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'''堅信'''(けんしん、{{lang-el|Χρίσμα}}<ref name="el">[http://www.faneromenihol.gr/index.php?option=com_content&view=article&id=210&Itemid=62 {{lang|el|Τα ιερά Μυστήρια της Εκκλησίας μας}}]</ref>, {{lang-la|Confirmatio}}, {{lang-en|Confirmation (or Chrismation)}}, {{lang-de|Konfirmation}}, {{lang-ru|Миропомазание}})とは[[キリスト教]]の[[キリスト教諸教派の一覧|教派]]のうち、[[正教会]]、[[東方諸教会]]、[[カトリック教会]]、[[聖公会]]で行われるも<ref name="dai394">『[[キリスト教大事]]』394頁、[[教文館]]、昭和48年 改訂新版第2版</ref>。[[プロテスタント]]における類似の行為に'''信仰告白式'''との語彙を用いる教会もある<ref>[http://zenrencho.jp/b_4.html 全国連合長老会における洗礼・聖餐についての基本的見解]</ref><ref>[http://15.pro.tok2.com/~sekichurch/houkoku.html 日本キリスト改革派関キリスト教会]</ref>[[正教会]]では'''[[傅膏機密]]'''(ふこうきみつ、Chrismation<ref>正教会では英語表記として"Confirmation"はあまり用いられず、"Chrismation"が用いられる。</ref>)に相当する<ref>[http://www.orthodoxjapan.jp/tebiki/inori01.html 祈り-機密:日本正教会 The Orthodox Church in Japan]</ref>。
'''堅信'''(けんしん、{{lang-el|Χρίσμα}}<ref name="el">[http://www.faneromenihol.gr/index.php?option=com_content&view=article&id=210&Itemid=62 {{lang|el|Τα ιερά Μυστήρια της Εκκλησίας μας}}]</ref>, {{lang-la|Confirmatio}}, {{lang-en|Confirmation (or Chrismation)}}, {{lang-de|Konfirmation}}, {{lang-ru|Миропомазание}})とは[[キリスト教]]の一教派において信者が[[洗礼]]を受けた後一定の儀礼において[[聖霊]]の力ないし聖霊の恵みを受けるとされる概念<ref>[[カトリック教会]]の[http://www.newadvent.org/cathen/04215b.htm CATHOLIC ENCYCLOPEDIA: Confirmation]</ref><ref>[[聖公会]]の出典:[http://anglicansonline.org/basics/catechism.html Anglicans Online | The Catechism or an Outline of the Faith]</ref><ref>[[正教会]]の出典:[http://orthodoxwiki.org/Chrismation Chrismation - OrthodoxWiki]</ref>。


[[キリスト教]]の[[キリスト教諸教派の一覧|教派]]のうち、[[正教会]]、[[東方諸教会]]、[[カトリック教会]]、[[聖公会]]、および一部の[[プロテスタント]]([[ルーテル教会|ルター派教会]]など)で行われる<ref name="dai394">『[[キリスト教大事典]]』394頁、[[教文館]]、昭和48年 改訂新版第2版</ref>。プロテスタントには堅信の概念が存在しない教派も多い。「堅信」は概念を指す名称であり、「'''[[堅信礼]]'''」または「堅信式」は[[儀式]]を指す名称である。正教会では[[傅膏機密]]が概念に相当し、儀礼の名称が「聖洗礼儀」である。
教派によって堅信の概念・方法はかなり異なるが、洗礼と区別されること、洗礼後に受けることによって[[聖餐]]([[領聖]]・[[聖体拝領]])に参与する資格が信徒に与えられることといった共通点はある<ref name="dai394" />。


== 洗礼連続して行うか否か ==
== 概念儀礼の名称対照 ==
{| class="wikitable" style="width:740px"
[[正教会]]では[[幼児洗礼]]か成人洗礼の別を問わず、[[洗礼機密]]の直後に[[傅膏機密]]を行う<ref>[http://www.orthodox-jp.com/nagoya/ishinomaki157.htm 「教会」ってどういうところ?] - [[石巻ハリストス正教会|石巻教会]]教会報 ワシリイ田口三千男</ref>。
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| colspan="5" style="text-align:center; background-color:#cfc"|堅信の概念と、堅信が行われる儀礼の、[[キリスト教諸教派の一覧|教派]]別対照表
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| style="text-align:center" | 概念
| colspan="3" style="text-align:center" | 堅信
| style="text-align:center" | [[傅膏機密]]<ref>正教会では英語表記として"Confirmation"はあまり用いられず、"Chrismation"が用いられる。</ref><ref>[http://www.orthodoxjapan.jp/tebiki/inori01.html 祈り-機密:日本正教会 The Orthodox Church in Japan]</ref>
|-
| style="text-align:center" | 儀礼
| style="text-align:center" | 堅信式
| colspan="2" style="text-align:center" | 堅信式・堅信礼
| style="text-align:center" | 聖洗礼儀<br><small>洗礼機密と[[傅膏機密]]を通常は併せて行う</small>
|}
{{Gallery
|title=教派別の堅信(傅膏機密)が行われている儀礼の様子
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== 堅信の概念 ==
他方、[[カトリック教会]]・[[聖公会]]では幼児洗礼を受けた者が一定年齢に達してから堅信を受けるなど、洗礼後に一定期間を経て堅信に至ることも多い<ref name="dai394" />。ただし洗礼と堅信を分離することが義務・規定として定められている訳ではなく、特に成人洗礼において洗礼と堅信を連続して行うことも可能であり、そうしたケースは現代のカトリック教会・聖公会では珍しくない<ref name="RCrokko">[http://www.rokko-catholic.jp/Training/tuesdayclass/tuesdayclass-rejime-10-21.htm 洗礼と堅信六甲カトリック教会)]</ref><ref name="CPJ283">『日本聖公会 祈祷書』283頁、[[日本聖公会]]、1991年6月20日 第一版</ref>。
{{Main2|[[正教会]]における相当する概念|傅膏機密}}


=== カトリック教会における堅信 ===
[[初代教会]]では洗礼と堅信は一つの儀礼としてまとめて行われていた。正教会は初代教会から現代に至るまでその形式を守り<ref>[http://www.orthodox-jp.com/westjapan/history/hist4.htm 世紀] - トマス・ホプコ神父著 “TheOrthodox Faith vol.3 Bible and Church History”, 1979 [[アメリカ正教会|O.C.A.]]、Chuch History、翻訳:[[日本正教会]] 西日本主教教区 司祭 ゲオルギイ松島雄一</ref>、カトリック教会・聖公会でも古代の伝統を復興した現代では基本的に一つの儀礼として行われる<ref name="RCrokko" /><ref name="CPJ283" />。
==== 秘跡の一つ ====
カトリック教会では、堅信は7つの[[秘跡]]の一つである。堅信の秘跡は、[[洗礼]]の恵みの完成に必要なものとされ<ref>[[カトリック教会のカテキズム]] #1285(日本語版395頁) [[カトリック中央協議会]] ISBN 978-4877501013</ref>、その効果は、[[聖霊降臨]]のときと同じような[[聖霊]]の特別な注ぎが行われることであるとしている。それは、霊魂に消えない霊印を刻み、洗礼の恵みを増大させるのもので、神の子としての身分を強め、キリストと教会にいっそう固く結びつけ、聖霊のたまものを強め、キリスト教信仰のための特別な力を与えるものである<ref>「カトリック教会のカテキズム 要約」268頁 カトリック中央協議会 ISBN 978-4877501532</ref>。


ラテン典礼(ローマ・カトリック教会では堅信を授けることができるのは[[司教]]の権能であるとされている<ref name="ccc1313">カトリック教会のカテキズム #1313(日本語版402頁) カトリック中央協議会</ref>必要な場合には、司教は[[司祭]]堅信を授ける権能を与えることでき<ref name="ccc1313"/>。堅信を受けることができるのは秘跡の意味が十分に理解できるようになってからである。また、堅信の際には男性なら代父、女性なら代母の付き添いを受け、[[洗礼名]]と同じように'''堅信名'''付ける。堅信名は洗礼名をそのまま同じ名としてし、洗礼名との名を選んで付けもよい。
しかしカトリック教会・聖公会では、時代によっては洗礼とは別個に堅信を行うことが習慣化されていた。その由来としては、[[ローマ帝国]]でキリスト教弾圧が止んだ4世紀頃に[[幼児洗礼]]が激増したことが挙げられる。[[復活祭]]に[[司教]]によって執り行われていた洗礼式が、行われる頻度および場所が激増し、司教が洗礼式を行うことが不可能になったことから、個別の洗礼式を司祭が行い、堅信は後に一箇所に受洗者を集めて[[司教]]が行うという習慣が定着したものとされる<ref name="RCrokko" />。


堅信の権能は[[十二使徒]]に由来し、[[叙階]]の秘跡を通じて連綿と続いていると考えられている([[使徒継承]])。
正教会でも[[洗礼機密]](せんれいきみつ)・[[傅膏機密]](ふこうきみつ)の件数の増加により、[[主教]]がいずれも個々に行うことが出来なくなった事情は同様であったが、正教会では洗礼と傅膏を分離せず、主教の按手に代えて傅膏を行うようになった。この傅膏の際に用いられる聖膏を調製・[[成聖]]するのは[[独立正教会]]の[[首座主教]]のみである。聖膏は各地教会に分配され、この聖膏を通し、首座主教の祝福が新信徒に与えられるとされる<ref>[[府主教]][[イラリオン・アルフェエフ]]著、ニコライ高松光一訳『信仰の機密』108頁 - 109頁、[[ニコライ堂|東京復活大聖堂教会(ニコライ堂)]] 2004年</ref>。


== 堅信の概念 ==
==== 堅信の一回性 ====
洗礼と同様に、堅信は生涯でただ一度のみ受けられる。特にカトリック教会では洗礼、堅信、[[叙階]]の秘跡は受けることで霊的な印を受けると考えるため、取り消すことができない秘跡であるとみなしている。
=== カトリック教会における堅信 ===
カトリック教会では堅信は七つの秘跡の一つである。堅信はさらなる恵みを与え、個人の魂を神と結びつけるものであると考えられている。堅信は神からの恵み、知恵を受けるため『[[ヨハネによる福音書]]』の8章32節のイエスのことば「あなたたちは真理を知るようになる」の成就であるとされる。


=== 聖公会における堅信 ===
堅信を受けるものは[[聖霊]]の恵みを受けることができるとされているが、現代では「キリストの証人」という意味づけが強調される。かつては堅信を受けることでキリスト教を守る「キリストの兵士」になるという意味づけがなされていたが、現代ではそのような考え方は用いられていない。
聖公会における堅信はおおむねカトリック教会の流れを受け継いだものであるが、「[[サクラメント#聖公会|聖奠的諸式]]」と位置付けられており、「救いに必要な・キリストが自ら定めた聖奠」である洗礼・聖餐とは区別されている<ref>「教会問答」問14,15,26 - 『日本聖公会祈祷書』日本聖公会管区事務所、1991年、p.262, 263, 265</ref>。また、司祭が代行することなく、主教によって執り行われるものとされていることが特徴である<ref name="kt2018">竹内謙太郎『[http://3-ba.com/book/kyoukai_ni_kiku/ 教会に聞く―日本聖公会の教会問答を読み解く]』はるかぜ書房・みつば舎、2018年、p.169, 172, 283</ref>。洗礼の時に名付けられる教名([[洗礼名]])と別に堅信名が付けられることはないが、教名の慣習がない他教派から転会した者の場合、堅信式に際して教名が名付けられることもある。


堅信式では、主教が一人ひとりの頭に手を置き、聖霊の賜物を祈る。クリスチャンとしての責任を与えられ、その責任を果たすこと、すなわち神と人に仕えることができるよう、この世に「派遣」されるという意味合いが強調される。このように、聖職者を叙任する[[叙階|聖職按手式]]に形式・意味合いが近いものであり、信徒按手式とも呼ばれる<ref name="kt2018" />。
カトリック教会では堅信を授けることができるのは[[司教]]の権能であるとされている。[[司祭]]堅信を授けるには司教からの特別な許可必要になる。堅信を受けることができるのは秘跡の意味が十分に理解できるようになってからである。また、洗礼と同時に堅信を受ける際には行われないが、通常の堅信の際には男性なら代父、女性なら代母の付き添いを受け、[[洗礼名]]と同じように堅信名を選ぶ。堅信名は洗礼名同じ別のものでもかまわな。この堅信を「霊名」呼ぶ(教会が発行する堅信証明書の名前欄に、「霊名」と記載されている――洗礼証明書にはその記載はない)


主教が執り行うため、個教会においては年に1回程度の主教巡回に際して、主教座聖堂においては年に数回の教区合同堅信式において、堅信の機会が設けられる。幼児洗礼者は12歳前後になった時、成人洗礼者は洗礼と同時あるいは直近で堅信を受けることが多い。
堅信の権能は12[[使徒]]に由来し、叙階を通じて連綿と続いていると考えられているため、カトリック教会では正教会と[[東方典礼教会]]で授けられた堅信も有効なものであるとみなしている。このような考え方にしたがって東方教会からの改宗者ですでに堅信を受けているものは堅信を受ける必要はないが、[[プロテスタント]]からの改宗者は堅信を受けることになっている。


従来は洗礼に加えて堅信を受けることが[[聖餐|陪餐]]に必要な資格とされていたが、日本聖公会では2017年以降、堅信前の陪餐が可能となった<ref>[http://nskk.org/province/liturgy/firstcomm.html 「堅信前の陪餐」関連諸文書]</ref>。
カトリック教会では堅信をうけることによって魂に消えることのない霊的な印を受けると考えている。このため堅信を二度受けるということは秘跡に対する冒涜にあたるとみなされる。


=== 堅信一回性 ===
== 教派ごと比較 ==
=== サクラメントとみなすか否か ===
基本的に堅信は一回のみ受けられる儀式である。特にカトリック教会では洗礼、堅信、[[叙階]]は一回しかうけられず、受けることで霊的な印をうけると考えるため、取り消すことができない秘跡であるとみなしている。すでに堅信を受けた東方教会の信徒がカトリックに改宗した場合、堅信を受けなおす必要はない。一方、洗礼がそうであるように、適切な形式をとっていない堅信(傅膏)が認められないことはありえる。プロテスタントの信仰告白式は秘跡ではなく、ローマ・カトリックはこれを認めない。逆にカトリック信徒として堅信を受けた場合であっても、正教会に改宗した場合は、正教会がカトリックの堅信を認めないため傅膏を受ける必要がある。
正教会やカトリック教会では、堅信は[[サクラメント]](ミスティリオン、[[機密 (正教会)|機密]])の一つとされている。

[[プロテスタント]]における類似の行為を「'''信仰告白式'''」と呼ぶ教派もある<ref>[http://zenrencho.jp/b_4.html 全国連合長老会における洗礼・聖餐についての基本的見解]</ref><ref>[http://15.pro.tok2.com/~sekichurch/houkoku.html 日本キリスト改革派関キリスト教会]</ref>。プロテスタントでは教派によって堅信の概念・方法はかなり異なるが、洗礼と区別されること、洗礼後に受けることによって[[聖餐]]([[領聖]]・[[聖体拝領]])に参与する資格が信徒に与えられることといった共通点はある<ref name="dai394" />。

ただしカトリック教会では、[[幼児洗礼]]を受けた信者が堅信の[[秘跡]]を受ける前でも、その理解力に応じて聖体に対する認識が可能な年齢になれば聖体拝領ができるとされている<ref>[http://www.tokyo.catholic.jp/text/welcome/shinkouseikatsu.htm#聖体 信仰生活の助け 聖体] カトリック東京大司教区</ref>。カトリック教会で幼児洗礼を受けた子供が初めて聖体拝領を受けることを「[[初聖体]]」と呼び、初聖体や堅信にあたってはその意味を理解できるよう教会が指導して準備を行う。

=== 洗礼と連続して行うか否か ===
[[正教会]]では[[幼児洗礼]]か成人洗礼の別を問わず、[[洗礼機密]]の直後に[[傅膏機密]]を行う<ref>[http://www.orthodox-jp.com/nagoya/ishinomaki157.htm 「教会」ってどういうところ?] - [[石巻ハリストス正教会|石巻教会]]教会報 ワシリイ田口三千男</ref>。

他方、[[カトリック教会]]・[[聖公会]]では幼児洗礼を受けた者が一定年齢に達してから堅信を受けるなど、洗礼後に一定期間を経て堅信に至ることも多い<ref name="dai394" />。ただし洗礼と堅信を分離することが義務・規定として定められている訳ではなく、特に成人洗礼において洗礼と堅信を連続して行うことも可能であり、そうしたケースは現代のカトリック教会・聖公会では珍しくない<ref name="RCrokko">[http://www.rokko-catholic.jp/Training/tuesdayclass/tuesdayclass-rejime-10-21.htm 洗礼と堅信] 六甲カトリック教会</ref><ref name="CPJ283">『日本聖公会 祈祷書』283頁、[[日本聖公会]]、1991年6月20日 第一版</ref>。

[[初代教会]]では洗礼と堅信は一つの儀礼としてまとめて行われていた。正教会は初代教会から現代に至るまでその形式を守り<ref>[http://www.orthodox-jp.com/westjapan/history/hist4.htm 第4世紀] - トマス・ホプコ神父著 “TheOrthodox Faith vol.3 Bible and Church History”, 1979 [[アメリカ正教会|O.C.A.]]、Chuch History、翻訳:[[日本正教会]] 西日本主教教区 司祭 ゲオルギイ松島雄一</ref>、カトリック教会・聖公会でも古代の伝統を復興した現代では基本的に一つの儀礼として行われる<ref name="RCrokko" /><ref name="CPJ283" />。

しかしカトリック教会・聖公会では、時代によっては洗礼とは別個に堅信を行うことが習慣化されていた。その由来としては、[[ローマ帝国]]でキリスト教弾圧が止んだ4世紀頃に[[幼児洗礼]]が激増したことが挙げられる。[[復活祭]]に[[司教]]によって執り行われていた洗礼式が、行われる頻度および場所が激増し、司教が洗礼式を行うことが不可能になったことから、個別の洗礼式を司祭が行い、堅信は後に一箇所に受洗者を集めて[[司教]]が行うという習慣が定着したものとされる<ref name="RCrokko" />。

正教会でも[[洗礼機密]](せんれいきみつ)・[[傅膏機密]](ふこうきみつ)の件数の増加により、[[主教]]がいずれも個々に行うことが出来なくなった事情は同様であったが、正教会では洗礼と傅膏を分離せず、主教の按手に代えて傅膏を行うようになった。この傅膏の際に用いられる聖膏を調製・[[成聖]]するのは[[独立正教会]]の[[首座主教]]のみである。聖膏は各地教会に分配され、この聖膏を通し、首座主教の祝福が新信徒に与えられるとされる<ref>[[府主教]][[イラリオン・アルフェエフ]]著、ニコライ高松光一訳『信仰の機密』108頁 - 109頁、[[ニコライ堂|東京復活大聖堂教会(ニコライ堂)]] 2004年</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[堅信礼]]
* [[堅信礼]] - 堅信の儀式
* [[傅膏機密]] - [[正教会]]における同様の概念


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2021年12月27日 (月) 08:07時点における最新版

堅信(けんしん、ギリシア語: Χρίσμα[1], ラテン語: Confirmatio, 英語: Confirmation (or Chrismation), ドイツ語: Konfirmation, ロシア語: Миропомазание)とは、キリスト教の一部教派において、信者が洗礼を受けた後、一定の儀礼において聖霊の力、ないし聖霊の恵みを受けるとされる概念[2][3][4]

キリスト教教派のうち、正教会東方諸教会カトリック教会聖公会、および一部のプロテスタントルター派教会など)で行われる[5]。プロテスタントには堅信の概念が存在しない教派も多い。「堅信」は概念を指す名称であり、「堅信礼」または「堅信式」は儀式を指す名称である。正教会では傅膏機密が概念に相当し、儀礼の名称が「聖洗礼儀」である。

概念と儀礼の名称対照

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堅信の概念と、堅信が行われる儀礼の、教派別対照表
教派・
組織
西方教会 東方教会
カトリック教会 聖公会 ルーテル教会 正教会
概念 堅信 傅膏機密[6][7]
儀礼 堅信式 堅信式・堅信礼 聖洗礼儀
洗礼機密と傅膏機密を通常は併せて行う

堅信の概念

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カトリック教会における堅信

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秘跡の一つ

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カトリック教会では、堅信は7つの秘跡の一つである。堅信の秘跡は、洗礼の恵みの完成に必要なものとされ[8]、その効果は、聖霊降臨のときと同じような聖霊の特別な注ぎが行われることであるとしている。それは、霊魂に消えない霊印を刻み、洗礼の恵みを増大させるのもので、神の子としての身分を強め、キリストと教会にいっそう固く結びつけ、聖霊のたまものを強め、キリスト教信仰のための特別な力を与えるものである[9]

ラテン典礼(ローマ・カトリック教会)では、堅信を授けることができるのは司教の権能であるとされている[10]。必要な場合には、司教は司祭に堅信を授ける権能を与えることができる[10]。堅信を受けることができるのは秘跡の意味が十分に理解できるようになってからである。また、堅信の際には男性なら代父、女性なら代母の付き添いを受け、洗礼名と同じように堅信名を付ける。堅信名は、洗礼名をそのまま同じ名としてもよいし、洗礼名と別の名を選んで付けてもよい。

堅信の権能は十二使徒に由来し、叙階の秘跡を通じて連綿と続いていると考えられている(使徒継承)。

堅信の一回性

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洗礼と同様に、堅信は生涯でただ一度のみ受けられる。特にカトリック教会では洗礼、堅信、叙階の秘跡は受けることで霊的な印を受けると考えるため、取り消すことができない秘跡であるとみなしている。

聖公会における堅信

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聖公会における堅信はおおむねカトリック教会の流れを受け継いだものであるが、「聖奠的諸式」と位置付けられており、「救いに必要な・キリストが自ら定めた聖奠」である洗礼・聖餐とは区別されている[11]。また、司祭が代行することなく、主教によって執り行われるものとされていることが特徴である[12]。洗礼の時に名付けられる教名(洗礼名)と別に堅信名が付けられることはないが、教名の慣習がない他教派から転会した者の場合、堅信式に際して教名が名付けられることもある。

堅信式では、主教が一人ひとりの頭に手を置き、聖霊の賜物を祈る。クリスチャンとしての責任を与えられ、その責任を果たすこと、すなわち神と人に仕えることができるよう、この世に「派遣」されるという意味合いが強調される。このように、聖職者を叙任する聖職按手式に形式・意味合いが近いものであり、信徒按手式とも呼ばれる[12]

主教が執り行うため、個教会においては年に1回程度の主教巡回に際して、主教座聖堂においては年に数回の教区合同堅信式において、堅信の機会が設けられる。幼児洗礼者は12歳前後になった時、成人洗礼者は洗礼と同時あるいは直近で堅信を受けることが多い。

従来は洗礼に加えて堅信を受けることが陪餐に必要な資格とされていたが、日本聖公会では2017年以降、堅信前の陪餐が可能となった[13]

教派ごとの比較

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サクラメントとみなすか否か

[編集]

正教会やカトリック教会では、堅信はサクラメント(ミスティリオン、機密)の一つとされている。

プロテスタントにおける類似の行為を「信仰告白式」と呼ぶ教派もある[14][15]。プロテスタントでは教派によって堅信の概念・方法はかなり異なるが、洗礼と区別されること、洗礼後に受けることによって聖餐領聖聖体拝領)に参与する資格が信徒に与えられることといった共通点はある[5]

ただしカトリック教会では、幼児洗礼を受けた信者が堅信の秘跡を受ける前でも、その理解力に応じて聖体に対する認識が可能な年齢になれば聖体拝領ができるとされている[16]。カトリック教会で幼児洗礼を受けた子供が初めて聖体拝領を受けることを「初聖体」と呼び、初聖体や堅信にあたってはその意味を理解できるよう教会が指導して準備を行う。

洗礼と連続して行うか否か

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正教会では幼児洗礼か成人洗礼の別を問わず、洗礼機密の直後に傅膏機密を行う[17]

他方、カトリック教会聖公会では幼児洗礼を受けた者が一定年齢に達してから堅信を受けるなど、洗礼後に一定期間を経て堅信に至ることも多い[5]。ただし洗礼と堅信を分離することが義務・規定として定められている訳ではなく、特に成人洗礼において洗礼と堅信を連続して行うことも可能であり、そうしたケースは現代のカトリック教会・聖公会では珍しくない[18][19]

初代教会では洗礼と堅信は一つの儀礼としてまとめて行われていた。正教会は初代教会から現代に至るまでその形式を守り[20]、カトリック教会・聖公会でも古代の伝統を復興した現代では基本的に一つの儀礼として行われる[18][19]

しかしカトリック教会・聖公会では、時代によっては洗礼とは別個に堅信を行うことが習慣化されていた。その由来としては、ローマ帝国でキリスト教弾圧が止んだ4世紀頃に幼児洗礼が激増したことが挙げられる。復活祭司教によって執り行われていた洗礼式が、行われる頻度および場所が激増し、司教が洗礼式を行うことが不可能になったことから、個別の洗礼式を司祭が行い、堅信は後に一箇所に受洗者を集めて司教が行うという習慣が定着したものとされる[18]

正教会でも洗礼機密(せんれいきみつ)・傅膏機密(ふこうきみつ)の件数の増加により、主教がいずれも個々に行うことが出来なくなった事情は同様であったが、正教会では洗礼と傅膏を分離せず、主教の按手に代えて傅膏を行うようになった。この傅膏の際に用いられる聖膏を調製・成聖するのは独立正教会首座主教のみである。聖膏は各地教会に分配され、この聖膏を通し、首座主教の祝福が新信徒に与えられるとされる[21]

脚注

[編集]
  1. ^ Τα ιερά Μυστήρια της Εκκλησίας μας
  2. ^ カトリック教会の出典:CATHOLIC ENCYCLOPEDIA: Confirmation
  3. ^ 聖公会の出典:Anglicans Online | The Catechism or an Outline of the Faith
  4. ^ 正教会の出典:Chrismation - OrthodoxWiki
  5. ^ a b c キリスト教大事典』394頁、教文館、昭和48年 改訂新版第2版
  6. ^ 正教会では英語表記として"Confirmation"はあまり用いられず、"Chrismation"が用いられる。
  7. ^ 祈り-機密:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
  8. ^ カトリック教会のカテキズム #1285(日本語版395頁) カトリック中央協議会 ISBN 978-4877501013
  9. ^ 「カトリック教会のカテキズム 要約」268頁 カトリック中央協議会 ISBN 978-4877501532
  10. ^ a b カトリック教会のカテキズム #1313(日本語版402頁) カトリック中央協議会
  11. ^ 「教会問答」問14,15,26 - 『日本聖公会祈祷書』日本聖公会管区事務所、1991年、p.262, 263, 265
  12. ^ a b 竹内謙太郎『教会に聞く―日本聖公会の教会問答を読み解く』はるかぜ書房・みつば舎、2018年、p.169, 172, 283
  13. ^ 「堅信前の陪餐」関連諸文書
  14. ^ 全国連合長老会における洗礼・聖餐についての基本的見解
  15. ^ 日本キリスト改革派関キリスト教会
  16. ^ 信仰生活の助け 聖体 カトリック東京大司教区
  17. ^ 「教会」ってどういうところ? - 石巻教会教会報 ワシリイ田口三千男
  18. ^ a b c 洗礼と堅信 六甲カトリック教会
  19. ^ a b 『日本聖公会 祈祷書』283頁、日本聖公会、1991年6月20日 第一版
  20. ^ 第4世紀 - トマス・ホプコ神父著 “TheOrthodox Faith vol.3 Bible and Church History”, 1979 O.C.A.、Chuch History、翻訳:日本正教会 西日本主教教区 司祭 ゲオルギイ松島雄一
  21. ^ 府主教イラリオン・アルフェエフ著、ニコライ高松光一訳『信仰の機密』108頁 - 109頁、東京復活大聖堂教会(ニコライ堂) 2004年

関連項目

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