御神酒徳利

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御神酒徳利(おみきどっくり、おみきどくり)は古典落語の演目。元は上方落語。別名に占い八百屋(うらないやおや)[1]。現在に知られているものは、六代目三遊亭圓生が大阪から来た五代目金原亭馬生に習ったものであり、当初はサゲはなかった[1]。また、別口で三代目柳屋小さんも上方から「占い八百屋」の題で移入しており、こちらは大阪にたどり着く前に噺が終わってしまう[1]

六代目圓生は昭和48年(1973年)の宮中の「春秋の間」でこの噺を御前口演した。

あらすじ

日本橋馬喰町の刈豆屋という旅籠には先祖が徳川家より拝領したという御神酒徳利を家宝として大事にしていた。

ある年の師走の十三日、年に一度の大掃除のこと。通い番頭の善六は、家宝の徳利が無造作に出されていることを見つけ、盗られては大変だと台所の水瓶の中に隠した。ところが、その後の忙しさで善六はこの事をすっかり忘れてしまっていた。掃除が終わると、いつもなら奉公人たちを労う恒例の祝宴が行われるところ、主人は徳利が消えたことを話し、宴は取りやめとなる。善六は家に戻ったところで徳利の件を思い出すが、今さら名乗り出にくい。妻に相談すると、妻の父は易者であったことから嘘の占いで見つけたことにすれば良いとなる。そこで善六は刈豆屋に戻ると、生涯に3度だけできるという触れ込みで、そろばんを使った占いで徳利を見つけ出すと主人に言う。善六は適当にそろばんを弾きながら、台所の水瓶の中にあると宣言する。その通りに徳利が見つかったために主人は大喜びし、奉公人たちを集めて祝宴を開く。

この日、刈豆屋には得意客として、大坂の大商人である鴻池善右衛門の支配人が泊まっていた。善六の占いの話を知った支配人は、実は腕の良い占い師を探していたことを刈豆屋の主人に話す。何でも、鴻池のお嬢様が原因不明の病で床に臥せっており、どんな名医に診せても原因がわからず、神仏や占いを頼ろうとしていたとのことであった。支配人は刈豆屋の許可を得て、善六に三十両の大金を提示し、駄目であっても構わないので一緒に大坂に来て欲しいと頼む。善六は断ろうとするも、妻に説得され、嫌々ながら支配人と大坂に向かうことを決める。

道中、神奈川宿の新羽屋(にっぱや)という鴻池の定宿に泊まったところ、店が慌ただしい。理由を尋ねると、数日前に泊まった薩摩武士が金七十五両と幕府への密書が入った巾着が盗まれる事件が起き、店の使用人が疑われ、主人の源兵衛は奉行所でお取り調べを受けているという。お金は代弁できても密書が見つからないのは困ると女将が言うと、支配人は善六を紹介する。困った善六は逃げ出すために、静かに占いたいので離れで一人にしてくれと頼む。そして機を見て逃げ出そうとしたところ、刈豆屋での逸話を聞いて観念した犯人の女中がやってくる。彼女は病気の親に仕送りするために魔が差して盗んでしまったと打ち明けて見逃して欲しいと頼み込み、巾着は裏庭の壊れたお稲荷さんの社に隠したことも明かす。内心で喜ぶ善六は、女中を宥めて彼女から稲荷のことを詳しく聞き出すと、店の者を集める。そして、巾着は壊れた稲荷の社に隠されており、昨年の雷で壊れたまま放置された稲荷の祟りであると話す。調べれば確かに社から巾着が見つかり、新羽屋は感謝して善六に30両の多額の礼金を支払うが、善六は出立の際に、こっそり例の女中を呼ぶと親孝行に使いなさいと謝礼の中から5両を渡す。

大坂・鴻池に到着すると、支配人は刈豆屋のみならず、新羽屋のことも主人や店の者に話し、善六に期待が集まる。困った善六は時間を稼ぐため、数日間の断食と水垢離を始め、神頼みする。満願の日、夢枕に新羽屋の稲荷が現れ、お前の占いのおかげで社が再建され、再び崇め奉られて正一位にまで出世したと感謝し、その礼として鴻池の娘を救う方法を伝える。翌日、善六は適当にそろばんを弾くと、稲荷に聞いた通り、この屋敷の乾の隅の四十二本目の柱の下に埋もれている観音像を掘り出し、奉るように指示する。さっそく鴻池の者たちが調べてみると確かに観音像があり、すぐさま娘が快復する。鴻池の主人は善六に感謝して莫大な礼金を払い、これを元手に善六は喰町に立派な旅籠を開いた。

最後に「生活はもちろんケタ違いになるわけで、そろばん占いでございますから」とオチる。

サゲのバリエーション

上記のサゲは六代目三遊亭圓生によるものである。圓生と同じく五代目馬生から教わった三代目桂三木助は、最後、善六が女房と会話し、彼女が「これも新羽屋稲荷大明神のお陰だね」と言ったことに対して、「なあに、かかあ大明神のお陰だ」と返すものであった[1]

占い八百屋

占い八百屋(占い八百屋)は古典落語の演目。三代目小さん経由で江戸落語に移されたものであり、御神酒徳利とほぼ噺の筋は同じだが、主人公が八百屋であること、小田原宿(神奈川宿)で終わりとなっている。

あらすじ

とある八百屋がある商家の御用聞きのため台所の勝手口を訪れると、その店の女中に邪険に扱われた。腹が立つ中で台所をひょいっと眺めると、店の家宝という御神酒徳利が無造作に置かれている。店の者がいないため、八百屋は腹いせにこの徳利を水瓶の中に隠してしまう。その後、店では家宝の徳利が無くなったと大騒ぎのところを、何食わぬ顔で八百屋が訪れる。そろばん占いと称して、そろばんを適当に弾き、水瓶の中にあると宣言する。徳利が見つかると主人は喜び、八百屋を「そろばん占いで紛失物を探し出す先生」と持ち上げる。

この後、御神酒徳利と同様に偶然居合わせた鴻池の支配人に頼まれしぶしぶ大阪に向かうこととなる。道中、小田原宿で泊まった際、宿の者に捜し物を頼まれ、切羽詰まり夜逃げする。

最後に「今度は先生が紛失いたしました」とオチる。

脚注

注釈

出典

  1. ^ a b c d 東大落語会 1969, pp. 106–107, 『御神酒徳利』.

参考文献

  • 東大落語会 (1969), 落語事典 増補 (改訂版(1994) ed.), 青蛙房, ISBN 4-7905-0576-6