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'''[[ホーカー・シドレー]]'''(後に[[ブリティッシュ・エアロスペース]])'''レッドトップ'''(Hawker Siddeley Red Top)は[[イギリス]]が独自開発して配備した、[[ファイアフラッシュ (ミサイル)|ファイアフラッシュ]](限定使用のみ)、[[ファイアストリーク (ミサイル)|ファイアストリーク]]に続く、3番目の[[空対空ミサイル]]である。[[ミサイルの誘導方式#光波ホーミング誘導|赤外線パッシブホーミング]]方式を採用し、限定的ではあるが全方向ロックオンが可能であった


==開発==
==開発==
レッドトップは、もともとは、[[ファイアストリーク (ミサイル)|デ・ハビランド ファイアストリーク]]のアップグレード版として計画された。1956年、[[デ・ハビランド]]は、ブルー・ジェイ Mk.4 (開発コード)、即ちファイアストリーク Mk.4の開発を開始した<ref>Gibson 2007, p. 40</ref>。しかし、実際には新規のミサイルの開発に変更された。レッドトップは、ファイアストリークよりも、構成部品の搭載位置がより合理的に変更された。例えば、ファイアストリークでは後方にあった弾頭が前方に移された。さらに、改良された「バイオレット・バナー(Violet Banner)」赤外線シーカー、「グリーン・ガーランド(Green Garland)」赤外線近接信管、さらのより強力な「リネット(Linnet)」ロケットブースターが使用された<ref>Gibson 2007, p. 40</ref>。また、弾頭もファイアストリークの22.7&nbsp;kgから31&nbsp;kg へと強化された。
レッドトップは、もともとは、[[ファイアストリーク (ミサイル)|デ・ハビランド ファイアストリーク]]のアップグレード版として計画された。1956年、[[デ・ハビランド]]は、ブルー・ジェイ Mk.4 (開発コード)、即ちファイアストリーク Mk.4の開発を開始した<ref name="#1">Gibson 2007, p. 40</ref>。しかし、実際には新規のミサイルの開発に変更された。レッドトップは、ファイアストリークよりも、構成部品の搭載位置がより合理的に変更された。例えば、ファイアストリークでは後方にあった弾頭が前方に移された。さらに、改良された「バイオレット・バナー(Violet Banner)」赤外線シーカー、「グリーン・ガーランド(Green Garland)」赤外線近接信管、より強力な「リネット(Linnet)」ロケットブースターが使用された<ref name="#1"/>。また、弾頭もファイアストリークの22.7&nbsp;kgから31&nbsp;kg へと強化された。電子機器も[[真空管]]から[[トランジスター]]へと変更され、冷却の必要がなくなった。


レッドトップはファイアストリークよりも高速で<ref name=Boyne267/>、運動性も優れており、赤外線シーカーの性能も向上しており、ロックオン可能な角度が広がった。シーカー性能の向上により、機体の摩擦熱を探知してホーミングすることが可能になった<ref>[http://www.vectorsite.net/aveeltg.html The English Electric (BAC) Lightning<!-- Bot generated title -->]</ref>。1957年の防衛白書の結果として有人戦闘機の開発が凍結されたため、レッドトップは[[ブラッドハウンド (ミサイル)|ブラッドハウンド Mk. II]] [[地対空ミサイル]]が実戦配備されるまでの「つなぎ」と位置づけられた。このため、予定されていたレッドトップの改良のいくつかは実現できず、[[サイドワインダー (ミサイル)|AIM-9L/M サイドワインダー]]のような完全な全方位ロックオン機能は実現できなかった<ref>Gibson 2007, p. 41</ref>。レッドトップは、摩擦熱の大きな超音速で飛翔する標的に対してのみ、全方位ロックオンが可能であった<ref name=Boyne267>[http://books.google.co.uk/books?id=FW_50wm8VnMC&pg=PA267&lpg=PA267&dq=janes+firestreak+missile&source=bl&ots=SfiRn2ye0T&sig=N6MMrw8CGqd_3npyxRzlzxEVi6U&hl=en&ei=3AZuTaWGG4rBhAe0n4WPDA&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=7&sqi=2&ved=0CEIQ6AEwBg#v=onepage&q&f=false Boyne, Walter J, ''Air Warfare: an International Encyclopedia, Volume 1''], pub ABC-CLIO Inc, 2002, ISBN 1-57607-345-9 p267.</ref>。また、「現在(1990年代)のミサイルとは異なり、レッドトップとファイアストリークは雲の外でなければ使用できなかった。そして、イギリスでは冬に晴れている日は殆ど無かった」<ref name=Black141>Black, Ian, ''The Last of the Lightnings'', pub PSL, 1996, ISBN1-85260-541-3, p141.</ref>。
レッドトップはファイアストリークよりも高速で<ref name=Boyne267/>、運動性も優れており、赤外線シーカーの性能も向上しており、ロックオン可能な角度が広がった。シーカー性能の向上により、機体の摩擦熱を探知してホーミングすることが可能になった<ref>[http://www.vectorsite.net/aveeltg.html The English Electric (BAC) Lightning<!-- Bot generated title -->]</ref>。1957年の防衛白書の結果として有人戦闘機の開発が凍結されたため、レッドトップは{{仮リンク|ブラッドハウンド (ミサイル)|label=ブラッドハウンド Mk. II|en|Bristol Bloodhound}} [[地対空ミサイル]]が実戦配備されるまでの「つなぎ」と位置づけられた。このため、予定されていたレッドトップの改良のいくつかは実現できず、[[サイドワインダー (ミサイル)|AIM-9L/M サイドワインダー]]のような完全な全方位ロックオン機能は実現できなかった<ref name="#2">Gibson 2007, p. 41</ref>。レッドトップは、摩擦熱の大きな超音速で飛翔する標的に対してのみ、全方位ロックオンが可能であった<ref name="Boyne267">[https://books.google.co.uk/books?id=FW_50wm8VnMC&pg=PA267&lpg=PA267&dq=janes+firestreak+missile&source=bl&ots=SfiRn2ye0T&sig=N6MMrw8CGqd_3npyxRzlzxEVi6U&hl=en&ei=3AZuTaWGG4rBhAe0n4WPDA&sa=X&oi=book_result&ct=result&sqi=2#v=onepage&q&f=false Boyne, Walter J, ''Air Warfare: an International Encyclopedia, Volume 1''], pub ABC-CLIO Inc, 2002, ISBN 1-57607-345-9 p267.</ref>。また、「現在(1990年代)のミサイルとは異なり、レッドトップとファイアストリークは雲の外でなければ使用できなかった。そして、イギリスでは冬に晴れている日は殆ど無かった」<ref name="Black141">Black, Ian, ''The Last of the Lightnings'', pub PSL, 1996, ISBN 1-85260-541-3, p141.</ref>。


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'''ブルー・ドルフィン'''または'''ブルー・ジェイ Mk.V''' と言う名称で、[[スパロー (ミサイル)|AIM-7 スパロー]]のような[[空対空ミサイル#SARH|セミアクティブレーダー誘導方式]]が提案されたが、この計画は1958年にキャンセルされている<ref>Gibson 2007, p. 41</ref>。
'''ブルー・ドルフィン'''または'''ブルー・ジェイ Mk.V''' と言う名称で、[[スパロー (ミサイル)|AIM-7 スパロー]]のような[[空対空ミサイル#終末誘導|セミアクティブレーダー誘導方式]]が提案されたが、この計画は1958年にキャンセルされている<ref name="#2"/>。


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==採用組織==
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2022年10月31日 (月) 11:20時点における最新版

レッドトップ
レッドトップミサイル
種類 空対空ミサイル
原開発国 イギリスの旗 イギリス
運用史
配備期間 1964 - 1988
配備先 イギリスの旗 イギリス
クウェートの旗 クウェート
サウジアラビアの旗 サウジアラビア
開発史
製造業者 ホーカー・シドレー
派生型 ?
諸元
重量 154 kg
全長 3.32 m
直径 0.23 m

弾頭 31 kg (68.3 lb) コンティニュアス・ロッド弾頭
信管 Green Garland 赤外線近接信管;接触信管(2次的)

エンジン Linnet 固体ロケット
翼幅 0.91 m
誘導方式 赤外線ホーミング、限定的ではあるが全方向ロックオン可能
操舵方式 翼面制御式
テンプレートを表示

ホーカー・シドレー(後にブリティッシュ・エアロスペースレッドトップ(Hawker Siddeley Red Top)はイギリスが独自開発して配備した、ファイアフラッシュ(限定使用のみ)、ファイアストリークに続く、3番目の空対空ミサイルである。赤外線パッシブホーミング方式を採用し、限定的ではあるが全方向ロックオンが可能であった。

開発[編集]

レッドトップは、もともとは、デ・ハビランド ファイアストリークのアップグレード版として計画された。1956年、デ・ハビランドは、ブルー・ジェイ Mk.4 (開発コード)、即ちファイアストリーク Mk.4の開発を開始した[1]。しかし、実際には新規のミサイルの開発に変更された。レッドトップは、ファイアストリークよりも、構成部品の搭載位置がより合理的に変更された。例えば、ファイアストリークでは後方にあった弾頭が前方に移された。さらに、改良された「バイオレット・バナー(Violet Banner)」赤外線シーカー、「グリーン・ガーランド(Green Garland)」赤外線近接信管、より強力な「リネット(Linnet)」ロケットブースターが使用された[1]。また、弾頭もファイアストリークの22.7 kgから31 kg へと強化された。電子機器も真空管からトランジスターへと変更され、冷却の必要がなくなった。

レッドトップはファイアストリークよりも高速で[2]、運動性も優れており、赤外線シーカーの性能も向上しており、ロックオン可能な角度が広がった。シーカー性能の向上により、機体の摩擦熱を探知してホーミングすることが可能になった[3]。1957年の防衛白書の結果として有人戦闘機の開発が凍結されたため、レッドトップはブラッドハウンド Mk. II英語版 地対空ミサイルが実戦配備されるまでの「つなぎ」と位置づけられた。このため、予定されていたレッドトップの改良のいくつかは実現できず、AIM-9L/M サイドワインダーのような完全な全方位ロックオン機能は実現できなかった[4]。レッドトップは、摩擦熱の大きな超音速で飛翔する標的に対してのみ、全方位ロックオンが可能であった[2]。また、「現在(1990年代)のミサイルとは異なり、レッドトップとファイアストリークは雲の外でなければ使用できなかった。そして、イギリスでは冬に晴れている日は殆ど無かった」[5]

レッドトップは1964年に実戦配備され、イングリッシュ・エレクトリック ライトニング(F.3/F.6/T.5のみ)とデ・ハビランド シービクセン(FAW.2のみ)に装備された。1988年にライトニングが退役するまで、一部のレッドトップは現役にあった[6]。レッドトップはファイアストリークを置き換える予定であったが、ファイアストリークも1988年まで一部実戦配備されていた。

ブルー・ドルフィンまたはブルー・ジェイ Mk.V と言う名称で、AIM-7 スパローのようなセミアクティブレーダー誘導方式が提案されたが、この計画は1958年にキャンセルされている[4]

採用組織[編集]

ロンドンのイギリス空軍博物館に展示されている、イングリッシュ・エレクトリック ライトニング に搭載されてレッドトップ
クウェートの旗 クウェート
  • クウェート空軍
サウジアラビアの旗 サウジアラビア
  • サウジアラビア空軍
イギリスの旗 イギリス

関連項目[編集]

参考資料[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b Gibson 2007, p. 40
  2. ^ a b Boyne, Walter J, Air Warfare: an International Encyclopedia, Volume 1, pub ABC-CLIO Inc, 2002, ISBN 1-57607-345-9 p267.
  3. ^ The English Electric (BAC) Lightning
  4. ^ a b Gibson 2007, p. 41
  5. ^ Black, Ian, The Last of the Lightnings, pub PSL, 1996, ISBN 1-85260-541-3, p141.
  6. ^ Gibson 2007, p. 41, 42

出版物[編集]

  • Gibson, Chris; Buttler, Tony (2007). British Secret Projects: Hypersonics, Ramjets and Missiles. Midland Publishing. pp. 47–53. ISBN 978-1857802580