カナブン

コガネムシ科の昆虫

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カナブン(金蚉、金亀虫、金蚊)は、コウチュウ目コガネムシ科ハナムグリ亜科に属する昆虫であり、やや大型のハナムグリの一種である。

カナブン
カナブン
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: コウチュウ目(鞘翅目) Coleoptera
亜目 : カブトムシ亜目(多食亜目) Polyphaga
下目 : コガネムシ下目 Scarabaeiformia
上科 : コガネムシ上科 Scarabaeoidea
: コガネムシ科 Scarabaeidae
亜科 : ハナムグリ亜科 Cetoniinae
: カナブン族 Goliathini
亜族 : カナブン亜族 Coryphocerina
: カナブン属 Rhomborrhina
または Pseudotorynorrhina
亜属 : Rhomborrhina
: カナブン R. japonica
学名
Rhomborrhina japonica
Hope, 1841

または Pseudotorynorrhina (Rhomborrhina) japonica

和名
カナブン
英名
Drone beetle

ただし、近縁のが数種あるうえ、一般にはコガネムシ科全般、特に金属光沢のあるものを指す通称として「カナブン」と呼ぶ場合もあるためアオドウガネドウガネブイブイなどと混同されることもある。

生息地

日本では本州四国九州のほか、佐渡島伊豆諸島隠岐諸島対馬壱岐島五島列島種子島屋久島黒島に生息する。海外では朝鮮半島済州島中国大陸に見られる。低地から山地まで全般的に生息している。

生態

幼虫

カナブン類は普通種であるのにもかかわらず幼虫の生態は長い間不明であったが、近年の研究によるとクズ群落などの乾燥した環境に生息し、腐植物を食べて育つらしいことがわかった。ただし、こういった環境は相対的に希少であるため、枯れ草や落ち葉がある程度有れば発生を繰り返せるシロテンハナムグリなどに比べ、環境破壊への耐性において本種は劣勢を強いられている。なお、飼育する場合はマットの水分量が多いと前蛹での死亡率が高くなってしまうため、水分量をかなり少なめにする必要がある。

成虫

ハナムグリとしては大型で、頭部は四角く、背面が平らになった形をしている。全身に緑褐色の金属光沢がある。この金属光沢にはいくつかの型がある。緑色と銅色のものがよく見られる。

飛行能力が優れている。飛び方が特徴的で、飛翔時に前翅(鞘翅)の外側を僅かに持ち上げる(鞘翅は結果的に内側に傾く)と、多くの甲虫のように開かなくても側面に隙間ができ、この状態で後翅を伸ばせるので、前翅を閉じたまま後翅を羽ばたいて飛ぶ。また、足場が無くても離陸できる。

腐熟した果実やクヌギコナラアキニレシラカシヤナギアカメガシワなどの広葉樹樹液を餌とし、これらの樹上を主たる生活の場とするため、滑り落ちたり引き剥がされたりしないように各脚の跗節の先端に2本の鋭い爪を持つ。樹液のにじみ出るところにはカブトムシクワガタムシ、本種や近縁のハナムグリ類が多数集まるのが良く見られる。

姿はシロテンハナムグリなどに非常に似るが、彼らと違い越冬能力を持たないため、成虫の活動期間は例外なくひと夏のみ、それも1か月程度である。

近縁種

日本に生息する近縁種として次のようなものがある。生息地、習性も似通い混生する場合が少なくないが、緩やかな棲み分けも認められる。

形態学的識別点はいずれもはっきりしており、不明瞭、緩慢な差異ではない。

和名からもわかる通り体色に違いがあるが、カナブン自身にも同一種内で同じような色彩変異があり、一概に決められるものではなく、色彩だけで種類を同定しようとするのは危険である。

アオカナブン Rhomborrhina unicolor Motschulsky, 1861
緑色型のカナブンよりも金属光沢が強く、彩度が高い。体型は細長く、後脚の左右の基節が互いに接する。相対的に冷涼な環境を好み山地性の傾向を持つ。気温が高いと産卵せず、大都市近郊での激減の大きな原因となっている。北海道にも生息する。福江島に生息する個体群は亜種 ssp. fukueanaに分類される。
クロカナブン Rhomborrhina polita Waterhouse, 1875
体色は完全な黒色であり、光沢は強い。野生状態では多年1化、飼育下でも2年1化であるために繁殖速度が遅いうえ、生息域の変更の必要が生じても速やかな移動が困難[1]だといわれる。また、幼虫期のうち丸1年を、成長しきった後の蛹室形成期が占めている[1]。アオカナブンと違いかつては都市部の公園でも多数の個体が見られたが、21世紀に入り激減した。
サキシマアオカナブン Rhomborrhina hamai Nomura, 1964
石垣島と西表島に分布する。山地性で湿度の高い土壌に見られるが、幼虫期間が長く羽化までに3年以上かかる。深い藍色である事が多く、数は少ない。
チャイロカナブン Cosmiomorpha similis nigra Niijima et Kinoshita, 1927
先島諸島に分布し、島ごとに4亜種に分類されている。

脚注

  1. ^ a b 『クロカナブンの飼育と観察』 p.14 「羽化しない蛹」節の結論部位、「少なくなったクロカナブン」節 および p.12 図1「飼育下におけるクロカナブンの生活史」 を基に縮約.

参考文献

  • 今森光彦 『野山の昆虫』 山と溪谷社〈ヤマケイポケットガイド〉、1999年、ISBN 4-635-06220-1
  • 坂本憲一「クロカナブンの飼育と観察」『インセクタリゥム』第37巻第435号、㈶東京動物園協会、2000年4月、doi:10.11501/2367532ISSN 0910-5204 

関連項目

外部リンク