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「区分線形関数」の版間の差分

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{{出典の明記| date = 2023年4月}}
[[画像:Finite element method 1D illustration1.png|right|thumb|関数(青)とその区分線形近似(赤)]]
[[画像:Piecewise linear function2D.svg|right|thumbnail|2次元の区分線形関数()とそれが線形となる凸多面体)]]
[[file:Finite element method 1D illustration1.png|right|thumb|関数()とその区分線形近似)]]
[[file:Piecewise linear function2D.svg|right|thumbnail|2次元の区分線形関数(上)とそれが線形となる凸多面体(下)]]
'''区分線形関数'''([[英語|英]]: '''Piecewise linear function''')とは、次の式
[[数学]]における'''区分的に一次な函数'''あるいは'''区分線形関数'''(くぶんせんけいかんすう、{{lang-en-short|''Piecewise linear function''}})とは、[[区分的に定義される函数]]で、各区分が[[一次函数]](線型函数)となっているようなものをいう。


区分的に線型な函数の概念は、いくつか異なる文脈で意味を持つ。区分的に線型な函数
:<math>f: \Omega \to V</math>
: <math>f\colon \Omega \to V</math>
の定義域 {{math|&Omega;}} としては、{{mvar|n}}-次元[[ユークリッド空間]]や、より一般の[[ベクトル空間]]あるいは[[アフィン空間]]をとることもできるし、他にも{{仮リンク|PL多様体|en|Piecewise linear manifold}}や[[単体的複体]]などといったようなものの上でも定義される。いずれの場合にも、[[終域]] {{mvar|V}} は[[実数]]の全体やベクトル空間、アフィン空間であったり、あるいはPL多様体や単体複体に値をとる区分線型函数(区分線型写像)をも考えることができる。なお、この文脈における「線型」は専ら[[線型写像]]の意味で用いられているのではなく、より一般の[[アフィン変換|アフィン線型写像]]の意味にとる必要がある。


次元が 2 以上の場合には、定義域 {{mvar|V}} の各小片 {{mvar|I}} が[[多角形]]や[[多面体]]となるものと仮定することが多く、こうすれば函数のグラフが多角形や多面体の小片の貼り合わせとなることが保証される。
で表される。ここで、''V'' は[[ベクトル空間]]、<math>\Omega</math> はベクトル空間の部分集合である。このとき、<math>\Omega</math> は有限個の[[凸集合|凸]][[多面体]]に分解でき、''f'' はそれぞれの多面体上の[[一次関数]]に等しい。


区分的に一次な函数のクラスの重要な部分クラスとして、区分的に線型な[[連続函数]]のクラスや区分線型[[凸函数]]のクラスなどが挙げられる。区分的に線型な実函数が[[連続函数|連続]]ならば、そのグラフは{{仮リンク|折線|en|polygonal curve}}になる。[[スプライン曲線]]は区分的に一次な函数を一般化するもので、区分的に高次の多項式やさらに言えば{{仮リンク|区分的に可微分な函数|en|PDIFF}}を考えるものである。
特殊な場合として、''f'' が区間 <math>[x_1,x_2]</math> で実数値関数である場合がある。このとき、<math>[x_1,x_2]</math> を有限個の区間に分割でき、それぞれの区間 ''I'' について ''f'' が下記の線形関数と等しいときのみ、''f'' は区分線形であると言える。


==例==
:''f''(''x'') = ''a<sub>I</sup>x'' + ''b<sub>I</sub>''
{{mvar|f}} が区間 <math>[x_1,x_2]</math> 上の実数値関数である場合には、{{mvar|f}} が区分線形であるための必要十分条件は <math>[x_1,x_2]</math> を有限個の小区間に分割して、各小区間 {{mvar|I}} のうえで {{mvar|f}} が一次函数
: {{math|''f''(''x'') {{=}} ''a''<sub>''I''</sub>&thinsp;''x'' + ''b''<sub>''I''</sub>}}
に等しくなるようにできることである。


[[絶対値]]関数 <math>f(x) = |x|</math> は区分線形関数のよい例である。他にも、[[矩形波]]関数、[[のこぎり波]]関数、[[床関数]]などがある。
[[絶対値]]関数 <math>f(x) = |x|</math> は区分線形関数のよい例である。他にも、[[矩形波]]関数、[[のこぎり波]]関数、[[床関数]]などがある。


[[file:Piecewise linear function.svg|right|thumb|区分線形関数の例]]
区分線形関数の重要な下位クラスとして、[[連続 (数学)|連続]]区分線形関数と[[凸関数|凸]]区分線形関数がある。[[スプライン曲線|スプライン]]は、区分線形関数を高次多面体に一般化したものである。
次の関数
:<!-----formula does not match picture:-----<math>\begin{align}
f(x) &= |x+3|-\frac{3}{2}|x|+\frac{3}{2}|x-3|-\frac{9}{2}\\
&=\begin{cases}
-x-3 & \text{if }x \leq -3 \\
x+3 & \text{if }-3 < x < 0 \\
-2x+3 & \text{if }0 \leq x < 3 \\
x-6 & \text{if }x \geq 3
\end{cases}
\end{align}</math>-----><math>f(x) = \left\{ \begin{array}{lll} -3-x & \text{if} & x \leq -3 \\ x+3 & \text{if} & -3 \leq x \leq 0 \\ 3-2x & \text{if} & 0 \leq x \leq 3 \\ 0.5x - 4.5 & \text{if} & 3 \leq x \\ \end{array} \right.</math>
は4つの区分をもつ区分線形関数である。(この関数のグラフを右に示す。)線形関数のグラフは[[直線]]であるので、区分線形関数のグラフは[[線分]]と[[半直線]]からなる。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
*[[連続 (数学)#不連続関数|不連続関数]]
*[[連続 (数学)#不連続関数|不連続関数]]
*[[曲線#滑らかさ|区分的に連続な曲線]]
*[[曲線#微分構造|区分的に連続な曲線]]


{{DEFAULTSORT:くふんせんけいかんすう}}
{{DEFAULTSORT:くふんせんけいかんすう}}
[[Category:解析学]]
[[Category:解析学]]
[[Category:数学に関する記事]]

[[ca:Funció lineal definida a trossos]]
[[en:Piecewise linear function]]
[[fr:Fonction linéaire par morceaux]]
[[pl:Funkcja przedziałami liniowa]]
[[ru:Кусочно-линейная функция]]

2024年6月13日 (木) 14:42時点における最新版

関数(青)とその区分線形近似(赤)
2次元の区分線形関数(上)とそれが線形となる凸多面体(下)

数学における区分的に一次な函数あるいは区分線形関数(くぶんせんけいかんすう、: Piecewise linear function)とは、区分的に定義される函数で、各区分が一次函数(線型函数)となっているようなものをいう。

区分的に線型な函数の概念は、いくつか異なる文脈で意味を持つ。区分的に線型な函数

の定義域 Ω としては、n-次元ユークリッド空間や、より一般のベクトル空間あるいはアフィン空間をとることもできるし、他にもPL多様体英語版単体的複体などといったようなものの上でも定義される。いずれの場合にも、終域 V実数の全体やベクトル空間、アフィン空間であったり、あるいはPL多様体や単体複体に値をとる区分線型函数(区分線型写像)をも考えることができる。なお、この文脈における「線型」は専ら線型写像の意味で用いられているのではなく、より一般のアフィン線型写像の意味にとる必要がある。

次元が 2 以上の場合には、定義域 V の各小片 I多角形多面体となるものと仮定することが多く、こうすれば函数のグラフが多角形や多面体の小片の貼り合わせとなることが保証される。

区分的に一次な函数のクラスの重要な部分クラスとして、区分的に線型な連続函数のクラスや区分線型凸函数のクラスなどが挙げられる。区分的に線型な実函数が連続ならば、そのグラフは折線英語版になる。スプライン曲線は区分的に一次な函数を一般化するもので、区分的に高次の多項式やさらに言えば区分的に可微分な函数英語版を考えるものである。

[編集]

f が区間 上の実数値関数である場合には、f が区分線形であるための必要十分条件は を有限個の小区間に分割して、各小区間 I のうえで f が一次函数

f(x) = aIx + bI

に等しくなるようにできることである。

絶対値関数 は区分線形関数のよい例である。他にも、矩形波関数、のこぎり波関数、床関数などがある。

区分線形関数の例

次の関数

は4つの区分をもつ区分線形関数である。(この関数のグラフを右に示す。)線形関数のグラフは直線であるので、区分線形関数のグラフは線分半直線からなる。

関連項目[編集]