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'''カタールの軍事'''について解説する。[[カタール]]は[[ペルシャ湾]]西岸に位置する小国であり、1971年に[[イギリス]]の[[保護領]]から独立に至った。産油国であるため、経済的には豊かである。
このページでは、'''カタールの軍事'''(カタールのぐんじ)について解説する。[[カタール]]は[[ペルシャ湾]]西岸に位置する小国であり、1971年に[[イギリス]]の[[保護領]]から独立に至った。産油国であるため、経済的には豊かである。


== 概要 ==
== 概要 ==
カタールは部族間抗争の続いた土地であり、19世紀には[[アル=サーニ家]]が[[イギリス]]と組み、勢力を増してきていた。1870年代以降は[[オスマン帝国]]の支配下となるが、[[第一次世界大戦]]でオスマン帝国が敗北すると、イギリスの保護領となった。[[第二次世界大戦]]以降に石油の輸出により経済的に繁栄するようになり、1971年に独立した。石油輸出で得た資金を基に、西側諸国より兵器を輸入し、近代的軍隊編成している。
カタールは部族間抗争の続いた土地であり、19世紀には[[サーニ家]]が[[イギリス]]と組み、勢力を増してきていた。1870年代以降は[[オスマン帝国]]の支配下となるが、[[第一次世界大戦]]でオスマン帝国が敗北すると、イギリスの保護領となった。[[第二次世界大戦]]以降に石油の輸出により経済的に繁栄するようになり、1971年に独立した。石油輸出で得た資金を基に、西側諸国より兵器を輸入し、近代的軍隊編成している。


安全保障政策は親欧米基調であり、[[湾岸協力会議]]などの湾岸小国と協力関係にある。1991年の[[湾岸戦争]]の際多国籍軍に基地および兵力を提供し[[カフジの戦]]に投入されるなど、クウェート奪還にて協力を行なっている。[[対テロ戦争]]でもアメリカ合衆国に協力したほか、2003年の[[イラク戦争]]の際は[[アメリカ中央軍]]の前線司令部がカタールに設置された。
国や軍隊の規模小さいため、米欧諸国、[[湾岸協力会議]](GCC)に参加する[[サウジアラビア]]や他の湾岸小国と協力関係を[[安全保障]]の基本としている。1991年の[[湾岸戦争]][[多国籍軍]]に基地および兵力を提供した。カタール軍も[[イラク]]軍を撃退した[[カフジの戦]]などに投入され、[[クウェート]]奪還に参加。[[対テロ戦争]]でもアメリカ合衆国に協力したほか、2003年の[[イラク戦争]]の際は[[アメリカ中央軍]]の前線司令部がカタールに設置された。


豊かな石油収入を背景に[[中近東]]・[[イスラム圏]]全体への影響力行使を試みており、[[アラブの春]]では各国の反政府派を支援。米欧とともに[[2011年リビア内戦|リビア空爆]]を行った<ref>{{Cite news|url=http://mainichi.jp/articles/20160228/ddm/007/030/143000c|title=アラブの春5年・第2部(4)カタール、積極介入に転換 思惑外れ、摩擦生む|work=|publisher=[[毎日新聞]]朝刊|date=2016年2月28日}}</ref>。2016年には、[[トルコ]]に軍事基地を提供する協定を結んだ<ref>「[[新オスマン主義]]」『[[読売新聞]]』朝刊2017年4月26日</ref>。[[2017年カタール外交危機|カタール外交危機]]が起きた2017年の建国記念の軍事パレードでは従来の英国式から[[中国人民解放軍]]の訓練教官によって中国式の隊列と[[ガチョウ足行進]]に変えられ<ref>{{cite news|url=http://en.people.cn/n3/2017/1220/c90000-9306770.html|title=PLA's goose-stepping highlight of Qatari National Day military parade|publisher=[[人民網]]|date=2017-12-20|accessdate=2017-12-22}}</ref>、中国製[[弾道ミサイル]]の[[BP-12A]]を披露し<ref>{{cite news|url=https://thediplomat.com/2017/12/qatar-parades-new-chinese-short-range-ballistic-missile-system/|title=Qatar Parades New Chinese Short-Range Ballistic Missile System|publisher=The Diplomat|date=2017-12-19|accessdate=2017-12-22}}</ref>、[[上海協力機構]]に加盟を申請するなど[[中華人民共和国]]への接近が目立った<ref>{{cite news|url=https://www.interfax.kz/?lang=eng&int_id=21&news_id=28540|publisher=[[インテルファクス通信]]|author=|title=SCO receives membership requests from Qatar, Bahrain|date=2017-12-05|accessdate=2017-12-23}}</ref><ref>{{cite news|url=https://thediplomat.com/2017/11/chinas-growing-security-relationship-with-qatar/|title=China's Growing Security Relationship With Qatar|publisher=The Diplomat|date=2017-11-16|accessdate=2017-12-22}}</ref>。
カタール軍は陸海空三軍からなり、総兵力は約12,400名。国防費は2005年時点で21億9千万ドル<ref>http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/quatar/data.html</ref>。陸軍8,500名、海軍1,800名、空軍2,100名。同様な湾岸の小国であったクウェートがイラクに侵略された事例があったことにもより、防衛力整備には留意している。兵器は主にフランス製が多い。

'''カタール軍'''陸海空三軍からなり、総兵力は約12,400名。国防費は2005年時点で21億9千万ドル<ref>https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/quatar/data.html</ref>。陸軍8,500名、海軍1,800名、空軍2,100名。同様な湾岸の小国であったクウェートがイラクに侵略された事例があったことにもより、防衛力整備を進めている。兵器は主にフランス製が多い。参謀長は、[[ガーニム・ビン・シャーヒーン・アル=ガーニム]](2013年6月-)<ref>{{cite news|url=http://wam.org.ae/servlet/Satellite?c=WamLocAnews&cid=1290005367199&p=1135099400289&pagename=WAM%2FWamLocAnews%2FW-T-LAN-FullNews|title=أمير قطر يعين غانم بن شاهين الغانم رئيسا لأركان القوات المسلحة|publisher=Emirates News Agency|date=2013-06-27|accessdate=2013-06-28}}</ref>


=== 陸軍 ===
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=== 海軍 ===
=== 海軍 ===
小規模なものであり、沿岸哨戒用の高速艇を主力としている。保有している艦艇ては[[タール海軍艇一覧]]を参照
小規模なものであり、沿岸哨戒用の高速艇を主力としている。近年では[[サウジアラビア]]や[[イラン]]の海軍戦力増強[[リア]]の[[フィンカンティエリ|フィンカンティエリ社]]に[[アル・ズバラ級フリゲト|ア・ズバラ級コルベット]]4隻と[[強襲揚陸艦]]「アル・フルク」発注している

保有している艦艇については[[カタール海軍艦艇一覧]]を参照。


=== 空軍 ===
=== 空軍 ===
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2個航空団編制であり、ヘリコプターも担当している。[[ミラージュ2000 (戦闘機)|ミラージュ2000]][[戦闘機]]を主力に、[[BAe ホーク]]などを装備している。2008年には[[ボーイング]]社に対し[[C-17 (航空機)|C-17]]大型[[輸送機]]2機を発注した。これは2009年に装備予定である
2個航空団編制であり、ヘリコプターも担当している。[[ミラージュ2000 (戦闘機)|ミラージュ2000]][[戦闘機]]を主力に、中高等練習機には[[アルファジェット (航空機)|アルファジェット]]などを装備しているなど、[[フランス]]製の機体が多いが、2009年には[[アメリカ合衆国|米国]][[ボーイング]]社[[C-17 (航空機)|C-17]]大型[[輸送機]]2機を導入した。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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2023年3月7日 (火) 01:05時点における最新版

このページでは、カタールの軍事(カタールのぐんじ)について解説する。カタールペルシャ湾西岸に位置する小国であり、1971年にイギリス保護領から独立に至った。産油国であるため、経済的には豊かである。

概要[編集]

カタールは部族間抗争の続いた土地であり、19世紀にはサーニー家イギリスと組み、勢力を増してきていた。1870年代以降はオスマン帝国の支配下となるが、第一次世界大戦でオスマン帝国が敗北すると、イギリスの保護領となった。第二次世界大戦以降に石油の輸出により経済的に繁栄するようになり、1971年に独立した。石油輸出で得た資金を基に、西側諸国より兵器を輸入し、近代的軍隊を編成している。

国や軍隊の規模が小さいため、米欧諸国、湾岸協力会議(GCC)に参加するサウジアラビアや他の湾岸小国との協力関係を安全保障の基本としている。1991年の湾岸戦争では多国籍軍に基地および兵力を提供した。カタール軍もイラク軍を撃退したカフジの戦闘などに投入され、クウェート奪還に参加した。対テロ戦争でもアメリカ合衆国に協力したほか、2003年のイラク戦争の際はアメリカ中央軍の前線司令部がカタールに設置された。

豊かな石油収入を背景に中近東イスラム圏全体への影響力行使を試みており、アラブの春では各国の反政府派を支援。米欧とともにリビア空爆を行った[1]。2016年には、トルコに軍事基地を提供する協定を結んだ[2]カタール外交危機が起きた2017年の建国記念の軍事パレードでは従来の英国式から中国人民解放軍の訓練教官によって中国式の隊列とガチョウ足行進に変えられ[3]、中国製弾道ミサイルBP-12Aを披露し[4]上海協力機構に加盟を申請するなど中華人民共和国への接近が目立った[5][6]

カタール軍は、陸海空の三軍からなり、総兵力は約12,400名。国防費は2005年時点で21億9千万ドル[7]。陸軍8,500名、海軍1,800名、空軍2,100名。同様な湾岸の小国であったクウェートがイラクに侵略された事例があったことにもより、防衛力の整備を進めている。兵器は主にフランス製が多い。参謀長は、ガーニム・ビン・シャーヒーン・アル=ガーニム(2013年6月-)[8]

陸軍[編集]

増強連隊規模であり、主力はドーハ近郊に所在。AMX-30戦車ピラーニャ装甲車VAB装甲車などを装備している。

海軍[編集]

小規模なものであり、沿岸哨戒用の高速艇を主力としている。近年ではサウジアラビアイランの海軍戦力増強に伴い、イタリアフィンカンティエリ社アル・ズバラ級コルベット4隻と強襲揚陸艦「アル・フルク」を発注している。

保有している艦艇についてはカタール海軍艦艇一覧を参照。

空軍[編集]

2個航空団編制であり、ヘリコプターも担当している。ミラージュ2000戦闘機を主力に、中高等練習機にはアルファジェットなどを装備しているなど、フランス製の機体が多いが、2009年には米国ボーイング社のC-17大型輸送機2機を導入した。

脚注[編集]

  1. ^ “アラブの春5年・第2部(4)カタール、積極介入に転換 思惑外れ、摩擦生む”. 毎日新聞朝刊. (2016年2月28日). http://mainichi.jp/articles/20160228/ddm/007/030/143000c 
  2. ^ 新オスマン主義」『読売新聞』朝刊2017年4月26日
  3. ^ “PLA's goose-stepping highlight of Qatari National Day military parade”. 人民網. (2017年12月20日). http://en.people.cn/n3/2017/1220/c90000-9306770.html 2017年12月22日閲覧。 
  4. ^ “Qatar Parades New Chinese Short-Range Ballistic Missile System”. The Diplomat. (2017年12月19日). https://thediplomat.com/2017/12/qatar-parades-new-chinese-short-range-ballistic-missile-system/ 2017年12月22日閲覧。 
  5. ^ “SCO receives membership requests from Qatar, Bahrain”. インテルファクス通信. (2017年12月5日). https://www.interfax.kz/?lang=eng&int_id=21&news_id=28540 2017年12月23日閲覧。 
  6. ^ “China's Growing Security Relationship With Qatar”. The Diplomat. (2017年11月16日). https://thediplomat.com/2017/11/chinas-growing-security-relationship-with-qatar/ 2017年12月22日閲覧。 
  7. ^ https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/quatar/data.html
  8. ^ “أمير قطر يعين غانم بن شاهين الغانم رئيسا لأركان القوات المسلحة”. Emirates News Agency. (2013年6月27日). http://wam.org.ae/servlet/Satellite?c=WamLocAnews&cid=1290005367199&p=1135099400289&pagename=WAM%2FWamLocAnews%2FW-T-LAN-FullNews 2013年6月28日閲覧。