亀井俊介
亀井 俊介(かめい しゅんすけ、1932年8月14日 - )は、日本の比較文学者・アメリカ文学者・アメリカ大衆文化研究者。東京大学名誉教授。
来歴
岐阜県中津川市生まれ。新制岐阜県立中津高等学校卒業。1953年、東京大学文学部英文科卒。1952年、同大学院比較文学比較文化専攻修士課程修了。はじめ詩人を目指していた。 同大学院比較文学比較文化専攻博士課程在学中に休学し、セントルイスのワシントン大学に留学[1]。メリーランド大学大学院などをへて、1962年に帰国して大学院に復学。1963年、東京大学大学院比較文学比較文化専攻博士課程、単位取得退学。師の一人に島田謹二がいる。
1963年東京大学教養学部助教授、1984年教授、1993年定年退官、名誉教授、東京女子大学教授、2003年岐阜女子大学教授。2020年同退職。
1971年に『近代文学におけるホイットマンの運命』で日本学士院賞を受賞している。1973年には日本学術振興会派遣海外研究員として、ニューヨーク州立大学オルバニー校に留学して、アメリカ大衆文化研究の先駆けとなった。
人物
- 著書多数あり、アメリカ大衆文化に詳しく、性革命に関する著作もあり、『マリリン・モンロー』を出したときは、東大教授が岩波新書から出したというので話題になった。
- 司馬遼太郎の愛読者でもあり、新潮文庫版の『峠』や『アメリカ素描』の解説を書いている。また日本女子大学教授だった妻亀井規子(旧姓山名、規子の父は法学者の山名寿三)の死後、遺著「ヴィクトリア朝の小説」(研究社)を刊行している。手記『わが妻の「死の美学」』を出した。
- 2007年にはその研究活動の出発点であった「アメリカ産の日本詩人」ヨネ・ノグチ(日本名野口米次郎、イサム・ノグチの父)の復権を目指し、『ヨネ・ノグチ英文著作集』全6巻を編集、別冊日本語解説を書いた。
受賞歴
著作
単著
- 『近代文学におけるホイットマンの運命』研究社出版 1970
- 『ナショナリズムの文学』研究社出版 1971、講談社学術文庫 1988
- 『アメリカの心日本の心』日本経済新聞社 1975、講談社学術文庫 1986
- 『サーカスが来た! アメリカ大衆文化覚書』東京大学出版会 1976、文春文庫 1980、岩波同時代ライブラリー 1992、平凡社ライブラリー 2013
- 『内村鑑三 明治精神の道標』中公新書 1977
- 『摩天楼は荒野にそびえ わがアメリカ文化誌』日本経済新聞社 1978、旺文社文庫 1984
- 『自由の聖地 日本人のアメリカ』研究社出版 1978
- 『メリケンからアメリカへ 日米文化交渉史覚書』東京大学出版会 1979
- 『バスのアメリカ』冬樹社 1979、旺文社文庫 1984
- 『カバンひとつでアメリカン』冬樹社 1982
- 『本のアメリカ』冬樹社 1982
- 『アメリカのイヴたち』文藝春秋 1983
- 『ハックルベリー・フィンは、いま』講談社 1985、講談社学術文庫 1991
- 『マリリン・モンロー』岩波新書 1987
- 『ピューリタンの末裔たち アメリカ文化と性』研究社出版 1987
- 『亀井俊介の仕事』全5巻 南雲堂
- 1 荒野のアメリカ 1987
- 2 わが古典アメリカ文学 1988
- 3 西洋が見えてきた頃 1988
- 4 マーク・トウェインの世界 1995
- 5 本めくり東西遊記 1990
- 『性革命のアメリカ ユートピアはどこに』講談社 1989
- 『「金メッキ時代」への私的考察』PHP研究所 1990
- 『アメリカ人の知恵 荒野と摩天楼の夢案内』ベストセラーズ・ワニ文庫 1990
- 『現代の風景 亀井俊介コラム集』河合出版 1991
- 『わが妻の「死の美学」』リバティ書房 1993
- 『アメリカン・ヒーローの系譜』研究社出版 1993
- 『アメリカの歌声が聞こえる』岩波書店 1994
- 『アメリカ文学史講義』南雲堂(全3巻) 1997-2000
- 1 新世界の夢 植民地時代から南北戦争まで
- 2 自然と文明の争い 金めっき時代から一九二〇年代まで
- 3 現代人の運命 一九三〇年代から現代まで
- 『アメリカ文化と日本 「拝米」と「排米」を超えて』岩波書店 2000
- 『ニューヨーク』岩波新書 2002
- 『わがアメリカ文化誌』岩波書店 2003
- 『ひそかにラディカル? わが人生ノート』南雲堂 2003
- 『アメリカでいちばん美しい人 マリリン・モンローの文化史』岩波書店 2004
- 『わがアメリカ文学誌』岩波書店 2007
- 『ハックルベリー・フィンのアメリカ 「自由」はどこにあるか』中公新書 2009
- 『英文学者 夏目漱石』松柏社 2011
- 『ヤンキー・ガールと荒野の大熊 アメリカの文化と文学を語る』南雲堂 2012
- 『有島武郎 世間に対して真剣勝負をし続けて』ミネルヴァ書房<日本評伝選> 2013
- 『日本近代詩の成立』南雲堂 2016
- 『英文学者 坪内逍遥』松柏社 2021
- 『魂の声 英詩を楽しむ』南雲堂 2021
共著・編著
- 編『現代比較文学の展望』研究社出版 1972/「現代の比較文学」講談社学術文庫 1994
- 芳賀徹・平川祐弘・小堀桂一郎共編『講座比較文学』全8巻、東京大学出版会 1973-76
- 斎藤真・本間長世と責任編集『日本とアメリカー比較文化論』全3巻、南雲堂 1973
- 本間長世共編『アメリカの大衆文化』研究社出版 1975
- 編『アメリカ古典文庫5 ウォルト・ホイットマン』[2]研究社出版 1976
- 編『アメリカ古典文庫23 日本人のアメリカ論』研究社出版 1977
- 平川祐弘・小堀桂一郎共編『文章の解釈』東京大学出版会 1977
- 加藤秀俊共編『日本とアメリカ』日本学術振興会 1977
- 鶴見俊輔共著『アメリカ』文藝春秋 1980
- 編『横断鉄道の時代 人物アメリカ史 3』集英社 1984
- 編『日米文化交流事典』南雲堂 1988
- 編『パチンコけんけん学々』善本社 1990
- 鈴木健次共編『自伝でたどるアメリカン・ドリーム』河合出版 1992
- 編『アメリカの文化 現代文明をつくった人たち』弘文堂 1992
- 編著『アメリカン・ベストセラー小説38』丸善ライブラリー 1992
- 編『近代日本の翻訳文化 叢書比較文学比較文化 3』中央公論社 1994。退官記念論文集
- 紀平英作共著『世界の歴史23 アメリカ合衆国の膨張』中央公論新社 1998、中公文庫 2008
- 小池滋・川本三郎共著『文学を旅する』朝日選書 2002
- 沓掛良彦共著『名詩名訳ものがたり 異郷の調べ』岩波書店 2005
- 編『ヨネ・ノグチ<野口米次郎> 英文著作集:詩集・小説・評論』東京:Edition Synapse, 2007
- 全6巻+別冊解説: Collected English Works of Yone Noguchi Poems, Novels and Literary Essays
- 編『アメリカ文化史入門 植民地時代から現代まで』昭和堂 2006
- 編『アメリカの旅の文学 ワンダーの世界を歩く』昭和堂 2009
- 編『「セックス・シンボル」から「女神」へ-マリリン・モンローの世界』昭和堂 2010
- 『亀井俊介 オーラル・ヒストリー』[3]研究社 2017
翻訳
- ルーシー・M・ボストン『グリーン・ノウ物語』評論社、新版2008
- 1 グリーン・ノウの子どもたち 1972
- 2 グリーン・ノウの煙突 1977
- 3 グリーン・ノウの川 1970
- 4 グリーン・ノウのお客さま 1968
- 5 グリーン・ノウの魔女 1969
- 別巻 グリーン・ノウの石 1981
- W・E・グリフィス『ミカド 日本の父なる力』研究社出版 1972、岩波文庫 1995
- マーティン・ヒルマン『大西部の開拓者たち 図説 探検の世界史9』集英社 1975
- J・C・ハリス『うさぎどんきつねどん』集英社 1980
- 『内村鑑三英文論説翻訳篇 上』岩波書店 1984
- マーク・トウェイン『トム・ソーヤの冒険』(少年少女世界名作の森)集英社 1990、集英社みらい文庫 2011
- 川本皓嗣共編訳『アメリカ名詩選』岩波文庫 1993
- 『対訳 ディキンソン詩集』岩波文庫 1998
監修
脚注
- ^ 『亀井俊介オーラル・ヒストリー 戦後日本における一文学研究者の軌跡』
- ^ 他に『1 ベンジャミン・フランクリン』『4 H・D・ソロー』『12 D・H・ロレンス』を解説担当
- ^ 語りと若手研究者によるインタビュー(オーラル・ヒストリー)での学問回想、副題は「戦後日本における一文学研究者の軌跡」
参考文献
- 『わが妻の「死の美学」』(半自伝)
- 「亀井俊介教授著作目録:1953年-1992年」『比較文學研究』(63)1993-06
- 「亀井俊介教授著作目録1993-2003年」 (亀井俊介教授古稀記念号)『Aurora』(8), 2004
- 小谷野敦『東大駒場学派物語』新書館