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{{生物分類表
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| 名称 = イシノミ目/古顎目 Archaeognatha
| 名称 = イシノミ目/古顎目 Archaeognatha
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| 目 = '''イシノミ目''' Archaeognatha
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| 下位分類名 = 科
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*イシノミ科 Machilidae
*[[イシノミ科]] Machilidae
*Meinertellidae
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'''イシノミ目'''(イシノミもく、'''古顎目'''、Archaeognatha、Microcoryphia)は、翅を持たない[[昆虫]]、いわゆる[[無翅昆虫]]のうちの一群で、大部分の昆虫を含む[[有翅昆虫]]に対して祖先的な特徴を大きく保持している。全世界の湿った土壌に生息する15mm以下の小さな昆虫で、外見的には[[シミ目|シミ類]]にやや似る。腹部を地面に叩きつけてジャンプを行うことからこの名がある。

'''イシノミ目'''('''古顎目'''、Archaeognatha、Microcoryphia)は、[[昆虫綱]]の最も原始的な1[[目 (分類学)|目]]。ただし、より原始的な[[内顎類]]([[コムシ目]]、[[カマアシムシ目]]、[[トビムシ目]])またはその一部を昆虫に含めることがあるほか、コムシ目を昆虫綱に繰り込む説もある。

かつては体の概形が[[シミ目]]と似ていることもあり、シミ目'''イシノミ亜目'''に分類されていたが、1960年代ごろより、体の基本構造に非常に原始的な形質を有する別系統であることがわかり、分けられるようになった。昆虫は[[大顎]]が頭蓋と1ヶ所だけで関節し、イシノミ目のみからなる[[単関節丘亜綱]]と、2ヶ所で関節するめ可動性が制限され、それ以外の全てからなる[[双関節丘亜綱]]分けられる。ただし、古典的な分類では、イシノミ目シミ目を[[無翅亜綱]]とし、それ以外の[[有翅亜綱]]と対比させてきた。


== 特長 ==
== 特長 ==
[[File:Machilidae in japan.jpg|thumb|250px|left|日本におけるイシノミの一種。腹部にも付属肢が確認できる]]
体は細長く、シミとは異なり偏平ではない。[[頭部]]は[[複眼]]が発達している。体表はシミ同様に鱗粉に覆われ、多くは[[褐色]]のまだら模様がある。腹節の腹面に対をなした付属肢を刺状に有する。
体は細長く、シミとは異なり偏平ではない。触角や尾糸、尾毛のいずれも鞭状で長く、小腮髭も大きい。口器は[[外腮口]]。シミと逆に[[複眼]][[単眼]]が大きく発達している。体表はシミ同様に鱗粉に覆われ、多くの種では[[褐色]]のまだら模様がある。胸節には明確な3対の歩脚をもつほか、腹節の腹面に対をなした付属肢を刺状に有する。


野外の枯れ木や[[石垣]]、[[土]]の上などに住んでおり、陸生の微細な[[藻類]]を食べる。水は口から飲まず、腹部の腹面の節間から膨出する嚢状体の膜面を結露した水滴などに押し付け、吸収する。何かに驚くと、[[腹部]]を地面に打ち付けて跳躍し、その動きは素早い。
野外の枯れ木や[[石垣]]、[[土]]の上などに住んでおり、陸生の微細な[[藻類]]や[[地衣]]を食べる。水は口から飲まず、腹部の腹面の節間から膨出する嚢状体の膜面を結露した水滴などに押し付け、吸収する。何かに驚くと、[[腹部]]を地面に打ち付けて跳躍し、その動きは素早い。


雌の体内に精子を導入する交尾器を持たず、雄は糸を分泌してその上に精液の滴を置き、複雑な配偶行動で雌を誘導して生殖口から吸収させる。
雌の体内に[[精子]]を導入する交尾器を持たず、雄は糸を分泌してその上に精液の滴を置き、複雑な配偶行動で雌を誘導して生殖口から吸収させる。


寿命は長く、約3年生きる。<ref name=aoki>[[青木淳一]]編.(1991).『日本産土壌動物検索図説』 [[学校法人東海大学出版会|東海大学出版会]].{{ISBN2|4-486-01156-2}}</ref>
寿命は長く、約3年生きる。


== 分類 ==
== 分類 ==
[[昆虫綱]]のうち、最も早く分岐したグループで、現生のうち最も"原始的"昆虫の[[目 (分類学)|目]]とも言える。ただし、より古い時代に分岐した[[内顎類]]([[コムシ目]]、[[カマアシムシ目]]、[[トビムシ目]])またはその一部を広義の昆虫に含めることもある。
*イシノミ科 Machilidae
*:日本から5属十数種が知られる
*Meinertellidae
南半球にもう1科がある。


古典的な分類では、イシノミ目とシミ目を[[無翅亜綱]]とし、それ以外の[[有翅亜綱]]と対比させてきた。かつては体の概形が[[シミ目]]と似ていることもあり、シミ目(総尾目, Thysanura)の'''イシノミ亜目'''に分類されていた<ref name=aoki></ref>が、1960年代ごろより、体の基本構造に非常に原始的な形質を有する別系統であることがわかり、[[側系統群]]として分けられるようになった。それによると、普通の昆虫は[[大顎]]が頭蓋と2ヶ所で関節するため可動性が制限されるのに対し、この類では1ヶ所だけで関節している。そのため、イシノミ目のみからなる[[単関節丘亜綱]]、それ以外の全ての昆虫を[[双関節丘亜綱]]として分けられるになった。
{{Commons|Category:Archaeognatha}}


== 下位分類 ==
[[Category:昆虫|いしのみもく]]
*'''[[イシノミ科]] family Machilidae''' (日本から5属十数種が知られる
*:ヤマトイシノミ属(''Pedetontus'')
*::[[ヤマトイシノミ]] ''Pedetontus nipponicus'' (Silvestri) [[File:Pedetontus nipponicus.jpg|thumb|200px|ヤマトイシノミ]]
*::[[ヒトツモンイシノミ]] ''Pedetontus unimaculatus'' Machida
*::[[オカジマイシノミ]] ''Pedetontus okajimae'' Silvestri
*:ヒメイシノミ属(''Pedetontius'')
*::[[イシイイシノミ]] ''Pedetontius ishii'' Silvestri
*::[[シラヒゲヒメイシノミ]] ''Pedetontius dicrocerus'' Silvestri
*:[[セイヨウイシノミ属]](''Petrobius'')
*::[[コジマイシノミ]] ''Petrobius kojimai'' (Uchida)
*:セイヨウイシノミモドキ属(''Petrobiellus'')
*::[[セイヨウイシノミモドキ]] ''Petrobiellus tokunagae'' Silvestri
*:ハスロンドイシノミ属(''Haslundichilis'')
*'''[[メイネルテラ科]] family Meinertellidae''' (主に南半球に生息し、日本からの報告はない)


== 出典・引用 ==
[[ca:Arqueògnat]]
<references/>
[[cs:Chvostnatky]]

[[de:Felsenspringer]]
== 参考文献 ==
[[el:Αρχαιόγναθα]]
*[[青木淳一]]編.([[1991年]]).『日本産土壌動物検索図説』 [[学校法人東海大学出版会|東海大学出版会]].{{ISBN2|4-486-01156-2}}
[[en:Archaeognatha]]

[[es:Archaeognatha]]
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[[eu:Archaeognatha]]
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[[fr:Archaeognatha]]
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[[Category:イシノミ目|*]]
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2023年1月19日 (木) 12:55時点における最新版

イシノミ目/古顎目 Archaeognatha
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: イシノミ目 Archaeognatha

イシノミ目(イシノミもく、古顎目、Archaeognatha、Microcoryphia)は、翅を持たない昆虫、いわゆる無翅昆虫のうちの一群で、大部分の昆虫を含む有翅昆虫に対して祖先的な特徴を大きく保持している。全世界の湿った土壌に生息する15mm以下の小さな昆虫で、外見的にはシミ類にやや似る。腹部を地面に叩きつけてジャンプを行うことからこの名がある。

特長[編集]

日本におけるイシノミの一種。腹部にも付属肢が確認できる

体は細長く、シミとは異なり偏平ではない。触角や尾糸、尾毛のいずれも鞭状で長く、小腮髭も大きい。口器は外腮口。シミとは逆に複眼単眼が大きく発達している。体表はシミ同様に鱗粉に覆われ、多くの種では褐色のまだら模様がある。胸節には明確な3対の歩脚をもつほか、腹節の腹面にも対をなした付属肢を刺状に有する。

野外の枯れ木や石垣の上などに住んでおり、陸生の微細な藻類地衣を食べる。水は口から飲まず、腹部の腹面の節間から膨出する嚢状体の膜面を結露した水滴などに押し付け、吸収する。何かに驚くと、腹部を地面に打ち付けて跳躍し、その動きは素早い。

雌の体内に精子を導入する交尾器を持たず、雄は糸を分泌してその上に精液の滴を置き、複雑な配偶行動で雌を誘導して生殖口から吸収させる。

寿命は長く、約3年生きる。[1]

分類[編集]

昆虫綱のうち、最も早く分岐したグループで、現生のうち最も"原始的"な昆虫のとも言える。ただし、より古い時代に分岐した内顎類コムシ目カマアシムシ目トビムシ目)またはその一部を広義の昆虫に含めることもある。

古典的な分類では、イシノミ目とシミ目を無翅亜綱とし、それ以外の有翅亜綱と対比させてきた。かつては体の概形がシミ目と似ていることもあり、シミ目(総尾目, Thysanura)のイシノミ亜目に分類されていた[1]が、1960年代ごろより、体の基本構造に非常に原始的な形質を有する別系統であることがわかり、側系統群として分けられるようになった。それによると、普通の昆虫は大顎が頭蓋と2ヶ所で関節するため可動性が制限されるのに対し、この類では1ヶ所だけで関節している。そのため、イシノミ目のみからなる単関節丘亜綱をたて、それ以外の全ての昆虫を双関節丘亜綱として分けられることになった。

下位分類[編集]

出典・引用[編集]

  1. ^ a b 青木淳一編.(1991).『日本産土壌動物検索図説』 東海大学出版会.ISBN 4-486-01156-2

参考文献[編集]