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「エボラ出血熱」の版間の差分

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| eMedicineTopic = 626
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{{Infobox medical condition (new)
| name = エボラ出血熱
| synonyms = Ebola hemorrhagic fever
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| field = [[感染症]]
| symptoms = [[発熱]]・[[頭痛]]・[[筋肉痛]]・[[嘔吐]]・[[下痢]]など
| complications = [[脱水症状]]、[[播種性血管内凝固症候群]]など
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| causes = [[エボラウイルス]]
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| treatment = [[輸液]]による全身状態の改善など
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| prognosis = 致死率50〜80%
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[[File:Ebolafälle bis einschließlich 2020 english.png|サムネイル|350px|エボラ出血熱の発生地 (1976年- 現在)]]
[[File:Ebolafälle bis einschließlich 2020 english.png|サムネイル|350px|エボラ出血熱の発生地 (1976年- 現在)]]
'''エボラ出血熱'''(エボラしゅっけつねつ、Ebola hemorrhagic fever<ref group="†"><small>[[アメリカ英語]]発音:</small>{{IPA-en|iːˈboʊlə/əˈboʊlə ˌheməˈrædʒɪk fiːvər|}} イ(ー)'''ボ'''ウラ/ア'''ボ'''ウラ・ヘマ'''ラ'''ジ(ッ)ク・'''フィ'''ーヴァー</ref><ref group="†">{{lang-en-gb|Ebola haemorrhagic fever}}、<small>イギリス英語発音:</small>{{IPA-en|iːˈbəʊlə/əˈbəʊlə ˌheməˈrædʒɪk fiːvə(r)|}} イ(ー)'''ボ'''ウラ/ア'''ボ'''ウラ・ヘマ'''ラ'''ジ(ッ)ク・'''フィ'''ーヴァ</ref>; EHF)、または'''エボラウイルス病'''(エボラウイルスびょう、Ebola virus disease; EVD)は、[[フィロウイルス科]][[エボラウイルス属]]の[[ウイルス]]を[[病原体]]とする急性ウイルス性[[感染症]]。[[マールブルグ病]]、[[ラッサ熱]]、[[南米出血熱]]、[[クリミア・コンゴ出血熱]]と並ぶ、ウイルス性[[出血熱]]の1つだが、感染者が必ずしも出血症状を呈するわけではないため、国際的には呼称がエボラ出血熱からエボラウイルス病へ切り替わりつつある<ref name=niid-Ebola>[https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/342-ebola-intro.html エボラ出血熱] - [[国立感染症研究所]]2019年03月27日改訂</ref><ref name=niid.342 />。
'''エボラ出血熱'''(エボラしゅっけつねつ、Ebola hemorrhagic fever<ref group="†"><small>[[アメリカ英語]]発音:</small>{{IPA-en|iːˈboʊlə/əˈboʊlə ˌheməˈrædʒɪk fiːvər|}} イ(ー)'''ボ'''ウラ/ア'''ボ'''ウラ・ヘマ'''ラ'''ジ(ッ)ク・'''フィ'''ーヴァー</ref><ref group="†">{{lang-en-gb|Ebola haemorrhagic fever}}、<small>イギリス英語発音:</small>{{IPA-en|iːˈbəʊlə/əˈbəʊlə ˌheməˈrædʒɪk fiːvə(r)|}} イ(ー)'''ボ'''ウラ/ア'''ボ'''ウラ・ヘマ'''ラ'''ジ(ッ)ク・'''フィ'''ーヴァ</ref>; EHF)、または'''エボラウイルス病'''(エボラウイルスびょう、Ebola virus disease; EVD)は、[[フィロウイルス科]][[エボラウイルス属]]の[[ウイルス]]を[[病原体]]とする急性ウイルス性[[感染症]]。[[マールブルグ病]]、[[ラッサ熱]]、[[南米出血熱]]、[[クリミア・コンゴ出血熱]]と並ぶ、ウイルス性[[出血熱]]の1つだが、感染者が必ずしも出血症状を呈するわけではないため、国際的には呼称がエボラ出血熱からエボラウイルス病へ切り替わりつつある<ref name=niid-Ebola>[https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/342-ebola-intro.html エボラ出血熱] - [[国立感染症研究所]]2019年03月27日改訂</ref><ref name=niid.342 />。主にアフリカで発生する


[[ヒト]]に感染し、治療開始が遅れると[[致命率|致死率]]は80 - 90%に上る(ウイルスによって異なる)<ref name=Ebola/>。また、仮に救命できたとしても重篤な[[後遺症]]を残すことがあり、[[バイオセーフティレベル#リスクグループ|リスクグループ]]レベル4ウイルスの一つである。一方、毒性や致死率があまりにも高く、遠出する機会を得る前に患者が死亡してしまうことが専らであることから、世界的流行には至っていない(これが致死率が比較的低いため軽症の患者が遠出しやすく[[パンデミック|世界的大流行]]を引き起こした[[新型インフルエンザ]]や[[新型コロナウイルス感染症 (2019年)|新型コロナウイルス感染症]]との違いである)。
[[ヒト]]に感染し、治療開始が遅れると[[致命率|致死率]]は80 - 90%に上る(ウイルスによって異なる)<ref name=Ebola/>。また、仮に救命できたとしても重篤な[[後遺症]]を残すことがあり、[[バイオセーフティレベル#リスクグループ|リスクグループ]]レベル4ウイルスの一つである。一方、毒性や致死率があまりにも高く、遠出する機会を得る前に患者が死亡してしまうことが専らであることから、世界的流行には至っていない(これが致死率が比較的低いため軽症の患者が遠出しやすく[[パンデミック|世界的大流行]]を引き起こした[[新型インフルエンザ]]や[[新型コロナウイルス感染症 (2019年)|新型コロナウイルス感染症]]との違いである)。
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エボラウイルスは大きさが80 - 800 [[ナノメートル|nm]]の細長い[[RNAウイルス]]である。[[ひも]]状、U字型、[[ぜんまい]]型など形は決まっておらず、多種多様である。他の多くのウイルスと異なり、[[免疫系]]を攪乱する[[デコイ]]を放ち、生体の防御機構をほぼ完全にすり抜けるという特徴がある。これが感染性の高さに繋がっている。また、ウイルス増殖の際に体細胞の構成要素である[[タンパク質]]を分解することで、全組織を傷害し、最強の毒性を発揮する。さらに、ウイルスが[[免疫系]]の中枢である[[白血球]]を大量に破壊し、[[サイトカイン放出症候群|サイトカインストーム]]を起こして[[血管]]を傷害し、[[血栓]]を作り、[[肝臓]]を始めとする全身の[[臓器]]を冒す。これら多重の攻撃によって発症者を確実に死に至らしめる。最強の毒性を発揮するだけでなく、ウイルス5個程度でも感染が成立するため、エボラウイルスは[[世界保健機関]](WHO)のリスクグループ4の病原体に指定されており、実験室・研究施設で取り扱う際の[[バイオセーフティーレベル]]は最高度の4が要求される<ref name="fact sheets">{{Cite web |url=http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs103/en/ |title=Ebola virus disease |accessdate=2014-06-19 |date=2014-04 |work=Media centre Fact sheets |publisher=[[WHO]] |language=英語}}</ref>。
エボラウイルスは大きさが80 - 800 [[ナノメートル|nm]]の細長い[[RNAウイルス]]である。[[ひも]]状、U字型、[[ぜんまい]]型など形は決まっておらず、多種多様である。他の多くのウイルスと異なり、[[免疫系]]を攪乱する[[デコイ]]を放ち、生体の防御機構をほぼ完全にすり抜けるという特徴がある。これが感染性の高さに繋がっている。また、ウイルス増殖の際に体細胞の構成要素である[[タンパク質]]を分解することで、全組織を傷害し、最強の毒性を発揮する。さらに、ウイルスが[[免疫系]]の中枢である[[白血球]]を大量に破壊し、[[サイトカイン放出症候群|サイトカインストーム]]を起こして[[血管]]を傷害し、[[血栓]]を作り、[[肝臓]]を始めとする全身の[[臓器]]を冒す。これら多重の攻撃によって発症者を確実に死に至らしめる。最強の毒性を発揮するだけでなく、ウイルス5個程度でも感染が成立するため、エボラウイルスは[[世界保健機関]](WHO)のリスクグループ4の病原体に指定されており、実験室・研究施設で取り扱う際の[[バイオセーフティーレベル]]は最高度の4が要求される<ref name="fact sheets">{{Cite web |url=http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs103/en/ |title=Ebola virus disease |accessdate=2014-06-19 |date=2014-04 |work=Media centre Fact sheets |publisher=[[WHO]] |language=英語}}</ref>。


初めてこのウイルスが発見されたのは1976年6月のことで[[スーダン]]南西部(現:[[南スーダン]])の[[西エクアトリア州]]にある町[[ヌザラ]] (Nzara) で、倉庫番を仕事にしている男性が急に39度の高熱と頭や腹部の痛みを感じて入院した後、[[消化器]]や[[鼻]]から激しく出血して死亡した。その後、その男性の近くにいた2人も同様に発症して、それを発端に[[血液]]や医療器具を通して感染が広がった。最終的にヌザラでの被害は、感染者数284人、死亡者数151人というものだった。
{{要出典範囲|date=2022年12月|初めてこのウイルスが発見されたのは1976年6月のことで[[スーダン]]南西部(現:[[南スーダン]])の[[西エクアトリア州]]にある町[[ヌザラ]] (Nzara) で、倉庫番を仕事にしている男性が急に39度の高熱と頭や腹部の痛みを感じて入院した後、[[消化器]]や[[鼻]]から激しく出血して死亡した。その後、その男性の近くにいた2人も同様に発症して、それを発端に[[血液]]や医療器具を通して感染が広がった。最終的にヌザラでの被害は、感染者数284人、死亡者数151人というものだった}}


そして、この最初の男性の出身地付近である、当時の[[コンゴ民主共和国#ザイール共和国(モブツ政権)・第一次コンゴ戦争|ザイール]](現:[[コンゴ民主共和国]])の[[エボラ川]]({{lang-fr-short|Ebola/Ébola}})から、'''エボラウイルス'''と名づけられた<ref name="kininaru">{{Cite web |date=2014-11-19 |url=http://www.nhk.or.jp/kininaru-blog/203640.html |title=熱病の名前 |work=トクする日本語 |publisher=[[日本放送協会]](NHK) |accessdate=2014-11-22}}</ref>。病気も'''エボラ出血熱'''と名づけられた<ref name="kininaru" />。その後、エボラ出血熱はアフリカ大陸で10回、突発的に発生・流行し、患者の早期発見・治療開始が遅れると、致死率が80- 90%に上る<ref name=Ebola>[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708.html エボラ出血熱について]厚労省</ref>。
そして同年8月に当時の[[コンゴ民主共和国#ザイール共和国(モブツ政権)・第一次コンゴ戦争|ザイール]](現:[[コンゴ民主共和国]])の[[エボラ川]]({{lang-fr-short|Ebola/Ébola}})沿岸の{{仮リンク|ヤンブク|fr|Yambuku}}でヌザラで起きたのと同じ出血熱の[[アウトブレイク]]が発生したことから、'''エボラウイルス'''と名づけられた<ref name="kininaru">{{Cite web|和書|date=2014-11-19 |url=http://www.nhk.or.jp/kininaru-blog/203640.html |title=熱病の名前 |work=トクする日本語 |publisher=[[日本放送協会]](NHK) |accessdate=2014-11-22}}</ref>。病気も'''エボラ出血熱'''と名づけられた<ref name="kininaru" />。その後、エボラ出血熱はアフリカ大陸で10回、突発的に発生・流行し、患者の早期発見・治療開始が遅れると、致死率が80- 90%に上る<ref name=Ebola>[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708.html エボラ出血熱について]厚労省</ref>。


他に[[イギリス]]でも感染患者が確認されており、[[ロンドン]]郊外の[[カンタベリー]]において34歳女性が感染者として病院に搬送されたとされている<ref>{{Cite web |url=http://www.bmj.com/archive/6991e-2.htm |title=Ebola virus |accessdate=2014-06-19 |author=Diane Bennett |coauthors=David Brown |year=1997 |publisher=[[British Medical Journal]] |language=英語 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20090224194343/http://www.bmj.com/archive/6991e-2.htm |archivedate=2009-02-24}}</ref>。<!--[[マラリア]]は年間65万〜124万人<ref>[http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2012/04191518.html マラリアについて(ファクトシート)]「2010年には、推定で655,000人」、厚生労働省[[検疫]]所、2012年4月WHOによる。</ref><ref>[http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(12)60034-8/fulltext Global malaria mortality between 1980 and 2010: a systematic analysis] 死者1,238,000人(929,000人—1,685,000人の幅がある)</ref>、[[コレラ]]は年間10万〜12万人の死者を出している<ref>[http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2012/08151657.html コレラについて(ファクトシート)] 厚生労働省検疫所 2012年7月 WHOによる</ref>。-->
他に[[イギリス]]でも感染患者が確認されており、[[ロンドン]]郊外の[[カンタベリー]]において34歳女性が感染者として病院に搬送されたとされている<ref>{{Cite web |url=http://www.bmj.com/archive/6991e-2.htm |title=Ebola virus |accessdate=2014-06-19 |author=Diane Bennett |coauthors=David Brown |year=1997 |publisher=[[British Medical Journal]] |language=英語 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20090224194343/http://www.bmj.com/archive/6991e-2.htm |archivedate=2009-02-24}}</ref>。<!--[[マラリア]]は年間65万〜124万人<ref>[https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2012/04191518.html マラリアについて(ファクトシート)]「2010年には、推定で655,000人」、厚生労働省[[検疫]]所、2012年4月WHOによる。</ref><ref>[http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(12)60034-8/fulltext Global malaria mortality between 1980 and 2010: a systematic analysis] 死者1,238,000人(929,000人—1,685,000人の幅がある)</ref>、[[コレラ]]は年間10万〜12万人の死者を出している<ref>[https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2012/08151657.html コレラについて(ファクトシート)] 厚生労働省検疫所 2012年7月 WHOによる</ref>。-->


== 感染源 ==
== 感染源 ==
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=== 自然宿主 ===
=== 自然宿主 ===
[[レゼルボア|自然宿主]]の特定には至ってはいないが、複数種の[[オオコウモリ]]が有力とされている<ref>{{Cite web |url=http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou27/100713-1.html#2-3 |title=夏休み期間中における海外での感染症予防について |accessdate=2014-06-19 |date=2010-07 |work=2.動物からうつる感染症 (3)エボラ出血熱 |publisher=厚生労働省 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20120903145059/http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou27/100713-1.html#2-3 |archivedate=2012-09-03}}</ref><ref name=niid-Ebola/>。[[サル]]からの感染例はあるが、[[無症候性キャリア|キャリア]]ではなく[[ヒト]]と同じ[[宿主|終末宿主]]である。また、現地ではサルの[[燻製]]を食する習慣があるため、これを原因とする噂があることも報道に見える<ref>National Geographic: October 2007</ref>。
[[レゼルボア|自然宿主]]の特定には至ってはいないが、複数種の[[オオコウモリ]]が有力とされている<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou27/100713-1.html#2-3 |title=夏休み期間中における海外での感染症予防について |accessdate=2014-06-19 |date=2010-07 |work=2.動物からうつる感染症 (3)エボラ出血熱 |publisher=厚生労働省 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20120903145059/http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou27/100713-1.html#2-3 |archivedate=2012-09-03}}</ref><ref name=niid-Ebola/>。[[サル]]からの感染例はあるが、[[無症候性キャリア|キャリア]]ではなく[[ヒト]]と同じ[[宿主|終末宿主]]である。また、現地ではサルの[[燻製]]を食する習慣があるため、これを原因とする噂があることも報道に見える<ref>National Geographic: October 2007</ref>。


2005年12月1日付の英科学誌『[[ネイチャー]]』にて、ガボンの[[フランスヴィル]]国際医学研究センターなどのチームの調査によると、オオコウモリ科の[[ウマヅラコウモリ]]、{{仮リンク|フランケオナシケンショウコウモリ|en|Franquet's epauletted fruit bat}}、{{仮リンク|コクビワフルーツコウモリ|en|Little collared fruit bat}}等が、エボラウイルスの自然宿主とされ、現地の[[食用コウモリ]]からの感染が研究論文で発表されている<ref>[http://www.jsvetsci.jp/05_byouki/prion/pf168.html 霊長類フォーラム:人獣共通感染症(第168回)] 日本獣医学会</ref>。
2005年12月1日付の英科学誌『[[ネイチャー]]』にて、ガボンの[[フランスヴィル]]国際医学研究センターなどのチームの調査によると、オオコウモリ科の[[ウマヅラコウモリ]]、{{仮リンク|フランケオナシケンショウコウモリ|en|Franquet's epauletted fruit bat}}、{{仮リンク|コクビワフルーツコウモリ|en|Little collared fruit bat}}等が、エボラウイルスの自然宿主とされ、現地の[[食用コウモリ]]からの感染が研究論文で発表されている<ref>[http://www.jsvetsci.jp/05_byouki/prion/pf168.html 霊長類フォーラム:人獣共通感染症(第168回)] 日本獣医学会</ref>。
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== 感染経路 ==
== 感染経路 ==
{{Main2|飛沫感染と空気感染の違い|感染経路}}
{{Main2|飛沫感染と空気感染の違い|感染経路}}
患者の血液、分泌物、[[屎尿|排泄物]]や[[唾液]]などの[[飛沫感染]]が主な感染経路となる。患者およびその[[体液]]への濃厚な接触は問題であり、死亡した患者の遺体への接触からも感染する。<!--空気中に飛散した体液や血液の飛沫を介した感染は飛沫感染の定義です。飛沫感染ではなく空気感染であると説明するならば他の説明もそれに準じるものにしてください。-->エボラウイルスの感染力は強いものの、[[感染経路#飛沫感染|空気感染]]をせず、感染者の[[体液]]や血液に触れなければ感染しない<ref name="kekkaku-kansenshou19">{{Cite web |author=厚生労働省 |date=2016-01-04作成 第5版 |url=http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/ebola_qa.html |title=エボラ出血熱に関するQ&A 問2「どのようにしてエボラウイルスに感染するのですか?」と答「…汚染された物質(注射針など)に十分な防護なしに触れた際、ウイルスが傷口や粘膜から侵入することで感染します。一般的に、症状のない患者からは感染しません。空気感染もしません。」|work=厚生労働省ホームページ |publisher=厚生労働省 |accessdate=2016-04-04}}</ref>。これまでに見られた感染拡大も、死亡した患者の[[葬儀|会葬]]の際や医療器具の不足(注射器や手袋など)により、患者の血液や体液に触れたことによりもたらされたものが多く、空気感染はない<ref>『[[ニュートン_(雑誌)|ニュートン]]別冊 からだと病気』p.64</ref>。患者の[[隔離]]に関する措置が十分に行われていれば、感染することはない。
患者の血液、分泌物、[[屎尿|排泄物]]や[[唾液]]などの[[飛沫感染]]が主な感染経路となる。患者およびその[[体液]]への濃厚な接触は問題であり、死亡した患者の遺体への接触からも感染する。<!--空気中に飛散した体液や血液の飛沫を介した感染は飛沫感染の定義です。飛沫感染ではなく空気感染であると説明するならば他の説明もそれに準じるものにしてください。-->エボラウイルスの感染力は強いものの、[[感染経路#飛沫感染|空気感染]]をせず、感染者の[[体液]]や血液に触れなければ感染しない<ref name="kekkaku-kansenshou19">{{Cite web|和書|author=厚生労働省 |date=2016-01-04作成 第5版 |url=http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/ebola_qa.html |title=エボラ出血熱に関するQ&A 問2「どのようにしてエボラウイルスに感染するのですか?」と答「…汚染された物質(注射針など)に十分な防護なしに触れた際、ウイルスが傷口や粘膜から侵入することで感染します。一般的に、症状のない患者からは感染しません。空気感染もしません。」|work=厚生労働省ホームページ |publisher=厚生労働省 |accessdate=2016-04-04}}</ref>。これまでに見られた感染拡大も、死亡した患者の[[葬儀|会葬]]の際や医療器具の不足(注射器や手袋など)により、患者の血液や体液に触れたことによりもたらされたものが多く、空気感染はない<ref>『[[ニュートン_(雑誌)|ニュートン]]別冊 からだと病気』p.64</ref>。患者の[[隔離]]に関する措置が十分に行われていれば、感染することはない。


; 空気感染の有無
; 空気感染の有無
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傷口や[[粘膜]]にウイルスが入り込まないよう注意する必要がある。特に、人は自分の目・口・鼻を触りがち<ref name="virus-propagation">[http://jp.wsj.com/articles/SB11102303130114484576704580187570056128824 オフィスはウイルスだらけ、4時間で半数に付着―握手も拡散を手助け]『[[ウォール・ストリート・ジャーナル]]』2014年10月1日</ref>であるため、それらに触らないよう気をつける必要がある<ref name="ebora-spread"/>。また、人の触るドアノブやスイッチ、ハンドルなどはウイルスが付着しやすいため、汚れを落として[[消毒]]する必要がある<ref name="ebora-spread"/><ref name="virus-propagation"/>。手は[[石鹸]]を使って洗う必要があるが、無理な場合は[[アルコール]]分を60%以上含むハンドジェルも使用可能<ref name="ib">[http://jp.ibtimes.com/articles/62094/20141017/890712.htm エボラ対策にハンドジェルが効く―在庫なくなる店も、米国] IBTimes 2014年10月17日</ref>。
傷口や[[粘膜]]にウイルスが入り込まないよう注意する必要がある。特に、人は自分の目・口・鼻を触りがち<ref name="virus-propagation">[http://jp.wsj.com/articles/SB11102303130114484576704580187570056128824 オフィスはウイルスだらけ、4時間で半数に付着―握手も拡散を手助け]『[[ウォール・ストリート・ジャーナル]]』2014年10月1日</ref>であるため、それらに触らないよう気をつける必要がある<ref name="ebora-spread"/>。また、人の触るドアノブやスイッチ、ハンドルなどはウイルスが付着しやすいため、汚れを落として[[消毒]]する必要がある<ref name="ebora-spread"/><ref name="virus-propagation"/>。手は[[石鹸]]を使って洗う必要があるが、無理な場合は[[アルコール]]分を60%以上含むハンドジェルも使用可能<ref name="ib">[http://jp.ibtimes.com/articles/62094/20141017/890712.htm エボラ対策にハンドジェルが効く―在庫なくなる店も、米国] IBTimes 2014年10月17日</ref>。


[[咳]]や[[くしゃみ]]はエボラ出血熱の症状こそないが、<ref name="ib-kokoroe">[http://jp.ibtimes.com/articles/62121/20141018/868947/page1.htm 出血熱に感染しないための心得] IBTimes 2014年10月18日</ref>、別の要因によって咳やくしゃみが起これば、感染する可能性があり、長期間の1メートル以内の近接で感染リスクは中程度とされている<ref name="ib-kokoroe"/><ref>[http://www.yomiuri.co.jp/world/20141028-OYT1T50086.html エボラ患者に90㎝以内で「中リスク」米指針]『[[読売新聞]]』2014年10月29日</ref><ref name="ebora-spread">[http://www.cdc.gov/vhf/ebola/pdf/infections-spread-by-air-or-droplets.pdf What’s the difference between infections spread through the air or by droplets?] CDC</ref><ref name="cdc-risk"/>。そのため、人ごみをできるだけ避け、具合の悪そうな人への1メートル以内への接近はなるべく控えることが望ましい。また、直接的接触(握手など)や屋内での長時間接触も感染リスクは低いとはいえ、なくはない<ref name="cdc-risk">[http://www.cdc.gov/vhf/ebola/exposure/risk-factors-when-evaluating-person-for-exposure.html Epidemiologic Risk Factors to Consider when Evaluating a Person for Exposure to Ebola Virus][[アメリカ疾病予防管理センター]](CDC)2014年10月27日</ref>ので、できるだけ避けることが望ましい。
[[咳]]や[[くしゃみ]]はエボラ出血熱の症状こそないが、<ref name="ib-kokoroe">[http://jp.ibtimes.com/articles/62121/20141018/868947/page1.htm 出血熱に感染しないための心得] IBTimes 2014年10月18日</ref>、別の要因によって咳やくしゃみが起これば、感染する可能性があり、長期間の1メートル以内の近接で感染リスクは中程度とされている<ref name="ib-kokoroe"/><ref>[https://web.archive.org/web/20141029010804/http://www.yomiuri.co.jp/world/20141028-OYT1T50086.html エボラ患者に90cm以内で「中リスク」米指針]『[[読売新聞]]』2014年10月29日</ref><ref name="ebora-spread">[http://www.cdc.gov/vhf/ebola/pdf/infections-spread-by-air-or-droplets.pdf What’s the difference between infections spread through the air or by droplets?] CDC</ref><ref name="cdc-risk"/>。そのため、人ごみをできるだけ避け、具合の悪そうな人への1メートル以内への接近はなるべく控えることが望ましい。また、直接的接触(握手など)や屋内での長時間接触も感染リスクは低いとはいえ、なくはない<ref name="cdc-risk">[http://www.cdc.gov/vhf/ebola/exposure/risk-factors-when-evaluating-person-for-exposure.html Epidemiologic Risk Factors to Consider when Evaluating a Person for Exposure to Ebola Virus][[アメリカ疾病予防管理センター]](CDC)2014年10月27日</ref>ので、できるだけ避けることが望ましい。


眼鏡やマスク([[N95マスク|N95]]以上が望ましい)、手袋なども予防に使われているが、ウイルスの付着している表面には触らないよう注意が必要となる。
眼鏡やマスク([[N95マスク|N95]]以上が望ましい)、手袋なども予防に使われているが、ウイルスの付着している表面には触らないよう注意が必要となる。


[[受容体]]のHSPA5 (GRP78) がエボラウイルスの感染に使われると特定されており<ref>[http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0166354214002034 HSPA5 is an essential host factor for Ebola virus infection.] Science Direct 2014年7月</ref>、HSPA5阻害剤の[[没食子酸エピガロカテキン]]([[緑茶]]などに含まれる[[カテキン]]の一つ)はエボラ感染予防に効果がある可能性がある。既に緑茶の飲用は、インフルエンザ対策として効果があるとされている<ref>[http://kenko100.jp/articles/111019000252/ 1日1〜5杯の緑茶で小学生のインフルエンザが40〜50%減] あなたの健康百科 2011年10月19日</ref>。ただし、鼻からの感染は予防できない。
[[受容体]]のHSPA5 (GRP78) がエボラウイルスの感染に使われると特定されており<ref>[http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0166354214002034 HSPA5 is an essential host factor for Ebola virus infection.] Science Direct 2014年7月</ref>、HSPA5阻害剤の[[没食子酸エピガロカテキン]]([[緑茶]]などに含まれる[[カテキン]]の一つ)はエボラ感染予防に効果がある可能性がある。既に緑茶の飲用は、インフルエンザ対策として効果があるとされている<ref>[https://web.archive.org/web/20130815145646/http://kenko100.jp/articles/111019000252/ 1日1〜5杯の緑茶で小学生のインフルエンザが40〜50%減] あなたの健康百科 2011年10月19日</ref>。ただし、鼻からの感染は予防できない。


感染者の嘔吐物、血、肉、唾液、粘液、排泄物、[[汗]]、[[涙]]、[[母乳]]、[[精液]]などから感染するため<ref name="ib-kokoroe"/>、見ず知らずのそれらに気をつける必要がある。また、ウイルスは大抵、湿った地中で生き延びるため、地面に触れないよう注意し、地面に触れたところは消毒する必要がある<ref>[http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/325612/ 「エボラ出血熱の恐怖実態とパンデミックの可能性」] [[東京スポーツ|東スポWeb]](2014年10月25日)</ref><ref>『Soils and Human Health』 P.45 Eric C. Brevik, Lynn C. Burgess 2012年12月12日 ISBN 978-1439844540</ref>。
感染者の嘔吐物、血、肉、唾液、粘液、排泄物、[[汗]]、[[涙]]、[[母乳]]、[[精液]]などから感染するため<ref name="ib-kokoroe"/>、見ず知らずのそれらに気をつける必要がある。また、ウイルスは大抵、湿った地中で生き延びるため、地面に触れないよう注意し、地面に触れたところは消毒する必要がある<ref>[https://web.archive.org/web/20141025073338/http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/325612/ 「エボラ出血熱の恐怖実態とパンデミックの可能性」] [[東京スポーツ|東スポWeb]](2014年10月25日)</ref><ref>『Soils and Human Health』 P.45 Eric C. Brevik, Lynn C. Burgess 2012年12月12日 ISBN 978-1439844540</ref>。


病院や患者宅のトイレの便座に気をつける必要がある<ref>[http://www.theguardian.com/world/2014/oct/13/how-avoid-catching-ebola How to avoid being infected with Ebola] The Guardian 2014年10月13日</ref>。
病院や患者宅のトイレの便座に気をつける必要がある<ref>[http://www.theguardian.com/world/2014/oct/13/how-avoid-catching-ebola How to avoid being infected with Ebola] The Guardian 2014年10月13日</ref>。
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アメリカの医療従事者については2014年10月20日時点、[[アメリカ疾病予防管理センター]](CDC)によって、[[肌]]が一切出ないようにすることが推奨されている。液体防護性の[[ガウン]]や[[エプロン]]、首回りを隠すサージカルフード、フルフェイスシールド、防塵マスク、二重手袋、液体防護性の足カバーの組み合わせが推奨されている<ref>[http://www.usatoday.com/story/news/nation/2014/10/20/cdc-new-protocol/17638161/ CDC issues new rules for protecting workers from Ebola] USA Today 2014年10月20日</ref>。
アメリカの医療従事者については2014年10月20日時点、[[アメリカ疾病予防管理センター]](CDC)によって、[[肌]]が一切出ないようにすることが推奨されている。液体防護性の[[ガウン]]や[[エプロン]]、首回りを隠すサージカルフード、フルフェイスシールド、防塵マスク、二重手袋、液体防護性の足カバーの組み合わせが推奨されている<ref>[http://www.usatoday.com/story/news/nation/2014/10/20/cdc-new-protocol/17638161/ CDC issues new rules for protecting workers from Ebola] USA Today 2014年10月20日</ref>。


[[日本]]においては、感染者との接触があるなど感染の可能性がある場合は、[[潜伏期間]]を過ぎるまで公共交通機関での移動やレストラン、食料品店、映画館などの人の集まる場所への外出を控え<ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM1800R_Y4A011C1MM0000/ 「米、1000人の健康観察 エボラ、2人目感染確認」]『[[日本経済新聞]]』2014年10月18日</ref>、検温を朝夕二回して[[検疫所]]に報告し<ref>[http://www.asahi.com/articles/ASGBQ66VFGBQULBJ01W.html 「エボラ熱、備える国内45指定病院 配置や役割分担訓練」]『[[朝日新聞]]』2014年10月23日</ref>、熱や症状の出た場合は地域の医療機関を受診するのではなく、最寄りの[[保健所]]に連絡して指示を仰ぐ必要があるとされている<ref>[http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0ID04820141024 「アビガン錠の扱いを議論、エボラ熱対策で厚労相」] [[ロイター]](2014年10月24日)</ref>。
[[日本]]においては、感染者との接触があるなど感染の可能性がある場合は、[[潜伏期間]]を過ぎるまで公共交通機関での移動やレストラン、食料品店、映画館などの人の集まる場所への外出を控え<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM1800R_Y4A011C1MM0000/ 「米、1000人の健康観察 エボラ、2人目感染確認」]『[[日本経済新聞]]』2014年10月18日</ref>、検温を朝夕二回して[[検疫所]]に報告し<ref>[http://www.asahi.com/articles/ASGBQ66VFGBQULBJ01W.html 「エボラ熱、備える国内45指定病院 配置や役割分担訓練」]『[[朝日新聞]]』2014年10月23日</ref>、熱や症状の出た場合は地域の医療機関を受診するのではなく、最寄りの[[保健所]]に連絡して指示を仰ぐ必要があるとされている<ref>[https://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0ID04820141024/ 「アビガン錠の扱いを議論、エボラ熱対策で厚労相」] [[ロイター]](2014年10月24日)</ref>。


アメリカの一部の[[アメリカ合衆国の州|州]]や[[アメリカ陸軍]]などでは潜伏期間中も[[隔離]]措置が行われている<ref>[http://sp.mainichi.jp/select/news/20141025k0000e030169000c.html 「エボラ出血熱:米2州 感染者接触の入国者全員に隔離措置」]『毎日新聞』2014年10月25日</ref><ref>[http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0IG21W20141027 「米陸軍兵士の隔離開始、エボラ熱対策任務終了後に」] ロイター(2014年10月28日)</ref>。
アメリカの一部の[[アメリカ合衆国の州|州]]や[[アメリカ陸軍]]などでは潜伏期間中も[[隔離]]措置が行われている<ref>[http://sp.mainichi.jp/select/news/20141025k0000e030169000c.html 「エボラ出血熱:米2州 感染者接触の入国者全員に隔離措置」]『毎日新聞』2014年10月25日</ref><ref>[https://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0IG21W20141027/ 「米陸軍兵士の隔離開始、エボラ熱対策任務終了後に」] ロイター(2014年10月28日)</ref>。


犬はエボラ出血熱を発症しないものの、エボラウイルスに感染する可能性を否定できないため、患者のペットの犬は、[[安楽死]]が行われている<ref name="huff-gimon"/>。
犬はエボラ出血熱を発症しないものの、エボラウイルスに感染する可能性を否定できないため、患者のペットの犬は、[[安楽死]]が行われている<ref name="huff-gimon"/>。
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2009年、実験動物に対しては[[東京大学医科学研究所]]教授([[ウイルス学]])の[[河岡義裕]]は、エボラ出血熱ウイルスの[[ワクチン]]を[[ハツカネズミ|マウス]]に接種したところ、一定の効果を確認したことを米専門誌『ジャーナル・オブ・バイロロジー』電子版で発表した。この実験では、ワクチンを接種せずに感染させたマウス10匹は6日後に全て死亡したが、接種した15匹は、健康な3匹のマウスと同じように2週間以上生き続けたという。河岡は今後、[[サル]]で実験し、早期実用化を目指したいとしている<ref>{{Cite news |title=エボラ出血熱:ワクチン開発…マウス実験で確認 東大 |newspaper=『毎日新聞』 |date=2009-02-13 |author=関東晋慈 |url=http://mainichi.jp/select/science/news/20090213k0000m040138000c.html |accessdate=2014-06-19 |archiveurl=https://archive.is/GgikR#selection-603.125-603.129 |archivedate=2014-01-05}}</ref>。
2009年、実験動物に対しては[[東京大学医科学研究所]]教授([[ウイルス学]])の[[河岡義裕]]は、エボラ出血熱ウイルスの[[ワクチン]]を[[ハツカネズミ|マウス]]に接種したところ、一定の効果を確認したことを米専門誌『ジャーナル・オブ・バイロロジー』電子版で発表した。この実験では、ワクチンを接種せずに感染させたマウス10匹は6日後に全て死亡したが、接種した15匹は、健康な3匹のマウスと同じように2週間以上生き続けたという。河岡は今後、[[サル]]で実験し、早期実用化を目指したいとしている<ref>{{Cite news |title=エボラ出血熱:ワクチン開発…マウス実験で確認 東大 |newspaper=『毎日新聞』 |date=2009-02-13 |author=関東晋慈 |url=http://mainichi.jp/select/science/news/20090213k0000m040138000c.html |accessdate=2014-06-19 |archiveurl=https://archive.is/GgikR#selection-603.125-603.129 |archivedate=2014-01-05}}</ref>。


[[2015年]]、ギニアで大規模なワクチンの[[臨床試験]]が行われ、[[2016年]][[12月23日]]、世界保健機関は試験中のエボラ出血熱ワクチンについて有効性が確認されたことを発表した<ref>{{Cite web |date= 2016-12-23|url=http://www.afpbb.com/articles/-/3112268 |title= エボラワクチン「最大100%の効果」 WHO|publisher=[[フランス通信社|AFP]] |accessdate=2019-02-10}}</ref>。[[2018年]]にコンゴ民主共和国の内陸部にある[[北キヴ州]]でエボラ出血熱が流行した際には、大規模なワクチン接種が実施された。[[2019年]]2月、同国保健省は終息の目途が立っていない段階ではあるものの、ワクチン接種の効果で死者数の増加を防げていると評価している<ref>{{Cite web |date= 2018-02-10|url= http://www.afpbb.com/articles/-/3210501?cx_part=latest|title=「コンゴのエボラ、死者500人超に ワクチン接種で増加は頭打ち」|publisher=AFP |accessdate=2019-02-10}}</ref>。[[2020年]][[4月]]、ほぼ抑え込んだ為にWHOは終息宣言を行う予定であったが、新たな感染者1名が出た為に延期された<ref>{{Cite web|title=WHO、コンゴでのエボラ出血熱の終息宣言を延期 - 社会 : 日刊スポーツ|url=https://www.nikkansports.com/general/news/202004110000115.html|website=nikkansports.com|accessdate=2020-04-11|language=ja}}</ref>。
[[2015年]]、ギニアで大規模なワクチンの[[臨床試験]]が行われ、[[2016年]][[12月23日]]、世界保健機関は試験中のエボラ出血熱ワクチンについて有効性が確認されたことを発表した<ref>{{Cite web|和書|date= 2016-12-23|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3112268 |title= エボラワクチン「最大100%の効果」 WHO|publisher=[[フランス通信社|AFP]] |accessdate=2019-02-10}}</ref>。[[2018年]]にコンゴ民主共和国の内陸部にある[[北キヴ州]]でエボラ出血熱が流行した際には、大規模なワクチン接種が実施された。[[2019年]]2月、同国保健省は終息の目途が立っていない段階ではあるものの、ワクチン接種の効果で死者数の増加を防げていると評価している<ref>{{Cite web|和書|date= 2018-02-10|url= https://www.afpbb.com/articles/-/3210501?cx_part=latest|title=「コンゴのエボラ、死者500人超に ワクチン接種で増加は頭打ち」|publisher=AFP |accessdate=2019-02-10}}</ref>。[[2020年]][[4月]]、ほぼ抑え込んだ為にWHOは終息宣言を行う予定であったが、新たな感染者1名が出た為に延期された<ref>{{Cite web|和書|title=WHO、コンゴでのエボラ出血熱の終息宣言を延期 - 社会 : 日刊スポーツ|url=https://www.nikkansports.com/general/news/202004110000115.html|website=nikkansports.com|accessdate=2020-04-11|language=ja}}</ref>。

2010年代、[[グラクソ・スミスクライン]]は、エボラ出血熱の世界的な[[パンデミック]]も視野に入れてワクチン開発を行ってきた。しかしながら臨床試験の最終段階の時点で流行が広がっていたのは、最貧国の一つである[[コンゴ民主共和国]]の一地域であり、開発資金の回収が見込めないとしてワクチン開発の継続を断念。ワクチン候補を[[2019年]]までにアメリカの非営利機関に譲渡した<ref>{{Cite web |date=2020-03-10 |url=https://www.swissinfo.ch/jpn/business/covid-19-_新型コロナウイルスのワクチン開発-製薬大手が消極的な理由/45605794 |title=新型コロナウイルスのワクチン開発-製薬大手が消極的な理由 |publisher=スイスインフォ |accessdate=2020-04-18}}</ref>。


2010年代、[[グラクソ・スミスクライン]]は、エボラ出血熱の世界的な[[パンデミック]]も視野に入れてワクチン開発を行ってきた。しかしながら臨床試験の最終段階の時点で流行が広がっていたのは、最貧国の一つである[[コンゴ民主共和国]]の一地域であり、開発資金の回収が見込めないとしてワクチン開発の継続を断念。ワクチン候補を[[2019年]]までにアメリカの非営利機関に譲渡した<ref>{{Cite web|和書|date=2020-03-10 |url=https://www.swissinfo.ch/jpn/business/covid-19-_新型コロナウイルスのワクチン開発-製薬大手が消極的な理由/45605794 |title=新型コロナウイルスのワクチン開発-製薬大手が消極的な理由 |publisher=スイスインフォ |accessdate=2020-04-18}}</ref>。


== 消毒 ==
== 消毒 ==
[[消毒薬]]には、[[次亜塩素酸ナトリウム]]や[[ジクロロイソシアヌル酸|ジクロルイソシアヌール酸]]ナトリウム顆粒が使われる<ref name="tebiki"/>。金属製小物には[[グルタルアルデヒド|グルタラール]]などが適す<ref name="tebiki"/>。[[消毒用アルコール|アルコール]]も使用可能<ref name="tebiki">[http://kanpoken.pref.yamaguchi.lg.jp/jyoho/page5/syoudoku_1.html 感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き] [[山口県]]環境保健センター</ref>。
[[消毒薬]]には、[[次亜塩素酸ナトリウム]]や[[ジクロロイソシアヌル酸|ジクロルイソシアヌール酸]]ナトリウム顆粒が使われる<ref name="tebiki"/>。金属製小物には[[グルタルアルデヒド|グルタラール]]などが適す<ref name="tebiki"/>。[[消毒用アルコール|アルコール]]も使用可能<ref name="tebiki">[http://kanpoken.pref.yamaguchi.lg.jp/jyoho/page5/syoudoku_1.html 感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き] [[山口県]]環境保健センター</ref>。


また、加熱消毒では、安全マージンを加えた60℃、60分間の加熱が使われる<ref>[http://www.fsc.go.jp/sonota/hazard/H22_6.pdf ※平成22年度食品安全確保総合調査『食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書』より抜粋 (株式会社 東レリサーチセンター作成)] [[食品安全委員会]]</ref>。煮沸消毒でも、5分は必要となる。
また、加熱消毒では、安全マージンを加えた60℃、60分間の加熱が使われる<ref>[https://www.fsc.go.jp/sonota/hazard/H22_6.pdf ※平成22年度食品安全確保総合調査『食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書』より抜粋 (株式会社 東レリサーチセンター作成)] [[食品安全委員会]]</ref>。煮沸消毒でも、5分は必要となる。


[[ガンマ線]]照射12 - 12.7&nbsp;k[[グレイ (単位)|Gy]] (1.2 - 1.27 × 10<sup>6</sup> [[ラド|rad]]) や[[紫外線]]照射でも消毒可能だが、紫外線照射の場合は有機物に取り込まれているエボラウイルスを不活性化できない<ref>[http://www.kchealthcare.com/media/133353/k-c-ebola-precautions-brief-truscott-final.pdf Kimberly-Clark Ebola Virus Disease (EVD) Precautions Brief: September 19, 2014]</ref><ref>[http://www.jp.kchealthcare.com/media/12311534/141009_k-c-ebola-precautions-brief-japanese_docx.pdf キンバリークラーク社 エボラウイルス病(EVD)予防策の概要:2014 年 10 月]</ref>。
[[ガンマ線]]照射12 - 12.7&nbsp;k[[グレイ (単位)|Gy]] (1.2 - 1.27 × 10<sup>6</sup> [[ラド|rad]]) や[[紫外線]]照射でも消毒可能だが、紫外線照射の場合は有機物に取り込まれているエボラウイルスを不活性化できない<ref>[http://www.kchealthcare.com/media/133353/k-c-ebola-precautions-brief-truscott-final.pdf Kimberly-Clark Ebola Virus Disease (EVD) Precautions Brief: September 19, 2014]</ref><ref>[http://www.jp.kchealthcare.com/media/12311534/141009_k-c-ebola-precautions-brief-japanese_docx.pdf キンバリークラーク社 エボラウイルス病(EVD)予防策の概要:2014 年 10 月]</ref>。
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バイオセイフティーレベル3の施設でもエボラ出血熱の疑われる患者の血液を検査できる。日本では[[国立感染症研究所]]ウイルス第一部第一室に検体を送ることで[[ポリメラーゼ連鎖反応|PCR]]を使ったエボラ出血熱の検査が可能だが、エボラウイルスの変異の確認、治療薬の効果の確認、患者の退院可能かの確認は不可能となっている<ref name="nhk-kensa">[http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141024/k10015677351000.html 国立感染研 エボラ出血熱の検査施設公開] NHKニュース 2014年10月24日</ref><ref>[http://www.nih.go.jp/niid/images/lab-manual/ebora_2012.pdf エボラ出血熱診断マニュアル] 国立感染症研究所 2012年3月</ref>。なお、発症していても、陽性の結果が出るまでに、3日程度かかる場合がある<ref>[http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141028/t10015749451000.html 安倍首相 エボラ熱対策に万全の体制指示] NHK 2014年10月28日</ref>。
バイオセイフティーレベル3の施設でもエボラ出血熱の疑われる患者の血液を検査できる。日本では[[国立感染症研究所]]ウイルス第一部第一室に検体を送ることで[[ポリメラーゼ連鎖反応|PCR]]を使ったエボラ出血熱の検査が可能だが、エボラウイルスの変異の確認、治療薬の効果の確認、患者の退院可能かの確認は不可能となっている<ref name="nhk-kensa">[http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141024/k10015677351000.html 国立感染研 エボラ出血熱の検査施設公開] NHKニュース 2014年10月24日</ref><ref>[http://www.nih.go.jp/niid/images/lab-manual/ebora_2012.pdf エボラ出血熱診断マニュアル] 国立感染症研究所 2012年3月</ref>。なお、発症していても、陽性の結果が出るまでに、3日程度かかる場合がある<ref>[http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141028/t10015749451000.html 安倍首相 エボラ熱対策に万全の体制指示] NHK 2014年10月28日</ref>。


第一種感染症指定医療機関には、微生物学的検査が可能な検査室の設置が義務付けられているが、エボラウイルスの検査については不明。エボラ出血熱に対応する海外病院の[[隔離]]病棟にあるオンサイトラボラトリでは、エボラの血液サンプルを扱えるところがある<ref>[http://www.huffingtonpost.com/2014/10/23/craig-spencer-ebola_n_6038916.html Craig Spencer Tests Positive For Ebola In New York City] Huffington Post 2014年10月23日</ref>。
第一種感染症指定医療機関には、微生物学的検査が可能な検査室の設置が義務付けられているが、エボラウイルスの検査については不明。エボラ出血熱に対応する海外病院の[[隔離]]病棟にあるオンサイトラボラトリでは、エボラの血液サンプルを扱えるところがある<ref>[https://www.huffpost.com/entry/craig-spencer-ebola_n_6038916 Craig Spencer Tests Positive For Ebola In New York City] Huffington Post 2014年10月23日</ref>。


アメリカでは現在、バイオファイア・ディフェンス社の設備を導入した300以上の医療機関でエボラウイルスの検知が可能となっている<ref>[http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0IG0AL20141027 「米FDAがエボラウイルス検出システムを緊急認可、1時間で判定」] ロイター( 2014年10月27日)</ref>。
アメリカでは現在、バイオファイア・ディフェンス社の設備を導入した300以上の医療機関でエボラウイルスの検知が可能となっている<ref>[https://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0IG0AL20141027/ 「米FDAがエボラウイルス検出システムを緊急認可、1時間で判定」] ロイター( 2014年10月27日)</ref>。


危篤状態を終えて、血液からウイルスが検出されなくなっても、[[ドイツ]]のケースでは、尿や汗からウイルスが検出され続けており、その後、尿から検出されなくなっても汗からのウイルスの検出が続いている<ref>[http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=107877 「英医学誌で知るエボラ患者の経過」] 『読売新聞』ヨミドクター(2014年11月7日)</ref><ref>[http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1411677 A Case of Severe Ebola Virus Infection Complicated by Gram-Negative Septicemia] The new england journal of medicine 2014年11月7日</ref>。
危篤状態を終えて、血液からウイルスが検出されなくなっても、[[ドイツ]]のケースでは、尿や汗からウイルスが検出され続けており、その後、尿から検出されなくなっても汗からのウイルスの検出が続いている<ref>[http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=107877 「英医学誌で知るエボラ患者の経過」] 『読売新聞』ヨミドクター(2014年11月7日)</ref><ref>[http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1411677 A Case of Severe Ebola Virus Infection Complicated by Gram-Negative Septicemia] The new england journal of medicine 2014年11月7日</ref>。
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[[Image:Ebola outbreak in Gulu Municipal Hospital.jpg|200px|right|thumb|2000年に[[ウガンダ]]で流行した際の[[隔離|隔離病棟]]に収容された患者。]]
[[Image:Ebola outbreak in Gulu Municipal Hospital.jpg|200px|right|thumb|2000年に[[ウガンダ]]で流行した際の[[隔離|隔離病棟]]に収容された患者。]]
[[File:Biosafety level 4 hazmat suit.jpg|thumb|200px|right|エボラウイルスを取り扱う研究者。[[バイオセーフティーレベル|BSL-4]]に対応した[[化学防護服]]を着用している。]]
[[File:Biosafety level 4 hazmat suit.jpg|thumb|200px|right|エボラウイルスを取り扱う研究者。[[バイオセーフティーレベル|BSL-4]]に対応した[[化学防護服]]を着用している。]]
潜伏期間は通常7日程度(最短2日、最長3週間以上<ref>[http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/04021406.html エボラウイルスについて (ファクトシート)] FORTH 2014年3月 WHO</ref><ref group="†">2014年の流行では平均11.4日だが、5%程度21日を越え、40日になる場合もあった。決して21日を超えれば安全というわけではない。そのため、実務ではウイルスが検出できなくなるまで隔離する。</ref>)。WHOおよび[[アメリカ疾病予防管理センター|CDC]]の発表によると、潜伏期間中は感染力はなく、発病後に感染力が発現する<ref>[http://www.who.int/csr/disease/ebola/faq-ebola/en/ WHO | Frequently asked questions on Ebola virus disease] 2014年8月10日閲覧</ref><ref>[http://www.cdc.gov/vhf/ebola/outbreaks/guinea/qa.html Q & A on Ebola | Ebola Hemorrhagic Fever | CDC] 2014年8月10日閲覧</ref><ref group="†">2014年8月に[[ナイジェリア]]へエボラを持ち込んだ[[リベリア]]系アメリカ人のPSは、妹からエボラ感染されたとされるが、妹の隔離からPSの発症まで3週間以上あるため、潜伏期間が3週間以上ある可能性がある。</ref>。
潜伏期間は通常7日程度(最短2日、最長3週間以上<ref>[https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/04021406.html エボラウイルスについて (ファクトシート)] FORTH 2014年3月 WHO</ref><ref group="†">2014年の流行では平均11.4日だが、5%程度21日を越え、40日になる場合もあった。決して21日を超えれば安全というわけではない。そのため、実務ではウイルスが検出できなくなるまで隔離する。</ref>)。WHOおよび[[アメリカ疾病予防管理センター|CDC]]の発表によると、潜伏期間中は感染力はなく、発病後に感染力が発現する<ref>[http://www.who.int/csr/disease/ebola/faq-ebola/en/ WHO | Frequently asked questions on Ebola virus disease] 2014年8月10日閲覧</ref><ref>[http://www.cdc.gov/vhf/ebola/outbreaks/guinea/qa.html Q & A on Ebola | Ebola Hemorrhagic Fever | CDC] 2014年8月10日閲覧</ref><ref group="†">2014年8月に[[ナイジェリア]]へエボラを持ち込んだ[[リベリア]]系アメリカ人のPSは、妹からエボラ感染されたとされるが、妹の隔離からPSの発症まで3週間以上あるため、潜伏期間が3週間以上ある可能性がある。</ref>。


発病は突発的で[[発熱]]、全身倦怠感、[[頭痛]]、[[筋肉痛]]、[[関節痛]]などを生じ、[[腹痛]]、[[嘔吐]]、[[下痢]]、[[結膜炎]]などの症状が継続する<ref name="2r9852000002q4lb">{{Cite web |url=https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002q4hg-att/2r9852000002q4lb.pdf|title=日本小児科学会 予防接種・感染対策委員会「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」 |publisher=[[厚生労働省]] |accessdate=2020-01-22}}</ref>。
発病は突発的で[[発熱]]、全身倦怠感、[[頭痛]]、[[筋肉痛]]、[[関節痛]]などを生じ、[[腹痛]]、[[嘔吐]]、[[下痢]]、[[結膜炎]]などの症状が継続する<ref name="2r9852000002q4lb">{{Cite web|和書|url=https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002q4hg-att/2r9852000002q4lb.pdf|title=日本小児科学会 予防接種・感染対策委員会「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」 |publisher=[[厚生労働省]] |accessdate=2020-01-22}}</ref>。


多くの患者は[[脱水症状]]や[[播種性血管内凝固症候群]](DIC)による[[多臓器不全]]が原因で死亡する。発病後の致死率は50 - 80&nbsp;%<ref name="2r9852000002q4lb" />。集団発生で致死率が90&nbsp;%に達したことがある<ref>[http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41367 エイズよりはるかに怖いエボラ出血熱、蔓延の兆し1/3] JB Press 2014年7月31日</ref>が、ウイルスの型によって異なる。致死率が高いのはザイール株<ref name=niid.342>[https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/342-ebola-intro.html 「エボラ出血熱とは」「病原体」] NIID国立感染症研究所 2019年9月9日閲覧</ref>とされる。
多くの患者は[[脱水症状]]や[[播種性血管内凝固症候群]](DIC)による[[多臓器不全]]が原因で死亡する。発病後の致死率は50 - 80&nbsp;%<ref name="2r9852000002q4lb" />。集団発生で致死率が90&nbsp;%に達したことがある<ref>[http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41367 エイズよりはるかに怖いエボラ出血熱、蔓延の兆し1/3] JB Press 2014年7月31日</ref>が、ウイルスの型によって異なる。致死率が高いのはザイール株<ref name=niid.342>[https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/342-ebola-intro.html 「エボラ出血熱とは」「病原体」] NIID国立感染症研究所 2019年9月9日閲覧</ref>とされる。
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== 治療 ==
== 治療 ==
2019年段階でエボラウイルスに対する[[ワクチン]]の有効性は見い出されつつあるものの(ワクチンの項で前述)、エボラ出血熱感染症に対して有効な医薬品などは確立されていない。しかし、複数の医薬品の[[臨床試験]]が行われている。エボラ出血熱に感染した後に回復した元患者には[[抗体]]があり、元患者の血液や[[血清]]の投与が有効な治療法とされている<ref group="†">この療法には疑問点が生じ、2014年10月初旬WHOは勧告を出す。</ref>。また[[脱水 (医療)|脱水]]に対する[[点滴]]や、[[鎮痛剤]]及びビタミン剤の投与、[[播種性血管内凝固症候群]] (DIC) に対する[[抗凝固薬]]等の投与が行われている<ref>[http://www.msf.or.jp/news/ebola.html エボラ出血熱について][[国境なき医師団]]日本 - 活動ニュース</ref><ref>[http://japanese.joins.com/article/504/188504.html?servcode=400&sectcode=410 “死のウイルス”エボラ出血熱、空気感染しないが血液・唾・汗には要注意(2)]『[[中央日報]]』2014年8月4日</ref>。
2019年段階でエボラウイルスに対する[[ワクチン]]の有効性は見い出されつつあるものの(ワクチンの項で前述)、エボラ出血熱感染症に対して有効な医薬品などは確立されていない。しかし、複数の医薬品の[[臨床試験]]が行われている。エボラ出血熱に感染した後に回復した元患者には[[抗体]]があり、元患者の血液や[[血清]]の投与が有効な治療法とされている<ref group="†">この療法には疑問点が生じ、2014年10月初旬WHOは勧告を出す。</ref>。また[[脱水 (医療)|脱水]]に対する[[点滴]]や、[[鎮痛剤]]及びビタミン剤の投与、[[播種性血管内凝固症候群]] (DIC) に対する[[抗凝固薬]]等の投与が行われている<ref>[http://www.msf.or.jp/news/ebola.html エボラ出血熱について][[国境なき医師団]]日本 - 活動ニュース</ref><ref>[https://web.archive.org/web/20140810002313/http://japanese.joins.com/article/504/188504.html?servcode=400&sectcode=410 “死のウイルス”エボラ出血熱、空気感染しないが血液・唾・汗には要注意(2)]『[[中央日報]]』2014年8月4日</ref>。


* 1995年に[[コンゴ]]で感染が起きた際には、回復した元患者の血液を8人の患者に[[輸血]]し、そのうちの7人が回復をしている<ref>[http://mainichi.jp/select/news/20140906k0000e040189000c.html 「エボラ出血熱:死者2000人超える WHO」]『毎日新聞』2014年9月6日</ref>。また2014年には感染した米国人医師らに血清の投与や輸血などが行われている<ref>[http://www.cnn.co.jp/world/35053720.html 「回復医師の血液でエボラ出血熱を治療 患者は快方に」][[CNN|cnn.co.jp]](2014年9月12日)</ref>。2014年9月、WHOは「回復した患者の血液や血清を有効な治療方法」と認定し、「早急に試すように」との勧告を出した<ref>[http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2014090602000250.html 「エボラ、死者2000人超す 1カ月足らずで倍増」]『[[東京新聞]]』夕刊2014年9月6日</ref>。
* 1995年に[[コンゴ]]で感染が起きた際には、回復した元患者の血液を8人の患者に[[輸血]]し、そのうちの7人が回復をしている<ref>[http://mainichi.jp/select/news/20140906k0000e040189000c.html 「エボラ出血熱:死者2000人超える WHO」]『毎日新聞』2014年9月6日</ref>。また2014年には感染した米国人医師らに血清の投与や輸血などが行われている<ref>[http://www.cnn.co.jp/world/35053720.html 「回復医師の血液でエボラ出血熱を治療 患者は快方に」][[CNN (アメリカの放送局)|cnn.co.jp]](2014年9月12日)</ref>。2014年9月、WHOは「回復した患者の血液や血清を有効な治療方法」と認定し、「早急に試すように」との勧告を出した<ref>[http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2014090602000250.html 「エボラ、死者2000人超す 1カ月足らずで倍増」]『[[東京新聞]]』夕刊2014年9月6日</ref>。
* 2010年5月29日、米国[[ボストン大学]]のウイルス学者トーマス・ガイスバートをはじめとした研究チームが、エボラウイルスの中でヒトに対する病原性が最も強いザイール型のエボラウイルスに感染させた中国の[[アカゲザル]]の治療に成功したと『[[ランセット|The Lancet]]』誌上で発表した<ref name="natio"/>。人工的に生成した低分子干渉RNA ([[siRNA]]) を基に作られた薬剤を、副作用が出ないよう脂肪分子で包み、感染した細胞に直接届けることで、ウイルスの自己複製を促進するLタンパクを阻害する仕組み<ref name="natio"/>。実験に使用したサルは9匹のうち7匹は6日間にわたって同じ量の薬剤の投与を受け、7匹中3匹は1日おき、4匹は毎日薬剤を摂取した<ref name="natio"/>。それぞれのグループで1匹ずつは[[対照実験|対照群]]として薬剤を投与されなかった<ref name="natio"/>。薬剤を投与されたサルを分析した結果、エボラウイルスに感染して10日後、1日おきに投与されたサルの血中のウイルス濃度は非常に低かった<ref name="natio"/>。また、毎日投与されたグループからはウイルスがまったく検知されなかった<ref name="natio"/>。このsiRNA剤は特定の型のエボラウイルスに合わせて短時間で人工的に生成することが可能なため、新しい型のエボラウイルスが現れたとしても、すぐに対応できるという<ref name="natio">[http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2778/ サルのエボラ治療成功、ヒトへの応用は] [[ナショナルジオグラフィック (雑誌)|ナショナルジオグラフィック]] ニュース 2010年6月10日</ref>。
* 2010年5月29日、米国[[ボストン大学]]のウイルス学者トーマス・ガイスバートをはじめとした研究チームが、エボラウイルスの中でヒトに対する病原性が最も強いザイール型のエボラウイルスに感染させた中国の[[アカゲザル]]の治療に成功したと『[[ランセット|The Lancet]]』誌上で発表した<ref name="natio"/>。人工的に生成した低分子干渉RNA ([[siRNA]]) を基に作られた薬剤を、副作用が出ないよう脂肪分子で包み、感染した細胞に直接届けることで、ウイルスの自己複製を促進するLタンパクを阻害する仕組み<ref name="natio"/>。実験に使用したサルは9匹のうち7匹は6日間にわたって同じ量の薬剤の投与を受け、7匹中3匹は1日おき、4匹は毎日薬剤を摂取した<ref name="natio"/>。それぞれのグループで1匹ずつは[[対照実験|対照群]]として薬剤を投与されなかった<ref name="natio"/>。薬剤を投与されたサルを分析した結果、エボラウイルスに感染して10日後、1日おきに投与されたサルの血中のウイルス濃度は非常に低かった<ref name="natio"/>。また、毎日投与されたグループからはウイルスがまったく検知されなかった<ref name="natio"/>。このsiRNA剤は特定の型のエボラウイルスに合わせて短時間で人工的に生成することが可能なため、新しい型のエボラウイルスが現れたとしても、すぐに対応できるという<ref name="natio">[http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2778/ サルのエボラ治療成功、ヒトへの応用は] [[ナショナルジオグラフィック (雑誌)|ナショナルジオグラフィック]] ニュース 2010年6月10日</ref>。
* 2014年8月6日、[[2014年の西アフリカエボラ出血熱流行|西アフリカで大流行しているエボラ出血熱]]の医療チームで感染した米国人2人に対して投与された実験用の抗体治療剤「[[ZMapp]]」の効果があったことから、この未承認薬のエボラ出血熱患者への投与承認を求める申請がWHOになされた<ref>[http://japanese.joins.com/article/613/188613.html?servcode=400&sectcode=410 実験用エボラ治療剤「ZMapp」、生体武器防御目的で開発]『中央日報』2014年8月6日</ref>。薬の効果・副作用より、供給が不足する中で「誰に投与すべきか」という倫理上の問題があったが、WHO特別委員会で暫定的に承認された。なお、前述の米国人医師への使用で効果があったという報道については、投与と効果の因果関係がはっきりと示されておらず、仮に効果があったとしても、副作用を含めた安全性についてはまだ確証が得られていない<ref group="†">実験用薬剤という性質上、生産供給量は限られており、2008年8月初旬の出荷で在庫は切れたとされる。</ref><ref group="†">[http://www.nytimes.com/2014/08/13/world/africa/ebola.html?_r=0 Opting Not to Give Ebola Drug to African Doctor]『[[ニューヨーク・タイムズ]]』, Aug 12, 2014 シエラレオネの指導的医師に投与が検討されたが、MSFとWHOの合同医療チームは投与しないと決めた。その2日後に当該の人物は死亡した。</ref>。米国では他にも、TekmiraとBiocryst Pharmaceuticalsの2社が政府の援助を得て新薬を開発中である<ref>[http://www.cdc.gov/vhf/ebola/outbreaks/guinea/qa-experimental-treatments.html Questions and Answers on experimental treatments and vaccines for Ebola] CDC, August 8, 2014</ref>。
* 2014年8月6日、[[2014年の西アフリカエボラ出血熱流行|西アフリカで大流行しているエボラ出血熱]]の医療チームで感染した米国人2人に対して投与された実験用の抗体治療剤「[[ZMapp]]」の効果があったことから、この未承認薬のエボラ出血熱患者への投与承認を求める申請がWHOになされた<ref>[https://web.archive.org/web/20140809115914/http://japanese.joins.com/article/613/188613.html?servcode=400&sectcode=410 実験用エボラ治療剤「ZMapp」、生体武器防御目的で開発]『中央日報』2014年8月6日</ref>。薬の効果・副作用より、供給が不足する中で「誰に投与すべきか」という倫理上の問題があったが、WHO特別委員会で暫定的に承認された。なお、前述の米国人医師への使用で効果があったという報道については、投与と効果の因果関係がはっきりと示されておらず、仮に効果があったとしても、副作用を含めた安全性についてはまだ確証が得られていない<ref group="†">実験用薬剤という性質上、生産供給量は限られており、2008年8月初旬の出荷で在庫は切れたとされる。</ref><ref group="†">[http://www.nytimes.com/2014/08/13/world/africa/ebola.html?_r=0 Opting Not to Give Ebola Drug to African Doctor]『[[ニューヨーク・タイムズ]]』, Aug 12, 2014 シエラレオネの指導的医師に投与が検討されたが、MSFとWHOの合同医療チームは投与しないと決めた。その2日後に当該の人物は死亡した。</ref>。米国では他にも、TekmiraとBiocryst Pharmaceuticalsの2社が政府の援助を得て新薬を開発中である<ref>[http://www.cdc.gov/vhf/ebola/outbreaks/guinea/qa-experimental-treatments.html Questions and Answers on experimental treatments and vaccines for Ebola] CDC, August 8, 2014</ref>。
* [[富士フイルムホールディングス]]傘下企業の[[富山化学工業]]が開発した[[インフルエンザ]]治療薬「[[ファビピラビル]]」はウイルスの[[RNAポリメラーゼ]]の阻害薬で、疫病のマウスモデルにおいてエボラウイルスを排除する効果が確認されている<ref name="Gath2014">{{cite journal |last1=Gatherer |first1=D |title=The 2014 Ebola virus disease outbreak in West Africa. |journal=The Journal of general virology |date=2014 Aug |volume=95 |issue=Pt 8 |pages=1619-1624 |pmid=24795448}}</ref><ref name="nikkeimedical20140811">{{cite news
* [[富士フイルムホールディングス]]傘下企業の[[富山化学工業]]が開発した[[インフルエンザ]]治療薬「[[ファビピラビル]]」はウイルスの[[RNAポリメラーゼ]]の阻害薬で、疫病のマウスモデルにおいてエボラウイルスを排除する効果が確認されている<ref name="Gath2014">{{cite journal |last1=Gatherer |first1=D |title=The 2014 Ebola virus disease outbreak in West Africa. |journal=The Journal of general virology |date=2014 Aug |volume=95 |issue=Pt 8 |pages=1619-1624 |pmid=24795448}}</ref><ref name="nikkeimedical20140811">{{cite news
|title = エボラ出血熱で世界が注目する日本発のある薬剤
|title = エボラ出血熱で世界が注目する日本発のある薬剤
|url = http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201408/537890.html
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|publisher = [[日経BP|日経メディカル]]
|publisher = [[日経BP|日経メディカル]]
|date = 2014年8月11日
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136行目: 158行目:
|accessdate = 2014年8月13日}}</ref><ref name="sporthouchil20140813">{{cite news
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|title = エボラ出血熱「国際的緊急事態」富士フイルム“特効薬”治療利用
|title = エボラ出血熱「国際的緊急事態」富士フイルム“特効薬”治療利用
|url = http://www.hochi.co.jp/topics/20140809-OHT1T50036.html
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|publisher = 『[[スポーツ報知]]』
|publisher = 『[[スポーツ報知]]』
|date = 2014年8月9日
|date = 2014年8月9日
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|title = エボラ熱治療薬候補に 富士フイルムの薬 米で手続き
|title = エボラ熱治療薬候補に 富士フイルムの薬 米で手続き
|url = http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM0701X_X00C14A8FF1000/
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|publisher = 『日本経済新聞』
|publisher = 『日本経済新聞』
|date = 2014年8月8日
|date = 2014年8月8日
|accessdate = 2014年8月13日}}</ref>。2014年10月21日、[[フランス]]政府はファビピラビルの臨床試験をギニアで開始すると発表した<ref>{{cite news |title=フランス、日本のエボラ未承認薬を臨床試験へ |newspaper=『読売新聞』 |date=2014-10-21 |url=http://www.yomiuri.co.jp/science/20141021-OYT1T50122.html |accessdate=2014-10-21 |author=[[三井美奈]]}}</ref>。
|accessdate = 2014年8月13日}}</ref>。2014年10月21日、[[フランス]]政府はファビピラビルの臨床試験をギニアで開始すると発表した<ref>{{cite news |title=フランス、日本のエボラ未承認薬を臨床試験へ |newspaper=『読売新聞』 |date=2014-10-21 |url=https://web.archive.org/web/20141021145017/http://www.yomiuri.co.jp/science/20141021-OYT1T50122.html |accessdate=2014-10-21 |author=[[三井美奈]]}}</ref>。
* 不妊症及び乳癌の治療に用いられる[[エストロゲン受容体]]遮断薬([[クロミフェン]]と[[トレミフェン]])は、感染した[[ハツカネズミ#実験用マウス|マウス]]でエボラウイルスの進行を抑制する<ref name="Johansen_2013">{{cite journal | author = Johansen LM, Brannan JM, Delos SE, Shoemaker CJ, Stossel A, Lear C, Hoffstrom BG, Dewald LE, Schornberg KL, Scully C, Lehár J, Hensley LE, White JM, Olinger GG | title = FDA-approved selective estrogen receptor modulators inhibit Ebola virus infection | journal = Sci Transl Med | volume = 5 | issue = 190 | pages = 190ra79 | year = 2013 | pmid = 23785035 | pmc = 3955358 | doi = 10.1126/scitranslmed.3005471 | laysummary = http://www.healthline.com/health-news/tech-breast-cancer-drugs-fight-ebola-virus-infection-062013 | laysource = Healthline Networks, Inc. }}</ref>。クロミフェンで治療されマウスの90%及びトレミフェンで治療されたマウスの50%が、テストを生き残った<ref name="Johansen_2013"/>。経口で利用可能であり、人的利用の歴史のあるこれらの薬は、単体で使うにせよ、他の抗ウイルス薬と合わせて使うにせよ、遠い地理的位置においてエボラウイルス感染を治療するのための候補であろう。
* 不妊症及び乳癌の治療に用いられる[[エストロゲン受容体]]遮断薬([[クロミフェン]]と[[トレミフェン]])は、感染した[[ハツカネズミ#実験用マウス|マウス]]でエボラウイルスの進行を抑制する<ref name="Johansen_2013">{{cite journal | author = Johansen LM, Brannan JM, Delos SE, Shoemaker CJ, Stossel A, Lear C, Hoffstrom BG, Dewald LE, Schornberg KL, Scully C, Lehár J, Hensley LE, White JM, Olinger GG | title = FDA-approved selective estrogen receptor modulators inhibit Ebola virus infection | journal = Sci Transl Med | volume = 5 | issue = 190 | pages = 190ra79 | year = 2013 | pmid = 23785035 | pmc = 3955358 | doi = 10.1126/scitranslmed.3005471 | laysummary = http://www.healthline.com/health-news/tech-breast-cancer-drugs-fight-ebola-virus-infection-062013 | laysource = Healthline Networks, Inc. }}</ref>。クロミフェンで治療されマウスの90%及びトレミフェンで治療されたマウスの50%が、テストを生き残った<ref name="Johansen_2013"/>。経口で利用可能であり、人的利用の歴史のあるこれらの薬は、単体で使うにせよ、他の抗ウイルス薬と合わせて使うにせよ、遠い地理的位置においてエボラウイルス感染を治療するのための候補であろう。
* 2014年の研究で、''[[試験管]]内において''、心臓不整脈の治療に使われる[[イオンチャンネル]]遮断薬である[[アミオダロン]]がエボラウイルスの細胞への侵入を防ぐことが見つかった<ref name="pmid24710028">{{cite journal | author = Gehring G, Rohrmann K, Atenchong N, Mittler E, Becker S, Dahlmann F, Pöhlmann S, Vondran FW, David S, Manns MP, Ciesek S, von Hahn T | title = The clinically approved drugs amiodarone, dronedarone and verapamil inhibit filovirus cell entry | journal = J. Antimicrob. Chemother. | volume = 69 | issue = 8 | pages = 2123–31 | year = 2014 | pmid = 24710028 | doi = 10.1093/jac/dku091 }}</ref>。
* 2014年の研究で、''[[試験管]]内において''、心臓不整脈の治療に使われる[[イオンチャンネル]]遮断薬である[[アミオダロン]]がエボラウイルスの細胞への侵入を防ぐことが見つかった<ref name="pmid24710028">{{cite journal | author = Gehring G, Rohrmann K, Atenchong N, Mittler E, Becker S, Dahlmann F, Pöhlmann S, Vondran FW, David S, Manns MP, Ciesek S, von Hahn T | title = The clinically approved drugs amiodarone, dronedarone and verapamil inhibit filovirus cell entry | journal = J. Antimicrob. Chemother. | volume = 69 | issue = 8 | pages = 2123–31 | year = 2014 | pmid = 24710028 | doi = 10.1093/jac/dku091 }}</ref>。
* WHOのキーニー事務局長補は2014年8月12日の記者会見で、2種類のワクチンが臨床試験直前の段階にあると述べた<ref name="hochi1">[http://www.hochi.co.jp/topics/20140813-OHT1T50103.html カナダ、エボラ熱ワクチン提供へ 未承認治療薬で効果に不透明な点も] スポーツ報知([[共同通信]])2014年8月13日</ref>。
* WHOのキーニー事務局長補は2014年8月12日の記者会見で、2種類のワクチンが臨床試験直前の段階にあると述べた<ref name="hochi1">[https://web.archive.org/web/20140814083759/http://www.hochi.co.jp/topics/20140813-OHT1T50103.html カナダ、エボラ熱ワクチン提供へ 未承認治療薬で効果に不透明な点も] スポーツ報知([[共同通信]])2014年8月13日</ref>。
* カナダ保健省は約1500回分の未承認のワクチンを保有する。そのうち1000回分程度を供給する用意があると述べた<ref name="hochi1"/>。
* カナダ保健省は約1500回分の未承認のワクチンを保有する。そのうち1000回分程度を供給する用意があると述べた<ref name="hochi1"/>。
* [[メルク・アンド・カンパニー|メルク社]]製ワクチン「VSV-EBOV」は2015年4月に第III相臨床試験を開始し、同年7月末には高度な有効性と安全性が確認されている<ref>{{cite journal|last1=Henao-Restrepo et al.|first1=Ana Maria|title=Efficacy and effectiveness of an rVSV-vectored vaccine expressing Ebola surface glycoprotein: interim results from the Guinea ring vaccination cluster-randomised trial|journal=Lancet|date=2015-07-31|volume=15|pages=61117-5|doi=10.1016/S0140-6736(15)61117-5|url=http://thelancet.com/pb/assets/raw/Lancet/pdfs/S0140673615611175.pdf}}</ref>
* [[メルク・アンド・カンパニー|メルク社]]製ワクチン「VSV-EBOV」は2015年4月に第III相臨床試験を開始し、同年7月末には高度な有効性と安全性が確認されている<ref>{{cite journal|last1=Henao-Restrepo et al.|first1=Ana Maria|title=Efficacy and effectiveness of an rVSV-vectored vaccine expressing Ebola surface glycoprotein: interim results from the Guinea ring vaccination cluster-randomised trial|journal=Lancet|date=2015-07-31|volume=15|pages=61117-5|doi=10.1016/S0140-6736(15)61117-5|url=http://thelancet.com/pb/assets/raw/Lancet/pdfs/S0140673615611175.pdf}}</ref>
* [[ラミブジン]](通常は[[後天性免疫不全症候群|HIV/AIDS]]の治療に使用される抗ウイルス薬)は、2014年9月に[[リベリア]]の医師によって併用療法の一部として使用され、[[静脈]]内輸液およびエボラにより損なわれた内臓の[[日和見感染|日和見細菌感染]]と戦うための[[抗生物質]]も同時に導入し、15人のエボラ感染患者のうち、13人の治療に成功したと報告された<ref>{{cite web|url=http://edition.cnn.com/2014/09/27/health/ebola-hiv-drug/ |title=Doctor treats Ebola with HIV drug in Liberia -- seemingly successfully. Elizabeth Cohen, CNN news. 29 September 2014 |date=27 September 2014 |work=CNN |accessdate=7 October 2014}}</ref>。しかしながら、治療を受けた患者の数や[[交絡]]因子の数が現在少ないため、結果に対し警告を表明している。[[アメリカ国立衛生研究所]](NIH)の研究者は、予備的''試験管内''試験において抗エボラ活性を示すことができなかったと述べているが、しかし、彼らは異なる条件の下でそれをテストし続けており、有効性のためのわずかな証拠でも見つかれば、それの試用を前進させるだろう<ref>{{cite web |url=http://www.washingtonpost.com/news/to-your-health/wp/2014/10/02/a-liberian-doctor-is-using-hiv-drugs-to-treat-ebola-victims-the-nih-is-intrigued/ |title=A Liberian doctor is using HIV drugs to treat Ebola victims. The NIH is intrigued. Elahe Izadi, Washington Post. 2 October 2014 |work=『[[ワシントン・ポスト]]』 |accessdate=7 October 2014}}</ref>。
* [[ラミブジン]](通常は[[後天性免疫不全症候群|HIV/AIDS]]の治療に使用される抗ウイルス薬)は、2014年9月に[[リベリア]]の医師によって併用療法の一部として使用され、[[静脈]]内輸液およびエボラにより損なわれた内臓の[[日和見感染|日和見細菌感染]]と戦うための[[抗生物質]]も同時に導入し、15人のエボラ感染患者のうち、13人の治療に成功したと報告された<ref>{{cite web|url=https://edition.cnn.com/2014/09/27/health/ebola-hiv-drug/ |title=Doctor treats Ebola with HIV drug in Liberia -- seemingly successfully. Elizabeth Cohen, CNN news. 29 September 2014 |date=27 September 2014 |work=CNN |accessdate=7 October 2014}}</ref>。しかしながら、治療を受けた患者の数や[[交絡]]因子の数が現在少ないため、結果に対し警告を表明している。[[アメリカ国立衛生研究所]](NIH)の研究者は、予備的''試験管内''試験において抗エボラ活性を示すことができなかったと述べているが、しかし、彼らは異なる条件の下でそれをテストし続けており、有効性のためのわずかな証拠でも見つかれば、それの試用を前進させるだろう<ref>{{cite web |url=http://www.washingtonpost.com/news/to-your-health/wp/2014/10/02/a-liberian-doctor-is-using-hiv-drugs-to-treat-ebola-victims-the-nih-is-intrigued/ |title=A Liberian doctor is using HIV drugs to treat Ebola victims. The NIH is intrigued. Elahe Izadi, Washington Post. 2 October 2014 |work=『[[ワシントン・ポスト]]』 |accessdate=7 October 2014}}</ref>。
* 抗[[マラリア]]薬の一つである[[アーテスネート・アモジアキン]]にエボラ出血熱の死亡率を下げる効果がある可能性がある<ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG07H9I_X00C16A1CR8000/ エボラにマラリア治療薬が効果 長崎大など患者で確認]『日本経済新聞』2016年1月7日</ref><ref>[http://edition.cnn.com/2016/01/11/health/ebola-hiv-drugs-update/ New Ebola treatments mostly failing] CNN(2016年1月11日)</ref>。
* 抗[[マラリア]]薬の一つである[[アーテスネート・アモジアキン]]にエボラ出血熱の死亡率を下げる効果がある可能性がある<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG07H9I_X00C16A1CR8000/ エボラにマラリア治療薬が効果 長崎大など患者で確認]『日本経済新聞』2016年1月7日</ref><ref>[https://edition.cnn.com/2016/01/11/health/ebola-hiv-drugs-update/ New Ebola treatments mostly failing] CNN(2016年1月11日)</ref>。
* [[アメリカ国立衛生研究所]](NIH)傘下の[[アメリカ国立アレルギー・感染症研究所]]によると、[[モノクローナル抗体]]「REGN-EB3」「mAb114」は、臨床試験で投与された患者の死亡率を低下させた<ref>[https://www.afpbb.com/articles/-/3239646 「エボラ出血熱に2種類の薬効果、臨床試験で致死率約30%まで減少」]AFP(2019年8月13日)2019年11月13日閲覧</ref>。
* [[アメリカ国立衛生研究所]](NIH)傘下の[[アメリカ国立アレルギー・感染症研究所]]によると、[[モノクローナル抗体]]「REGN-EB3」「mAb114」は、臨床試験で投与された患者の死亡率を低下させた<ref>[https://www.afpbb.com/articles/-/3239646 「エボラ出血熱に2種類の薬効果、臨床試験で致死率約30%まで減少」]AFP(2019年8月13日)2019年11月13日閲覧</ref>。


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=== コンゴ民主共和国(旧ザイール) (1976) ===
=== コンゴ民主共和国(旧ザイール) (1976) ===
1976年6月のスーダンでの発生から2カ月後、[[コンゴ民主共和国]](旧[[ザイール]])北部のヤンブク教会病院で大規模な[[集団感染]]大発生が起こった<ref name=niid-Ebola/>。ヤンブク教会学校の教師で44歳の男性が[[マラリア]]の疑いで注射を受け、その同じ[[注射器]]で他の注射を受けた9人全員が感染し、全員死亡した<ref name=niid-Ebola/>。さらに患者と接触した医者、看護師など、医療を通じ伝播が起こり、2カ月の間に318名の患者中280名(88%)が死亡した<ref name=niid-Ebola/>。原因の一つは[[マスク]]、[[手袋]]、[[ガウン]]、[[注射器]]等の医療器具の不足であった<ref name=niid-Ebola/>。米国の[[アメリカ疾病予防管理センター|CDC]]、[[WHO]]、[[ベルギー]]のチームが入り、終焉した<ref name=niid-Ebola/>。病院のスタッフ17名中11名が死亡し、病院は閉鎖された<ref name=niid-Ebola/>。
1976年6月のスーダンでの発生から2カ月後、[[コンゴ民主共和国]](旧[[ザイール]])北部の{{仮リンク|ヤンブク|fr|Yambuku}}教会病院で大規模な[[集団感染]]大発生が起こった<ref name=niid-Ebola/>。ヤンブク教会学校の教師で44歳の男性が[[マラリア]]の疑いで注射を受け、その同じ[[注射器]]で他の注射を受けた9人全員が感染し、全員死亡した<ref name=niid-Ebola/>。さらに患者と接触した医者、看護師など、医療を通じ伝播が起こり、2カ月の間に318名の患者中280名(88%)が死亡した<ref name=niid-Ebola/>。原因の一つは[[マスク]]、[[手袋]]、[[ガウン]]、[[注射器]]等の医療器具の不足であった<ref name=niid-Ebola/>。米国の[[アメリカ疾病予防管理センター|CDC]]、[[WHO]]、[[ベルギー]]のチームが入り、終焉した<ref name=niid-Ebola/>。病院のスタッフ17名中11名が死亡し、病院は閉鎖された<ref name=niid-Ebola/>。


=== コートジボワール (1994) ===
=== コートジボワール (1994) ===
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==== 2018年5月 ====
==== 2018年5月 ====
{{See|en:2018 Équateur province Ebola outbreak}}
{{See|en:2018 Équateur province Ebola outbreak}}
[[2018年]]、コンゴ民主共和国で流行<ref>{{Cite news|title=コンゴのエボラ患者3人、無断で病院去る うち2人が帰宅後死亡|url=http://www.afpbb.com/articles/-/3175877|newspaper=AFP|accessdate=2018-05-24|language=ja}}</ref>。コンゴでの発生は1976年以来9度目で、最初の症例は5月8日、北西部[[赤道州 (コンゴ)|赤道州]]の遠隔地にあるビコロ(Bikoro)地域で確認され、2ヵ月半後の7月24日に終息が宣言されたが、33人が死亡した<ref>{{Cite news |title=コンゴ、エボラ出血熱の終息宣言 死者33人 |newspaper=AFP |date=2018-7-25 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3183629 |accessdate=2018-7-25}}</ref><ref name=niid-Ebola/>。
[[2018年]]、コンゴ民主共和国で流行<ref>{{Cite news|title=コンゴのエボラ患者3人、無断で病院去る うち2人が帰宅後死亡|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3175877|newspaper=AFP|accessdate=2018-05-24|language=ja}}</ref>。コンゴでの発生は1976年以来9度目で、最初の症例は5月8日、北西部[[赤道州 (コンゴ)|赤道州]]の遠隔地にあるビコロ(Bikoro)地域で確認され、2ヵ月半後の7月24日に終息が宣言されたが、33人が死亡した<ref>{{Cite news |title=コンゴ、エボラ出血熱の終息宣言 死者33人 |newspaper=AFP |date=2018-7-25 |url=https://www.afpbb.com/articles/-/3183629 |accessdate=2018-7-25}}</ref><ref name=niid-Ebola/>。


*5月8日、保健省は第9回目のEVDアウトブレイクを宣言し、検疫を強化した。日本はDRC保健省からの要請を受け、国際緊急援助隊を派遣した。
*5月8日、保健省は第9回目のEVDアウトブレイクを宣言し、検疫を強化した。日本はDRC保健省からの要請を受け、国際緊急援助隊を派遣した。
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{{See|en:Kivu Ebola epidemic}}
{{See|en:Kivu Ebola epidemic}}


同年7月31日、東部の[[北キブ州]]において4人のEVD患者が確認された<ref name=niid-Ebola/>。8月1日DRC保健省は第10回目のEVDアウトブレイクを宣言した。再流行は、東部の[[北キブ州]]や隣接州で多数報告されていて、211人の症例が報告され、うち135人が10月14日までに死亡、対応支援に当たっていた米疾病対策センター([[アメリカ疾病予防管理センター|CDC]])の専門家チームは、安全上の懸念を理由に、最悪の被害が出ている地域から退避した<ref>{{Cite news |title=コンゴでエボラ出血熱が再流行、33人死亡 |newspaper=『日本経済新聞』 |date=2018-8-6 |url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33836350W8A800C1EAF000/ |accessdate=2018-10-16}}</ref><ref>{{Cite news |title=コンゴのエボラ出血熱、感染拡大の恐れ 米対策チームが退避 |newspaper=CNN.co.jp |date=2018-10-16 |url=https://www.cnn.co.jp/world/35127065.html |accessdate=2018-10-16}}</ref>。世界保健機構の緊急対応チームは、北キブ州の都市(ベニ)に展開していたが、11月17日に現地[[イスラム過激派|イスラム系武装組織]]と[[国際連合平和維持活動|国連PKO]]部隊との間で衝突があり、撤収を余儀なくされている<ref>{{Cite web |date= 2018-11-18|url= http://www.afpbb.com/articles/-/3198147|title= コンゴで武装勢力とPKO部隊が衝突、エボラ対応活動が一時中断|publisher= AFP|accessdate=2018-11-22}}</ref>。
同年7月31日、東部の[[北キブ州]]において4人のEVD患者が確認された<ref name=niid-Ebola/>。8月1日DRC保健省は第10回目のEVDアウトブレイクを宣言した。再流行は、東部の[[北キブ州]]や隣接州で多数報告されていて、211人の症例が報告され、うち135人が10月14日までに死亡、対応支援に当たっていた米疾病対策センター([[アメリカ疾病予防管理センター|CDC]])の専門家チームは、安全上の懸念を理由に、最悪の被害が出ている地域から退避した<ref>{{Cite news |title=コンゴでエボラ出血熱が再流行、33人死亡 |newspaper=『日本経済新聞』 |date=2018-8-6 |url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33836350W8A800C1EAF000/ |accessdate=2018-10-16}}</ref><ref>{{Cite news |title=コンゴのエボラ出血熱、感染拡大の恐れ 米対策チームが退避 |newspaper=CNN.co.jp |date=2018-10-16 |url=https://www.cnn.co.jp/world/35127065.html |accessdate=2018-10-16}}</ref>。世界保健機構の緊急対応チームは、北キブ州の都市(ベニ)に展開していたが、11月17日に現地[[イスラム過激派|イスラム系武装組織]]と[[国際連合平和維持活動|国連PKO]]部隊との間で衝突があり、撤収を余儀なくされている<ref>{{Cite web|和書|date= 2018-11-18|url= https://www.afpbb.com/articles/-/3198147|title= コンゴで武装勢力とPKO部隊が衝突、エボラ対応活動が一時中断|publisher= AFP|accessdate=2018-11-22}}</ref>。


次項に示す赤道州のアウトブレイクとは、流行の原因となるエボラウイルスの遺伝子塩基配列の違いから関連はないとされている。
次項に示す赤道州のアウトブレイクとは、流行の原因となるエボラウイルスの遺伝子塩基配列の違いから関連はないとされている。
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==== 2019年:再流行 ====
==== 2019年:再流行 ====
2019年2月から3月にかけて、北キヴ州ブテンボに開設されていたエボラ治療センターが武装勢力からの3度の襲撃を受け、3月9日には警察官1人が死亡、医療従事者1人が負傷。現地警察は、襲撃を掛けてきた武装集団を[[マイマイ (コンゴ)|マイマイ]]と断定している。現地を訪問した世界保健機関の事務局長は報道陣に対し、一時は進展を見せていたエボラ対策が暴力によって後退しているとの声明を出している<ref>{{Cite web |date=2019-03-10 |url=https://www.afpbb.com/articles/-/3214979 |title=武装集団がエボラ治療センター襲撃、警察官1人死亡 コンゴ民主共和国 |publisher=AFP |accessdate=2019-03-10}}</ref>。
2019年2月から3月にかけて、北キヴ州ブテンボに開設されていたエボラ治療センターが武装勢力からの3度の襲撃を受け、3月9日には警察官1人が死亡、医療従事者1人が負傷。現地警察は、襲撃を掛けてきた武装集団を[[マイマイ (コンゴ)|マイマイ]]と断定している。現地を訪問した世界保健機関の事務局長は報道陣に対し、一時は進展を見せていたエボラ対策が暴力によって後退しているとの声明を出している<ref>{{Cite web|和書|date=2019-03-10 |url=https://www.afpbb.com/articles/-/3214979 |title=武装集団がエボラ治療センター襲撃、警察官1人死亡 コンゴ民主共和国 |publisher=AFP |accessdate=2019-03-10}}</ref>。


2019年3月12日現在、北キブ州およびイトゥリ州における20のヘルスゾーンから、疑い例を含め927例(死亡584例、致命率63%)EVD患者が報告。
2019年3月12日現在、北キブ州およびイトゥリ州における20のヘルスゾーンから、疑い例を含め927例(死亡584例、致命率63%)EVD患者が報告。
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2002年4月、[[世界保健機関]] (WHO) は、[[ガボン]]北部に生息する[[ニシローランドゴリラ]]の死体からウイルスを発見した。エボラ出血熱の流行地帯に暮らす人々は、[[ゴリラ]]や[[チンパンジー]]などの野生生物を食用とする習慣があり、また実際に発症した人の中には、発症する直前に森林で野生動物の死体に触れたと証言した者もいることから、ゴリラやチンパンジーも感染ルートの一つとなった可能性がある。翌年、隣国の[[コンゴ共和国]]でエボラ出血熱が発生した際には、人間への感染と同時にゴリラにも多数の感染例が報告され、2002年から2005年の間に約5,500匹ものゴリラが死亡したと報告した。2007年9月12日に発表されたIUCN[[レッドリスト]]では、エボラ出血熱による激減および[[密猟]]のため、ニシローランドゴリラは最も絶滅危険度の高い Critically Endangered(絶滅寸前)に分類されている<ref>{{Cite journal |last = Vogel |first = Gretchen |title = Scientists Say Ebola Has Pushed Western Gorillas to the Brink |journal = Science |volume = 317 |issue = 5844 |pages = 1484 |date = 2007 |doi = 10.1126/science.317.5844.1484}}</ref>。[[チンパンジー]]にいたっては100年前には約200万匹いたと推定されるが、商業目的での密猟や[[食料]]にされたり、エボラ出血熱の流行などによって、現在は約20万匹と推定され、「絶滅のおそれのある種の[[レッドリスト]]」に、絶滅危惧IB類として分類されている<ref>[http://www.city.sapporo.jp/zoo/chimpanzee/zetsumetsu.html 絶滅の危機 〜野生のチンパンジー〜] [[札幌市円山動物園]](2014年8月16日)</ref>。
2002年4月、[[世界保健機関]] (WHO) は、[[ガボン]]北部に生息する[[ニシローランドゴリラ]]の死体からウイルスを発見した。エボラ出血熱の流行地帯に暮らす人々は、[[ゴリラ]]や[[チンパンジー]]などの野生生物を食用とする習慣があり、また実際に発症した人の中には、発症する直前に森林で野生動物の死体に触れたと証言した者もいることから、ゴリラやチンパンジーも感染ルートの一つとなった可能性がある。翌年、隣国の[[コンゴ共和国]]でエボラ出血熱が発生した際には、人間への感染と同時にゴリラにも多数の感染例が報告され、2002年から2005年の間に約5,500匹ものゴリラが死亡したと報告した。2007年9月12日に発表されたIUCN[[レッドリスト]]では、エボラ出血熱による激減および[[密猟]]のため、ニシローランドゴリラは最も絶滅危険度の高い Critically Endangered(絶滅寸前)に分類されている<ref>{{Cite journal |last = Vogel |first = Gretchen |title = Scientists Say Ebola Has Pushed Western Gorillas to the Brink |journal = Science |volume = 317 |issue = 5844 |pages = 1484 |date = 2007 |doi = 10.1126/science.317.5844.1484}}</ref>。[[チンパンジー]]にいたっては100年前には約200万匹いたと推定されるが、商業目的での密猟や[[食料]]にされたり、エボラ出血熱の流行などによって、現在は約20万匹と推定され、「絶滅のおそれのある種の[[レッドリスト]]」に、絶滅危惧IB類として分類されている<ref>[http://www.city.sapporo.jp/zoo/chimpanzee/zetsumetsu.html 絶滅の危機 〜野生のチンパンジー〜] [[札幌市円山動物園]](2014年8月16日)</ref>。


なお、ヒト以外のゴリラやチンパンジー等の[[霊長類]]が人への感染源になっているが、ウイルスの保有[[宿主]]ではなく、人間と同様に偶発的に終末宿主になったと考えられている<ref>{{Cite web|url= http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2012/08221034.html |title= エボラ出血熱について(ファクトシート) |publisher= FORTH([[厚生労働省]][[検疫所]]) |date= 2012-08 |accessdate= 2020-02-24 }}</ref>。
なお、ヒト以外のゴリラやチンパンジー等の[[霊長類]]が人への感染源になっているが、ウイルスの保有[[宿主]]ではなく、人間と同様に偶発的に終末宿主になったと考えられている<ref>{{Cite web|和書|url= https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2012/08221034.html |title= エボラ出血熱について(ファクトシート) |publisher= FORTH([[厚生労働省]][[検疫所]]) |date= 2012-08 |accessdate= 2020-02-24 }}</ref>。


[[フィリピン]]では2007年から2008年にかけて、[[マニラ]]北部の養豚場など数箇所でブタが相次いで死亡した。アメリカの研究機関が調べたところ、レストン株のエボラウイルスに感染していることが確認された。[[家畜]]へのエボラウイルス感染が確認されたのは世界で初めてである<ref>{{Cite web |title= ブタに感染したエボラウイルス |date= 2009-11 |url= http://www.nikkei-science.com/?p=16816 |accessdate= 2014-08-09 |publisher= 『日経サイエンス』2009年11月号}}</ref>。
[[フィリピン]]では2007年から2008年にかけて、[[マニラ]]北部の養豚場など数箇所でブタが相次いで死亡した。アメリカの研究機関が調べたところ、レストン株のエボラウイルスに感染していることが確認された。[[家畜]]へのエボラウイルス感染が確認されたのは世界で初めてである<ref>{{Cite web|和書|title= ブタに感染したエボラウイルス |date= 2009-11 |url= http://www.nikkei-science.com/?p=16816 |accessdate= 2014-08-09 |publisher= 『日経サイエンス』2009年11月号}}</ref>。
その後、1989年、1990年、1992年、1996年にフィリピンからエボラ・レストンに感染したサルが輸出されていたことが明らかになった。
その後、1989年、1990年、1992年、1996年にフィリピンからエボラ・レストンに感染したサルが輸出されていたことが明らかになった。


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現行の[[感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律|感染症法]]では「[[一類感染症]]」(「一種病原体等」)に指定されている。旧[[伝染病予防法]](1999年に廃止)では「法定伝染病」に指定されていた。
現行の[[感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律|感染症法]]では「[[一類感染症]]」(「一種病原体等」)に指定されている。旧[[伝染病予防法]](1999年に廃止)では「法定伝染病」に指定されていた。


* [[検疫法]]<ref>{{Cite web|title=検疫法|url=https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=326AC0000000201|publisher=e-Gov|accessdate=2019-12-25}}</ref>
* [[検疫法]]<ref>{{Cite web|和書|title=検疫法|url=https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000201|publisher=e-Gov|accessdate=2019-12-25}}</ref>
** 第2条でエボラ出血熱を「検疫感染症」としている。
** 第2条でエボラ出血熱を「検疫感染症」としている。
** 第15条第4項で「本人」は、隔離を解くことを求めることができる。
** 第15条第4項で「本人」は、隔離を解くことを求めることができる。
** 第16条の2第1項で「本人」は、隔離が30日を越える場合には大臣に審査請求ができる。
** 第16条の2第1項で「本人」は、隔離が30日を越える場合には大臣に審査請求ができる。
* [[学校保健安全法]]<ref>{{Cite web|title=学校保健安全法施行規則|url=https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=333M50000080018|publisher=e-Gov|accessdate=2019-12-25}}</ref>
* [[学校保健安全法]]<ref>{{Cite web|和書|title=学校保健安全法施行規則|url=https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=333M50000080018|publisher=e-Gov|accessdate=2019-12-25}}</ref>
** 第19条第1項は、第一種の感染症にかかった者については、「治癒するまで」出席停止としている。
** 第19条第1項は、第一種の感染症にかかった者については、「治癒するまで」出席停止としている。


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* [http://www.dcc-ncgm.info/app/download/9456033779/VHF%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0_+2014%E5%B9%B43%E6%9C%88%E6%9A%AB%E5%AE%9A%E7%89%88.pdf?t=1405989336 出血熱ウイルスの流行地から帰国した症例での対応アルゴリズム(2014年4月17日)] 2014年3月の暫定版。[[国立国際医療研究センター]] 国際感染症センター 国際感染症対策室
* [http://www.dcc-ncgm.info/app/download/9456033779/VHF%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0_+2014%E5%B9%B43%E6%9C%88%E6%9A%AB%E5%AE%9A%E7%89%88.pdf?t=1405989336 出血熱ウイルスの流行地から帰国した症例での対応アルゴリズム(2014年4月17日)] 2014年3月の暫定版。[[国立国際医療研究センター]] 国際感染症センター 国際感染症対策室
* [http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs103/en/ Ebola virus disease] WHO Fact sheet N°103, Updated April 2014
* [http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs103/en/ Ebola virus disease] WHO Fact sheet N°103, Updated April 2014
** 日本語訳(旧版):[http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/04021406.html エボラウイルスについて (ファクトシート)] FORTH 2014年3月
** 日本語訳(旧版):[https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/04021406.html エボラウイルスについて (ファクトシート)] FORTH 2014年3月
* [http://www.dcc-ncgm.info/app/download/8322467879/%E8%8B%B1%E5%9B%BDACDP%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B9%EF%BC%882012%E5%B9%B47%E6%9C%88%EF%BC%89%E7%BF%BB%E8%A8%B3%E7%89%88.pdf?t=1402888414 ハザードグループ4病原体によるウイルス性出血熱およびそれに類似する重大な感染症の管理] 英国危険病原体諮問委員会 (ACDP) 2012年7月版の翻訳。国立国際医療研究センター 国際感染症センター 国際感染症対策室
* [http://www.dcc-ncgm.info/app/download/8322467879/%E8%8B%B1%E5%9B%BDACDP%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B9%EF%BC%882012%E5%B9%B47%E6%9C%88%EF%BC%89%E7%BF%BB%E8%A8%B3%E7%89%88.pdf?t=1402888414 ハザードグループ4病原体によるウイルス性出血熱およびそれに類似する重大な感染症の管理] 英国危険病原体諮問委員会 (ACDP) 2012年7月版の翻訳。国立国際医療研究センター 国際感染症センター 国際感染症対策室
* [http://kanpoken.pref.yamaguchi.lg.jp/jyoho/page5/syoudoku_1.html 感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き] 山口県環境保健センター 平成16年1月30日
* [http://kanpoken.pref.yamaguchi.lg.jp/jyoho/page5/syoudoku_1.html 感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き] 山口県環境保健センター 平成16年1月30日
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2024年6月9日 (日) 00:25時点における版

エボラ出血熱
エボラ出血熱の感染者 (Mayinga N'Seka) と彼女を見守る2人の看護師(1976年)。撮影の数日後、患者は重篤な内出血で死亡した。
概要
診療科 感染症内科学
分類および外部参照情報
ICD-10 A98.4
ICD-9-CM 065.8
DiseasesDB 18043
MedlinePlus 001339
eMedicine med/626
MeSH D019142
エボラ出血熱
別称 Ebola hemorrhagic fever
概要
診療科 感染症
症状 発熱頭痛筋肉痛嘔吐下痢など
原因 エボラウイルス
合併症 脱水症状播種性血管内凝固症候群など
治療 輸液による全身状態の改善など
予後 致死率50〜80%
分類および外部参照情報
エボラ出血熱の発生地 (1976年- 現在)

エボラ出血熱(エボラしゅっけつねつ、Ebola hemorrhagic fever[† 1][† 2]; EHF)、またはエボラウイルス病(エボラウイルスびょう、Ebola virus disease; EVD)は、フィロウイルス科エボラウイルス属ウイルス病原体とする急性ウイルス性感染症マールブルグ病ラッサ熱南米出血熱クリミア・コンゴ出血熱と並ぶ、ウイルス性出血熱の1つだが、感染者が必ずしも出血症状を呈するわけではないため、国際的には呼称がエボラ出血熱からエボラウイルス病へ切り替わりつつある[1][2]。主にアフリカで発生する。

ヒトに感染し、治療開始が遅れると致死率は80 - 90%に上る(ウイルスによって異なる)[3]。また、仮に救命できたとしても重篤な後遺症を残すことがあり、リスクグループレベル4ウイルスの一つである。一方、毒性や致死率があまりにも高く、遠出する機会を得る前に患者が死亡してしまうことが専らであることから、世界的流行には至っていない(これが致死率が比較的低いため軽症の患者が遠出しやすく世界的大流行を引き起こした新型インフルエンザ新型コロナウイルス感染症との違いである)。

2019年7月、WHOコンゴ民主共和国での大流行について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に指定した[3]

概要

エボラウイルスは大きさが80 - 800 nmの細長いRNAウイルスである。ひも状、U字型、ぜんまい型など形は決まっておらず、多種多様である。他の多くのウイルスと異なり、免疫系を攪乱するデコイを放ち、生体の防御機構をほぼ完全にすり抜けるという特徴がある。これが感染性の高さに繋がっている。また、ウイルス増殖の際に体細胞の構成要素であるタンパク質を分解することで、全組織を傷害し、最強の毒性を発揮する。さらに、ウイルスが免疫系の中枢である白血球を大量に破壊し、サイトカインストームを起こして血管を傷害し、血栓を作り、肝臓を始めとする全身の臓器を冒す。これら多重の攻撃によって発症者を確実に死に至らしめる。最強の毒性を発揮するだけでなく、ウイルス5個程度でも感染が成立するため、エボラウイルスは世界保健機関(WHO)のリスクグループ4の病原体に指定されており、実験室・研究施設で取り扱う際のバイオセーフティーレベルは最高度の4が要求される[4]

初めてこのウイルスが発見されたのは1976年6月のことでスーダン南西部(現:南スーダン)の西エクアトリア州にある町ヌザラ (Nzara) で、倉庫番を仕事にしている男性が急に39度の高熱と頭や腹部の痛みを感じて入院した後、消化器から激しく出血して死亡した。その後、その男性の近くにいた2人も同様に発症して、それを発端に血液や医療器具を通して感染が広がった。最終的にヌザラでの被害は、感染者数284人、死亡者数151人というものだった[要出典]

そして同年8月に当時のザイール(現:コンゴ民主共和国)のエボラ川: Ebola/Ébola)沿岸のヤンブクフランス語版でヌザラで起きたのと同じ出血熱のアウトブレイクが発生したことから、エボラウイルスと名づけられた[5]。病気もエボラ出血熱と名づけられた[5]。その後、エボラ出血熱はアフリカ大陸で10回、突発的に発生・流行し、患者の早期発見・治療開始が遅れると、致死率が80- 90%に上る[3]

他にイギリスでも感染患者が確認されており、ロンドン郊外のカンタベリーにおいて34歳女性が感染者として病院に搬送されたとされている[6]

感染源

エボラウイルスのビリオン電子顕微鏡
エボラウイルスのライフサイクル

アフリカ中央部(スーダン、コンゴ民主共和国コンゴ共和国ガボンウガンダ)、西アフリカ(コートジボワール(アイボリコースト、象牙海岸。輸入1例)、ギニアリベリアシエラレオネナイジェリア)、南アフリカ(ガボンからの輸入1例)で発症している。またフィリピンでは、感染したカニクイザルが見つかっている(サルはアメリカ合衆国イタリアに輸出され、ウイルスが発見された。)。

自然宿主

自然宿主の特定には至ってはいないが、複数種のオオコウモリが有力とされている[7][1]サルからの感染例はあるが、キャリアではなくヒトと同じ終末宿主である。また、現地ではサルの燻製を食する習慣があるため、これを原因とする噂があることも報道に見える[8]

2005年12月1日付の英科学誌『ネイチャー』にて、ガボンのフランスヴィル国際医学研究センターなどのチームの調査によると、オオコウモリ科のウマヅラコウモリフランケオナシケンショウコウモリ英語版コクビワフルーツコウモリ英語版等が、エボラウイルスの自然宿主とされ、現地の食用コウモリからの感染が研究論文で発表されている[9]

感染経路

患者の血液、分泌物、排泄物唾液などの飛沫感染が主な感染経路となる。患者およびその体液への濃厚な接触は問題であり、死亡した患者の遺体への接触からも感染する。エボラウイルスの感染力は強いものの、空気感染をせず、感染者の体液や血液に触れなければ感染しない[10]。これまでに見られた感染拡大も、死亡した患者の会葬の際や医療器具の不足(注射器や手袋など)により、患者の血液や体液に触れたことによりもたらされたものが多く、空気感染はない[11]。患者の隔離に関する措置が十分に行われていれば、感染することはない。

空気感染の有無
アメリカ合衆国レストンでのサルの商業輸入に際して顕在化し、その感染流行により特定されたサルを終末宿主とする「エボラ・レストン株」(現状ではヒトに対する病原性はない[12])は、空気感染の可能性を濃厚に具現する例として知られているものの、エボラ出血熱の人体間における空気感染の可能性について確定的に定義付けるものとは言えない[13]
最小の感染単位
カナダ保健省は、体内に数個のエボラウイルスエアロゾルが侵入しただけでも発症するとしている[14]

しかし、その根拠とする文献では、エボラウイルスの感染法について明確な記述はない[要出典]

予防

厚生労働省は予防として「流行地域への旅行をやめる」「動物や患者に直接触れない」「洞窟に入らない」としている[3]

傷口や粘膜にウイルスが入り込まないよう注意する必要がある。特に、人は自分の目・口・鼻を触りがち[15]であるため、それらに触らないよう気をつける必要がある[16]。また、人の触るドアノブやスイッチ、ハンドルなどはウイルスが付着しやすいため、汚れを落として消毒する必要がある[16][15]。手は石鹸を使って洗う必要があるが、無理な場合はアルコール分を60%以上含むハンドジェルも使用可能[17]

くしゃみはエボラ出血熱の症状こそないが、[18]、別の要因によって咳やくしゃみが起これば、感染する可能性があり、長期間の1メートル以内の近接で感染リスクは中程度とされている[18][19][16][20]。そのため、人ごみをできるだけ避け、具合の悪そうな人への1メートル以内への接近はなるべく控えることが望ましい。また、直接的接触(握手など)や屋内での長時間接触も感染リスクは低いとはいえ、なくはない[20]ので、できるだけ避けることが望ましい。

眼鏡やマスク(N95以上が望ましい)、手袋なども予防に使われているが、ウイルスの付着している表面には触らないよう注意が必要となる。

受容体のHSPA5 (GRP78) がエボラウイルスの感染に使われると特定されており[21]、HSPA5阻害剤の没食子酸エピガロカテキン緑茶などに含まれるカテキンの一つ)はエボラ感染予防に効果がある可能性がある。既に緑茶の飲用は、インフルエンザ対策として効果があるとされている[22]。ただし、鼻からの感染は予防できない。

感染者の嘔吐物、血、肉、唾液、粘液、排泄物、母乳精液などから感染するため[18]、見ず知らずのそれらに気をつける必要がある。また、ウイルスは大抵、湿った地中で生き延びるため、地面に触れないよう注意し、地面に触れたところは消毒する必要がある[23][24]

病院や患者宅のトイレの便座に気をつける必要がある[25]

米国ニューヨーク市は、初期症状の似るインフルエンザと区別しやすいよう、インフルエンザの予防接種を受けておくことを推奨している[26]

アメリカの医療従事者については2014年10月20日時点、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によって、が一切出ないようにすることが推奨されている。液体防護性のガウンエプロン、首回りを隠すサージカルフード、フルフェイスシールド、防塵マスク、二重手袋、液体防護性の足カバーの組み合わせが推奨されている[27]

日本においては、感染者との接触があるなど感染の可能性がある場合は、潜伏期間を過ぎるまで公共交通機関での移動やレストラン、食料品店、映画館などの人の集まる場所への外出を控え[28]、検温を朝夕二回して検疫所に報告し[29]、熱や症状の出た場合は地域の医療機関を受診するのではなく、最寄りの保健所に連絡して指示を仰ぐ必要があるとされている[30]

アメリカの一部のアメリカ陸軍などでは潜伏期間中も隔離措置が行われている[31][32]

犬はエボラ出血熱を発症しないものの、エボラウイルスに感染する可能性を否定できないため、患者のペットの犬は、安楽死が行われている[33]

感染者当たりの平均感染率を一人未満に抑えなければ、流行は収束できない[33]。新たな感染者を素早く見つけるために、感染者から接触者を聞き出す接触者追跡調査(コンタクトトレーシング)が行われている[34]。CDCは、見逃された一人の接触者が大流行(アウトブレイク)を引き起しうるとして、警告している[34]

ワクチン

2009年、実験動物に対しては東京大学医科学研究所教授(ウイルス学)の河岡義裕は、エボラ出血熱ウイルスのワクチンマウスに接種したところ、一定の効果を確認したことを米専門誌『ジャーナル・オブ・バイロロジー』電子版で発表した。この実験では、ワクチンを接種せずに感染させたマウス10匹は6日後に全て死亡したが、接種した15匹は、健康な3匹のマウスと同じように2週間以上生き続けたという。河岡は今後、サルで実験し、早期実用化を目指したいとしている[35]

2015年、ギニアで大規模なワクチンの臨床試験が行われ、2016年12月23日、世界保健機関は試験中のエボラ出血熱ワクチンについて有効性が確認されたことを発表した[36]2018年にコンゴ民主共和国の内陸部にある北キヴ州でエボラ出血熱が流行した際には、大規模なワクチン接種が実施された。2019年2月、同国保健省は終息の目途が立っていない段階ではあるものの、ワクチン接種の効果で死者数の増加を防げていると評価している[37]2020年4月、ほぼ抑え込んだ為にWHOは終息宣言を行う予定であったが、新たな感染者1名が出た為に延期された[38]

2010年代、グラクソ・スミスクラインは、エボラ出血熱の世界的なパンデミックも視野に入れてワクチン開発を行ってきた。しかしながら臨床試験の最終段階の時点で流行が広がっていたのは、最貧国の一つであるコンゴ民主共和国の一地域であり、開発資金の回収が見込めないとしてワクチン開発の継続を断念。ワクチン候補を2019年までにアメリカの非営利機関に譲渡した[39]

消毒

消毒薬には、次亜塩素酸ナトリウムジクロルイソシアヌール酸ナトリウム顆粒が使われる[40]。金属製小物にはグルタラールなどが適す[40]アルコールも使用可能[40]

また、加熱消毒では、安全マージンを加えた60℃、60分間の加熱が使われる[41]。煮沸消毒でも、5分は必要となる。

ガンマ線照射12 - 12.7 kGy (1.2 - 1.27 × 106 rad) や紫外線照射でも消毒可能だが、紫外線照射の場合は有機物に取り込まれているエボラウイルスを不活性化できない[42][43]

検査

設備が整った施設がなくても、ウイルスの有無を確認できる検査キットが日本のデンカ生研により開発されており、アフリカの感染発生地に国際協力機構(JICA)を通じて提供されている[44]

バイオセイフティーレベル3の施設でもエボラ出血熱の疑われる患者の血液を検査できる。日本では国立感染症研究所ウイルス第一部第一室に検体を送ることでPCRを使ったエボラ出血熱の検査が可能だが、エボラウイルスの変異の確認、治療薬の効果の確認、患者の退院可能かの確認は不可能となっている[45][46]。なお、発症していても、陽性の結果が出るまでに、3日程度かかる場合がある[47]

第一種感染症指定医療機関には、微生物学的検査が可能な検査室の設置が義務付けられているが、エボラウイルスの検査については不明。エボラ出血熱に対応する海外病院の隔離病棟にあるオンサイトラボラトリでは、エボラの血液サンプルを扱えるところがある[48]

アメリカでは現在、バイオファイア・ディフェンス社の設備を導入した300以上の医療機関でエボラウイルスの検知が可能となっている[49]

危篤状態を終えて、血液からウイルスが検出されなくなっても、ドイツのケースでは、尿や汗からウイルスが検出され続けており、その後、尿から検出されなくなっても汗からのウイルスの検出が続いている[50][51]

症状

2000年にウガンダで流行した際の隔離病棟に収容された患者。
エボラウイルスを取り扱う研究者。BSL-4に対応した化学防護服を着用している。

潜伏期間は通常7日程度(最短2日、最長3週間以上[52][† 3])。WHOおよびCDCの発表によると、潜伏期間中は感染力はなく、発病後に感染力が発現する[53][54][† 4]

発病は突発的で発熱、全身倦怠感、頭痛筋肉痛関節痛などを生じ、腹痛嘔吐下痢結膜炎などの症状が継続する[55]

多くの患者は脱水症状播種性血管内凝固症候群(DIC)による多臓器不全が原因で死亡する。発病後の致死率は50 - 80 %[55]。集団発生で致死率が90 %に達したことがある[56]が、ウイルスの型によって異なる。致死率が高いのはザイール株[2]とされる。

症状としてエボラ出血熱に特徴的なものはなく[2]、鑑別が必要な疾患としては、ラッサ熱クリミア・コンゴ出血熱黄熱デング熱などの他の出血熱マラリアインフルエンザA型肝炎E型肝炎腸チフスパラチフス細菌性赤痢ペストなどがある[57]。また、出血熱の名の由来である出血症状は一部の患者にしか見られない。

治療

2019年段階でエボラウイルスに対するワクチンの有効性は見い出されつつあるものの(ワクチンの項で前述)、エボラ出血熱感染症に対して有効な医薬品などは確立されていない。しかし、複数の医薬品の臨床試験が行われている。エボラ出血熱に感染した後に回復した元患者には抗体があり、元患者の血液や血清の投与が有効な治療法とされている[† 5]。また脱水に対する点滴や、鎮痛剤及びビタミン剤の投与、播種性血管内凝固症候群 (DIC) に対する抗凝固薬等の投与が行われている[58][59]

  • 1995年にコンゴで感染が起きた際には、回復した元患者の血液を8人の患者に輸血し、そのうちの7人が回復をしている[60]。また2014年には感染した米国人医師らに血清の投与や輸血などが行われている[61]。2014年9月、WHOは「回復した患者の血液や血清を有効な治療方法」と認定し、「早急に試すように」との勧告を出した[62]
  • 2010年5月29日、米国ボストン大学のウイルス学者トーマス・ガイスバートをはじめとした研究チームが、エボラウイルスの中でヒトに対する病原性が最も強いザイール型のエボラウイルスに感染させた中国のアカゲザルの治療に成功したと『The Lancet』誌上で発表した[63]。人工的に生成した低分子干渉RNA (siRNA) を基に作られた薬剤を、副作用が出ないよう脂肪分子で包み、感染した細胞に直接届けることで、ウイルスの自己複製を促進するLタンパクを阻害する仕組み[63]。実験に使用したサルは9匹のうち7匹は6日間にわたって同じ量の薬剤の投与を受け、7匹中3匹は1日おき、4匹は毎日薬剤を摂取した[63]。それぞれのグループで1匹ずつは対照群として薬剤を投与されなかった[63]。薬剤を投与されたサルを分析した結果、エボラウイルスに感染して10日後、1日おきに投与されたサルの血中のウイルス濃度は非常に低かった[63]。また、毎日投与されたグループからはウイルスがまったく検知されなかった[63]。このsiRNA剤は特定の型のエボラウイルスに合わせて短時間で人工的に生成することが可能なため、新しい型のエボラウイルスが現れたとしても、すぐに対応できるという[63]
  • 2014年8月6日、西アフリカで大流行しているエボラ出血熱の医療チームで感染した米国人2人に対して投与された実験用の抗体治療剤「ZMapp」の効果があったことから、この未承認薬のエボラ出血熱患者への投与承認を求める申請がWHOになされた[64]。薬の効果・副作用より、供給が不足する中で「誰に投与すべきか」という倫理上の問題があったが、WHO特別委員会で暫定的に承認された。なお、前述の米国人医師への使用で効果があったという報道については、投与と効果の因果関係がはっきりと示されておらず、仮に効果があったとしても、副作用を含めた安全性についてはまだ確証が得られていない[† 6][† 7]。米国では他にも、TekmiraとBiocryst Pharmaceuticalsの2社が政府の援助を得て新薬を開発中である[65]
  • 富士フイルムホールディングス傘下企業の富山化学工業が開発したインフルエンザ治療薬「ファビピラビル」はウイルスのRNAポリメラーゼの阻害薬で、疫病のマウスモデルにおいてエボラウイルスを排除する効果が確認されている[66][67]。富士フイルムの米国での提携相手であるメディベクターがエボラ出血熱感染者の治療に使えるよう申請する意向で、アメリカ食品医薬品局(FDA)と協議している。承認されれば、エボラ出血熱の感染者治療で米当局が承認する初の医薬品の一つとなる見通し[68][69][70]。2014年10月21日、フランス政府はファビピラビルの臨床試験をギニアで開始すると発表した[71]
  • 不妊症及び乳癌の治療に用いられるエストロゲン受容体遮断薬(クロミフェントレミフェン)は、感染したマウスでエボラウイルスの進行を抑制する[72]。クロミフェンで治療されマウスの90%及びトレミフェンで治療されたマウスの50%が、テストを生き残った[72]。経口で利用可能であり、人的利用の歴史のあるこれらの薬は、単体で使うにせよ、他の抗ウイルス薬と合わせて使うにせよ、遠い地理的位置においてエボラウイルス感染を治療するのための候補であろう。
  • 2014年の研究で、試験管内において、心臓不整脈の治療に使われるイオンチャンネル遮断薬であるアミオダロンがエボラウイルスの細胞への侵入を防ぐことが見つかった[73]
  • WHOのキーニー事務局長補は2014年8月12日の記者会見で、2種類のワクチンが臨床試験直前の段階にあると述べた[74]
  • カナダ保健省は約1500回分の未承認のワクチンを保有する。そのうち1000回分程度を供給する用意があると述べた[74]
  • メルク社製ワクチン「VSV-EBOV」は2015年4月に第III相臨床試験を開始し、同年7月末には高度な有効性と安全性が確認されている[75]
  • ラミブジン(通常はHIV/AIDSの治療に使用される抗ウイルス薬)は、2014年9月にリベリアの医師によって併用療法の一部として使用され、静脈内輸液およびエボラにより損なわれた内臓の日和見細菌感染と戦うための抗生物質も同時に導入し、15人のエボラ感染患者のうち、13人の治療に成功したと報告された[76]。しかしながら、治療を受けた患者の数や交絡因子の数が現在少ないため、結果に対し警告を表明している。アメリカ国立衛生研究所(NIH)の研究者は、予備的試験管内試験において抗エボラ活性を示すことができなかったと述べているが、しかし、彼らは異なる条件の下でそれをテストし続けており、有効性のためのわずかな証拠でも見つかれば、それの試用を前進させるだろう[77]
  • マラリア薬の一つであるアーテスネート・アモジアキンにエボラ出血熱の死亡率を下げる効果がある可能性がある[78][79]
  • アメリカ国立衛生研究所(NIH)傘下のアメリカ国立アレルギー・感染症研究所によると、モノクローナル抗体「REGN-EB3」「mAb114」は、臨床試験で投与された患者の死亡率を低下させた[80]

流行

1976年から2019年3月時点に至るまで、30回を超えるアウトブレイクが報告されている[81][1]

スーダン (1976-1979)

1976年6月から、スーダン南部(現南スーダン)のヌザラ(Nzara)、マリディ(Maridi)を中心に284名が感染し、151名(53%)が死亡した[1]。6月27日にヌザラの町の綿工場で倉庫番の男性が発症し、家族、医者に伝播した[1]

1979年にはヤンピオで5家族34名が発症し、22名が死亡した[1]

コンゴ民主共和国(旧ザイール) (1976)

1976年6月のスーダンでの発生から2カ月後、コンゴ民主共和国(旧ザイール)北部のヤンブクフランス語版教会病院で大規模な集団感染大発生が起こった[1]。ヤンブク教会学校の教師で44歳の男性がマラリアの疑いで注射を受け、その同じ注射器で他の注射を受けた9人全員が感染し、全員死亡した[1]。さらに患者と接触した医者、看護師など、医療を通じ伝播が起こり、2カ月の間に318名の患者中280名(88%)が死亡した[1]。原因の一つはマスク手袋ガウン注射器等の医療器具の不足であった[1]。米国のCDCWHOベルギーのチームが入り、終焉した[1]。病院のスタッフ17名中11名が死亡し、病院は閉鎖された[1]

コートジボワール (1994)

1994年コートジボワール。チンパンジーの解剖に携わっていたスイス人女性が感染したことが発端だった[1]

ただし、チンパンジーはヒトと同様終末宿主であり、自然界の宿主ではない[1]

ザイール (1995)

1976年の大流行から18年後の1995年4月、ザイール中央部のキクウィト総合病院で発生、244名の死亡者中100名以上は医療関係者であった[1]。この際も医療器具の不足が感染拡大の最大の理由であった[1]。米国、WHO、ベルギーのチームが入り、6月20日に終焉した[1]

このときに分離されたウイルスの遺伝子配列は、19年前のコンゴ・ヤンブクでの流行時に分離されたウイルスとほぼ同じであった[1]

ガボン (1996)

1996年10月、ガボンで森で死亡していたチンパンジーに子供たちが接触し、感染したことが発端だった[1]

不顕性感染者が数%(男女とも)いた[1]

ウガンダ (2000-2001)

2000年10月、スーダンとの国境に接するグルで始まり、南のマシンデイ(27例)や遠く離れたムバララ(5名)でも発生した[1]。死者の清拭や、葬儀の際の血液や体液との接触が感染拡大の原因である[1]

  • 感染425例、死亡数225名
  • 致命率:53%

WHOら全世界から23のチーム、104名の人材が派遣され、日本からは5名が対応にあたった[1]

ガボン・コンゴ共和国 (2001-2002)

2001年12月、ガボンとコンゴ共和国の国境で流行発生[1]

  • ガボン:感染65例、死亡数53名
  • コンゴ:感染32 名、死亡数20名)
  • 致命率:75%

コンゴ民主共和国・ウガンダ (2003-2007)

2003- 2007年、コンゴ民主共和国とウガンダで100名を超える患者発生[1][82]

コンゴ民主共和国 (2008)

2008年のコンゴ民主共和国での流行では、32人が感染し14人が死亡した(死亡率44%)[4]

ウガンダ (2011-2012)

2011年から2012年にかけてウガンダで流行し32人が感染し22人の死亡が報告された[4]

西アフリカパンデミック (2014)

2014年2月にギニアで発生し、隣国のシエラレオネおよびリベリアにおいて、エボラ・ザイール[† 8]が流行し、複数国にまたがるパンデミックとなった。世界保健機関 (WHO) の2015年10月18日の発表によると、感染疑い例も含め28,512名が感染し、11,313名が死亡したとしている。

WHOは2014年8月8日にPHEICを宣言[1]

患者の発生は2016年まで続き、2016年3月29日にPHEICが解除された[1]

患者(疑い例を含み)合計28,616例、致命率40%でそれまでの最大の流行となった[1][83]。 (ギニア3,814例・致命率67%) (リベリア10,666例・致命率45%) (シエラレオネ14,122例・致命率28%)

コンゴ民主共和国 (2018-2020)

患者数

コンゴ・キブのエボラ出血熱のアウトブレイクでの患者数 (2019年12月22日時点:WHO)[84]

2018年5月

2018年、コンゴ民主共和国で流行[85]。コンゴでの発生は1976年以来9度目で、最初の症例は5月8日、北西部赤道州の遠隔地にあるビコロ(Bikoro)地域で確認され、2ヵ月半後の7月24日に終息が宣言されたが、33人が死亡した[86][1]

  • 5月8日、保健省は第9回目のEVDアウトブレイクを宣言し、検疫を強化した。日本はDRC保健省からの要請を受け、国際緊急援助隊を派遣した。

患者計54例(死亡33例、致命率61%)[1]

2018年8月:再流行

同年7月31日、東部の北キブ州において4人のEVD患者が確認された[1]。8月1日DRC保健省は第10回目のEVDアウトブレイクを宣言した。再流行は、東部の北キブ州や隣接州で多数報告されていて、211人の症例が報告され、うち135人が10月14日までに死亡、対応支援に当たっていた米疾病対策センター(CDC)の専門家チームは、安全上の懸念を理由に、最悪の被害が出ている地域から退避した[87][88]。世界保健機構の緊急対応チームは、北キブ州の都市(ベニ)に展開していたが、11月17日に現地イスラム系武装組織国連PKO部隊との間で衝突があり、撤収を余儀なくされている[89]

次項に示す赤道州のアウトブレイクとは、流行の原因となるエボラウイルスの遺伝子塩基配列の違いから関連はないとされている。

発生地域は、国連のPKOが以前から介入している紛争地帯でもある[1]

2019年:再流行

2019年2月から3月にかけて、北キヴ州ブテンボに開設されていたエボラ治療センターが武装勢力からの3度の襲撃を受け、3月9日には警察官1人が死亡、医療従事者1人が負傷。現地警察は、襲撃を掛けてきた武装集団をマイマイと断定している。現地を訪問した世界保健機関の事務局長は報道陣に対し、一時は進展を見せていたエボラ対策が暴力によって後退しているとの声明を出している[90]

2019年3月12日現在、北キブ州およびイトゥリ州における20のヘルスゾーンから、疑い例を含め927例(死亡584例、致命率63%)EVD患者が報告。

流行地域はウガンダと南スーダンと国境を接している。ウガンダでは2019年3月1日現在で計4,400人以上を対象に、Ebola-rV5V ワクチンを接種した[1]

2019年7月にWHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に指定[3]

生態への影響

2002年4月、世界保健機関 (WHO) は、ガボン北部に生息するニシローランドゴリラの死体からウイルスを発見した。エボラ出血熱の流行地帯に暮らす人々は、ゴリラチンパンジーなどの野生生物を食用とする習慣があり、また実際に発症した人の中には、発症する直前に森林で野生動物の死体に触れたと証言した者もいることから、ゴリラやチンパンジーも感染ルートの一つとなった可能性がある。翌年、隣国のコンゴ共和国でエボラ出血熱が発生した際には、人間への感染と同時にゴリラにも多数の感染例が報告され、2002年から2005年の間に約5,500匹ものゴリラが死亡したと報告した。2007年9月12日に発表されたIUCNレッドリストでは、エボラ出血熱による激減および密猟のため、ニシローランドゴリラは最も絶滅危険度の高い Critically Endangered(絶滅寸前)に分類されている[91]チンパンジーにいたっては100年前には約200万匹いたと推定されるが、商業目的での密猟や食料にされたり、エボラ出血熱の流行などによって、現在は約20万匹と推定され、「絶滅のおそれのある種のレッドリスト」に、絶滅危惧IB類として分類されている[92]

なお、ヒト以外のゴリラやチンパンジー等の霊長類が人への感染源になっているが、ウイルスの保有宿主ではなく、人間と同様に偶発的に終末宿主になったと考えられている[93]

フィリピンでは2007年から2008年にかけて、マニラ北部の養豚場など数箇所でブタが相次いで死亡した。アメリカの研究機関が調べたところ、レストン株のエボラウイルスに感染していることが確認された。家畜へのエボラウイルス感染が確認されたのは世界で初めてである[94]。 その後、1989年、1990年、1992年、1996年にフィリピンからエボラ・レストンに感染したサルが輸出されていたことが明らかになった。

日本の対応

法律

現行の感染症法では「一類感染症」(「一種病原体等」)に指定されている。旧伝染病予防法(1999年に廃止)では「法定伝染病」に指定されていた。

  • 検疫法[95]
    • 第2条でエボラ出血熱を「検疫感染症」としている。
    • 第15条第4項で「本人」は、隔離を解くことを求めることができる。
    • 第16条の2第1項で「本人」は、隔離が30日を越える場合には大臣に審査請求ができる。
  • 学校保健安全法[96]
    • 第19条第1項は、第一種の感染症にかかった者については、「治癒するまで」出席停止としている。

受け入れ病院

エボラ出血熱は一類感染症であるため、特定感染症指定医療機関及び第一種感染症指定医療機関でのみ受け入れ可能となっている。2018年5月1日時点、前者は厚生労働省が指定した4医療機関10床、後者は全国の都道府県にあって知事が指定した54医療機関101床がある[97]

第一種感染症指定医療機関の要件は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第三十八条第二項の規定に基づく厚生労働大臣の定める感染症指定医療機関の基準」により定められていて、入院で使われた例は過去一例のみである[要出典]

病原体

エボラウイルス感染症法により特定一種病原体(国民の生命及び健康に「極めて重大な」影響を与えるおそれがある病原体)に指定されており、所持、輸入、譲渡し及び譲受けは一部の例外を除いて禁じられる。運搬には都道府県公安委員会への届出が必要である。所持者には帳簿を備える記帳義務が課せられる。

米国CDCでは生物兵器として利用される可能性が高い病原体として、エボラウイルスを最も危険度、優先度の高いカテゴリーAに分類している。なお、カテゴリーAにはエボラウイルスの他、マールブルグウイルスアレナウイルスラッサ熱および南米出血熱の病原体)、天然痘ウイルスペスト菌炭疽菌ボツリヌス菌野兎病菌も指定されている。

遺体の葬送

埋葬の際は、防護服を着用し、直接遺体を触れない。

感染者が死亡した場合、遺骸は火葬することが望ましい[98]。 日本では感染症予防法により、十分な消毒を行い特別の許可が得られた場合を除き、遺体は火葬することが義務付けられている。火葬の習慣のなかった国や地域では、火葬が拒絶される事がある[99]

エボラ出血熱を題材として扱った作品

ノンフィクション

  • リチャード・プレストン/高見浩訳『ホット・ゾーン』飛鳥新社、1994年(原著1994年)。NCID BN12015000
    • リチャード・プレストン/高見浩訳『ホット・ゾーン――エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々』早川書房(ハヤカワ文庫NF)、2020年。ISBN 9784150505592
  • NHK「エボラ感染爆発」取材班『ウイルス感染爆発』日本放送出版協会、1997年。ISBN 978-4140803028
1995年にザイール(現:コンゴ民主共和国)で起こったエボラ出血熱(エボラ・ザイール)の流行について扱っている
  • ローリー・ギャレット/山内一也監訳、野中浩一・大西正夫訳『カミング・プレイグ:迫りくる病原体の恐怖』河出書房新社、2000年(原著1994年)。NCID BA49345452

フィクション

文献・資料

日本

WHO、ICAOなど国際機関

CDC

その他

脚注

注釈

  1. ^ アメリカ英語発音:[iːˈboʊlə/əˈboʊlə ˌheməˈrædʒɪk fiːvər] イ(ー)ウラ/アウラ・ヘマジ(ッ)ク・フィーヴァー
  2. ^ イギリス英語: Ebola haemorrhagic feverイギリス英語発音:[iːˈbəʊlə/əˈbəʊlə ˌheməˈrædʒɪk fiːvə(r)] イ(ー)ウラ/アウラ・ヘマジ(ッ)ク・フィーヴァ
  3. ^ 2014年の流行では平均11.4日だが、5%程度21日を越え、40日になる場合もあった。決して21日を超えれば安全というわけではない。そのため、実務ではウイルスが検出できなくなるまで隔離する。
  4. ^ 2014年8月にナイジェリアへエボラを持ち込んだリベリア系アメリカ人のPSは、妹からエボラ感染されたとされるが、妹の隔離からPSの発症まで3週間以上あるため、潜伏期間が3週間以上ある可能性がある。
  5. ^ この療法には疑問点が生じ、2014年10月初旬WHOは勧告を出す。
  6. ^ 実験用薬剤という性質上、生産供給量は限られており、2008年8月初旬の出荷で在庫は切れたとされる。
  7. ^ Opting Not to Give Ebola Drug to African Doctorニューヨーク・タイムズ』, Aug 12, 2014 シエラレオネの指導的医師に投与が検討されたが、MSFとWHOの合同医療チームは投与しないと決めた。その2日後に当該の人物は死亡した。
  8. ^ 感染症法6条2項1号エボラウイルス属ザイールウイルス
  9. ^ ケニア航空が西アフリカ諸国との毎週70便の定期航空便を全便停止するとの報道を受け発表され、ケニア航空は運航停止を取りやめた。
  10. ^ あくまで「航空機内での感染可能性は低い。」と言っているだけで、潜伏期感染者の移動に対する対策は、各国が警戒態勢を強化することによって対応するように求めている。

出典

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関連項目

外部リンク