コンテンツにスキップ

「トール油」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
新しいページ: ''''トール油''' トール油は、松材を原料にクラフトパルプを作るとき、副成する樹脂と脂肪酸を主成分とする油である...'
 
m Botによる: {{Normdaten}}を追加
 
(19人の利用者による、間の23版が非表示)
1行目: 1行目:
'''トール油'''(トールゆ、tall oil)は、[[]]材を原料に[[クラフトパルプ]]を作る時に副成する、[[樹脂]][[脂肪酸]]を主成分とする油である。外観は、暗褐色の稠密液
'''トール油'''


== 概要 ==
トール油は、松材を原料にクラフト[[パルプ]]を作るとき、副成する樹脂と脂肪酸を主成分とする油である。
[[クラフト法]]の[[製紙]]工場では木材チップを、[[水酸化ナトリウム]](苛性ソーダ)などの薬品を加えて煮溶かし([[蒸解]])、木材繊維([[パルプ]])を取り出す。その木材繊維を固めていた[[リグニン]]・樹脂成分と薬品が混じった液体を濃縮したものを[[黒液]]と呼ぶ。
マツ類に含まれる樹脂酸、脂肪酸類はナトリウム石けんとなって黒液中に溶出しており、濃縮過程で塩析されクリーム状の浮遊物(スキミングス)が得られる。このスキミングスを酸で分解し、遊離した油を粗トール油と呼ぶ<ref>本田収「トール油」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p685 日本林業技術協会 1984年(昭和59年)発行</ref>。


粗トール油は[[蒸留塔]]を用いて[[蒸留]]することにより、トール[[ロジン]](トール油ロジン)とトール[[脂肪酸]]が精製され、それぞれ工業的に利用される。他に、ヘッドと呼ばれる揮発成分と、黒い[[ピッチ (樹脂)|ピッチ]]が副成する。トールロジンは[[アビエチン酸]]などの炭素数20のジ[[テルペノイド]]化合物を主成分とする。トール脂肪酸は[[オレイン酸]]と[[リノール酸]]を主成分とする。
松材チップを薬品で煮溶かし(蒸解)、木材繊維([[パルプ]])を取り出す。その木材繊維を固めていた
[[リグニン]]・樹脂成分と薬品が混じった液体を濃縮したものを[[黒液]]と呼ぶ。[[黒液]]を中和すると、樹脂成分
が粗トール油として分離される。


成分比は、[[スラッシュマツ]]、[[ヨーロッパアカマツ]]、[[バビショウ]]など、使用する松の種類によって異なる。
粗トール油は蒸留操作により、トール[[ロジン]]とトール[[脂肪酸]]が精製され、それぞれ工業的に利用される。

トール[[ロジン]]はアビエチン酸などの炭素数20のジ[[テルペノイド]]化合物を主成分とする。トール脂肪酸は
== 産地 ==
[[オレイン酸]]と[[リノール酸]]を主成分とする。
主に[[アメリカ合衆国]]、[[カナダ]]、[[ロシア]]、[[中華人民共和国|中国]]などの製紙工場で産する。日本にも主に北米から輸入され、日本でトールロジンに精製されている。

==脚注==
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
*[[松脂]]

{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:とおるゆ}}
[[Category:植物性油脂]]
[[Category:工業用油脂]]
[[Category:製紙]]
[[Category:マツ科]]
[[Category:再生可能資源]]

2021年3月5日 (金) 16:19時点における最新版

トール油(トールゆ、tall oil)は、材を原料にクラフトパルプを作る時に副成する、樹脂脂肪酸を主成分とする油である。外観は、暗褐色の稠密液。

概要

[編集]

クラフト法製紙工場では木材チップを、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)などの薬品を加えて煮溶かし(蒸解)、木材繊維(パルプ)を取り出す。その木材繊維を固めていたリグニン・樹脂成分と薬品が混じった液体を濃縮したものを黒液と呼ぶ。 マツ類に含まれる樹脂酸、脂肪酸類はナトリウム石けんとなって黒液中に溶出しており、濃縮過程で塩析されクリーム状の浮遊物(スキミングス)が得られる。このスキミングスを酸で分解し、遊離した油を粗トール油と呼ぶ[1]

粗トール油は蒸留塔を用いて蒸留することにより、トールロジン(トール油ロジン)とトール脂肪酸が精製され、それぞれ工業的に利用される。他に、ヘッドと呼ばれる揮発成分と、黒いピッチが副成する。トールロジンはアビエチン酸などの炭素数20のジテルペノイド化合物を主成分とする。トール脂肪酸はオレイン酸リノール酸を主成分とする。

成分比は、スラッシュマツヨーロッパアカマツバビショウなど、使用する松の種類によって異なる。

産地

[編集]

主にアメリカ合衆国カナダロシア中国などの製紙工場で産する。日本にも主に北米から輸入され、日本でトールロジンに精製されている。

脚注

[編集]
  1. ^ 本田収「トール油」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p685 日本林業技術協会 1984年(昭和59年)発行

関連項目

[編集]