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'''マガディ湖'''マガディこ、Lake Magadi)は、[[ケニア]]南西部にある湖。首都[[ナイロビ]]から南西に約120km、[[リフトバレー州]]南部にあり、[[タンザニア]]国境の[[ナトロン湖]]が近傍にある。湖の名前は[[マサイ語]]の ''Magad'' (苦い) に由来すると考えられている {{harv|Baker|1958}}。


マガディ湖は水質が[[水素イオン指数|ph]] 10以上の強[[アルカリ]]の[[塩湖]]である。面積は約100 km<sup>2</sup>であり、[[大地溝帯|グレート・リフト・ヴァレー]]の東リフトヴァレーの中にある。この湖は「saline pan」の一例である。湖水は濃い[[炭酸ナトリウム]]水であり、莫大な量の[[トロナ]]鉱石 ([[セスキ炭酸ナトリウム]]) を沈殿させている。場所によって、塩は厚さ40 mになる。湖の水は主に塩水の[[熱水泉]] (水温は86℃) によって補充され、湖の淵の周りでアルカリ「[[潟湖]]」において放出される。この乾燥地域では地表の水はけは悪い。ほとんどの熱水泉は湖の北西岸と南岸の線に沿ってある。雨季のあいだ saline pan の大部分を塩水の薄い (<1 m) 層が覆うが、素早く蒸発し広大な白い塩を残す。塩は割れて大きな多角形を作り、ソーダの白い結晶と特殊な[[藻類]]の色により独特の景観を作る。魚が一種のみ、[[シクリッド|キクラ科]]のアルコラピア・グラハミ (''[[:en:Alcolapia grahami|Alcolapia grahami]]'') がこの盆地の強アルカリの温水に棲息し、水温が45℃以下の湖岸の周りの熱水泉プールの一部で普通に見られる。湖は[[フラミンゴ]]などの[[渉禽類]]でも有名である。
'''マガディ湖''' (マガディこ、'''Lake Magadi''') は、[[ケニア]]南西部にある湖。首都[[ナイロビ]]から南西に約120km、[[リフトバレー州]]南部にあり、[[タンザニア]]国境の[[ナトロン湖]]が近傍にある。湖の名前は[[マサイ語]]の ''Magad'' (苦い) に由来すると考えられている {{harv|Baker|1958}}。


マガディ湖は常に[[塩分濃度]]が高かったわけではない。数千年前 ([[更新世]]後期から[[完新世]]中まで)、マガディ盆地は多くの[[魚類]]が棲む[[淡水湖]]を湛えていた。魚類の[[化石]]はハイマガディ層 (High Magadi Beds) に保存されている。ハイマガディ層は、現在の湖岸の周りの様々な場所に保存される一連の[[湖成]]および[[火山砕屑物]][[堆積物]]である。もっと古い更新世には、現在のマガディ湖よりずっと大きないくつかの古湖があったという証拠も存在する。当時、マガディ湖と[[ナトロン湖]]は一つの巨大な湖だった。
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マガディ湖は広範囲な珪質[[チャート (岩石)|チャート]]堆積物でも有名である。湖の中で形成された成層チャートや[[シリカ]]が軟らかいうちに上の堆積物を突き破った貫入岩脈様の岩体を含め多くの種類がある。最も有名なのは1960年代にマガディ湖で発見された、[[珪酸ナトリウム]]の鉱物前駆体[[マガディアイト]]から形成される、「マガディ型チャート」である。
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マガディの町は湖の東岸にあり、2005年12月から[[タタ・グループ|タタ・インディア]]所有となっている、マガディ・ソーダ工場がある。この工場は工業用途の[[ソーダ灰]]を生産している。アクセスとしてナイロビからの1本道があり車で2時間で行ける。
マガディ湖は広範囲な珪質[[チャート]]堆積物でも有名である。湖の中で形成された成層チャートや[[シリカ]]が軟らかいうちに上の堆積物を突き破った貫入岩脈様の岩体を含め多くの種類がある。最も有名なのは1960年代にマガディ湖で発見された、[[珪酸ナトリウム]]の鉱物前駆体[[マガディアイト]]から形成される、「マガディ型チャート」である。

マガディの町は湖の東岸にあり、2005年12月から[[タタ・グループ|タタ・インディア]]所有となっている、マガディ・ソーダ工場がある。この工場は工業用途の[[ソーダ灰]]を生産している。


この湖は、[[ジョン・ル・カレ]]の同名の本を原作とした[[フェルナンド・メイレレス]]の映画『[[ナイロビの蜂]]』の湖畔のシーンの撮影が行われた。空中撮影は設定通りの[[トゥルカナ湖]]である。
この湖は、[[ジョン・ル・カレ]]の同名の本を原作とした[[フェルナンド・メイレレス]]の映画『[[ナイロビの蜂]]』の湖畔のシーンの撮影が行われた。空中撮影は設定通りの[[トゥルカナ湖]]である。
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* {{ Citation | last = Jones | first = B. F., Eugster, H. P., and Rettig, S. L. | year = 1977 | title = Hydrochemistry of the Lake Magadi basin, Kenya | journal = Geochimica et Cosmochimica Acta | volume = 41 | pages = 53-72 }}
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2023年4月26日 (水) 15:04時点における最新版

マガディ湖

マガディ湖の位置(ケニア内)
マガディ湖
マガディ湖
マガディ湖の位置(ケニア)
所在地  ケニア
リフトバレー州
位置 南緯1度52分 東経36度16分 / 南緯1.867度 東経36.267度 / -1.867; 36.267座標: 南緯1度52分 東経36度16分 / 南緯1.867度 東経36.267度 / -1.867; 36.267
面積 100 km2
淡水・汽水 塩湖
プロジェクト 地形
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マガディ湖(マガディこ、Lake Magadi)は、ケニア南西部にある湖。首都ナイロビから南西に約120km、リフトバレー州南部にあり、タンザニア国境のナトロン湖が近傍にある。湖の名前はマサイ語Magad (苦い) に由来すると考えられている (Baker 1958)。

マガディ湖は水質がph 10以上の強アルカリ塩湖である。面積は約100 km2であり、グレート・リフト・ヴァレーの東リフトヴァレーの中にある。この湖は「saline pan」の一例である。湖水は濃い炭酸ナトリウム水であり、莫大な量のトロナ鉱石 (セスキ炭酸ナトリウム) を沈殿させている。場所によって、塩は厚さ40 mになる。湖の水は主に塩水の熱水泉 (水温は86℃) によって補充され、湖の淵の周りでアルカリ「潟湖」において放出される。この乾燥地域では地表の水はけは悪い。ほとんどの熱水泉は湖の北西岸と南岸の線に沿ってある。雨季のあいだ saline pan の大部分を塩水の薄い (<1 m) 層が覆うが、素早く蒸発し広大な白い塩を残す。塩は割れて大きな多角形を作り、ソーダの白い結晶と特殊な藻類の色により独特の景観を作る。魚が一種のみ、キクラ科のアルコラピア・グラハミ (Alcolapia grahami) がこの盆地の強アルカリの温水に棲息し、水温が45℃以下の湖岸の周りの熱水泉プールの一部で普通に見られる。湖はフラミンゴなどの渉禽類でも有名である。

マガディ湖は常に塩分濃度が高かったわけではない。数千年前 (更新世後期から完新世中期まで)、マガディ盆地は多くの魚類が棲む淡水湖を湛えていた。魚類の化石はハイマガディ層 (High Magadi Beds) に保存されている。ハイマガディ層は、現在の湖岸の周りの様々な場所に保存される一連の湖成および火山砕屑物堆積物である。もっと古い更新世には、現在のマガディ湖よりずっと大きないくつかの古湖があったという証拠も存在する。当時、マガディ湖とナトロン湖は一つの巨大な湖だった。

ソーダ水に含まれる色素はフラミンゴのピンク色の元である

マガディ湖は広範囲な珪質チャート堆積物でも有名である。湖の中で形成された成層チャートやシリカが軟らかいうちに上の堆積物を突き破った貫入岩脈様の岩体を含め多くの種類がある。最も有名なのは1960年代にマガディ湖で発見された、珪酸ナトリウムの鉱物前駆体マガディアイトから形成される、「マガディ型チャート」である。

マガディの町は湖の東岸にあり、2005年12月からタタ・インディア所有となっている、マガディ・ソーダ工場がある。この工場は工業用途のソーダ灰を生産している。アクセスとしてナイロビからの1本道があり車で2時間で行ける。

この湖は、ジョン・ル・カレの同名の本を原作としたフェルナンド・メイレレスの映画『ナイロビの蜂』の湖畔のシーンの撮影が行われた。空中撮影は設定通りのトゥルカナ湖である。

参考文献[ソースを編集]

  • Baker, B. H. (1958), “Geology of the Magadi area”, Report of the Geological Survey of Kenya 42: 1-81, http://library.wur.nl/isric/index2.html?url=http://library.wur.nl/WebQuery/isric/16545 
  • Behr, H. J. (2002), “Magadiite and Magadi chert: a critical analysis of the silica sediments in the Lake Magadi Basin, Kenya”, SEPM Special Publication 73: 257-273 
  • Eugster, H. P. (1970), “Chemistry and origin of the brines from Lake Magadi, Kenya”, Mineralogical Society of America Special Paper No. 3: 215-235 
  • Eugster, H. P. (1980), “Lake Magadi, Kenya, and its Pleistocene precursors”, in Nissenbaum, A. (Editor), Hypersaline brines and evaporitic environments, Elsevier, Amsterdam, pp. 195-232 
  • Jones, B. F., Eugster, H. P., and Rettig, S. L. (1977), “Hydrochemistry of the Lake Magadi basin, Kenya”, Geochimica et Cosmochimica Acta 41: 53-72