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'''ネズミイルカ科'''(鼠海豚科、Phocoenidae)は、[[クジラ目]][[ハクジラ亜目]]に属する[[科 (分類学)|科]]の一つ。現生種は3属6種で構成される。
'''ネズミイルカ科'''(鼠海豚科、Phocoenidae)は、[[クジラ目]][[ハクジラ亜目]]に属する[[科 (分類学)|科]]の一つ。現生種は3属6種で構成される。


英語ではネズミイルカはPorpoiseと呼ばれ、その他の[[イルカ]]Dolphinとは区別されている。PorpoiseDolphinの主な違いは[[歯]]と頭部の形状である。ただし、日常レベルの英語では小型の[[イルカ]]を差してPorpoiseと呼び、逆にネズミイルカをDolphinと呼ぶこともある。
英語ではネズミイルカはporpoiseと呼ばれ、その他の[[イルカ]]dolphinとは区別されている。porpoisedolphinの主な違いは[[歯]]と頭部の形状である。ただし、日常レベルの英語では小型の[[イルカ]]を差してporpoiseと呼び、逆にネズミイルカをdolphinと呼ぶこともある。


全て海棲であり、多くは沿岸に棲息する。
全て海棲であり、多くは沿岸に棲息する。
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==進化==
==進化==
ネズミイルカ科の化石記録は[[中新世]]後期にまで遡ることが出来、特に中新世末 - [[鮮新世]]前期の地層から多数発見されている。分子研究によれば約1,600万 - 1,300万年前にマイルカ科から分岐したとされるが、この時期は化石記録とも一致している。現生群はハクジラ類の中でも比較的小柄であるが、鮮新世前期までの化石は2mを超すものが大半であり、吻や胸びれも長いものが普通であったようである。現生群の丸みを帯び、相対的に[[吻]]が短く[[脳函]]が大きい、また小柄であるなどの特徴は[[ネオテニー|幼形成熟]]によるものとの説もある。こうした形態を持つ現生群の分化は、分子の研究からは約300万年前に起きたと推定されている。化石記録の上からも、600万年を超えるものではないとされる。この時期は[[鮮新世]]後期の[[氷河期|氷期]] - 間氷期サイクルの始まりと一致する。おそらくこうした環境の変化が生殖サイクルを早めて個体群を維持する進化を促したと推測される。<ref>『鯨類学』 51 - 52頁</ref>
ネズミイルカ科の化石記録は[[中新世]]後期にまで遡ることが出来、特に中新世末 - [[鮮新世]]前期の地層から多数発見されている。分子研究によれば約1,600万 - 1,300万年前にマイルカ科から分岐したとされるが、この時期は化石記録とも一致している。現生群はハクジラ類の中でも比較的小柄であるが、鮮新世前期までの化石は2mを超すものが大半であり、吻や胸びれも長いものが普通であったようである。現生群の丸みを帯び、相対的に[[吻]]が短く[[脳函]]が大きい、また小柄であるなどの特徴は[[ネオテニー|幼形成熟]]によるものとの説もある。こうした形態を持つ現生群の分化は、分子の研究からは約300万年前に起きたと推定されている。化石記録の上からも、600万年を超えるものではないとされる。この時期は[[鮮新世]]後期の[[氷期]] - 間氷期サイクルの始まりと一致する。おそらくこうした環境の変化が生殖サイクルを早めて個体群を維持する進化を促したと推測される。<ref>『鯨類学』 51 - 52頁</ref>


==人間の影響==
==人間の影響==
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[[コガシラネズミイルカ]] (''Phocoena sinus'') はクジラ目の中では最も絶滅の危機に瀕している種であり、現在では高度に工業化された地帯において、限定的に棲息しているに過ぎない。
[[コガシラネズミイルカ]] (''Phocoena sinus'') はクジラ目の中では最も絶滅の危機に瀕している種であり、現在では高度に工業化された地帯において、限定的に棲息しているに過ぎない。


他のイルカとは違い、ネズミイルカ科のイルカが[[水族館]]などにおいて展示飼育されることは稀である。日本においては[[スナメリ#日本で見られる施設|スナメリ]]の展示飼育が[[鳥羽水族館]]など複数の施設で行われている。ネズミイルカの展示飼育は[[おたる水族館]]、[[鴨川シーワールド]]での例が報告されている<ref>鴨川シーワールド「[http://www.mboso-etoko.jp/top/goodlife/disp_A.asp?id=4783&group=61 ネズミイルカの展示を開始]」(「南房総とっておきニュース」より)-2007年5月から鴨川シーワールドでネズミイルカの飼育を始めたというニュース。同年2月に鴨川沖の定置網で捕獲されて保護された雌の個体。</ref>が、極めて稀である。
他のイルカとは違い、ネズミイルカ科のイルカが[[水族館]]などにおいて展示飼育されることは稀である。日本においては[[スナメリ#人間との関係|スナメリ]]の展示飼育が[[鳥羽水族館]]など複数の施設で行われている。ネズミイルカの展示飼育は[[おたる水族館]]、[[鴨川シーワールド]]での例が報告されている<ref>鴨川シーワールド「[http://www.mboso-etoko.jp/top/goodlife/disp_A.asp?id=4783&group=61 ネズミイルカの展示を開始]」(「南房総とっておきニュース」より)-2007年5月から鴨川シーワールドでネズミイルカの飼育を始めたというニュース。同年2月に鴨川沖の定置網で捕獲されて保護された雌の個体。</ref>が、極めて稀である。


==脚注==
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==関連項目==
* [[ポーポイズ現象]]


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2023年3月11日 (土) 10:52時点における最新版

ネズミイルカ科
イシイルカ
イシイルカ
Phocoenoides dalli
地質時代
中新世後期 - 完新世現代
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
亜綱 : 獣亜綱 Theria
: 鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
亜目 : ハクジラ亜目 Odontoceti
上科 : マイルカ上科 Delphinoidea
: ネズミイルカ科 Phocoenidae
学名
Phocoenidae
Gray1825
亜科,

ネズミイルカ科(鼠海豚科、Phocoenidae)は、クジラ目ハクジラ亜目に属するの一つ。現生種は3属6種で構成される。

英語ではネズミイルカはporpoiseと呼ばれ、その他のイルカdolphinとは区別されている。porpoiseとdolphinの主な違いはと頭部の形状である。ただし、日常レベルの英語では小型のイルカを差してporpoiseと呼び、逆にネズミイルカをdolphinと呼ぶこともある。

全て海棲であり、多くは沿岸に棲息する。

分類

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ネズミイルカ科 Phocoenidae

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このうち、ネズミイルカ属はイシイルカ属を内包するため側系統となる。

解剖学

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ネズミイルカ科の現生種は、他の多くのイルカと比較して、小柄で丸みを帯びた体格である。脳函に対して口吻は短く、丸い頭部と丸い顎を有する。歯の形状は、他のイルカが円錐形であるのに対し、スペード型である。 胸びれは相対的に短い。また背びれは他の多くのイルカが湾曲しているのに対し、ほぼ三角形に近く、比較的大きい。ただし、スナメリは背びれを失っている。ネズミイルカとコハリイルカは背びれ、胸びれの前縁に、スナメリは背面に小突起を多数持つ。[1]

ネズミイルカ科のイルカの体長は最大2.5m程であり、クジラ目の中では最も小さい部類である。ネズミイルカ科の中で最も小さい種類はコガシラネズミイルカ (Phocoena sinus) であり、体長は1.5m程度である。

行動

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ネズミイルカ科のイルカは主に魚類を食べるが、イカ甲殻類を食べることも多い。 多くの場合、10頭程度以下の小さな群を成して行動するが、数百頭もの巨大な群を成す種類もいる。 「カチカチ」というクリック音や口笛のような音を用いて、コミュニケーションを行う。 他の多くのハクジラ亜目の種と同様に反響定位(エコーロケーション)を行うことができる。 ネズミイルカ科のイルカは泳ぐ速度が速い事で知られるが、特にイシイルカ (Phocoenoides dalli) は55km/h程であり、クジラ目の中でも最速の部類に入る。 他のイルカと比べると曲芸的な動きは少なく、より慎重に行動する傾向がある。腹部を上にして仰向けで泳ぐことがあるが、これは配偶者を探すための動作であることが多い。

進化

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ネズミイルカ科の化石記録は中新世後期にまで遡ることが出来、特に中新世末 - 鮮新世前期の地層から多数発見されている。分子研究によれば約1,600万 - 1,300万年前にマイルカ科から分岐したとされるが、この時期は化石記録とも一致している。現生群はハクジラ類の中でも比較的小柄であるが、鮮新世前期までの化石は2mを超すものが大半であり、吻や胸びれも長いものが普通であったようである。現生群の丸みを帯び、相対的にが短く脳函が大きい、また小柄であるなどの特徴は幼形成熟によるものとの説もある。こうした形態を持つ現生群の分化は、分子の研究からは約300万年前に起きたと推定されている。化石記録の上からも、600万年を超えるものではないとされる。この時期は鮮新世後期の氷期 - 間氷期サイクルの始まりと一致する。おそらくこうした環境の変化が生殖サイクルを早めて個体群を維持する進化を促したと推測される。[2]

人間の影響

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多くの国で、ネズミイルカ科のイルカは食用あるいは餌として捕獲されている。 更に様々な漁具による混獲も個体数減少の原因となっている。 コガシラネズミイルカ (Phocoena sinus) はクジラ目の中では最も絶滅の危機に瀕している種であり、現在では高度に工業化された地帯において、限定的に棲息しているに過ぎない。

他のイルカとは違い、ネズミイルカ科のイルカが水族館などにおいて展示飼育されることは稀である。日本においてはスナメリの展示飼育が鳥羽水族館など複数の施設で行われている。ネズミイルカの展示飼育はおたる水族館鴨川シーワールドでの例が報告されている[3]が、極めて稀である。

脚注

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  1. ^ 『クジラとイルカの図鑑』 236 - 237頁
  2. ^ 『鯨類学』 51 - 52頁
  3. ^ 鴨川シーワールド「ネズミイルカの展示を開始」(「南房総とっておきニュース」より)-2007年5月から鴨川シーワールドでネズミイルカの飼育を始めたというニュース。同年2月に鴨川沖の定置網で捕獲されて保護された雌の個体。

関連項目

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参考文献

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  • 村山司『鯨類学』東海大学出版会〈東海大学自然科学叢書〉、2008年、51 - 52頁頁。ISBN 978-4-486-01733-2 
  • マーク・カーワディーン『完璧版 クジラとイルカの図鑑』マーティン・カム、日本ヴォーグ社〈自然環境ハンドブック〉、1996年、236 - 237頁頁。ISBN 4-529-02692-2