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「ウルシオール」の版間の差分

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'''ウルシオール'''(Urushiol)は[[ウルシ科]]の植物、特[[ウルシ属]]に多く含まれている物質である。また[[カシューナッツ]]の殻や[[マンゴー]]の果実の皮にも見られる。触れると皮膚に[[発疹]]を生じることがある。語源は日本語の[[漆]]である。湿潤な気候の下で樹液が酸化、重合すると粘度の高い液体となり、伝統的な[[漆器]]の製造に用いられる。
'''ウルシオール''' (Urushiol) は[[ウルシ科]]の植物、特に[[ウルシ属]]に多く含まれている[[物質]]である。[[真島利行]]が[[構造決定]]し、三山喜三郎が命名した。


== 解説 ==
ウルシオールは沸点が200〜210℃の淡黄色の液体で、[[アルコール]]と[[エーテル (化学)|エーテル]]に可溶であるが、水にはほぼ不溶である。化学的には、ウルシオールはいくつかの構造のよく似た化合物の混合物である。それぞれは15-17個の炭素からなるアルキル鎖が置換した[[カテコール]]である。アルキル鎖は飽和のものも不飽和のものもあり、ウルシオールにはこれらが混在している。混合物の割合は原料の種によって決まっている。例えば、''Toxicodendron diversilobum''のウルシオールにはC<sub>17</sub>の側鎖がついたカテコールが多く含まれるが、''Toxicodendron radicans''''Toxicodendron vernix''のウルシオールにはC<sub>15</sub>のものが多い。触れた場合の発疹の出方は側鎖の飽和度に依存する。飽和側鎖のウルシオールでかぶれる人の割合は半分以下だが、不飽和のウルシオールでは90%以上の人がかぶれる。
ウルシオールは[[ウルシ科]]の多くの植物に含まれ[[カシューナッツ]]の殻や[[マンゴー]]の果実の皮にも見られる。触れると[[皮膚]]に[[発疹]]を生じることがある。語源は日本語の[[漆]]である。湿潤な環境の下で樹液が[[酸化]][[重合]]すると粘度の高い液体となり、伝統的な[[漆器]]の製造に用いられる。20世紀初頭には、ウルシオールの化学反応によって漆の固化が生じることが明らかにされた<ref>山本勝巳『漆百科』丸善 p.1</ref>


ウルシオールは[[沸点]]摂氏200 - 210度の淡黄色の粘稠な液体で、[[アルコール]]と[[エーテル (化学)|エーテル]]に可溶であるが、水にはほぼ不溶である。化学的には、ウルシオールはいくつかの構造のよく似た[[化合物]][[混合物]]である。それぞれは15 - 17個の[[炭素]]からなるアルキル鎖が置換した[[カテコール]]である。アルキル鎖は飽和のものも不飽和のものもあり、ウルシオールにはこれらが混在している。混合物の割合は原料の種によって決まっている。例えば、{{snamei||Toxicodendron diversilobum}} ({{Lang-en-short|poison oak}}) のウルシオールには C{{sub|17}} の側鎖がついたカテコールが多く含まれるが、[[ポイズンアイビー]](英: {{en|poison ivy}}; [[学名]]: {{snamei||Toxicodendron radicans}}) {{snamei||Toxicodendron vernix}} (英: {{en|poison sumac}}) のウルシオールには C{{sub|15}} のものが多い。触れた場合の発疹の出方は側鎖の飽和度に依存する。飽和側鎖のウルシオールでかぶれる人の割合は半分以下だが、不飽和のウルシオールでは 90{{nbsp}}[[%]] 以上の人がかぶれる。
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== ウルシオールに似た物質 ==
==関連項目==
* [[ラッコール]] (laccol) - [[ツタウルシ]]の葉などに含まれる。
*[[ハプテン]]
* [[チチオール]] (thitsiol) - [[タイ王国|タイ]]・[[ミャンマー]]産の漆([[ビルマウルシ]]; 学名: {{Snamei||Gluta usitata}}; {{Lang-my|[[wikt:သစ်စေး|သစ်စေး]]}}、[[国際音声記号|IPA]]: {{ipa|sɪʔsí~t̪ɪʔsí}}<ref name="to">{{Cite book|和書|last=大野|first=徹|authorlink=大野徹|title=ビルマ(ミャンマー)語辞典|publisher=大学書林|year=2000|page=734|isbn=4-475-00145-5|ref=harv}}</ref> {{small|スィッスィーあるいはティッスィー}}; 西欧の文献における慣用表記: thitsi)に多く含まれる。
*[[マンゴー]]
* マンゴール [[マンゴー]]に含まれる。
*[[毒]]
* カルドール 同上。
*[[ピスタチオ]]

*[[カシューナッツ]]
== 脚注 ==
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
{{Commonscat}}
* [[ウルシ科]]
* [[カシューナッツ]]
* [[ヌルデ]]
* [[ハプテン]]
* [[ピスタチオ]]
* [[マンゴー]]
* [[毒]]
* [[接触皮膚炎]]

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2024年5月22日 (水) 09:27時点における最新版

ウルシオール (Urushiol) はウルシ科の植物、特にウルシ属に多く含まれている物質である。真島利行構造決定し、三山喜三郎が命名した。

解説

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ウルシオールはウルシ科の多くの植物に含まれ、カシューナッツの殻やマンゴーの果実の皮にも見られる。触れると皮膚発疹を生じることがある。語源は日本語のである。湿潤な環境の下で樹液が酸化重合すると粘度の高い液体となり、伝統的な漆器の製造に用いられる。20世紀初頭には、ウルシオールの化学反応によって漆の固化が生じることが明らかにされた[1]

ウルシオールは沸点が摂氏200 - 210度の淡黄色の粘稠な液体で、アルコールエーテルに可溶であるが、水にはほぼ不溶である。化学的には、ウルシオールはいくつかの構造のよく似た化合物混合物である。それぞれは15 - 17個の炭素からなるアルキル鎖が置換したカテコールである。アルキル鎖は飽和のものも不飽和のものもあり、ウルシオールにはこれらが混在している。混合物の割合は原料の種によって決まっている。例えば、Toxicodendron diversilobum (: poison oak) のウルシオールには C17 の側鎖がついたカテコールが多く含まれるが、ポイズンアイビー(英: poison ivy; 学名: Toxicodendron radicans)や Toxicodendron vernix (英: poison sumac) のウルシオールには C15 のものが多い。触れた場合の発疹の出方は側鎖の飽和度に依存する。飽和側鎖のウルシオールでかぶれる人の割合は半分以下だが、不飽和のウルシオールでは 90 % 以上の人がかぶれる。

図 R = (CH2)14CH3
R = (CH2)7CH=CH(CH2)5CH3
R = (CH2)7CH=CHCH2CH=CH(CH2)2CH3
R = (CH2)7CH=CHCH2CH=CHCH=CHCH3
R = (CH2)7CH=CHCH2CH=CHCH2CH=CH2

ウルシオールに似た物質

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脚注

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  1. ^ 山本勝巳『漆百科』丸善 p.1
  2. ^ 大野, 徹『ビルマ(ミャンマー)語辞典』大学書林、2000年、734頁。ISBN 4-475-00145-5 

関連項目

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