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'''Systems Network Architecture''' ( '''SNA''' ) は、[[IBM]] が[[1974年]]に作った[[コンピュータネットワーク]][[コンピュータ・アーキテクチャ|アーキテクチャ]]である。
'''Systems Network Architecture''' ( '''SNA''' ) は、[[IBM]] が[[1974年]]に作った[[コンピュータネットワーク]][[コンピュータ・アーキテクチャ|アーキテクチャ]]であり、更にはそれに基づいた[[プロトコルスタック]]である。


== 概要 ==
[[コンピュータ]]とその[[資源]]を結ぶ、完全な [[w:protocol stack]] である。SNA は[[プロトコル]]の体系であり、自身そのものに[[プログラム (コンピュータ)|プログラム]]は含まない。SNA の実装については、様々な形の[[コミュニケーション]]パッケージが出ており、最も有名なものは、[[メインフレーム]]環境において SNA communcations を実現する [[VTAM]] である。SNA は、[[政府]]の機関、[[銀行]]、[[金融機関]]の[[トランザクション]]ネットワークに、[[2005年]]<!--- 訳注 --->現在も使われている。IBM は[[2005年]]<!--- 訳注 --->現在も SNA のサポートを続けている。が、SNA にとって最も基本的な[[ハードウェア]]のひとつである 3745/3746 コミュニケーションコントローラーは市場から去っていった。2010 以来、3745/3746 への IBM のサポートもやがて終了するであろう。その結果として、SNA を使って構築されている[[ネットワーク]]は、[[TCP/IP]] へと置き換えられていくだろう。
SNAは、[[コンピュータ]]とその[[資源]]を結ぶ、完全な[[プロトコルスタック]]である。SNA は[[通信プロトコル]]の体系(仕様)であり、それ自身には[[プログラム (コンピュータ)|プログラム]](製品)は含まない。SNA の実装については、様々な形の[[コミュニケーション]]パッケージが出ており、最も有名なものは、[[メインフレーム]]環境において SNAコミュニケーションを実現する [[VTAM]] である。


SNA は、[[政府]]の機関、[[銀行]]、[[金融機関]]の[[トランザクション]]ネットワークなど広く使われ、特に企業向けの大規模ネットワークでは[[事実上の標準]]となった。また最新の[[z/OS]]、[[z/VSE]]、[[z/VM]]にもVTAMは含まれている。しかし現在は[[TCP/IP]]に移行しつつある。
==利点と不利点==
SNA は[[アプリケーション|アプリケーションプログラム]]からリンクコントロールを除去した。その機能を、ネットワークコントロール専用のプログラムへ移した。このことは、以下に記す利点と不利点を生んだ。


===利点===
== 利点と不利点 ==
SNA は[[アプリケーションソフトウェア|アプリケーションプログラム]]からリンクコントロールを除去した。その機能を、ネットワークコントロール専用のプログラムへ移した。このことは、以下に記す利点と不利点を生んだ。

=== 利点 ===
*テレコミュニケーションネットワークにおける問題の局地化が容易になった。これは、コミュニケーションリンクに関わるソフトウェアの量が、相対的に少なくなったからである。
*テレコミュニケーションネットワークにおける問題の局地化が容易になった。これは、コミュニケーションリンクに関わるソフトウェアの量が、相対的に少なくなったからである。
*アプリケーションプログラムにコミュニケーションに関する機能を付け加えることが容易になった。ソフトウェアタイマーやプロセッサーへの割込みを要求する手に負えないリンクコントロールの部分をシステムソフトウェアや NCP へ移したからである。
*アプリケーションプログラムにコミュニケーションに関する機能を付け加えることが容易になった。ソフトウェアタイマーやプロセッサーへの割込みを要求する手に負えないリンクコントロールの部分を[[システムソフトウェア]]や NCP へ移したからである。


===不利点===
=== 不利点 ===
*SNA ではないネットワークへの接続が困難なこと。SNA の「現在のバージョン」でサポートされないコミュニケーションの仕組みを持つアプリケーションは、困難に直面した。IBM が [[w:X.25]] を SNA のサポートに含める前は、X.25 ネットワークへの接続は困難であった。X.25 と SNA [[プロトコル]]のコンバージョンは、NCP ソフトウェアの修正または外部にプロトコルコンバーターを設置することによって可能となった。
*SNA ではないネットワークへの接続が困難なこと。SNA の「現在のバージョン」でサポートされないコミュニケーションの仕組みを持つアプリケーションは、困難に直面した。IBM が [[X.25]] を SNA のサポートに含める前は、X.25 ネットワークへの接続は困難であった。X.25 と SNA [[プロトコル]]のコンバージョンは、NCP ソフトウェアの修正または外部にプロトコルコンバーターを設置することによって可能となった。
*一見して、SNA ネットワークは、TCP/IP ネットワークと比較して非常に高価なものとして登場した。小さなネットワークにとっては、それは本当に高価なものだった。しかし成長していく大きなネットワークの複合体にとっては、SNA ストラクチャーは安価なネットワークパスを提供するものだった。
*一見して、SNA ネットワークは、TCP/IP ネットワークと比較して非常に高価なものとして登場した。小さなネットワークにとっては、それは本当に高価なものだった。しかし成長していく大きなネットワークの複合体にとっては、SNA ストラクチャーは安価なネットワークパスを提供するものだった。


=== TCP/IPとの比較 ===
==論理ユニットタイプ ( Logical Unit Types ) ==
*VTAMを中心とした中央集権型である(Peer to Peerを謳ったLU6.2は普及しなかった)
*同一回線内の複数[[セッション (コンピュータ)|セッション]]間で優先順位がつけられる
*コマンドで特定の接続先(PU、LU)を通信開始や通信切断できる
*接続先(PU、LU)とのセッションを常時監視している(ポーリング)
*標準で暗号化できる
*必要な回線速度が高い精度で見積もりできる
*機器が専用であり高価である
*専用のスキル・要員が必要である

== 論理ユニットタイプ ( Logical Unit Types ) ==
SNA は、様々な種類の[[デバイス]]を、各々 a Logical Unit grouping として同定する。LU0 は定義されていないデバイスまたはユーザーが自身で定義したプロトコルを意味する。LU1 は[[プリンター]]を意味する。LU2 は[[ダム端末]]を意味する。LU3 は[[IBM 3270|3270]]プロトコルを用いるプリンターを意味する。LU4 は[[バッチ処理|バッチ]][[端末]]を意味する。LU5 は定義されたことがない。LU6 は2つのアプリケーション間のプロトコルを意味する。LU7 は 5250 端末を用いたセッションのために用意されている。使われる最初の LU は、LU1 と LU2、そして [[w:LU6.2]] である( LU6.2 は、アプリケーションとアプリケーションの会話のための進歩したプロトコルである)。
SNA は、様々な種類の[[デバイス]]を、各々 a Logical Unit grouping として同定する。LU0 は定義されていないデバイスまたはユーザーが自身で定義したプロトコルを意味する。LU1 は[[プリンター]]を意味する。LU2 は[[ダム端末]]を意味する。LU3 は[[IBM 3270|3270]]プロトコルを用いるプリンターを意味する。LU4 は[[バッチ処理|バッチ]][[端末]]を意味する。LU5 は定義されたことがない。LU6 は2つのアプリケーション間のプロトコルを意味する。LU7 は 5250 端末を用いたセッションのために用意されている。使われる最初の LU は、LU1 と LU2、そして [[w:LU6.2]] である( LU6.2 は、アプリケーションとアプリケーションの会話のための進歩したプロトコルである)。


== SNAとOSI参照モデル ==

==SNAとOSI参照モデル==
SNAは7階層の考え方がある。
SNAは7階層の考え方がある。


また、IBMだけでなく、国際標準としても、通信の考え方を規程する必要が出てきた為、[[国際標準化機構|ISO]]により、1983年に[[OSI参照モデル]]が制定された。
また、IBMだけでなく、国際標準としても、通信の考え方を規程する必要が出てきた為、[[国際標準化機構|ISO]]により、1983年に[[OSI参照モデル]]が制定された。このときISOはIBMのSNAを参考にしたと云われているため、SNAとOSI参照モデルは似た構成になっているが、細部は異なる
{| class="wikitable"
|+SNAとOSI参照モデルの比較
! !! SNA !! OSI参照モデル
|-
! 第7層
| トランザクションサービス層 || アプリケーション
|-
! 第6層
| プレゼンテーションサービス || プレゼンテーション層
|-
! 第5層
| データフローコントロール層 || セッション
|-
! 第4層
| トランスミッションコントロール層 || トランスポート
|-
! 第3層
| 経路制御 || ネットワーク層
|-
! 第2層
| データリンクコントロール層 || データリンク
|-
! 第1層
| 物理制御層 || 物理層
|}


== 実装と発表 ==
このとき、ISOはIBMのSNAを参考にしたと云われているため、SNA・OSI参照モデルは似た構成になっている。


SNAは1974年9月に「通信の高度化機能」(Advanced Function for Communications)の発表の一部として全世界で発表され、そのSNAの[[Synchronous Data Link Control]](SDLC)プロトコルの実装が次の新製品に行なわれた:
:SNA
* [[IBM 3767]] コミュニケーション端末機(プリンター)
;第7層 トランザクションサービス層
;第6層 プレゼンテーションサービ
* IBM 3770 データ・コミュニケーション・シテム
これらはIBM/3704/3705通信制御装置のネットワーク・コントロール・プログラム(NCP)やシステム/360とシステム/370の[[VTAM]]やその他[[CICS]]、[[IMS]]などのソフトウェアでサポートされている。このあと、1974年7月にIBM 3760データ・エントリー・ステーション、IBM 3790コミュニケーション・システム。[[IBM 3270]]の新しいモデルとSNAの実装は続いている。
;第5層 データフローコントロール層
;第4層 トランスミッションコントロール層
;第3層 経路制御層
;第2層 データリンクコントロール層
;第1層 物理制御層


SNAはおもに米国[[IBM]]のシステムズ開発部門(Systems Development Division)の[[ノースカロライナ州|ノースカロライナ]]州[[リサーチ・トライアングル・パーク]](R.T.P.)製品開発研究所のデザイン部署で行なわれ、それを実装した他の製品開発研究所(IBM 3767は[[藤沢市|藤沢]]研究所、のちの[[日本IBM大和事業所#IBM大和開発研究所|大和研究所]];IBM 3770はR.T.P.研究所)も援助して行なわれたので、日本人も数人がSNAのデザインに参加している。詳細はのちにIBMのシステム・リファレンス・ライブラリー(SRL)マニュアル、IBM Systems Journalなどで主要部分が公開された。
:OSI参照モデル
;第7層 アプリケーション層
;第6 プレゼンテーション層
;第5層 セッション層
;第4層 トランスポート層
;第3 ネットワーク層
;第2層 データリンク層
;第1層 物理層


==関連項目==
== 関連項目 ==
*[[通信プロトコル]]
*[[プロトコルスタック]]
*[[VTAM]]
*[[VTAM]]
*[[OS/390]]
*[[OS/390]]
*[[OSI参照モデル]]
*[[OSI参照モデル]]
* [[IBM 3767]]


==外部リンク==
== 外部リンク ==
* [http://www.cisco.com/univercd/cc/td/doc/cisintwk/ito_doc/ibmsna.htm Cisco article on SNA]
* [http://www.cisco.com/univercd/cc/td/doc/cisintwk/ito_doc/ibmsna.htm Cisco article on SNA]
* [http://www.networking.ibm.com/app/aiwhome.htm APPN Implementers Workshop] Architecture Document repository
* [http://www.networking.ibm.com/app/aiwhome.htm APPN Implementers Workshop] Architecture Document repository


{{Normdaten}}
[[Category:コンピュータネットワーク]]
{{DEFAULTSORT:Systems Network Architecture}}
[[Category:IBM]]
[[Category:IBM]]
[[Category:IBMのソフトウェア]]

[[Category:通信プロトコル]]
[[de:Systems Network Architecture]]
[[en:Systems Network Architecture]]
[[es:Systems Network Architecture]]
[[fr:SNA]]
[[nl:SNA]]
[[pl:Systems Network Architecture]]
[[sv:Systems Network Architecture]]

2021年12月5日 (日) 06:11時点における最新版

Systems Network Architecture ( SNA ) は、IBM1974年に作ったコンピュータネットワークアーキテクチャであり、更にはそれに基づいたプロトコルスタックである。

概要

[編集]

SNAは、コンピュータとその資源を結ぶ、完全なプロトコルスタックである。SNA は通信プロトコルの体系(仕様)であり、それ自身にはプログラム(製品)は含まない。SNA の実装については、様々な形のコミュニケーションパッケージが出ており、最も有名なものは、メインフレーム環境において SNAコミュニケーションを実現する VTAM である。

SNA は、政府の機関、銀行金融機関トランザクションネットワークなど広く使われ、特に企業向けの大規模ネットワークでは事実上の標準となった。また最新のz/OSz/VSEz/VMにもVTAMは含まれている。しかし現在はTCP/IPに移行しつつある。

利点と不利点

[編集]

SNA はアプリケーションプログラムからリンクコントロールを除去した。その機能を、ネットワークコントロール専用のプログラムへ移した。このことは、以下に記す利点と不利点を生んだ。

利点

[編集]
  • テレコミュニケーションネットワークにおける問題の局地化が容易になった。これは、コミュニケーションリンクに関わるソフトウェアの量が、相対的に少なくなったからである。
  • アプリケーションプログラムにコミュニケーションに関する機能を付け加えることが容易になった。ソフトウェアタイマーやプロセッサーへの割込みを要求する手に負えないリンクコントロールの部分をシステムソフトウェアや NCP へ移したからである。

不利点

[編集]
  • SNA ではないネットワークへの接続が困難なこと。SNA の「現在のバージョン」でサポートされないコミュニケーションの仕組みを持つアプリケーションは、困難に直面した。IBM が X.25 を SNA のサポートに含める前は、X.25 ネットワークへの接続は困難であった。X.25 と SNA プロトコルのコンバージョンは、NCP ソフトウェアの修正または外部にプロトコルコンバーターを設置することによって可能となった。
  • 一見して、SNA ネットワークは、TCP/IP ネットワークと比較して非常に高価なものとして登場した。小さなネットワークにとっては、それは本当に高価なものだった。しかし成長していく大きなネットワークの複合体にとっては、SNA ストラクチャーは安価なネットワークパスを提供するものだった。

TCP/IPとの比較

[編集]
  • VTAMを中心とした中央集権型である(Peer to Peerを謳ったLU6.2は普及しなかった)
  • 同一回線内の複数セッション間で優先順位がつけられる
  • コマンドで特定の接続先(PU、LU)を通信開始や通信切断できる
  • 接続先(PU、LU)とのセッションを常時監視している(ポーリング)
  • 標準で暗号化できる
  • 必要な回線速度が高い精度で見積もりできる
  • 機器が専用であり高価である
  • 専用のスキル・要員が必要である

論理ユニットタイプ ( Logical Unit Types )

[編集]

SNA は、様々な種類のデバイスを、各々 a Logical Unit grouping として同定する。LU0 は定義されていないデバイスまたはユーザーが自身で定義したプロトコルを意味する。LU1 はプリンターを意味する。LU2 はダム端末を意味する。LU3 は3270プロトコルを用いるプリンターを意味する。LU4 はバッチ端末を意味する。LU5 は定義されたことがない。LU6 は2つのアプリケーション間のプロトコルを意味する。LU7 は 5250 端末を用いたセッションのために用意されている。使われる最初の LU は、LU1 と LU2、そして w:LU6.2 である( LU6.2 は、アプリケーションとアプリケーションの会話のための進歩したプロトコルである)。

SNAとOSI参照モデル

[編集]

SNAは7階層の考え方がある。

また、IBMだけでなく、国際標準としても、通信の考え方を規程する必要が出てきた為、ISOにより、1983年にOSI参照モデルが制定された。このときISOはIBMのSNAを参考にしたと云われているため、SNAとOSI参照モデルは似た構成になっているが、細部は異なる。

SNAとOSI参照モデルの比較
SNA OSI参照モデル
第7層 トランザクションサービス層 アプリケーション層
第6層 プレゼンテーションサービス層 プレゼンテーション層
第5層 データフローコントロール層 セッション層
第4層 トランスミッションコントロール層 トランスポート層
第3層 経路制御層 ネットワーク層
第2層 データリンクコントロール層 データリンク層
第1層 物理制御層 物理層

実装と発表

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SNAは1974年9月に「通信の高度化機能」(Advanced Function for Communications)の発表の一部として全世界で発表され、そのSNAのSynchronous Data Link Control(SDLC)プロトコルの実装が次の新製品に行なわれた:

  • IBM 3767 コミュニケーション端末機(プリンター)
  • IBM 3770 データ・コミュニケーション・システム

これらはIBM/3704/3705通信制御装置のネットワーク・コントロール・プログラム(NCP)やシステム/360とシステム/370のVTAMやその他CICSIMSなどのソフトウェアでサポートされている。このあと、1974年7月にIBM 3760データ・エントリー・ステーション、IBM 3790コミュニケーション・システム。IBM 3270の新しいモデルとSNAの実装は続いている。

SNAはおもに米国IBMのシステムズ開発部門(Systems Development Division)のノースカロライナリサーチ・トライアングル・パーク(R.T.P.)製品開発研究所のデザイン部署で行なわれ、それを実装した他の製品開発研究所(IBM 3767は藤沢研究所、のちの大和研究所;IBM 3770はR.T.P.研究所)も援助して行なわれたので、日本人も数人がSNAのデザインに参加している。詳細はのちにIBMのシステム・リファレンス・ライブラリー(SRL)マニュアル、IBM Systems Journalなどで主要部分が公開された。

関連項目

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外部リンク

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