真景累ヶ淵
概要
編集- 以上の前半部分と後半部分を組み合わせた、全97章から成る。
1859年(安政6年)の作。当初の演目名は『累ヶ淵後日の怪談』。1887年(明治20年)から1888年(明治21年)にかけて、小相英太郎による速記録が『やまと新聞』に掲載。1888年に単行本が出版された。
「累ヶ淵」の累(かさね)の物語をヒントにした創作で、「真景」は当時の流行語だった「神経」のもじり(圓朝の隣家に住み懇意にしていた漢学者の信夫恕軒が発案者)。
前半部分は特に傑作と言われ、抜き読みの形で発端部の「宗悦殺し」、深見新左衛門の長男新五郎が皆川宗悦の次女お園に片恋慕する悲劇「深見新五郎」、新左衛門の次男新吉と宗悦の長女である稽古屋の女師匠豊志賀との悲恋「豊志賀の死」、豊志賀の弟子お久と新吉のなりゆき「お久殺し」のくだりなどが、現在もしばしば高座にて演じられる。
かつては6代目三遊亭圓生、林家彦六などが得意とし、歌舞伎化や映画化もされている。その後、桂歌丸、林家正雀、五街道雲助、鈴々舎馬桜、11代目金原亭馬生、古今亭志ん輔、柳家三三などが口演している。なお、芝居噺の『累草子』は本作の原話と言われ、林家彦六が演じたものを林家正雀、2代目露の五郎兵衛が受け継ぎ演じられている。
「真景累ヶ淵」は大作ゆえに完全版が語られる事は難しく第七話「お熊の懺悔」まで語られたのは圓朝以後は桂歌丸だけだと言われる(「たぶん私のが圓朝師匠以来じゃないでしょうか」(2006年、朝日新聞のインタビューより)。
新版刊行
編集- 『真景累ヶ淵』 岩波文庫(久保田万太郎解説)、1956年、改版2007年。ISBN 978-4003100325
- 『真景累ヶ淵』 中公クラシックス(小池章太郎・藤井宗哲校注)、2007年。ISBN 978-4121600974
- 『真景累ヶ淵』 角川ソフィア文庫(小松和彦解説)、2018年。ISBN 978-4044003432