「論理療法」の版間の差分
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{{Otheruses|[[アルバート・エリス]]が1955年に提唱した心理療法|後に[[アーロン・ベック]]が提唱した心理療法で、スキーマ、自動思考、認知の歪みを特徴とする技法|認知療法}} |
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{{medical}} |
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{{Interventions infobox |
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| Name = 論理療法 |
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| Image = |
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| Caption = |
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| ICD10 = |
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| MeshID = D011617 |
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{{心理学のサイドバー}} |
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'''論理療法'''(ろんりりょうほう、{{lang-en|rational therapy}})とは、[[アルバート・エリス]](Albert Ellis)が1955年に提唱した[[心理療法]]で、心理的問題や生理的反応は、出来事や刺激そのものではなく、それをどのように受け取ったかという認知を媒介として生じるとして、論理的(rational、あるいは合理的)な思考が心理に影響を及ぼすことを重視している{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=112-113}}。1990年代より名称が変わり、邦訳では'''理性感情行動療法'''({{lang-en|Rational emotive behavior therapy ; '''REBT'''}})などと呼ばれるが、当初の論理療法と呼んでも間違いではない<ref name="howtostub"/>。後に[[アーロン・ベック]]が、[[認知療法]](Cognitive therapy)を提唱するが、本項目で解説する論理療法はそうした認知に焦点を当てる[[認知行動療法]]の最初のものである<ref name="naid130005003477"/>。 |
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理論としては、出来事(A)、ビリーフ(Belief、信念)、結果(C)のビリーフ(B)のうち、非合理的なイラショナル・ビリーフを論駁するという、ABC理論を特徴とする。 |
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'''論理療法'''(ろんりりょうほう)とは、[[心理療法]]家'''[[アルバート・エリス]](Albert Ellis)'''によって1955年頃に創始された心理療法の一つである。広義の[[認知療法]]では最初のものとされている。 |
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分かりやすい論理体系やユーモアある技法、エリスのキャラクターと相まって、依然として論理療法を愛好する人も多い。 |
分かりやすい論理体系やユーモアある技法、エリスのキャラクターと相まって、依然として論理療法を愛好する人も多い。 |
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== 認知行動療法などとの位置づけ == |
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==名称と日本での訳語の混乱== |
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{{Seealso|認知行動療法}} |
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当初の名称は'''Rational Therapy'''であり、[[國分康孝]]が「論理療法」と訳した。その後、エリスは'''Rational Emotive Therapy'''、'''Rational Emotive Behavior Therapy'''と、2度名称を変更して現在に至っている。現在では、その頭文字をとって'''REBT'''と呼ばれることが多い。 |
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認知行動療法では、治療評価の対象に思考など認知が加えられ、この点で論理療法と、後に提唱された[[認知療法]]では共通しており、ともに認知行動療法に含まれる<ref name="naid130005003477">{{Cite journal |和書|author=根建金男, 市井雅哉 |date=1995|title=認知行動療法の意義と課題 -行動医学との関連から-|journal=行動医学研究|volume=2|issue=1|pages=29-36|naid=130005003477|doi=10.11331/jjbm.2.29|publisher=日本行動医学会}}</ref>。 |
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== 名称の変換と邦訳の混乱 == |
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それにともなって、'''Rational'''を「論理」「理性」「合理」、'''Emotive'''を「感情」「情動」など様々に訳し、さまざまに組み合わせて使われる上、旧名称を依然として使う人も多い状況で、訳語は混乱している。 |
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エリスの理論が日本で最初に紹介された1962年には、名称が''Rational therapy''であり、[[國分康孝]]が論理療法と訳した<ref name="howtostub"/>。『論理療法』(原題''A new guide to rational living'')<ref>{{Cite book|和書|author=A.エリス, R.A.ハーパー|coauthors=国分康孝、伊藤順康訳、北見芳雄監修|title=論理療法-自己説得のサイコセラピイ|publisher=川島書店|date=1981|isbn=4761002824}}''A new guide to rational living'', 2nd ed.</ref>は、長い年月をかけ100万部以上売れることになる{{sfn|アルバート・エリス|1996|p=1}}。 |
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論理的(あるいは合理的な)思考が心理にとって有効な働きをすることを強調した名称である{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=112-113}}。1960年代には、感情(情動)を軽視している印象を改めるため、''Rational-emotive therapy''('''RET''')と呼ぶようになった{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=112-113}}。 |
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つまり現在の名称である'''Rational Emotive Behavior Therapy'''は、日本においては、「論理情動行動療法」「理性感情行動療法」「合理情動行動療法」といったように、様々に訳語されている。そのため、日本においても、英語名称の頭文字をとって'''REBT'''と呼ばれることも多い。 |
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さらに1993年には''Rational Emotive Behavior Therapy''とし、行動療法の要素があり行動療法から評価を受けたり、介入はどの要素からでも可能ということで、行動のことばを加えた{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=112-113}}。頭文字をとって'''REBT'''と呼ばれることも多い。そして、初期からの直弟子らが名称変更に振り回されることなく、論理療法と呼ぶこともアルバート・エリスは了承している<ref name="howtostub"/>。 |
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國分は「Rational Emotive Behavior Therapyを論理療法と呼ぶべきだというのは[[イラショナル・ビリーフ]]だが、論理療法と呼んでほしいというのは[[ラショナル・ビリーフ]]である」と論理療法の用語・理論とからめて、「論理療法」と呼ぶことを推奨している。要するに「論理療法と呼ぶべきだとまでは言わないが、呼んでほしいとは思う」ということである。 |
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現在の名称である1993年ごろからの''Rational Emotive Behavior Therapy''は、日本においては、理性感情行動療法といったものがあるが、以前の名称も合理情動療法、論理情動療法など様々に訳語されている<ref name="howtostub">{{Cite book|和書|author=アルバート・エリス |coauthors=国分康孝・石隈利紀、国分久子翻訳|chapter=訳者まえがき|title=どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ|publisher=川島書店|date=1996|isbn=4-7610-0569-6|pages=ii-iii}}</ref>。 |
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==理論== |
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人の悩みは出来事そのものではなく出来事の受け取り方によって生み出されるものであり、受け取り方を変えれば悩みはなくなるというのが基本的なスタンスである。そして、それはABC理論とイラショナル・ビリーフに集約される。 |
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國分ら訳者は、「論理療法と呼ぶべきだというのはイラショナル・ビリーフだが、論理療法と呼んでほしいというのはラショナル・ビリーフである」と論理療法の用語・理論とからめて、「論理療法」と呼ぶことを推奨している<ref name="howtostub"/>。要するに「論理療法と呼ぶべきだとまでは言わないが、呼んでほしいとは思う」ということである。 |
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== 理論 == |
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{| class="wikitable floatright" style="marign:1em; font-size:95%" |
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|+ ABC理論とイラショナル・ビリーフ{{sfn|アルバート・エリス|2018|loc=13%}} |
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|{{rh}}|A: 逆境 |
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|colspan=2 style="text-align:center"| 試験に落ちた、仕事に失敗した |
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|- |
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|{{rh}}|B: 信念体系 |
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| 好み「・・・のほうがよい」<br>(思いが通じればよかったのだけれど) |
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|style="background:#ddd"| [[#イラショナル・ビリーフ|思い込み]]「・・・でなければならぬ」<br>(絶対成功しなければならぬ) |
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|- |
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|{{rh}}|C: 結果 |
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| |
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*健全な情緒的C<br>(がっかりする、残念に思う) |
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*建設的な行動的C<br>(新たなチャレンジに向けて努力する) |
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|style="background:#ddd"| |
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*不健全な情緒的C<br>(パニックになる、鬱状態になる) |
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*自滅的な行動的C<br>(引きこもる、衝動的な行動を起こす) |
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|} |
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心理的な問題や生理的な反応は、出来事そのものではなく出来事の受け取り方によって生み出されるものであり、非合理的な受け取り方から合理的な受け取り方に変えれば、そうした反応は弱くなるかなくなるという理論である{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=113-114}}。それはABC理論とイラショナル・ビリーフに集約される。 |
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===ABC理論=== |
===ABC理論=== |
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*A:Activating event(出来事) |
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*B:Belief(信念、固定観念) |
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*C:Consequence(結果) |
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出来事があって |
出来事(A)があって結果(C)があるのではなく、間に信念体系(B)による解釈をはさんで、結果(C)である、感情や行動の反応、すなわち、不安や怒り、不適応な行動が生じる{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=113-114}}。しかし、人は原因はBではなくAであると信じているので、あきらめてしまいがちである{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=113-114}}。しかし、受け止め方に含まれている非論理的な信念を'''イラショナル・ビリーフ'''と呼び、それが論理的に非合理的であることを理解して粉砕することを目的とする{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=113-114}}。このような過程が論駁(D)である。 |
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*D:Dispute(論駁) |
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*E:Effect(効果) |
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ABCD理論と呼ぶこともある{{sfn|アルバート・エリス|1996|p=3}}。 |
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===イラショナル・ビリーフ=== |
===イラショナル・ビリーフ=== |
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イラショナル・ビリーフ(非合理的な信念)は「~ねばならない、~すべきである」という信念から起こっており、これが人々を情緒的に混乱させている{{sfn|アルバート・エリス|1996|pp=3、15-16}}。 |
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「失敗してはならない」「すべての人に愛されなければならない」「世の中は公正でなければならない」などという思いを持っていると、それらが満たされなかったときに悩むことになる。イラショナル・ビリーフは以下のような特徴がある。 |
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*事実に基づいていない |
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*論理的必然性がない |
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*気持ちを惨めにさせる |
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情緒的に混乱し、不安や落ち込み、怒りなどがあるときには、自分は非科学的に思考していることが仮定できる{{sfn|アルバート・エリス|1996|pp=44-45}}。たとえば、イラショナル・ビリーフは以下のような特徴がある{{sfn|アルバート・エリス|1996|pp=36-46}}<!--例は参考にしながら創作-->。 |
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イラショナル・ビリーフは願望(~ねばならない、~であって欲しい)と事実を混同することから起こっている。このような混同を論理的に否定し、'''ラショナル・ビリーフ'''(合理的信条)へと変えてゆくのが論理療法の役割である(「文章記述を書き換える」という表現をする)。ラショナルビリーフは |
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*事実に基づいていない 「親切にしたら必ず返ってくる」「試験に不合格ならホームレスになってしまう」 |
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*事実に基づいている |
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*柔軟的ではない/論理的ではない 「ここで失敗したら、一生うまくいかない」 |
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*論理性がある |
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*証明できない 「常に一番にならなければならない」 |
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*人生を幸福にする |
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*幸せな結果をもたらさない 「怒りに怒りで返す」 |
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ラショナル・ビリーフの例は「失敗しないほうがいいが人間だから失敗することもある。失敗から学ぶべきである」「人に愛される・愛されないとは関係なしに具体的になにかをするべきである。その結果人が愛してくれればありがたいし、愛されなくとももともとである」などである。 |
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'''ラショナルビリーフ'''(合理的信念)は、確実性ではなく確率に基づいた{{sfn|アルバート・エリス|1996|p=74}}、「~にこしたことはない」という考えである{{sfn|瀬戸正弘|2004|pp=113-114}}。イラショナル・ビリーフを論駁するために、そこに根拠がないこと、ラショナル・ビリーフなどとの違いを比較し、合理的な思考が使用できるようにしていく{{sfn|瀬戸正弘|2004|p=115}}。 |
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端的に言ってしまえば、「~ねばらならない(must)」ではなく、よりマイルドであると言われる「~であるにこしたことはない(should)」という文章記述の書き換えである。 |
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=== Dispute:自己反論 === |
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Dは、不健全な思い込み(B)であったことを認め、自分でCを健全なものに変えるプロセスである{{sfn|アルバート・エリス|2018|loc=13%}}。以下の3段階から構成される{{sfn|アルバート・エリス|2018|loc=13%}}。 |
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#今までとは違う考え方をする |
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#*現実的に反論。「自分ならば絶対に拒否などされないと考える根拠は、はたしてあるか?」 |
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#*合理的に反論。「思い通りになってほしかったが、それはどうしても私に必要なものであったのだろうか?」 |
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#*実利的に反論。「自分ならば絶対に拒否などされないと考え続けることは、自分にどんな利益があるのか?」 |
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#今までとは違った感じ方をする |
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#今までとは違った行動をする |
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== セルフヘルプ == |
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エリスがやり残された仕事として1988年にわかりやすい[[セルフヘルプ]]の著書を出版し、1996年にはそれが邦訳された『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ』が出版されている{{sfn|アルバート・エリス|1996|pp=1-2}}。 |
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== 日本の研修・研究機関 == |
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日本で普及に弾みがついたのは、1987年に3日間、日本学生相談学会がアルバート・エリスによる研修会を開催してからとされる<ref name="howtostub"/>。 |
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==国内の研修・研究機関== |
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1996年4月に、日本ではじめて、論理療法を専門に研修・研究する組織である「日本論理療法協会」が発足し、それが'''日本論理療法学会'''(Japanese Association of Rational Emotive Behavior Therapy、略称:日本REBTまたはJ-REBT)と名称を変え、現在に至っている。ちなみに、日本論理療法学会は会の目的を、「論理療法の創始者[[アルバート・エリス]] のカウンセリング・サイコセラピー哲学に基づき、非営利団体として、日本における論理療法の健全な普及・発展を図ることを目的とする」としている。この組織では、論理療法の特徴である「論理療法の'''哲学'''」を特に大切にする立場をとっている。 |
1996年4月に、日本ではじめて、論理療法を専門に研修・研究する組織である「日本論理療法協会」が発足し、それが'''日本論理療法学会'''(Japanese Association of Rational Emotive Behavior Therapy、略称:日本REBTまたはJ-REBT)と名称を変え、現在に至っている。ちなみに、日本論理療法学会は会の目的を、「論理療法の創始者[[アルバート・エリス]] のカウンセリング・サイコセラピー哲学に基づき、非営利団体として、日本における論理療法の健全な普及・発展を図ることを目的とする」としている。この組織では、論理療法の特徴である「論理療法の'''哲学'''」を特に大切にする立場をとっている。 |
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また、日本論理療法学会では、論理療法の専門家である[[論理療法士]](Certified REBT Therapist)の養成と資格認定を行っている。 |
また、日本論理療法学会では、論理療法の専門家である[[論理療法士]](Certified REBT Therapist)の養成と資格認定を行っている。 |
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== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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カウンセリングの理論 國分康孝・[[1981年]]・誠信書房 ISBN 4414403081 |
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{{Reflist|2}} |
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== 参考文献 == |
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*{{Cite book|和書|author=アルバート・エリス |coauthors=国分康孝・石隈利紀、国分久子翻訳|title=どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ|publisher=川島書店|date=1996|isbn=47610-0569-6|ref=harv}}''How to stubbornly refuse to make yourself miserable about anything - Yes Anything!'', 1988 |
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===訳書=== |
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*{{Cite book|和書|author=瀬戸正弘|coauthors=(編集)内山喜久雄、坂野雄二|chapter=論理情動行動療法(REBT)|title=エビデンス・ベースト・カウンセリング|series=現代のエスプリ別冊|publisher=至文堂 |date=2004|isbn=4-7843-6033-6|pages=112-121|ref=harv}} |
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*Dryden, W. & DiGiuseppe, R. (1990) A primer on rational‐emotive therapy. |
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*{{Cite |和書|title=現実は厳しい。でも幸せにはなれる |author=アルバート・エリス |date=2018 |publisher=文響社 |isbn=978-4866510682 |ref=harv}} |
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**(ドライデンW.・デジサッピR.(著) 菅沼憲治(訳) 1997 実践論理療法入門:カウンセリングを学ぶ人のために 東京:岩崎学術出版社) |
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*Waren, S. R., DiGiuseppe, R. & Dryden, W. (1992) A practioner's guide to Rational-Emotive Therapy. Second Edition. |
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**(ワレンS.R.・デジサッピR.・ドライデンW.(著) 菅沼憲治(監訳) 2004 論理療法トレーニング:論理療法士になるために 東京:東京書籍) |
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*Dryden, W. (1994) Invitation to rational: Emotive psychology. |
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**(ドライデンW.(著) 國分康孝・國分久子・國分留志(訳) 1998 論理療法入門:その理論と実際 東京:川島書店) |
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*Yankura, J. & Dryden, W. (1994) Albert Ellis. |
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**(ヤンクラJ.・ドライデンW.(著) 國分康孝・國分久子(監訳) 1998 アルバート・エリス 人と業績:論理療法の誕生とその展開 東京:川島書店) |
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*Edelstein, M. R. & Steele, D. R. (1997) Three minute therapy: Change your thinking, Change your life. |
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**(エデルシュタインM.R.・スティールD.R.(著) 城戸善一(監訳) 2005 論理療法による三分間セラピー:考え方しだいで、悩みが消える 東京:誠信書房) |
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== 関連項目 == |
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* [[認知行動療法]] / [[認知療法]] / [[行動療法]] |
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*日本学生相談学会(編) 今村義正・國分康孝(編集) 1989 論理療法にまなぶ:アルバート・エリスとともに・非論理の思いこみに挑戦しよう 東京:川島書店 |
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* [[國分康孝]] |
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*伊藤順康(著) 1990 自己変革の心理学:論理療法入門 東京:講談社 |
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* [[論理療法士]] |
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*國分康孝(編) 1999 論理療法の理論と実際 東京:誠信書房 |
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* [[心理療法の一覧]] |
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*石隈利紀・伊藤伸二(著) 2001 論理療法と吃音―自分とうまくつき合う発想と実践 東京:芳賀書店 |
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*岡野守也(著) 2004 唯識と論理療法:仏教と心理療法・その統合と実践 東京:佼成出版社 |
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*石隈利紀・伊藤伸二(著) 2005 やわらかに生きる:論理療法と吃音に学ぶ 東京:金子書房 |
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*岡野守也(著) 2008 いやな気分の整理学―論理療法のすすめ (生活人新書) NHK出版 |
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==関連項目== |
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*[[論理療法士]] |
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*[[國分康孝]] |
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*[[認知療法]] |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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* [http://albertellis.org/ アルバート・エリス研究所] {{en icon}} rebt.orgからも転送される。 |
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* [http://www.j-rebt.org/ 日本人生哲学感情心理学会(旧称:日本論理療法学会)] |
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* [http://www.rebt.org/ |
* [http://www.j-rebt.org/ NPO法人日本人生哲学感情心理学会] (旧・日本論理療法学会) |
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{{medical-stub}} |
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[[Category:臨床心理学|ろんりりようほう]] |
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{{心理療法}} |
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[[bg:Рационално-емоционална поведенческа терапия]] |
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{{Normdaten}} |
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[[da:Rational Emotive Behavior Therapy]] |
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{{デフォルトソート:ろんりりようほう}} |
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[[de:Rational-Emotive Verhaltenstherapie]] |
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[[Category:心理療法]] |
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[[en:Rational emotive behavior therapy]] |
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[[Category:認知行動療法]] |
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[[es:Terapia racional emotiva conductual]] |
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[[et:Ratsionaal-emotiivne käitumisteraapia]] |
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[[fr:Thérapie rationnelle-émotive]] |
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[[it:Psicoterapia RET - REBT]] |
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[[nl:Rationeel-emotieve therapie]] |
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[[no:Rational Emotive Behavior Therapy]] |
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[[pl:Terapia racjonalno-emotywna]] |
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[[ro:Rebt]] |
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[[ru:Рационально-эмоционально-поведенческая терапия]] |
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[[sv:Rationell emotiv beteendeterapi]] |
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[[uk:Раціонально-емоційно-поведінкова терапія]] |
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[[zh:理性情緒行為治療]] |
2022年12月17日 (土) 21:49時点における最新版
論理療法 | |
---|---|
治療法 | |
MeSH | D011617 |
心理学 |
---|
基礎心理学 |
応用心理学 |
一覧 |
カテゴリ |
論理療法(ろんりりょうほう、英語: rational therapy)とは、アルバート・エリス(Albert Ellis)が1955年に提唱した心理療法で、心理的問題や生理的反応は、出来事や刺激そのものではなく、それをどのように受け取ったかという認知を媒介として生じるとして、論理的(rational、あるいは合理的)な思考が心理に影響を及ぼすことを重視している[1]。1990年代より名称が変わり、邦訳では理性感情行動療法(英語: Rational emotive behavior therapy ; REBT)などと呼ばれるが、当初の論理療法と呼んでも間違いではない[2]。後にアーロン・ベックが、認知療法(Cognitive therapy)を提唱するが、本項目で解説する論理療法はそうした認知に焦点を当てる認知行動療法の最初のものである[3]。
理論としては、出来事(A)、ビリーフ(Belief、信念)、結果(C)のビリーフ(B)のうち、非合理的なイラショナル・ビリーフを論駁するという、ABC理論を特徴とする。
分かりやすい論理体系やユーモアある技法、エリスのキャラクターと相まって、依然として論理療法を愛好する人も多い。
認知行動療法などとの位置づけ
[編集]認知行動療法では、治療評価の対象に思考など認知が加えられ、この点で論理療法と、後に提唱された認知療法では共通しており、ともに認知行動療法に含まれる[3]。
名称の変換と邦訳の混乱
[編集]エリスの理論が日本で最初に紹介された1962年には、名称がRational therapyであり、國分康孝が論理療法と訳した[2]。『論理療法』(原題A new guide to rational living)[4]は、長い年月をかけ100万部以上売れることになる[5]。
論理的(あるいは合理的な)思考が心理にとって有効な働きをすることを強調した名称である[1]。1960年代には、感情(情動)を軽視している印象を改めるため、Rational-emotive therapy(RET)と呼ぶようになった[1]。
さらに1993年にはRational Emotive Behavior Therapyとし、行動療法の要素があり行動療法から評価を受けたり、介入はどの要素からでも可能ということで、行動のことばを加えた[1]。頭文字をとってREBTと呼ばれることも多い。そして、初期からの直弟子らが名称変更に振り回されることなく、論理療法と呼ぶこともアルバート・エリスは了承している[2]。
現在の名称である1993年ごろからのRational Emotive Behavior Therapyは、日本においては、理性感情行動療法といったものがあるが、以前の名称も合理情動療法、論理情動療法など様々に訳語されている[2]。
國分ら訳者は、「論理療法と呼ぶべきだというのはイラショナル・ビリーフだが、論理療法と呼んでほしいというのはラショナル・ビリーフである」と論理療法の用語・理論とからめて、「論理療法」と呼ぶことを推奨している[2]。要するに「論理療法と呼ぶべきだとまでは言わないが、呼んでほしいとは思う」ということである。
理論
[編集]A: 逆境 | 試験に落ちた、仕事に失敗した | |
B: 信念体系 | 好み「・・・のほうがよい」 (思いが通じればよかったのだけれど) |
思い込み「・・・でなければならぬ」 (絶対成功しなければならぬ) |
C: 結果 |
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心理的な問題や生理的な反応は、出来事そのものではなく出来事の受け取り方によって生み出されるものであり、非合理的な受け取り方から合理的な受け取り方に変えれば、そうした反応は弱くなるかなくなるという理論である[7]。それはABC理論とイラショナル・ビリーフに集約される。
ABC理論
[編集]- A:Activating event(出来事)
- B:Belief(信念、固定観念)
- C:Consequence(結果)
出来事(A)があって結果(C)があるのではなく、間に信念体系(B)による解釈をはさんで、結果(C)である、感情や行動の反応、すなわち、不安や怒り、不適応な行動が生じる[7]。しかし、人は原因はBではなくAであると信じているので、あきらめてしまいがちである[7]。しかし、受け止め方に含まれている非論理的な信念をイラショナル・ビリーフと呼び、それが論理的に非合理的であることを理解して粉砕することを目的とする[7]。このような過程が論駁(D)である。
- D:Dispute(論駁)
- E:Effect(効果)
ABCD理論と呼ぶこともある[8]。
イラショナル・ビリーフ
[編集]イラショナル・ビリーフ(非合理的な信念)は「~ねばならない、~すべきである」という信念から起こっており、これが人々を情緒的に混乱させている[9]。
情緒的に混乱し、不安や落ち込み、怒りなどがあるときには、自分は非科学的に思考していることが仮定できる[10]。たとえば、イラショナル・ビリーフは以下のような特徴がある[11]。
- 事実に基づいていない 「親切にしたら必ず返ってくる」「試験に不合格ならホームレスになってしまう」
- 柔軟的ではない/論理的ではない 「ここで失敗したら、一生うまくいかない」
- 証明できない 「常に一番にならなければならない」
- 幸せな結果をもたらさない 「怒りに怒りで返す」
ラショナルビリーフ(合理的信念)は、確実性ではなく確率に基づいた[12]、「~にこしたことはない」という考えである[7]。イラショナル・ビリーフを論駁するために、そこに根拠がないこと、ラショナル・ビリーフなどとの違いを比較し、合理的な思考が使用できるようにしていく[13]。
Dispute:自己反論
[編集]Dは、不健全な思い込み(B)であったことを認め、自分でCを健全なものに変えるプロセスである[6]。以下の3段階から構成される[6]。
- 今までとは違う考え方をする
- 現実的に反論。「自分ならば絶対に拒否などされないと考える根拠は、はたしてあるか?」
- 合理的に反論。「思い通りになってほしかったが、それはどうしても私に必要なものであったのだろうか?」
- 実利的に反論。「自分ならば絶対に拒否などされないと考え続けることは、自分にどんな利益があるのか?」
- 今までとは違った感じ方をする
- 今までとは違った行動をする
セルフヘルプ
[編集]エリスがやり残された仕事として1988年にわかりやすいセルフヘルプの著書を出版し、1996年にはそれが邦訳された『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ』が出版されている[14]。
日本の研修・研究機関
[編集]日本で普及に弾みがついたのは、1987年に3日間、日本学生相談学会がアルバート・エリスによる研修会を開催してからとされる[2]。
1996年4月に、日本ではじめて、論理療法を専門に研修・研究する組織である「日本論理療法協会」が発足し、それが日本論理療法学会(Japanese Association of Rational Emotive Behavior Therapy、略称:日本REBTまたはJ-REBT)と名称を変え、現在に至っている。ちなみに、日本論理療法学会は会の目的を、「論理療法の創始者アルバート・エリス のカウンセリング・サイコセラピー哲学に基づき、非営利団体として、日本における論理療法の健全な普及・発展を図ることを目的とする」としている。この組織では、論理療法の特徴である「論理療法の哲学」を特に大切にする立場をとっている。
また、日本論理療法学会では、論理療法の専門家である論理療法士(Certified REBT Therapist)の養成と資格認定を行っている。
脚注
[編集]- ^ a b c d 瀬戸正弘 2004, pp. 112–113.
- ^ a b c d e f アルバート・エリス、国分康孝・石隈利紀、国分久子翻訳「訳者まえがき」『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ』川島書店、1996年、ii-iii頁。ISBN 4-7610-0569-6。
- ^ a b 根建金男, 市井雅哉「認知行動療法の意義と課題 -行動医学との関連から-」『行動医学研究』第2巻第1号、日本行動医学会、1995年、29-36頁、doi:10.11331/jjbm.2.29、NAID 130005003477。
- ^ A.エリス, R.A.ハーパー、国分康孝、伊藤順康訳、北見芳雄監修『論理療法-自己説得のサイコセラピイ』川島書店、1981年。ISBN 4761002824。A new guide to rational living, 2nd ed.
- ^ アルバート・エリス 1996, p. 1.
- ^ a b c アルバート・エリス 2018, 13%.
- ^ a b c d e 瀬戸正弘 2004, pp. 113–114.
- ^ アルバート・エリス 1996, p. 3.
- ^ アルバート・エリス 1996, pp. 3、15-16.
- ^ アルバート・エリス 1996, pp. 44–45.
- ^ アルバート・エリス 1996, pp. 36–46.
- ^ アルバート・エリス 1996, p. 74.
- ^ 瀬戸正弘 2004, p. 115.
- ^ アルバート・エリス 1996, pp. 1–2.
参考文献
[編集]- アルバート・エリス、国分康孝・石隈利紀、国分久子翻訳『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ』川島書店、1996年。ISBN 47610-0569-6。How to stubbornly refuse to make yourself miserable about anything - Yes Anything!, 1988
- 瀬戸正弘、(編集)内山喜久雄、坂野雄二「論理情動行動療法(REBT)」『エビデンス・ベースト・カウンセリング』至文堂〈現代のエスプリ別冊〉、2004年、112-121頁。ISBN 4-7843-6033-6。
- アルバート・エリス『現実は厳しい。でも幸せにはなれる』文響社、2018年。ISBN 978-4866510682。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- アルバート・エリス研究所 rebt.orgからも転送される。
- NPO法人日本人生哲学感情心理学会 (旧・日本論理療法学会)