おむつ
おむつ(御襁褓)、もしくは、おしめ (御湿)は、排泄物(尿や便)を捕捉するため下腹部に着用する布や紙である。使用形態や元々の素材から大きく布おむつと使い捨ておむつ(紙おむつ)に分類される。
概要
主として、赤ちゃん(乳幼児)や一部の高齢者・障害者・入院患者など、排尿や排便を自己の意思で制御できない者や、体の自由が利かないためにトイレに行くことが困難な者が使用する。また、普段はトイレで用を足せるが、失禁・過敏性腸症候群・夜尿症などを患っている人の対策としても使われる。
基本的には乳幼児・高齢者・障害者・病気を理由に使用する例が殆どであるが、特殊な例としては、長時間不自由な状況下に置かれる以下のような職業で使用されることがある。
- 宇宙飛行士(打ち上げや地球への帰還時に、10時間近くトイレに行けないケースがあるため[1]。)
- マラソン・駅伝中継で、実況車やオートバイでの解説者・実況アナウンサー(マラソン中継は3時間弱、駅伝は長いもので6時間程度の中継時間となり、その間はトイレに行けないため[2]。)
犬や猫などのペットに使わせる場合もある。ペット専用の物は尻尾を通す穴がある物もある。
尿や便の水分を保持する目的から吸水性を求められ、水分の漏れを防ぐために防水性のある素材で外側を覆い、脱落を防止するために固定、あるいはゴム状の素材などである程度締め、固定する必要がある。肌に直接触れ、かつ特に肌の弱い乳幼児に使用される性質上、素材の肌触りもまた重視されている。
語源
古来よりの言葉「むつき(襁褓)」が口語として変化したものとする説と、1反のさらしから6枚分のおしめが取れることからおむつと呼ぶようになったとする説がある。 ちなみに、源氏物語の桐壷の巻に、光の君(光源氏)が繦緥(むつき)にくるまれていたという記述があるが、古来よりの言葉「むつき(襁褓)」は、嬰児の産着を指していたのであって、現代のおむつ(おしめ)を指していたのではない。
布おむつ
使い捨ておむつの普及にともない、旧来の布製おむつを区別するために使われる呼称。吸水性のある布や綿でできた吸水部分を股間にあて、全体を覆うようなカバーを使って体に密着するように固定する。おむつもカバーも、洗濯して繰り返し使用する。
おむつは1日に多いときは20回ほども替えるので最低で20組、余裕をもたせるには30-40組ほどは必要になる。おむつカバーは4-5枚、赤ちゃんの成長に合わせてサイズの大きい物に買い替える[3]。
さらしやドビー折りの布で輪になるように縫い、成長に合わせて適度な大きさに折り畳んで使用するもの(輪おむつ)、あらかじめ折った状態で縫い付けてあるもの、また近年は履かせ易さ、履き心地が考慮され、おむつカバー内にそのまま納まる形に成形され、水分吸収力を強化したもの(成形おむつ)などがある。成形おむつは吸収部と肌に触れる部分が別体になったものもある。
おむつの内側に敷いておむつ自体の汚れを軽減させるおむつライナー(使い捨てタイプと繰り返し使えるネットタイプがある)を利用したり、使い捨ておむつ同様に、カバーと一体化したもの、防水加工されたものなど、使い捨ておむつに近い使い勝手のものもある。
日本の布おむつカバーの主流商品は、高温多湿の日本の気候に合った、通気性の良いウールや綿素材が多い。通年、特に春先から秋口にかけては、通気性の良いウールや綿素材のカバーが好まれる傾向がある。また、秋から春先にかけては、通気性はやや落ちるが、洗濯後に乾き易いポリエステル素材が好まれる傾向もある。
海外の布オムツカバーの主流商品は、ポリエステル100%など化学繊維でできているものが多い。
1970年代までの日本では、三角おむつや巻きおむつと呼ばれる腰に巻きつけるようなおむつの当て方による股関節脱臼児が多かった為、1980年代以降、布おむつは股おむつと呼ばれる当て方で使用するように徹底的な指導が行われた。
主な成形布おむつ/おむつカバーのブランド
乳幼児用
- 布オムツ(ニシキ、アカチャンホンポ)
- コンパクトおむつ(ニシキ)
- ベビーネンネ(キングベビー)
- ナカタ(ナカタ)
- アイイク(三矢)
- 天使PAD(育児文化研究所)
- 赤ちゃん工房のおむつ(赤ちゃん工房)
- ウォッシャブルダイアパー(クーシーズ)
- ファジバンズ(ファジバンズ)
- ラッキーオムツ、ソフトベビー(エンゼル)
- シンク・ビーのおむつ(シンク・ビー)
大人用
- ニシキ
- ANGEL (日本エンゼル)
- P! (ピップ)
- ピジョンタヒラ
- O&P (ラフィーネ)
- 懐古堂
- Feline Babies
- 童夢
使い捨ておむつ(紙おむつ)
尿および便などが付着したら新品に交換し、再使用を前提としない市販のおむつである。素材として必ずしも紙のみが使われているわけではないこともあり、紙おむつという呼称は適しているとは言い難いが、習慣上そう呼ぶ人は少なくない。かつての使用素材は紙や綿やパルプであったが、1980年代以降は高吸水性ポリマーや不織布を使用するなどの工夫により、布おむつを凌ぐ性能を有するようになっている[5]。種類は大きく分けて、テープ止めタイプ、パンツタイプ、フラットタイプ、パッドタイプと4つあり、大人用はすべての種類が使用され、乳幼児用は主にテープ止めタイプとパンツタイプが使用される。乳幼児用は少子化で国内の需要が減退している中、海外輸出が旺盛である。一方で大人用は高齢化社会により需要が急増し、2000年頃からドラッグストアなど販売店での、大人用紙おむつ・吸収パッド・吸収パンツの売り場スペースが拡大される傾向にある。
テープ止めタイプ、パンツタイプのサイズは小さい順から赤ちゃん・子供用では「未熟児用」(~3kg)、「新生児用」(~5kg)、「Sサイズ」(4~8kg)、「Mサイズ」(6~11kg)、「Lサイズ」(9~14kg)、「ビッグサイズ」(12~20kg)、「ビッグより大きいサイズ」(13~25kg)、「乳幼児用スーパービッグ」もしくは「大人用ジュニア(SS)サイズ」(15~35kg)、大人用は「大人用Sサイズ」(20kg~40kg/ヒップ50~75cm)、「大人用Mサイズ」(30kg~60kg/ヒップ70~95cm)、「大人用Lサイズ」(50kg~/ヒップ90~125cm)、「大人用LLサイズ」(50kg~/ヒップ90~144cm)、「大人用3Lサイズ」(ヒップ110~140cm)と展開している[6]。乳幼児用は体重、大人用は腰囲(ヒップサイズ)を目安として選び、乳幼児用は月齢又は年齢と体重、大人用は体重とヒップ・ウエストサイズが併記されている場合が多い。サイズの目安はメーカーによって一部異なる[7]。
- テープ止めタイプ
- テープ止めタイプはフラットタイプのおむつにおむつカバーの機能の一つである面ファスナーの固定部と横漏れ防止のギャザーを一体化させたものであり、基本的におむつカバーは不要である[8]。乳幼児用と大人用では形状が違い、大人用の方が股上部分が大きく[9]、臍まで隠れやすい。当て方は使用者を仰向けに寝かせ(仰臥位)、テープが取り付けられている部分を後ろにして、仰向けのまま下半身を持ち上げるか、使用者の体を持ち上げて横に動かし側臥位にして、お尻にあたる部分におむつを差し込む[10]。この時汚れたおむつがある時は、汚れたおむつの下に新しいおむつを敷き、汚れたおむつを開いて局部を清拭したあとに汚物の付着に注意しながら汚れたおむつを抜く。次におむつのギャザーに合わせてお尻を乗せ、性器を包むようにテープ固定部のライン表示が入った側を前にして当て、左右のラインの位置が均等になるように乳幼児用は2つ以上、大人用は4つ以上のテープで固定する。ズボンを完全に脱がさなくても交換でき、コスト的にも比較的安価であるが、使用者を寝かせて装着・交換する必要があり、ベッドや布団などの寝かせるスペースが必要であるため、外出先でもベビーベッドや授乳室などの寝かせるスペースを確保しやすい乳幼児はともかく、ユニバーサルベッド[11]を設置してあるトイレの位置を把握しなければならない大人のお出かけ用にはあまり向いていない。そのため、自由に歩ける前の赤ちゃんや寝たきりの者に使われることが多く、自分で歩ける人でも寝ている状態ではパンツタイプより吸収体が大きくて漏れにくいことから就寝用に使われることが多い。乳幼児の場合は子供が立てるようになり活発に動き、じっとしていなくなると子供が立ったままでもおむつを交換できるパンツタイプが便利なため、「Lサイズ」前後でテープ止めタイプからパンツタイプに変える人が多く、テープタイプは「ビッグサイズ」を取り扱う銘柄が少なくなっている[12]。また、大人用は乳幼児用とは異なりパッド併用を前提とするため、吸収体が薄かったり、ドーナツ状になっている製品も見られる。かつての製品は外側の素材がビニール剥き出しであったが、各社とも乳幼児用は1990年代後半以降、大人用は2000年代前半以降の製品からビニールから不織布へと変化し、肌触りが改良されている。
- パンツタイプ
- パンツタイプはゴムのシャーリングが入った不織布製の使い捨てパンツとギャザー・吸収体が一体化したものである。ユニ・チャームが最初に開発し、乳幼児用は1992年[13]、大人用は1995年に登場した[14]。ブリーフやショーツといった下着と同じ感覚で交換でき、自分で歩ける人のお出かけ用や、ある程度立ち上がれる人のトレーニングパンツ的な用途に向いている。しかし、ズボンを完全に脱がさないと交換できず、寝ている状態ではテープ止めタイプに比べて漏れやすいため、寝たきりの者の使用には向かない。また価格が最も高価である。パンツタイプの方がウンチが漏れにくいという意見もある一方で、ポイントを押さえ、慣れればパンツタイプが楽だがウンチの時にはコツが必要という人もいる[15]。大人用にはパンツタイプとテープ止めタイプの中間的な製品として、ズボンを完全に脱がさなくても交換できるように、パンツタイプながらもテープでも固定ができる製品が発売されている。
- 乳幼児用のパンツタイプの中には特殊用途として、ハイハイ用、トイレトレーニング用、おねしょ(夜尿症)対策用、水遊び用パンツも発売されている。ハイハイ用は「Sサイズ」から「Mサイズ」相当、それ以外の展開サイズは「Lサイズ」と「ビッグサイズ」(ただし水遊び用パンツは「Mサイズ」を追加)である。トイレトレーニング用は吸収体の表面におしっこの水分が付着すると濡れた感じがするような加工が施され、商品によっては絵柄の色が変わるように施されているものもある。おねしょ対策用は長時間おむつを取り替えなくても漏れないよう、昼間用の紙おむつより吸収体を強化し、商品によっては布パンツの質感に近づけたものもある[16]。ビッグより大きいサイズ、トイレトレーニング用、おねしょ対策用おむつは月齢の高い子供が穿くことが多いため、パッケージ表面には「パンツ」の文字が強調され「おむつ」の文字が目立たなくなっているが、日本衛生材料工業連合会のガイドラインによる表示では他の製品と同様に「乳幼児用紙おむつ」と表示されている。一方で水遊び用パンツは海やプールでの水遊び用に便漏れ防止のギャザーのみ付いており吸収体が入っておらず、尿や軟便はすり抜けていくため、日本衛生材料工業連合会のガイドラインによる表示にもある通り、厳密には「おむつ」ではなく「使い捨てパンツ」である。単独でも水着と併用でも使用できるが、プールによっては水遊び用パンツを含めたおむつ着用を禁止しているところもあるため注意が必要である。
- フラットタイプ
- フラットタイプは布おむつをそのまま紙おむつに置き換えたものである。紙おむつの登場時からあり最も歴史が古く、排便に対応するおむつでは最も安価であるが、布おむつと同様におむつカバーとの併用が必要である。そのためお出かけ用には全く向いていない。乳幼児用はテープ止めタイプの低廉化により姿を消し、現在は大人用のみ発売され、使用者の多くが寝たきりの者である。
- パッドタイプ(トレーニングパッド、尿取りパッド、軽失禁(中失禁)パッド)
- パッドタイプは尿のみ吸収し、単独では排便には対応できない(一部の製品は軟便にも対応する)。大人用では重失禁者向けのテープ止めタイプ・フラットタイプ・パンツタイプのおむつと併用する尿とりパッドと、軽失禁者・中失禁者向けに布製の下着に生理用ナプキンのように装着する軽失禁パッド・中失禁パッドがあり、前者の尿とりパッドの方がサイズが大きく吸収量が多い。いずれもコストは最も安いが、下着と併用する軽失禁パッド・中失禁パッドは一定の吸収量しかないため、完全におむつに排尿・排便をしている者には使用できない。子供用は市販の布パンツに装着するトイレトレーニング用及び夜尿症対策用がほとんどであるが、介護が必要な障がい児向けに「スーパーBIG」サイズに装着する尿とりパッドが市販されている。
主な使い捨ておむつ(紙おむつ)のブランド
乳幼児・幼児・幼稚園児・小学生などの子供用
テープタイプ・パンツタイプ両方あり
この他、トイザらス(NEWウルトラプラス)・イオングループ(トップバリュ ベビーオムツ)等、プライベートブランドのおむつを販売しているケースがある。
テープタイプのみ
パンツタイプのみ
- ムーニーマン(ユニ・チャーム)
- ナチュラルムーニーマン(ユニ・チャーム)- ムーニーマンの上位版。
- マミーポコ(ユニ・チャーム)
- ネピア GENKI!(王子ネピア)
なお、ユニ・チャームは日本国内においては上記のとおり「ナチュラルムーニー(マン)」「ムーニー(マン)」「マミーポコ」と3種類のブランドを使い分けている。「ナチュラルムーニー(マン)はオーガニックコットンを採用しており品質・機能性最重視、「ムーニー(マン)」は中間、「マミーポコ」は経済性(価格)重視のブランドとなっている。なお、2020年現在は全てのテープタイプ及びパンツの新生児・Sサイズ・Mサイズ(はいはい)・スーパーBIGサイズは「ナチュラルムーニー(マン)」・「ムーニー(マン)」のみの展開である。(2018年までは「マミーポコ」もテープ止めタイプを発売していた。)海外では「マミーポコ」がメインブランドとなっており、テープ止めタイプも引き続き展開、台湾では「ナチュラルムーニー(マン)」相当の商品も「マミーポコ」ブランドで発売されている。
トイレトレーニング用、おねしょ(夜尿症)対策用、水遊び用おむつ
- トイレトレーニング用
- パンパース 卒業パンツ(P&G)
- トレパンマン(ユニ・チャーム)
- メリーズキッズ トレパンツ(花王)
- GOO.N トレーニングパンツ(大王製紙)
- GOO.N トレーニングパッド(大王製紙)
- おねしょ(夜尿症)対策用(夜用パンツ)
- 水遊び用
- ムーニーマン 水あそびパンツ(ユニ・チャーム)
- GOO.N スイミングパンツ(大王製紙)
乳幼児・幼児・幼稚園児用紙おむつの起用キャラクター
- ムーニー、ムーニーマン:新生児用からビッグより大きいサイズまではムーニーちゃん(2019年まではディズニーキャラクター。主にくまのプーさん、期間限定でディズニープリンセス、トイ・ストーリー等)、スーパービッグの男の子用は昆虫柄や自動車柄、女の子用は花柄
- マミーポコ:ドラえもん(2019年まではディズニーキャラクター。主にミッキーマウス、期間限定でリロ・アンド・スティッチ、チップとデール等)
- パンパース:しまじろう(新生児用・「はじめての肌へのいちばん」シリーズは動物柄[17])
- GOO.N:ディズニーキャラクターのミッキーマウス、くまのプーさん(パンツタイプ「まっさらさら通気」のみ。「GOO.Nプラス」・新生児用3Sサイズ・「ビッグより大きいサイズ」は動物柄、「スーパーBIGパンツタイプ」・「ナイトキッズパンツ」・「ナイトジュニアパンツ」はストライプ柄、「スーパーBIGテープ止めタイプ」は星柄とギンガムチェック柄。)[18]
- メリーズ:ウサギに似た異星人7匹(タンピーくん、ピコンちゃん、ポワンちゃん、クスクスくん、パンジーちゃん、ブウンくん、ラッピーくん )
- ネピア GENKI!:アンパンマン
- ネピア Whito:動物柄
- NEWウルトラプラス:スヌーピー(ピーナッツ)、きかんしゃトーマス、サンリオキャラクター
- トップバリュ ベビーオムツ:動物柄
かつてあったブランド
日本国内で発売されたブランドのみ記載。
- 現在も乳幼児用紙おむつを発売するメーカー
- 王子ネピア
- ドレミ - 末期は水森亜土が手がけたキャラクターがパッケージイラストに起用されていた。2006年に「GENKI!」へ移行。
- 大王製紙(エリエール)
- ユニ・チャーム
- ムーニーパンツ - 2010年に「ムーニーマン」から「ムーニーパンツ」へ移行するも、2013年8月〜11月(サイズにより異なる)に「ムーニーマン」に回帰。
- 乳幼児用紙おむつから撤退したメーカー
- エルモア
- ミミーママ
- 資生堂
- ピンポンパンツ
- CHAOPA
- ちゃおぱ - ちゃおパンダというキャラクター名のパンダ柄であった[21]。
- 日本製紙クレシア
- パンピー
- リブドゥコーポレーション(旧トーヨー衛材)
- ぴぴ - テープ止めタイプのみのブランド。
- ピーターパンツ - パンツタイプのみのブランド。末期は「ピーターパンツ ウルトラビッグサイズ」のみ発売し、「リフレ はくパンツジュニアSSサイズ」(大人用紙おむつ扱い)へ移行。
幼児・幼稚園児・小中学生の子供用
一部メーカーからは(日本衛生材料工業連合会のガイドラインによる表示上は乳幼児用ながら)3歳以上の幼児~小学校低学年ぐらいの体重15kg〜25kg前後の子供用に、乳幼児用よりやや大人っぽいながらも可愛い絵柄が入った「ビッグより大きいサイズ」が発売されている。日中の幼稚園や学校生活を考慮して自分で穿きやすいように全てがパンツタイプになっている。機能的には通常の乳幼児用紙おむつと変わらない。前述のトイレトレーニング用、おねしょ対策用より大き目であるため、大柄の乳幼児のトイレトレーニング用やおねしょ対策用にも使用される。
「ビッグ」や「ビッグより大きいサイズ」または「トレーニングパンツ」や「夜用パンツ」では小さく、大人用のSサイズでは大きいという小学生や小柄な中学生といった学童用に「スーパーBIGサイズ」なども発売されている(メーカーにより異なるが、おおむね腰囲50~70cm、体重20kg~35kgに対応)。重失禁や夜尿症対策のほか、心身障害児の介護用としても考慮されており、パンツタイプのほかにテープ止めタイプも存在する。日本衛生材料工業連合会のガイドラインによる表示では、銘柄によって「乳幼児用紙おむつ」とされているものと「大人用紙おむつ」とされているものに分かれる。又、アメリカを中心とする海外では主におねしょ対策用に中学生や高校生程度の体格(概ね体重60kg前後迄)にも対応するサイズも存在している。
これらの「スーパーBIGサイズ」や「ビッグ」「ビッグより大きいサイズ」の需要は近年増してきている。背景には、「子供の成長に合わせておむつを外す」という考え方へのシフトが見られ、おむつが取れる年齢が遅延化していることが挙げられる[22]。中高生のおむつ人口も急増してきている。その一方で、「おむつなし育児」という考え方も近年出てきているため、おむつはずれに対する考え方は二極化しているともいえる。
- G.OON スーパーBIG(エリエール) - テープ止めタイプ、男女共用。以前は「フレンド スーパーBIG」として発売され、中間サイズの草分け的なブランドである。
- G.OON スーパーBIGパンツ(エリエール)- パンツタイプ、男女共用。
- ムーニーマン スーパービッグ(ユニ・チャーム)- パンツタイプのみの発売、男女別に展開。
- リフレ ジュニアSSサイズ(リブドゥコーポレーション) - テープ止めタイプ、男女共用。
- リフレ はくパンツジュニアSSサイズ(リブドゥコーポレーション) - パンツタイプ、男女共用。
大人用
高齢者や障がい者向けの需要がほとんどを占めるが、概ね4歳以上の肥満体等で乳幼児用紙おむつのサイズが合っていない子供や、比較的年齢の若くて心身に特に障害がない成人健常者でも、失禁や頻尿、夜尿症、過敏性腸症候群などの症状を抱えていたり、またそれがなくても高所、深海[23]、宇宙空間[24]での作業等、特殊な環境下に拘束される業務に従事し長時間トイレに行けない者が使用する事もあり、変わった所ではバラムツやアブラソコムツ等の脂肪分が多い魚類を食しての下痢対策にも使われている。軽度の尿失禁用の吸収パッドや吸収パンツなどと共通のブランドが多い。医師の診断により、吸収パッドや吸収パンツなどとともに、所得税の医療費控除の対象となる場合がある(詳細については、医療機関や税務署、市役所などに確認すること)。なお、医療費控除は大人用おむつ及び子供用おむつの一部製品で、障害児もしくは小柄かつ障害を抱える成人の介護も視野に入れて、スーパービッグサイズの一部製品[25]に適用され、通常の子供用おむつには適用されていない。
各国の状況
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世界各国で乳幼児・幼児用のおむつが使用されている。基本的な用法と効果は日本の物と大きく変わらないが、装着時期については大きく異なる地域も多い。
欧米
- 欧米ではおむつが普及しており、紙おむつが主流である。日本よりおむつ外れの年齢が遅いのと、体格の大きい赤ちゃんが多いことから、ビッグサイズの紙おむつが充実している。
アジア
- アジア各国では、新生児期、或いは乳児期にはおむつを装着するが、自力歩行が可能となった段階で夜間を除いておむつを装着しない地域も多い。このような地域では、幼児は排泄を催すと屋外や任意の場所で随時排泄する。2000年代に入り富裕層が増加すると、徐々に紙おむつが普及し始めた[26]。
- 日本メーカーのアジアでの現地生産も盛んである。ユニ・チャームは1984年に台湾、1987年にタイ、1995年に中国、1997年にインドネシア、2008年にインドで生産・販売を開始。花王は1994年に台湾、2012年に中国、2014年にインドネシアに展開、後続の大王製紙は2011年にタイ、2013年に中国、2015年にインドネシアで現地生産を開始した。
- 中国では、2013年の一人っ子政策緩和頃からメリーズを主とした日本製紙おむつの人気が高まる。それに伴い、日本の販売店において中国での転売目的も含めた紙おむつの爆買いが発生し、品薄状態を危惧した店舗側で販売個数制限を設けたり、商品購入を巡るトラブルなどの問題が起きている[27][28][29]。
オセアニア
アフリカ
南米
廃棄物の問題
おむつを乳幼児・幼児に使用する場合、1日5回から10回程度と、頻繁に交換使用される。布おむつの場合汚れた部分を洗い流し、何度かリユースすることができるが、使い捨ておむつの場合、リユースやリサイクルを前提には作られておらず、吸水部分のみならず、体に固定するカバーに相当する部分も含めて捨てざるを得ない。
イギリスでは下水道に流す者もおり、しばしば下水道内で異物(ファットバーグ)を成長させて詰まらせる原因となる[31]。
日本においては大量の廃棄物を出す原因として、ゴミ処理を行う側の自治体や環境問題に熱心な人々から問題視されることがある。廃棄方法は自治体によって違う可能性はあるが、基本的には、汚物をトイレに捨て、おむつ本体は可燃物として廃棄するよう求められている。また、紙おむつに着いた便をそのままにしてごみに出した結果、収集車がごみを詰め込む過程で破裂してし尿が飛び散るという事故が頻発したことや、乳幼児が外出時に交換した使用済み紙おむつを公園などに捨てることが多発した報告を受け、メーカー側は紙おむつのパッケージに使用済み紙おむつの処分方法のマナーを絵表示している[32]。
2019年10月17日、ユニ・チャームが使用済み紙おむつを原料に新しい紙おむつを製造するリサイクル技術が完成したと発表。2021年春に発売を予定している[33]
おむつなし育児
保護者が乳児の排泄サインを察してサポートし、なるべくおむつの外で排泄する機会を増やしていく育児方法[34]。日本においては、2006年に津田塾大学教授の三砂ちづるが提唱したことが始まりとされている[35]。
「早期トイレトレーニング」ではなく、あくまで、排泄を通した親子のコミュニケーションや、乳幼児にとって気持ち良い排泄をさせ、結果として排泄の自立につなげることを目的としている[34]。
おむつケーキ
紙パンツとの違い
脚注
- ^ “トイレ機能付き宇宙服、NASAが3,4年後めど開発 6日着たままOKで地上の生活も変える?”. 産経新聞. (2017年1月8日) 2022年1月8日閲覧。
- ^ “箱根駅伝、中継車アナは「おむつを履く人も」 元日テレ・羽鳥アナ明かす”. デイリースポーツ. (2022年1月4日) 2022年1月8日閲覧。
- ^ 『はじめて出会う育児の百科』汐見稔幸、榊原洋一、中川洋子 著、小学館、2003年、93と158-160頁
- ^ 授乳・オムツ換え専用車両「ポペッツタウン号」の設置について - プレスリリース[リンク切れ] 横浜元町ショッピングストリート 20090131
- ^ 紙おむつの歴史
- ^ 日本国内においては未熟児用・新生児用はテープ止めタイプのみ展開、ビッグより大きいサイズはパンツタイプのみ展開、乳幼児用ビッグサイズのテープ止めタイプは大王製紙、王子ネピアの2社のみ。
- ^ カッコ内のサイズは大王製紙(グーン、アテント)、3Lサイズのみリブドゥコーポレーションのもの。
- ^ 認知症患者などのおむつ弄り防止のため、紙おむつの上から装着するおむつカバーが市販されている。 (紙おむつ用ホルダーの一例)
- ^ リブドゥコーポレーション ベビー用より大きく大人用より小さいサイズ 開発者の声 Archived 2014年1月7日, at the Wayback Machine.
- ^ 体重が軽い乳幼児や中人(主に小学生までの子供)は前者、体重が重い大人や、乳幼児・中人でも体格が大きかったり、肢体不自由児の場合は後者の差し込み方が多い。
- ^ 一部の公共施設や商業施設の多目的トイレなどに設置してある、大人用のおむつ交換に使用できる折りたたみ式ベッド。(ユニバーサルベッドの一例)
- ^ パンツタイプが普及する1993年頃までは新生児用からビッグサイズや夜尿症対策用に至るまでテープ止めタイプが主流であった。
- ^ ユニ・チャーム社史 1992年 はかせるオムツ『ムーニーマン』発売
- ^ ユニ・チャーム社史 1995年 『ライフリー リハビリ用パンツ』発売
- ^ 『ひよこクラブ』2012年3月号80-84項
- ^ ユニ・チャーム 夜用キッズパンツ オヤスミマン
- ^ 2008年以前は、全サイズで パンパ[リンク切れ](おむつを履いたゾウのキャラクター)を採用。
- ^ 2020年以前はテープタイプ及びパンツタイプでいないいないばあっ!、パンツタイプのみパンツぱんくろう・ポコポッテイトを起用(いずれもNHKのEテレで放送された乳幼児向け番組のキャラクター)。
- ^ エリエール - 「GOO.N」ベビー用紙おむつのあゆみ
- ^ 江村信一キャラクターアートの世界
- ^ ベビカム - 新しい紙おむつブランドが誕生!(2012年4月5日)
- ^ “『ムーニーマン スーパーBig』新発売!”. ユニ・チャーム (2007年8月9日). 2011年5月4日閲覧。
- ^ Webナショジオ - インタビュー中川翔子 第2回「しんかい」に乗って奇跡の旅へ
- ^ GIZMODO - 宇宙飛行士は全員オムツを愛用って知ってた?(動画あり)
- ^ 例えば大王製紙のスーパーBIGサイズには乳幼児用おむつながら医療費控除対象の記述がある。 一方で同社のビッグより大きいサイズやそれ以下のサイズ、ユニ・チャーム、花王などの類似製品にはその記述がない。
- ^ “日本製の紙おむつ買いまくる中国人…「股割パンツ」いらずで電車で用を足す「大便小僧」も一掃”. 産経新聞社. (2014年10月31日) 2014年11月1日閲覧。
- ^ “消えた「メリーズ」…中国人買い占め、転売で〝ボロもうけ〟ついに捜査のメス”. 産経WEST (産経新聞). (2015年1月4日) 2016年10月21日閲覧。
- ^ “紙おむつ爆買いめぐり中国人ら乱闘 数人けが 以前同じ売り場で口論した客同士が鉢合わせ”. 産経WEST (産経新聞). (2015年8月8日) 2016年10月21日閲覧。
- ^ “また紙おむつ爆買いトラブル…中国籍の女が手提げカバンで店長殴り逮捕 和歌山”. 産経WEST (産経新聞). (2016年1月21日) 2016年10月21日閲覧。
- ^ “南太平洋の島国バヌアツ、プラごみ削減で使い捨ておむつ禁止へ”. AFP (2019年2月22日). 2019年2月22日閲覧。
- ^ “油脂の塊「ファットバーグ」がロンドンの下水管をつまらせる”. GIZMODE (2017年10月1日). 2021年5月2日閲覧。
- ^ “日衛連紙おむつNews No.57” (PDF). 社団法人 日本衛生材料工業連合会 (2016年1月1日). 2019年1月8日閲覧。
- ^ 世界初の事業化へ、紙おむつリサイクル技術が完成した!ユニ・チャーム、使用済みを原料に
- ^ a b 「おむつなし育児とは?」 おむつなし育児研究所
- ^ 「日本におけるおむつなし育児の展開」 おむつなし育児京都サロン