレームのサイズの割にシリンダー自体が大型となり、エジェクターロッドの位置も高くなるため、ハウジング部分に収めるスペースを確保すべく銃身の下方が削られているのが要因である。1970年代末にはNフレームよりも小さくKフレームと同等の携行性を確保しつつ、より頑丈なLフレームが開発され、1980年よりこれを採用した「ディスティングイッシュド・コンバットマグナム」(M586/686)などが発表されている[6][7]

M19は1999年[3]、M66は2004年に生産中止となったが[5]、M66は新仕様で2014年に再生産されている。

運用史

本銃は、本場アメリカの警察で多く採用されている。例えばFBI捜査官の間で好評を博し、後に同社のM13が制式採用された[8]

また1972年ミュンヘンオリンピック事件を受けて、大陸ヨーロッパの法執行機関では対テロ作戦を担当する特殊部隊を編成するようになったが、創設直後のこれらの部隊は、動作の確実性を評価して、本銃を含む回転式拳銃を多く採用していた。1977年ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件で突入したGSG-9も、隊長のウェグナー大佐はM19を、また突入隊員も、H&K P9S自動拳銃およびH&K MP5短機関銃と並んでM66を携行していた[9]

日本でも、海上保安庁特殊警備隊(SST)の前身となった関西国際空港海上警備隊(海警隊)は、4インチ銃身モデルのM19を使用していた[10]

登場作品

アメリカアクション映画ドラマなどではステージガンとして頻繁に登場し、漫画やアニメーション作品などの他、モデルガンエアソフトガンとしても商品化されている。

映画・テレビドラマ

相棒season14
廃工場に潜んでいたチンピラが角田課長を撃つ際に使用する。
アウトレイジ
石原が2.5インチモデルを使用。グバナン大使に闇カジノの経営を強制させるシーンに登場(発砲なし)。また、大友組を裏切り、山王会にカチコミに行くフリをする場面で、自身の横領を知っていた舎弟の頭に本銃の銃口を突き付け、車内で射殺する。
ガントレット
ベン・ショックリー刑事クリント・イーストウッド)が、M66の2.5インチを使用。
刑事貴族
須藤刑事が使用。
ザ・シークレット・サービス
冒頭のシーンに登場する。
スニッファー 嗅覚捜査官
小向達朗がM19の2.5インチモデルを使用。
西部警察
『ゾーン・オブ・ザ・デッド』
『ソルトン・シー』
ダイ・ハード2
タイトロープ
ウェス・ブロック刑事(クリント・イーストウッド)が、M66の2.5インチを使用。
チャイルド・プレイ
チャールズ・リー・レイ(ブラッド・ドゥーリフ)が、2.5インチモデルをマイク刑事との銃撃戦で使用。
トレーニングデイ
バトルロワイアル
元渕恭一が使用していたものを、主人公の七原秋也が使用。
『バレットブレイク』
ハンチョウ〜神南署安積班〜
3シリーズ共に村雨秋彦刑事が使用。
フェイス/オフ
ショーン・アーチャー刑事(ジョン・トラボルタ)が、M66の2.5インチをバックアップガンとして使用。
ブラインド・フューリー
ブラック・レイン
ニックの相棒チャーリー・ビンセントがM66の2.5インチを所持しており、後に松本刑事からニックへ遺品として渡される。
ブロークン・アロー
ペイバック
主人公、ポーター(メル・ギブソン)が使用。
マイアミバイス
ジーナが使用。
もっとあぶない刑事
谷村刑事が初期の頃に2.5インチモデルを使用している。
蘇える金狼
テレビドラマ版にて茂義賀津夫がM66を使用。
ラスト・ボーイスカウト
ジョー・ハレンベック(ブルース・ウィリス)がM19の2.5インチを使用。
ランボー
ティーズル保安官がM66を所持しており、天井裏を捜索する際に使用。
リーサル・ウェポンシリーズ
全作品に渡ってロジャー・マータフが使用。

漫画・アニメ

ゴルゴ13
ゴルゴ13が2.5インチモデルをS&W M10 2インチ、S&W M36 2インチとともに愛用。
シティーハンター
第16巻で槇村香が使用。
ニセコイ
鶫 誠士郎が、ブレザーの袖に仕込み拳銃として携帯している。グリップは製もしくはそれに似た色のもの。
ルパン三世
次元大介が、漫画ルパン三世Y』では2.5インチモデル、アニメでは4インチモデルを使用。ステンレスモデルではないが、使いこまれて表面処理が剥がれ、銀色になっている。
バナナフィッシュ
アッシュ・リンクスが改造した3.5インチモデルを使用。グリップは木製ではないがステンレス製でもなく、金属製という事以外は不明。

ゲーム

WarRock
ゲーム内通貨で購入可能。
バトルフィールド ベトナム
アメリカ陸軍アメリカ海兵隊グリーンベレー南ベトナム軍拳銃として登場する。
メタルギアソリッド ピースウォーカー
作中で唯一の回転式拳銃として登場。開発が進むと長銃身化やレーザーサイトの付加も可能となる。

出典

  1. ^ 床井 1993, p. 239.
  2. ^ a b c Supica & Nahas 2007, p. 136.
  3. ^ a b c Supica & Nahas 2007, pp. 185–188.
  4. ^ Supica & Nahas 2007, p. 135.
  5. ^ a b Supica & Nahas 2007, p. 229-231.
  6. ^ 床井 1993, p. 241.
  7. ^ Supica & Nahas 2007, pp. 346–353.
  8. ^ Bill Vanderpool (August 22, 2011). “A History of FBI Handguns” (英語). 2017年1月21日閲覧。
  9. ^ ネヴィル 2019, pp. 156–193.
  10. ^ 小峯 & 坂本 2005, pp. 45–74.

参考文献

  • 小峯, 隆生坂本, 新一『海上保安庁特殊部隊SST』並木書房、2005年。ISBN 978-4890631933 
  • 床井, 雅美『最新ピストル図鑑』徳間書店徳間文庫〉、1993年。ISBN 978-4195776544 
  • Supica, Jim; Nahas, Richard (2007). Standard Catalog of Smith & Wesson (Third Edition). Gun Digest Books. ISBN 978-0896892934 
  • ネヴィル, リー『欧州対テロ部隊』床井雅美 (監修), 茂木作太郎 (翻訳)、並木書房、2019年。ISBN 978-4890633852 

関連項目