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[[File:CIRO_emblem.svg|200px|thumb|内閣官房内閣情報調査室紋章]]
'''内閣情報調査室'''（ないかくじょうほうちょうさしつ、{{lang-en|Cabinet Intelligence and Research Office}}）は、[[内閣官房]]の内部組織の一つ（[[情報機関]]）<ref name="内調">[https://kotobank.jp/word/内閣情報調査室-668788#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89 ないかく‐じょうほうちょうさしつ〔‐ジヤウホウテウサシツ〕【内閣情報調査室】 デジタル大辞泉]</ref>。略称は'''内調'''（ないちょう）、'''CIRO'''（サイロ）<ref name="内調" />。

== 概要 ==
[[File:内閣府庁舎.JPG|thumb|200px|内調のある内閣府庁舎]]
[[内閣官房]]に属する[[情報機関]]である<ref name="内調" />。職員数は194名<ref>[https://web.archive.org/web/20190517084525/https://job.rikunabi.com/2020/company/r897122058/ 内閣官房内閣情報調査室]、[[リクナビ]]2020、リクルート、2019年3月1日</ref>。所在地は[[内閣府]]庁舎6階<ref>[[軍事研究]] 2006年 9月号別冊 ワールドインテリジェンスvol2 日本の対外情報機関 p.26</ref>。

[[日本国政府|日本政府]]の[[インテリジェンス・コミュニティー|情報機関]]を代表する取りまとめの役割で、最高位の[[内閣情報官]]は[[指定職]]8号の[[事務次官]]級で、国内外の特異情報の分析を[[内閣総理大臣]]に直接報告している。原則的に定例報告は週2回程度行われている<ref>[https://www.cas.go.jp/jp/saiyou/pdf/panf_2019.pdf 内閣官房内閣情報調査室 採用案内 2019]</ref>。情報収集の手段別では、[[シギント]]（通信情報）は[[情報本部]]が、国内の[[諜報]]や[[防諜]]に関わる[[ヒューミント]]（人的情報）は[[公安調査庁]]や[[公安警察]]がそれぞれ主に担っており<ref>{{Cite web|url=http://j-strategy.com/wp-content/uploads/2016/01/08bcc42a0a22a1e65d529fedc33d8bf5.pdf|title=ビジネスにおけるリスクの早期警戒とインテリジェンスの役割|accessdate=2016-06-07|publisher=戦略検討フォーラム|format=PDF}}</ref>、内調は内閣の重要[[政策]]に関する国内外の[[政治]]や[[経済]]、[[テロリズム|テロ]]などの[[治安]]に関し[[オープン・ソース・インテリジェンス|オシント]]（公開情報）、ヒューミントを中心に担っている<ref>{{Cite web|url=http://www.cas.go.jp/jp/saiyou/saiyou_panf.html|title=国家公務員一般職（大卒程度試験）採用パンフレット|accessdate=2016-07-01}}</ref>。[[2013年]]にはヒューミント専門部署の内調設置が政府内で検討された<ref>{{Cite web|url=http://www.sankei.com/politics/news/130529/plt1305290031-n1.html|title=内調に諜報員配置 情報収集強化へ新部門 政府検討|date=2013-05-29|accessdate=2016-06-07|publisher=産経新聞}}</ref>。内調の下部組織の内閣衛星情報センターは、[[情報収集衛星]]からイミント（画像情報）の収集及び分析を行っている。内調は[[アメリカ合衆国]][[中央情報局]]（CIA）・[[イギリス]][[秘密情報部]]（SIS）などの外国[[政府]]の情報機関との公式なカウンターパートとなっており、ほかに[[合同情報会議]]の事務手続きも行っている。そのため、「日本版CIA」と称されることもある<ref>{{Cite web|title=安倍政権「内調ブーム」に騙されるな――「内調」の虚像と実像 #1|url=https://bunshun.jp/articles/-/13627|website=文春オンライン|accessdate=2019-09-12|first=克朗|last=川邊}}</ref>。

[[日本]]の[[国家安全保障]]に関する司令塔として[[国家安全保障会議 (日本)|国家安全保障会議]]ならびに事務局の[[国家安全保障会議 (日本)#国家安全保障局|国家安全保障局]]が設立されているが、国家安全保障局が国家安全保障に関する政策提言・立案を行うため、内調が必要な情報を国家安全保障局に提供している<ref name=Tsuite>{{Cite web |date= |url=https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ka_yusiki/dai6/siryou1.pdf |title=「国家安全保障会議」について（「国家安全保障会議の創設に関する有識者会議」説明資料） |publisher=内閣官房 国家安全保障会議設置準備室 |accessdate=2013-12-24}}</ref>。この連携のため国家安全保障局の情報班長には内調出向者が当てられている<ref name=sankei1114>{{Cite news |title=ＮＳＣの組織編成全容判明　部門長は防衛省３　外務２、警察１　内調とも連携 |newspaper=産経新聞 |date=2013-11-09 |author= |url=http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131109/plc13110910540002-n2.htm |accessdate=2013-11-14}}</ref>。

内調は生え抜きの職員をはじめとして様々な省庁からの出向者が所属しているが、内閣情報官を筆頭に[[警察庁]]からの出向者が多く、[[霞が関]]では警察庁の[[出先機関]]と捉えられている<ref>{{Cite news |title=前川・前事務次官に激怒して、安倍官邸が使った「秘密警察」 |newspaper=現代ビジネス |date=2017-06-07 |author=週刊現代 |url=http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51891?page=3|accessdate=2018-05-01}}</ref>。

シギントを行っていた情報本部の前身組織のひとつである[[陸上幕僚監部#指揮通信システム・情報部別班|陸上幕僚監部調査部調査第2課別室]]（調別）は、実質的に内閣情報調査室の下部機関で歴代トップは内調から出向してきた[[キャリア (国家公務員)#警察庁（国家公安委員会）|警察官僚]]が占めており<ref>[[朝日新聞]] 2004年 9月21日</ref>、この経緯から現在も情報本部の電波部長は内調出向者の指定席である。

== 歴史 ==
=== 日本版CIA構想の頓挫 ===
内閣情報調査室のルーツは[[総理府]]に設けられた'''内閣総理大臣官房調査室'''である。調査室設置の背景は「[[治安]]関係者だけでなく、各省各機関バラバラと言ってよい国内外の情報を一つにまとめて、これを分析、整理する連絡機関事務機関を内閣に置くべきだ」「外務省情報局に代わるべき内閣直属の情報機関が必要だ」<ref>[[吉原公一郎]] 『謀略列島―内閣調査室の実像』 [[新日本出版社]] p.27</ref>とする[[吉田茂]]首相の意向を受けて、[[戦前]]に[[朝日新聞社]]副社長や[[情報局]]総裁を務めた[[緒方竹虎]][[副総理]]と、元[[内務省 (日本)|内務]]官僚で[[国家地方警察|国家地方警察本部]][[警備課]]長の[[村井順]]を中心に'''日本版CIA構想'''の先駆けとして創設された。

吉田はこの調査室を土台として、組織の拡張または別組織の立ち上げを行うことで日本の[[諜報|インテリジェンス]]機能を強化しようと考えており、国警が「内閣情報室設置運用要綱」を、[[外務省]]が「内閣情報局設置計画書」を、[[公安調査庁#沿革|法務府特別審査局]]が「[[破壊活動防止法#暴力主義的破壊活動とは|破壊活動]]の実態を[[国民]]に周知させる方法等について」をそれぞれ提出するなど、情報機関設置に関して警察・外務・法務各省庁がそれぞれ案を提出した。最終的に村井の案が通り、調査員は各省庁から出向させた。[[1952年]]（昭和27年）[[4月9日]]に総理府内部部局組織規程（[[総理府令]]）の一部改正により、内閣審議室の調査部門を独立させて<ref>[[古川隆久]] 『昭和戦中期の総合国策機関』 [[吉川弘文館]] p.366</ref>、'''内閣総理大臣官房調査室'''が設置された。ほかに法務府特別審査局を発展させた[[公安調査庁]]も[[法務省]]の外局として設置されている。同時期に[[有末精三]]や[[辰巳栄一]]などの旧軍人グループにより「内閣調査室別班」の設立が提唱されて「睦隣会」が発足し、のちに[[世界政経調査会]]となっている<ref>吉原公一郎 『謀略列島―内閣調査室の実像』 新日本出版社 p.28</ref>。

しかし、この後調査室が大規模な「中央情報機関」となる事はなかった。原因の1つは当時の[[世論]]である。緒方は内調を「世界中の情報を全てキャッチできるセンターにする」という構想を持っていたが、これに対して[[読売新聞]]を中心とする全国三紙が「内調の新設は戦前の（[[マスコミュニケーション|マスコミ]]の統制や[[プロパガンダ]]を担った）内閣情報局の復活である」として反対運動を展開した。これにより内閣情報局創設構想は後退を余儀なくされる<ref>今井（2019）：42ページ</ref>。もう一つは内務官僚と外務官僚の縄張り争いであった。インテリジェンスに理解のあった緒方が[[1956年]]に死去したことも大きかった。

[[1957年]]（昭和32年）[[8月1日]]には[[内閣法]]（法律）の一部改正、内閣官房組織令（政令）の施行及び総理府本府組織令（政令）の一部改正により、内閣総理大臣官房調査室が廃止されるとともに、内閣官房の組織として'''内閣調査室'''が設置された。

=== 冷戦時代の内調 ===
[[1955年]]には国際部に「軍事班」が設けられ、元[[大日本帝国海軍|海軍]][[中佐]]の久住忠男らを中心として[[ベトナム戦争]]の推移や[[沖縄県|沖縄]]に駐留する[[在日米軍|アメリカ軍]]の動向などを観察した。

[[安保闘争|60年安保]]をきっかけに内調は論壇の流れをフォローするようになり、安全保障論の育成のために[[中村菊男]]、[[高坂正堯]]、[[若泉敬]]、[[小谷秀二郎]]ら[[現実主義]]的な論客の結集を助け、論議を普及するなどした<ref>大森（2005）：41ページ</ref>。現在でも内調は勉強会を数多く行っており、学識経験者や企業を招いて情勢分析を聞くなどしている<ref>大森（2005）：69ページ</ref>。

[[1977年]]（昭和52年）[[1月1日]]には内閣調査室組織規則の施行により、内部体制が'''総務部門'''、'''国内部門'''、'''国際部門'''、'''経済部門'''、'''資料部門'''の5部門となる。

[[第1次中曽根内閣]]時代には当時[[内閣官房長官]]だった[[後藤田正晴]]の決断により<ref>大森（2005）：41ページ</ref>それまで内閣官房長官に行っていた「長官報告」が「総理報告」に格上げされ、世界的スタンダードである[[政府首脳]]への直接報告体制が確立された。

[[1986年]]（昭和61年）[[7月1日]]に内閣官房組織令の一部改正により、「内閣調査室」から現在の「'''内閣情報調査室'''」となる（5部門体制は継承）。

=== 冷戦後の世界へ ===
[[1995年]]には[[阪神・淡路大震災]]が発生した。この際、政府の立ち上がりが遅れた教訓から[[1996年]]（平成8年）[[5月11日]]に内閣情報調査室組織規則（以下「規則」という）の一部改正により、内部体制に'''内閣情報集約センター'''が加えられた。阪神大震災をきっかけに[[内閣総理大臣官邸|官邸]]が[[自衛隊]]機を飛ばすなどして積極的に情報収集を行ったり、民間との協力体制の確立、マスコミへの情報発信など官邸の情報収集体制や危機管理体制の改革が行われた<ref>大森（2005）：47-48ページ</ref>。

[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]]の[[ミサイル]]や[[核兵器]]も重要な課題であった。米朝が核兵器を巡って対立していた[[1994年]][[2月]]に行われた日米首脳会談で、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]は[[細川護熙]]首相（当時）に強硬策も辞さないとする意志を伝えた。細川は帰国後直ちに米朝開戦に備えて内調に北朝鮮情勢に関する情報収集を指示。内調は「[[空爆]]は最後の手段で、[[海上封鎖]]か[[公海]]上での[[臨検]]が主となるだろう」という情勢見通しを行った<ref>大森（2005）：150ページ</ref>。[[北朝鮮工作員]]による[[破壊活動|破壊工作]]に備えて[[朝鮮戦争]]時の破壊工作の状況について研究を行った。[[金日成]]死去にあたっては米国の情報もあって[[朝鮮人民軍]]の動向を把握しており、体制が安定していることを掴んでいる<ref>大森（2005）：153ページ</ref>。

これらの経験から関係者や国民の間で[[情報収集衛星]]の需要が徐々に高まった。[[1998年]]に[[北朝鮮によるミサイル発射実験 (1998年)|テポドン1号が発射される]]と世論が一気に高まり、[[1999年]]（平成11年）[[3月1日]]に規則の一部改正により内部体制として'''情報収集衛星導入準備室'''が設置され、本格的に情報収集衛星の計画がスタートした。

[[1996年]]（平成8年）〜 [[1998年]]（平成10年）の[[橋本内閣|橋本政権]]で、後藤田正晴の発案で内閣情報局設置法案が用意され、実現一歩手前まで漕ぎ着けていた。これは、「'''内閣情報局'''」を創設して、戦前の情報局を復活させることを目指したものだった<ref>[[文藝春秋 (雑誌)]] 2015年 3月号 [[文藝春秋]] p116</ref>。

[[2001年]]（平成13年）[[1月6日]]には[[中央省庁再編]]に伴う内閣法及び内閣官房組織令の一部改正により、内閣情報調査室長（政令職）が廃止され、'''内閣情報官'''（法定職）へと改称された。[[4月1日]]には内閣官房組織令及び規則の一部改正により、情報収集衛星導入準備室が廃止され内部組織として'''内閣衛星情報センター'''が設置される。室内の他の部門・センターが規則に基づく区分呼称に過ぎないのに対し、このセンターは規則より一段上の政令で設置された内部組織である。7月1日には規則の一部改正により、資料部門が'''情報管理部門'''に改称されたものの、[[2004年]]（平成16年）4月1日には業務は総務・国内・国際の3部門に分散承継され、情報管理部門は廃止された。

[[2008年]]（平成20年）4月1日には規則の一部改正により、内閣情報分析官が新設され、内閣衛星情報センターの「管制部」が「技術部」に改編された。政府内の[[防諜]]を取り扱う「'''カウンターインテリジェンス・センター'''」も設置された。

[[2013年]]11月13日には同月に[[フィリピン]]を襲った[[平成25年台風第30号|台風30号]]の被害状況を情報収集衛星の画像情報、公開情報等を集約した情報を基に作成した[[レイテ島]]の中心都市[[タクロバン]]から南約20キロ、東西約15キロの台風被害の被災状況推定地図を[[非政府組織|NGO]]などの活動支援のため一般提供を開始した<ref>[http://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/20131113chizu.pdf フィリピン台風被災状況推定地図 タクロバン周辺全体]</ref>。

[[2013年]]（平成25年）12月、[[第2次安倍内閣]]で「[[国家安全保障会議 (日本)|国家安全保障会議]]」（日本版NSC）が設立され、[[2014年]]（平成26年）1月、国家安全保障会議の事務局「[[国家安全保障会議 (日本)#国家安全保障局|国家安全保障局]]」が設立された。国家安全保障局は国家安全保障に関する政策提言・立案を行うため、これに資する情報を得る必要があり、内調とのインテリジェンス面での連携強化が必要であり、国家安全保障局の[[参事官#内閣官房|内閣参事官]]の情報班長には内調出向の警察官僚が就任している<ref name="sankei1114"/>。

== 設立時の主要メンバー ==
* [[村井順]]（[[内務省 (日本)|内務]]・[[キャリア (国家公務員)#警察庁（国家公安委員会）|警察官僚]]、[[内閣総理大臣秘書官]]、内務省[[警保局]]公安第一課長、[[国家地方警察本部]][[警備課]]長）
* 前田稔※（[[大日本帝国海軍|海軍]][[中将]]、[[海軍兵学校 (日本)|海兵]]41期、ソ連・中国大使館付武官、第二復員局長）
* 矢部忠太※（[[大日本帝国陸軍|陸軍]][[大佐]]、[[陸軍士官学校 (日本)|陸士]]33期、ソ連大使館付武官）
* 末沢慶政※（海軍大佐、海兵48期、[[海軍省]][[軍務局]]第二課長）
* 浅井勇※（陸軍[[中佐]]、陸士42期、ソ連大使館付武官輔佐官、[[参謀本部 (日本)|参謀本部]]ソ連課参謀）

※内閣総理大臣官房調査室顧問

== 組織 ==
内閣情報調査室は[[内閣情報官]]を長とする[[内閣総理大臣]]直轄の[[諜報|諜報機関]]であり、内閣の重要政策に関する国内外の政治、経済、治安に関する情報を[[内閣総理大臣官邸|総理官邸]]に上げている<ref>幕蓮『官邸ポリス 総理を支配する闇の集団』[[講談社]]、2018年12月10日、P.59、ISBN 978-4-06-513631-7。</ref>。内閣情報調査室は4部門・2センターで、総務部門、国内部門、国際部門、経済部門、内閣情報集約センター、内閣衛星情報センターを置く。各部門の長は慣例的に「[[主幹]]」と称される<ref>大森（2005）：24ページ</ref>。

内閣衛星情報センターを除く4部門・1センターは内閣情報官と次長両者の管理下に属するが、内閣衛星情報センターは内閣情報官の管理にのみ属し他の部署より1ランク上で次長とほぼ同格の扱いで、自前のセンター所長・センター次長の下に内部組織の分課・副センターなどを持ち、[[情報収集衛星]]の管理・分析などを統合的に行っている。ほかに[[防諜|カウンターインテリジェンス]]機能を強化するため、内閣情報官をセンター長とするカウンターインテリジェンス・センターを置く<ref>[http://ichigayadairondan.org/wp/wp-content/uploads/2018/11/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%94%BF%E5%BA%9C%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1%E6%A9%9F%E8%83%BD%EF%BC%88%E7%AC%AC%EF%BC%97%E5%9B%9E%EF%BC%89.pdf　日本政府の情報機能（第７回）]</ref>。

内閣情報官を長として、[[管理職]]の[[審議官#内閣審議官|内閣審議官]]1人、次長1人、[[内閣参事官]]、内閣情報調査室調査官9人、内閣情報分析官6人<ref name=Sankei0529>{{Cite news |title=内調に諜報員配置　情報収集強化へ新部門　政府検討 |newspaper=産経新聞 |date=2013-05-29 |author= |url=http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130529/plc13052901300006-n1.htm |accessdate=2013-09-17}}</ref>、ほかに事務を整理する内閣事務官らが業務に従事している<ref name=panf>[http://www.cas.go.jp/jp/saiyou/panfbasui.pdf 内閣情報調査室パンフレット（抜粋）]</ref>。内調では情報を迅速に伝達するために課係制を採用せず、フラットな組織としている<ref name="panf"/>。

辞令上「専任者」と「他省庁との官職併任者」がおり、時局に応じて専門的知識を持つ出向者などを柔軟に受け入れるために職員数は法令で規定しない。業務の内容から警察官僚の出向者も多い<ref>[http://www.ombudsman.jp/data/kokkaiH240418.pdf　4/18 舛添 問2 今般の北朝鮮のミサイル発射事案を受けて]</ref>。

[[2005年]]（平成17年）4月1日時点の所属職員数は併任者を含み、内調職員として採用された者が約70人、警察庁からの出向派遣者が約40人、公安調査庁から出向派遣者が約20人、防衛庁から出向派遣者が約10人、[[外務省]]、[[総務省]]、[[消防庁]]、[[海上保安庁]]、[[財務省 (日本)|財務省]]、[[経済産業省]]などから若干名の計約170人、と[[郵政国会|第162回国会]]の[[衆議院]][[安全保障委員会]]で[[政府参考人]]が答弁<ref>[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/162/0015/main.html 第162回国会 衆議院安全保障委員会第6号 議事録]、2005年4月8日</ref>している。

=== 内調職員 ===
内調に勤務する職員は、内部職員と警察庁警備局、公安調査庁、防衛省[[情報本部]]、外務省[[国際情報統括官組織]]など[[インテリジェンス・コミュニティー]]からの出向者で構成されている。内部職員は、国家公務員一般職（旧II種）合格者のうち、旧帝大、有名私大等から優秀な人材が毎年数人規模で[[事務官|内閣事務官]]として採用され、入室後、[[人事院]]の主催する初任者研修を受けた後、各部署に配属され、基本的に[[OJT]]によって業務に必要な能力等を学んでいくことになる。最近では、採用人数が昔より微増していると同時に、以前より所管業務が増えたことで組織が大きくなったため、新規採用者は、最初の概ね数年間は情報業務を担う国際部や国内部などではなく、総務部に配属される傾向がある。総務部での基礎的業務を終えた後、情報業務に携わる国際部、国内部、経済部等に本人の適性を考慮した上で配属され、大学や研究機関での研修、[[警察大学校]]での語学研修、[[在外公館]]への出向、ほかに防衛省等への出向などのキャリアを積みながら[[主査]]あるいは情報専門官（情報専門官、上席情報専門官、特任情報専門官と昇格する）を経て管理職への道が開かれる<ref name="panf"/>。内部職員は情報収集あるいは情報分析の専門家として[[キャリアパス]]を想定した採用だが、最近は[[特定秘密の保護に関する法律|特定秘密保護法]]を所管するなどの理由で、一般行政官庁的業務が増加し、近年入庁した若手の内部職員は情報業務の訓練が十分にされておらず、情報の[[専門家]]が育ちにくいという問題もあるという。一方、独自採用で国家[[総合職]]をとっていないことから、他省庁と比べて研修受講など、キャリア形成のチャンスは多いようである。

加えて、内調プロパーは、内閣の重要政策に関する情報収集・分析に2年程度で出身省庁に戻ってしまう出向者と異なり、長く携わることができるため、内閣総理大臣や内閣官房長官が必要とする内閣の重要政策に資する情報収集及び分析のプロフェッショナルとして、[[日本の公務員|日本の政府機関職員]]の中でも、特殊な立場といえる。

プロパー職員は、国内外の人的情報収集である[[ヒューミント]]に携わる[[スパイ|ケースオフィサー]]、公開情報である[[オシント]]や秘密情報に基づいて分析する[[アナリスト]]、総務部などでマネジメント業務を行う[[行政職]]に大別される。

===業務の特性===
内閣情報調査室は、[[内閣官房]]に設置されている[[内閣 (日本)|内閣]]直属の情報機関であり、実質的な[[内閣総理大臣官邸]]直属の情報機関として内閣の重要政策に関する情報の収集分析が所管業務となっていることから<ref>小林良樹『なぜ、インテリジェンスは必要なのか』[[慶應義塾大学出版会]]、2021年6月25日、P.111-112、ISBN 978-4-7664-2752-3。</ref>、治安維持のための情報収集を目的とする警察や公安調査庁とは、収集すべき情報の種類が異なり、内閣が重要な政策を遂行する上で必要とされる情報を対象としており、国内や国外の情勢により求められる情報が変化する<ref>今井（2019）: 36ページ</ref>。

[[民主党 (日本 1998-2016)|民主党]]政権下では、[[小沢グループ]]の動向が最大の関心事と位置づけられており、[[国民民主党代表選挙|民主党代表選]]での票読みや造反者の動向、[[日本の地方議会|地方議会]]の情勢など、いわば「国内政治情報」の収集などにも当たってきた<ref>[https://www.sentaku.co.jp/articles/view/11178 「内閣情報調査室」解体のすすめ | 【公式】三万人のための総合情報誌 選択]</ref>。

[[安倍晋三]]政権下では、選挙の街頭演説における、いわば「ご当地ネタ」の収集などにも当たってきた{{refnest | group=注釈 | 「ご当地ネタ」の例は埼玉県の「太麺やきそば」への言及や、山形県で米の品種の「[[つや姫]]」を輸出した、というもの。ただし、これらの内どれを内閣情報調査室が収集したかは不明<ref name="朝日新聞 2018-07-27" />。}}。残っている報告書の中で、2008年より前のものでは、1選挙区当たりA4用紙1枚、2018年頃では多い時で30枚にものぼる事がある<ref name="朝日新聞 2018-07-27">{{cite news | title=政府も党も 進む「私的機関」化 | publisher=朝日新聞 | date=2018-07-27 }}</ref>。

また、[[政治家]]の[[スキャンダル]]収集、[[国務大臣|閣僚]]候補に対する[[身体検査]]、[[政治|政局]]や[[世論]]の動向の調査も行っており、ほかの情報官庁と比して政治色の強い情報の収集を行っている<ref>[http://www.iza.ne.jp/article/20170802-TYJTNH3EY5JL3AIQHP2MB23FBU/2/ ３日改造もオンナ、カネに悪戦苦闘…大物議員醜聞脱落　野田聖子氏起用も検討]<br />[http://www.nikkei.com/article/DGXDZO04139810W0A310C1MM8001/ 948人の最高権力者　世論引き戻す妙手は…: 日本経済新聞]</ref>。

=== 組織図 ===
<div style="border:1px solid #aaa; margin-left:1em; padding:1em; overflow:auto">
{{Tree list}}
* 内閣情報官
** 次長
*** {{Tree list/branching}}
**** 総務部門
**** 国内部門
**** 国際部門
**** 経済部門
**** {{Tree list/final branch}} 内閣情報集約センター
*** 内閣情報分析官
** {{Tree list/final branch}} 内閣衛星情報センター
{{Tree list/end}}
: カウンターインテリジェンス・センター
: 国際テロ情報集約室
</div>

*総務部門：人事、予算、室内の総合調整、総合分析、学識経験者の意見取りまとめ、政府全体の情報機能の強化業務などを扱う<ref name="cas" />。
*国内部門：国民の意見や政治情報の収集分析や国内の新聞・放送・雑誌などの論調分析を行う<ref name="cas" />。
*国際部門：国外の政策に関する情報収集・分析や新聞・放送・雑誌などの論調分析に加え、日本国の情報機関の代表として各国の情報機関との情報交換（コリント）を行うとともに防衛省情報本部から入るシギント（電波傍受）情報も扱う<ref name="cas" />。
*経済部門：国内外の経済状況の分析を行う<ref name="cas" />。
*内閣情報集約センター：[[#内閣情報集約センター|下記]]で詳述。
*内閣情報分析官：特定の地域や分野に関する分析を行う<ref name="cas" />。
*内閣衛星情報センター：[[#内閣衛星情報センター|下記]]で詳述。
*カウンターインテリジェンス・センター：政府の定めた「[[防諜|カウンターインテリジェンス]]機能の強化に関する基本方針」に基づいて政府内の防諜に関する連絡調整を行う組織。カウンターインテリジェンス・センターは、日本版CIAの原型となる組織であるとされ、創設には[[安倍晋三]]が尽力したという<ref>窪田順生 『スピンドクター モミ消しのプロが駆使する「情報操作」の技術』 [[講談社+α新書]] p.101</ref>。内閣情報官がセンター長を兼務する。
*国際テロ情報集約室：[[国際テロ情報収集ユニット]]の活動調整や、国際テロ情報の集約、情報収集の連絡調整を行う組織。[[内閣官房副長官]]（事務）が室長、内閣情報官が室長代理を兼務する<ref name="cas">[https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jyouhoutyousa/soshiki.html　内閣情報調査室の組織体制について]</ref>。

==歴代内閣情報官==
{|class="wikitable"
|+歴代内閣情報官（前身を含む）
|-
!代!!氏名!!在任期間!!前職!!後職!!備考
|-
|colspan="6"|'''内閣総理大臣官房調査室長【総理府事務官】'''
|-
|1||rowspan="2"|[[村井順]]||1952.4.9 - 1953.4.1||rowspan="2"|[[国家地方警察|国家地方警察本部]]<br />警備部警備課長||rowspan="2"|[[国家公安委員会]]出向||国家地方警察[[警視長]]兼任
|-
|2||1953.4.1 - 1953.12.18||専任
|-
|事代||鈴木耕一||1953.12.18 - 1954.1.27||colspan="2"|事務代理||
|-
|3||木村行藏||1954.1.27 - 1955.7.1||国家地方警察本部<br />警務部人事課長||警察参事官（警察庁警務部付）<br />→1955.10.15[[広島県警察]]本部長||
|-
|4||[[古屋亨]]||1955.7.1 - 1957.8.1||[[警視庁]][[総務部 (警察)|総務部]]長||内閣官房内閣調査室長||
|-
|colspan="7"|'''内閣官房内閣調査室長【内閣調査官】'''
|-
|1||古屋亨||1957.8.1 - 1962.5.8||内閣総理大臣官房調査室長||[[総理府総務副長官]]（事務担当）||
|-
|2||[[石岡実|石岡實]]||1962.5.8 - 1964.7.28||[[九州管区警察局]]長<br />→警察庁警務局付||[[内閣官房副長官]]（事務担当）||
|-
|事代||吉村又三郎||1964.7.28 - 1964.7.31||colspan="2"|内閣官房内閣調査室次長として<br />内閣官房内閣調査室長事務代理||
|-
|3||本多武雄||1964.7.31 - 1966.3.5||[[皇宮警察本部]]長||[[関東管区警察局]]長||
|-
|4||大津英男||1966.3.5 - 1971.1.22||警察庁警務局長||退職<br />→1971.5.1[[日本道路公団]]監事||
|-
|5||[[川島廣守]]||1971.1.22 - 1971.11.25||警察庁警務局長||内閣官房副長官（事務担当）||
|-
|事代||原富士男||1971.11.25 - 1973.11.27||colspan="2"|内閣官房内閣調査室次長として<br />内閣官房内閣調査室長事務代理||
|-
|6||[[富田朝彦]]||1973.11.27 - 1974.11.26||警視庁副総監<!--警視副総監は俗称。正式職名には「庁」が入る-->||[[宮内庁]]次長||
|-
|事取||川島廣守||1974.11.26 - 1974.11.29||colspan="2"|内閣官房副長官（事務担当）として<br />内閣官房内閣調査室長事務取扱||
|-
|7||[[渡部正郎]]||1974.11.29 - 1977.8.20||内閣総理大臣官房広報室長<br />兼内閣官房内閣広報室長<!--建制順では内閣官房が先だが本件辞令では総理府が本務で内閣官房が兼官となっていて実際この順で表記されている-->||退職||
|-
|事代||伊達宗起||1977.8.20 - 1977.8.23||colspan="2"|内閣官房内閣調査室次長として<br />内閣官房内閣調査室長事務代理||
|-
|8||[[下稲葉耕吉|下稻葉耕吉]]||1977.8.23 - 1979.2.2||[[大阪府警察]]本部長<br />→警察庁警務局付||警察大学校長||
|-
|9||[[森永正比古]]||1979.2.2 - 1980.8.18||[[警察庁刑事局]]保安部長||退職||
|-
|10||[[福田勝一]]||1980.8.18 - 1982.5.20||警視庁副総監||警察庁警務局長||
|-
|11||[[鎌倉節]]||1982.5.20 - 1984.2.17||警視庁副総監||警察大学校長||
|-
|12||谷口守正||1984.2.17 - 1986.7.1||大阪府警察本部長||内閣官房内閣情報調査室長||
|-
|colspan="7"|'''内閣官房内閣情報調査室長【内閣調査官】'''
|-
|1||谷口守正||1986.7.1 - 1987.6.16||内閣官房内閣調査室長||退職||
|-
|2||大高時男||1987.6.16 - 1989.6.30||皇宮警察本部長||退職||「高」ははしご高（{{CP932フォント|髙}}）
|-
|3||森田雄二||1989.6.30 - 1992.9.1||[[警察庁長官官房]]長||退職||
|-
|4||金田雅喬||1992.9.1 - 1993.3.8||警察大学校長||警察大学校長<!--異例の出戻り人事-->||
|-
|5||[[大森義夫 (官僚)|大森義夫]]||1993.3.8 - 1997.4.4||警察大学校長||退職||
|-
|6||[[杉田和博]]||1997.4.4 - 2001.1.5||警察庁[[警備局]]長||内閣情報官||
|-
|colspan="7"|'''内閣情報官'''
|-
|1||杉田和博||2001.1.6 - 2001.4.1||内閣官房内閣情報調査室長||[[内閣危機管理監]]||
|-
|2||rowspan="4"|兼元俊徳||2001.4.1 - 2001.4.26||rowspan="4"|警察大学校長||rowspan="4"|[[シティユーワ法律事務所]]オブ・カウンセリング<br />[[JXホールディングス]]監査役<br />[[野村ホールディングス]]取締役<br />[[野村證券]]取締役<br />[[リケン]]取締役<br />[[日本テレビホールディングス]]監査役<ref>[http://www.ntvhd.co.jp/ir/holder/meeting/pdf/82_1.pdf 第82期定時株主総会召集ご通知 51頁] - 日本テレビホールディングス株式会社。</ref>||rowspan="4"|
|-
|3||2001.4.26 - 2003.11.19
|-
|4||2003.11.19 - 2005.9.21
|-
|5||2005.9.21 - 2006.4.1
|-
|6||rowspan="5"|三谷秀史||2006.4.1 - 2006.9.26||rowspan="5"|警察庁警備局外事情報部長||rowspan="5"|[[拉致問題対策本部]]事務局長代理を経て[[内閣官房参与]]||rowspan="5"|
|-
|7||2006.9.26 - 2007.9.26
|-
|8||2007.9.26 - 2008.9.24
|-
|9||2008.9.25 - 2009.9.16
|-
|10||2009.9.16 - 2010.4.2
|-
|11||rowspan="3"|[[植松信一]]||2010.4.2 - 2010.6.8||rowspan="3"|大阪府警察本部長||rowspan="3"|内閣官房参与を経て[[世界政経調査会]]会長、[[三井住友銀行]]顧問||rowspan="3"|
|-
|12||2010.6.8 - 2011.9.2
|-
|13||2011.9.2 - 2011.12.27
|-
|14||rowspan="2"|[[北村滋]]||2011.12.27 - 2012.12.26||rowspan="2"|警察庁警備局外事情報部長<br />→警察庁長官官房総括審議官||rowspan="2"|[[国家安全保障会議 (日本)#国家安全保障局|国家安全保障局長]]||rowspan="2"|
|-
|15||2012.12.26 - 2019.9.11
|-
|16||[[滝沢裕昭]]||2019.9.11 - ||内閣官房内閣情報調査室内閣審議官|| ||
|}

== 内閣情報集約センター ==
官邸地下に設置され、大規模災害など緊急事態における情報の集約・分析・連絡と体制整備を行う<ref name=Kuroi161>黒井（2007）：161ページ</ref>。阪神大震災の際に官邸の情報収集体制が機能しなかった反省から、1995年（平成7年）2月21日に内調を大規模災害などが発生した際に被害状況や応急対応に関する情報の伝達窓口とすることが閣議決定された。また、翌1996年（平成8年）5月11日には、緊急な重要情報を24時間体制で収集するための「内閣情報集約センター」が内調に設置された<ref>[https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2013pdf/20131202015.pdf 我が国の情報機能・秘密保全 - 参議院]</ref>。元々は国際部にあった「国際2部」という部門を改組したものである。人員は[[防衛省]]、警察庁、消防庁、海上保安庁から出向した職員からなる<ref name=Kuroi167>黒井（2007）：167ページ</ref>。

組織は緊急時の連絡網を整備する「システム整備班」、内外のマスコミの報道をチェックする「庶務班」、通信社のフラッシュを整理する「ニュース班」からなり、5個班がローテーションで常駐して24時間体制で内閣に入る大規模災害や重大な事故・事件に関する情報を処理している。防衛省、警察庁、消防庁、海上保安庁、[[気象庁]]等と直通の[[ホットライン]]等で結ばれている<ref name="Kuroi167"/>ほか通信社との専用回線も保有しており、緊急時には[[自衛隊]]や[[都道府県警察航空隊|警察のヘリコプター]]を利用して[[ヘリコプターテレビ中継システム|ヘリテレ]]を使った情報収集も行う<ref name="panf"/>。

また、官邸地下には内閣情報集約センターからの一報を受けて、事態対処を行う[[内閣総理大臣官邸#危機管理センター|官邸危機管理センター]]も設置されている<ref name="千葉">[https://www.pref.chiba.lg.jp/bousai/event/2018/documents/kouenroku.pdf 千葉県危機管理フォーラム2018 p.55 ]</ref>。実際に緊急事態が発生した場合にはすぐに内調から内閣総理大臣に報告され初動対応態勢が整えられる。初動体制が整えられると官邸危機管理センターに[[内閣危機管理監]]と、これを補佐する「[[内閣官房副長官補#内閣官房事態室|内閣官房副長官補（事態対処・危機管理担当）付]]」（通称「事態室」<ref>[https://www.nhk.or.jp/politics/salameshi/5464.html 外出なんて無理！“危機管理”弁当 | 永田町・霞が関のサラめし | NHK政治マガジン]</ref>）の職員が参集する仕組みとなっている<ref>大庭誠司『シン・ゴジラが語る我が国の危機管理』[[近代消防社]]、2020年7月15日、P.1-6、ISBN 978-4-421-00939-2。</ref>。

== 内閣衛星情報センター ==
英称：Cabinet Satellite Intelligence Center（略称CSICE）。「中央センター」、「情報分析センター」とも呼ばれる。日本国の安全の確保、大規模災害への対応その他の内閣の重要政策に関する画像情報の収集を目的とする[[情報収集衛星]]の運用、情報収集衛星により得られる画像情報の分析その他の調査に関する事項及び情報収集衛星以外の[[人工衛星]]の利用その他の手段により得られる画像情報の収集及び分析その他の調査に関する事項を担当する組織。[[東京都]][[新宿区]][[市谷本村町]]に所在する。定数は219名（2011年7月現在）<ref name="答弁第286号">[https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b177286.htm 衆議院議員吉井英勝君提出大規模災害時における情報収集衛星の活用に関する質問に対する答弁書]、2011年（平成23年）7月8日受領 答弁第286号</ref>。

[[1999年]]に設けられた情報収集衛星導入準備室を発展して[[2001年]]に設置された。[[2018年]]6月までに光学衛星6機、光学実証衛星2機、レーダ衛星7機（予備機含む）の情報収集衛星を軌道に上げ、光学衛星とレーダー衛星の2組4機で運用するほか、[[日本スペースイメージング]]から[[イコノス]]、[[デジタルグローブ]]から[[クイックバード]]と[[WorldView-1|ワールドビュー1]]の画像を買い取り分析していたことが判明している<ref>竹内（2009）：28ページ</ref>。

機密保持を徹底するため、[[プリンター]]は設置されず[[インターネット]]接続機器や[[記録媒体]]などの持ち込みは厳禁で、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の衛星情報も扱うために[[アメリカ国家地球空間情報局]]に倣い、私物は「[[バケツ|ビニルバケツ]]」に入れて管理する規則でかばんなどの持ち込みは厳禁である。衛星情報は各省庁共通の「衛星秘密」を設けており安全が確認されない限り機密情報を扱えない<ref>小谷（2007）：209ページ</ref>。

在日ロシア大使館のコンスタンチン・ベラノフ二等書記官らに、内調職員が情報を漏洩したベラノフ事件は、内閣衛星情報センターの衛星画像が漏洩した<ref>竹内（2009）：22-33ページ</ref>。

=== 組織編制 ===
*所長（[[将]]で[[退職]]した幹部[[自衛官]]が、内閣[[事務官]]として務める<ref>就任・退任は[[閣議 (日本)|閣議]]を経て発令される</ref>。[[指定職]]6号で次官級[[審議官]]と同格。）
*次長（[[警察庁]]から[[警視監]]が出向、官名は内閣事務官。指定職3号で局次長級で内閣官房の[[審議官#内閣審議官|内閣審議官]]と同格。）
*管理部（総務課、会計課、運用情報管理課）
*分析部（管理課、主任分析官5人）
*技術部（企画課、管制課、主任開発官3人）
*総括開発官1人（警察庁技官の出向）
*副センター（別称・北浦副センター：中央センターのバックアップ、撮影データのメイン受信局。[[茨城県]][[行方市]]長野江）
*北受信管制局（別称・苫小牧受信管制局：副センターの受信域外のカバー。[[北海道]][[苫小牧市]]）
*南受信管制局（別称・阿久根受信管制局：副センターの受信域外のカバー。[[鹿児島県]][[阿久根市]]）
**副センターなど施設の[[銘板]]に別称を使用している例もあるが、規則上・辞令上の正式な名称は左記のものである。

=== データ ===
; 利用目的
: 外交・防衛等の安全保障及び大規模災害等への対応等の危機管理のために必要な情報の収集（外交等の安全保障及び危機管理）
; 利用省庁
: 総理官邸、内閣官房、外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁、[[国土交通省]]（海上保安庁、[[国土地理院]]）、経済産業省、消防庁など

{|class="wikitable"
|+歴代の内閣衛星情報センター所長
|-
!代!!氏名!!在任期間!!前職
|-
|1||[[國見昌宏]]||2001.4.1 - 2005.3.31||[[情報本部]]長
|-
|2||[[小田邦博]]||2005.4.1 - 2008.8.31||[[航空総隊司令官]]
|-
|3||[[椋木功]]||2008.9.1 - 2012.10.1||情報本部長
|-
|4||[[下平幸二]]||2012.10.1 - 2016.3.31||情報本部長
|-
|5||[[木野村謙一]]||2016.4.1 - 2018.7.20 ||情報本部長
|-
|6||[[宮川正]]||2018.7.20 - 2022.4.1||情報本部長
|- 
|7||[[納冨中]]||2022.4.1 - ||情報本部長 
|}

== 内閣情報会議 ==
日本国や[[日本国民]]の安全に関する情報のうち、内閣の重要政策に関するものについて、官邸と[[外交]]・[[防衛]]・治安等の情報を担当する省庁が緊密に連携して情勢を総合的に把握するため、原則として年2回開催される[[内閣情報会議]]が設置されている。この内閣情報会議の下には[[合同情報会議]]、情報収集衛星推進委員会、情報収集衛星運営委員会が置かれており、内閣情報調査室はこれらの会議の運営を担当している。

== 情報調査委託団体 ==
内閣情報調査室は[[シンクタンク]]などに調査の一部を委託している。なかでも世界政経調査会、国際情勢研究会、国民出版協会は幹部に内調や警察のOBが就任しており、資金もほとんどが内調から支出されるなど、事実上内調の「別働隊」として機能している<ref name=Kuroi169>黒井（2007）：169ページ</ref>。これらのシンクタンクは公開情報を元に海外の情勢や国内メディアの動向を分析する活動を行っている<ref name="Kuroi169"/>。

=== 内閣官房から情報調査委託費が交付されている団体 ===
出典：<ref>[http://www8.cao.go.jp/koueki-co/co-list.html 内閣府本府等所管公益法人一覧]</ref>

※は補助金依存型公益法人（国から交付された補助金等が年間収入の3分の2以上を占める公益法人）

*財団法人[[世界政経調査会]] ※
*社団法人[[国際情勢研究会]] ※
*社団法人国民出版協会 ※
*社団法人[[内外情勢調査会]]

=== 過去に情報調査委託費の交付が確認されている団体 ===
出典：<ref>[http://kokkai.ndl.go.jp/ 国会会議録検索システム]</ref><ref>[http://www.cas.go.jp/jp/yosan/zaimu/04zaimu.pdf 内閣 平成16年度省庁別財務書類]</ref>
*アジア動態研究所
*アジア問題研究会
*海外事情調査所
*社団法人[[共同通信社]]
*株式会社共同通信社
*国際経済調査会
*国際問題研究会
*株式会社[[時事通信社]]
*ジャパン・オバシーズ・ニューズ・センター
*東京出版研究会
*社団法人東南アジア調査会（平成15年〈[[2003年]]〉度末に世界政経調査会と統合）
*内外事情研究会
*日本社会調査会
*[[日本文化研究所]]
*[[日本放送協会]]（NHK）
*社団法人民主主義研究会（平成15年〈2003年〉度末に国際情勢研究会と統合）
*財団法人[[ラヂオプレス]]

== 脚注 ==
=== 脚注 ===
{{reflist | group=注釈 }}
=== 出典===
{{reflist|2}}

== 参考文献 ==
*『[[軍事研究]]』2006年9月号別冊 『ワールドインテリジェンスvol2 日本の対外情報機関』 ジャパン・ミリタリーレビュー 2006年
*[[大森義夫]]『日本のインテリジェンス機関』、[[文藝春秋]]〈[[文春新書]]〉 2005年
*[[黒井文太郎]]『日本の情報機関』[[講談社]]〈[[講談社+α新書]]〉 2007年
*[[竹内明]]『ドキュメント秘匿捜査 警視庁公安部スパイハンターの344日』 [[講談社]] 2009年
* {{Cite book|和書 |author=[[小谷賢]] |title=日本軍のインテリジェンス―なぜ情報が活かされないのか |publisher=講談社 |series=[[講談社選書メチエ]] |date=2007-4-11 |isbn=978-4062583862 }}
*[[窪田順生]] 『スピンドクター モミ消しのプロが駆使する「情報操作」の技術』講談社〈講談社+α新書〉 2009年
* {{Cite book|和書 |author= 志垣民郎著、岸俊光編 |title=内閣調査室秘録―戦後思想を動かした男 |publisher=[[文藝春秋]] |series=[[文春新書]] |date=2019-7-19 |isbn=978-4-16-661226-0}}
*『[[文藝春秋 (雑誌)|文藝春秋]]』 2015年3月号 文藝春秋 2015年
*「深層海流・現代官僚論」 [[松本清張]]全集31
* 『[https://www.sentaku.co.jp/articles/view/11178 「内閣情報調査室」解体のすすめ - 世界最低の「情報機関」]』 「[[選択 (雑誌)|選択]]」 2011年12月号
*[[今井良]]『内閣情報調査室』[[幻冬舎]]〈[[幻冬舎新書]]〉 2019年

== 関連項目 ==
*[[情報収集衛星]]
*[[情報機関]]
*[[情報局]]：1940年から敗戦まで存在した[[内閣 (日本)|内閣]]直属の情報機関。内閣総理大臣官房調査室のモデルの一つとなった機関であり、戦後、多数の人材が調査室に入った。
*[[心理戦略委員会]](PSB)：内閣総理大臣官房調査室のモデルの一つとなったアメリカの機関。[[作戦調整委員会]]を経て廃止。
*[[警察庁]][[警備局]]
*[[公安警察]]
*[[防衛省]][[情報本部]]
*[[情報本部#組織|DFS]]:防衛省情報本部電波部

== 外部リンク ==
* [http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jyouhoutyousa.html 内閣情報調査室]
** {{PDFlink|[http://www.cas.go.jp/jp/saiyou/pdf/panfbassui2011.pdf 内閣情報調査室パンフレット]}}
* [https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jyouhoutyousa/index.html 内閣のインテリジェンス]
* [https://web.archive.org/web/20121027111228/http://www.cas.go.jp/jp/hourei/seirei/naikaku_s.html 内閣官房組織令]
* [https://www.kantei.go.jp/jp/gyokaku/houmu616.html （参考）外国の主な情報・団体規制機関の所属組織等]

{{日本の情報機関}}

{{DEFAULTSORT:ないかくしようほうちようさしつ}}
[[Category:内閣情報調査室|*]]
[[Category:日本の公安]]
[[Category:1952年設立の政府機関]]