羽越しな布(うえつしなふ)は、山形県鶴岡市新潟県村上市の境界付近の集落に伝わる織物。2005年(平成17年)に経済産業大臣指定伝統的工芸品の指定を受けた。しな布の産地である庄内地方の古い国名・羽前と、新潟県の古い国名・越後から、頭2文字をとって名付けられている[1]

概要

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鶴岡市温海地域鼠ヶ関と村上市山北地域の山間部に位置する関川、山熊田の3集落で生産されている[2]。地域に自生するシナノキオオバボダイジュなどシナノキ属落葉樹樹皮(内皮)から取り出した繊維を、糸にして布状に織り上げたものである[2][3][1]。布に仕上げるまでの製作には、21の工程と1年近い歳月を要する[1]。その起源は平安時代まで遡る[1]。丈夫で水に強く、かつては衣類や穀物袋、漁網など生活用品に広く用いられたが、現在は暖簾帽子、ペンケースなどの主に趣味の工芸品として生産されている[2][1]

施設

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さんぽく生業の里(2021年8月)

関川集落には体験・展示・販売などの拠点施設「関川しな織センター」がある。また、山熊田集落には、2000年(平成12年)に有志が設立した体験施設「さんぽく生業の里」がある[2]

脚注

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  1. ^ a b c d e 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 258.
  2. ^ a b c d 特集 国の伝統的工芸品 羽越しな布」(PDF)『市報むらかみ』第124号、村上市、2018年7月1日、2-5頁。 
  3. ^ 大鋸智、植田憲、宮崎清「伝統的ものづくり羽越しな布にみる資源循環型生活の要素の抽出 : 現代における資源循環型社会の志向と比較して」『デザイン学研究』第57巻第6号、2011年、9-18頁、doi:10.11247/jssdj.57.9_2 

参考文献

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  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日。ISBN 978-4-416-61438-9 

関連項目

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外部リンク

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