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「Windows Media Audio」の版間の差分

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'''Windows Media Audio'''(ウィンドウズメディアオーディオ、略称'''WMA''')は[[マイクロソフト]]がWindows Mediaの中核をものとして開発した[[音声]][[コーデック]]の一つ。[[拡張子]]はwma。通常[[Advanced Systems Format|ASF]][[コンテナフォーマット]]を使る。
'''Windows Media Audio'''(ウィンドウズ メディア オーディオ、'''WMA''')は[[マイクロソフト]]がWindows Mediaの中核をとして開発した[[音声]][[コーデック]]の一つ。[[拡張子]]はwma。通常[[Advanced Systems Format|ASF]]に格納されて利される。


一般的オリジナルのWindows Media Audio(WMA Std)コーデックの他に、圧縮アルゴリズムを一新し多チャンネル高解像度に対応したWindows Media Audio Professional(WMA Pro)コーデック、[[可逆圧縮]]のWindows Media Audio Lossless(WMA Lossless)コーデック、音声コンテンツ向けのWindows Media Audio Voice(WMA Voice)コーデックがある。これらはそれぞれ仕様が異なるためWMA Stdのみ対応の機器では再生できない。
元とWindows Media Audio(WMA Std)の他に、圧縮アルゴリズムを一新し多チャンネル高解像度に対応したWindows Media Audio Professional(WMA Pro)、[[可逆圧縮]]のWindows Media Audio Lossless(WMA Lossless)、音声コンテンツ向けのWindows Media Audio Voice(WMA Voice)がある。これらは各々の仕様が異なるためWMA Stdのみ対応の機器では再生できない。

==概要==
===バージョン 1.0===
== 概要 ==
=== バージョン 1.0 ===
WMAは[[1999年]]4月にWindows Media Technologies4.0の一部として発表された[[mp3]]や[[AAC]]、[[Vorbis]]などと同じく[[修正離散コサイン変換]]をベースとしたコーデックである。
WMAは[[1999年]]4月にWindows Media Technologies 4.0の一部として発表された[[MP3]]や[[AAC]]、[[Vorbis]]と同じく[[修正離散コサイン変換]]をベースとしたコーデックである。最初のバージョンはWMA 1.0で開発段階ではMS Audioと呼ばれていた。[[トムソン (企業)|トムソン]]がMP3の[[ライセンス]]を保持し、[[Microsoft Windows]]で利用するにはライセンス料が発生する為、代替形式を目指したのが開発の動機の一つと考えられている。[[マイクロソフト]]ではWMAを、MP3と比較して半分のビットレートで同等の音質になる、CDと同等の音質を64kbpsで実現すると謳っていた。再生・圧縮ソフトウェアで自由に利用できる[[ソフトウェア開発キット|SDK]]を配布したことから、WMAに対応する[[フリーウェア]]が以降多数登場した

最初のバージョンはWMA 1.0で開発段階ではMS Audioと呼ばれていた。[[トムソン (企業)|Thomson]]がMP3フォーマットの[[ライセンス]]を保持し、[[Microsoft Windows]]で利用するにはライセンス料が発生するため、MP3の代替フォーマットを目指したのが開発の動機の一つと考えられている。MicrosoftではWMAを、MP3と比較して半分のビットレートで同等の音質になる、CDと同等の音質を64kbpsで実現すると謳っていた。
=== バージョン 2 ===
再生・圧縮ソフトウェアで自由に利用できる[[ソフトウェア開発キット|SDK]]を配布したことから、WMAに対応する[[フリーウェア]]が以降多数登場した。
===バージョン2===
1999年ビットストリーム構造と圧縮アルゴリズムを修正したWMA2をリリース。仕様は固定され以降のバージョンでは再生互換性を維持している。
1999年ビットストリーム構造と圧縮アルゴリズムを修正したWMA2をリリース。仕様は固定され以降のバージョンでは再生互換性を維持している。


ASFフォーマット出力のみの対応であるWMAだが、WMA2コーデックをハックした海賊版である[[DivX|DivX ;-) Audio]] ACMコーデックによりRIFF形式に対応し、AVIフォーマットの音声コーデックとして一時期使用された。
ASF形式出力のみの対応であるWMAだが、WMA2をハックした海賊版である[[DivX|DivX Audio]] ACMによりRIFF形式に対応し、AVI 形式の音声コーデックとして一時期使用された。
===バージョン7===
[[2000年]]、[[Windows Media Player]]7がリリース、WMA2からWMA7となりプレヤーでのエンコードに対応するなど普及を推進した。
===バージョン8===
[[2001年]]、Windows Media Player 8がリリースされWMA7からWMA8にバージョンアップ


===バージョン 9===
=== バージョン 7 ===
[[2000年]]、[[Windows Media Player]] 7が公開され、WMA2 からWMA7となりプレヤーでのエンコードに対応するなど普及を推進した。
[[2003年]]にリリースしたWindows Media Player9でWMA9となり、CBR([[固定ビットレート]])に加えてABR(平均ビットレート)や、VBR([[可変ビットレート]]圧縮)に対応することにより最大20%[[圧縮効率]]を向上させた。さらにWMA9 ProWMA9 LosslessWMA9 Voiceの3つのコーデックが新たに追加された。


===バージョン 9.1===
=== バージョン 8 ===
[[2001年]]、Windows Media Player 8が公開されWMA7からWMA8に改定
[[2004年]]Windows Media Player 10ではWMA9.1WMA9.1 ProWMA9.1 Losslessにバージョンアップ。WMA9.1とWMA 9.1ProではCBRでの低遅延デコード、エンコードモードが追加された。


===バージョン 9.2及び10 Pro===
=== バージョン 9 ===
[[2003年]]Windows Media Player 9が公開され、WMA9となり、[[固定ビットレート]](CBR)に加えて平均ビットレート(ABR)や、VBR([[可変ビットレート]]圧縮)に対応することにより最大 20% [[圧縮効率]]を向上させた。さらにWMA9 Pro/WMA9 Lossless/WMA9 Voiceの三種類のコーデックが新たに追加された。
[[2007年]]Windows Media Player 11ではWMA 9.2WMA 9.2 LosslessWMA 10 Proにバージョンアップ


=== バージョン 9.1 ===
WMA 9.2では、[[HE-AAC]]でも採用されているSBRと呼ばれる技術を応用して、従来低ビットレートではカットされていた高音域が再生できるようになった。これによりWindows Media Player 11でエンコードされたファイルは従来に比べて高音質での再生が可能となったが、一部の再生ハードウェアではWMA 9対応を謳っていてもWMA 9.2との互換性に問題があり再生中にノイズが乗ることがある。この問題はWindows Media Player 11にパッチを当てることで解決するが、音質も従来のものに戻る[http://support.microsoft.com/kb/929773/ja]
[[2004年]]Windows Media Player 10が公開され、WMA9.1/WMA9.1 Pro/WMA9.1 Losslessに改定。WMA9.1とWMA 9.1ProではCBRでの低遅延デコード、エンコードモードが追加された。


=== バージョン 9.2及び10 Pro ===
WMA 10 ProはWMA 9 Proではビットレートが最低128kbpsまでだったのに対して、最低32kbpsまでのエンコードをサポートした。低ビットレートにおいては、サンプリングレート補完モードによりWMA 9.2 Stdよりも最大2倍圧縮効率に優れるとされる。これは指定の半分のサンプリングレートでエンコードし、それに元のサンプリングレートの情報を添付し、再生時にWMA10Proにより元のレートに復元するというもので、再生品質は低下するものの従来のWMA 9 Proとの互換性を保っている。その他サンプリングレートとビット深度のオプションも増えて、非常に柔軟なコーデックとなっている。
[[2007年]]Windows Media Player 11が公開され、WMA 9.2/WMA 9.2 Lossless/WMA 10 Proに改定


WMA 9.2では、[[HE-AAC]]でも採用されている [[Spectral Band Replication|SBR]]と呼ばれる技術を応用して、従来低ビットレートではカットされていた高音域が再生できるようになった。これによりWindows Media Player 11でエンコードされたファイルは従来に比べて高音質での再生が可能となったが、一部の再生ハードウェアではWMA 9対応を謳っていてもWMA 9.2との互換性に問題があり再生中にノイズが乗ることがある。この問題はWindows Media Player 11にパッチを当てることで解決するが、音質も従来のものに戻る[http://support.microsoft.com/kb/929773/ja]
[[Microsoft Windows Vista|Windows Vista]]では付属ゲームの効果音に使用され、[[サウンド レコーダー]]の標準形式となっている。


WMA 10 ProはWMA 9 Proではビットレートが最低128kbpsまでだったのに対して、最低32kbpsまでのエンコードに対応した。低ビットレートにおいては、サンプリングレート補完モードによりWMA 9.2 Stdよりも最大倍圧縮効率に優れるとされる。これは指定の半分のサンプリングレートでエンコードし、それに元のサンプリングレートの情報を添付し、再生時にWMA 10 Proにより元のレートに復元するというもので、再生品質は低下するものの従来のWMA 9 Proとの互換性を保っている。その他サンプリングレートとビット深度のオプションも増えて、非常に柔軟なコーデックとなっている。
WMAはOSにバンドルするなど、MP3の置き換えを目指したが、MP3フォーマットを置き換えるには至ってい。一方、[[インターネットラジオ]]などの[[ストリーミング]]配信では、それまで主流だった[[RealAudio]]に匹敵するまでに普及した。


[[Microsoft Windows Vista|Windows Vista]]では付属ゲームの効果音に使用され、[[サウンド レコーダー]]の標準形式となっている。

WMAはOSにバンドルするなど、MP3の置き換えを目指したが、MP3形式を置き換えるには至かった。一方、[[インターネットラジオ]]などの[[ストリーミング]]配信では、それまで主流だった[[RealAudio]]に匹敵するまでに普及したが次第に衰退した。
== 種類 ==
=== Windows Media Audio (Std) ===
WMAの最も基本となるコーデック
=== Windows Media Audio Pro ===
サラウンドや、96kHzのサンプリングレートに対応するなどしたコーデック
=== Windows Media Audio Voice ===
声の圧縮に特化したコーデック
=== Windows Media Audio Lossless ===
可逆圧縮(ロスレス圧縮)に対応したコーデック
<!--
<!--
== コンテナ形式 ==
== コンテナ形式 ==
従来のオーディオコーデック同様に[[DirectShow]]を利用したコンテナ形式([[Advanced Systems Format|ASF]]、[[Audio Video Interleave|AVI]]等)に格納することが可能。
従来のオーディオコーデック同様に [[DirectShow]] を利用したコンテナ形式[[Advanced Systems Format|ASF]] [[Audio Video Interleave|AVI]] に格納することが可能。
*(WMV9+WMA9).wmv
*(WMV9+WMA9).wmv
*(WMA9).wma
*(WMA9).wma
-->
-->


==再生環境==
== 再生環境 ==
WMAは、現在さまざまデバイスでサポートされているがMicrosoftの独自形式であり、MP3など標準形式と比べると汎用性で劣る。
WMAは、様々機器が対応しているが、マイクロソフト独自形式であり、MP3の形式と比べると汎用性で劣る。


[[FFmpeg]]プロジェクトによるリバースエンジニアリングにより、WMA Losslessを除き[[Linux]]などの[[POSIX]]準拠のOSで再生が可能となっている。
[[FFmpeg]]計画によるリバースエンジニアリングにより、WMA Losslessを除き[[Linux]]の[[POSIX]]準拠のOSで再生が可能となっている。


[[Macintosh|マッキントッシュ]]環境ではマイクロソフトが推奨するサードパーティのFlip4Mac QuickTimeコンポーネントによりWMA Voiceを除き再生が可能である。
[[Macintosh]]環境ではマイクロソフトが推奨するサードパーティのFlip4Mac QuickTimeコンポーネントによりWMA Voiceを除き再生が可能である。


[[ソニー|SONY]]の[[ウォークマン]]は初期のモデルではWMAを再生できなかった(当初は[[ATRAC]]のみだった)が、現在のモデルでは再生可能である。
[[ソニー]]の[[ウォークマン]]は初期のモデルではWMAを再生できなかった当初は[[ATRAC]]のみだったが、現在では再生可能である。その他、[[東芝]]の[[gigabeat]]や[[パナソニック]]の[[D-snap]](内蔵メモリ型のみ、[[SDメモリーカード|SDメモリ]]型は [[SD-Audio]] で[[CPRM]]によるセキュア化で再生可能)等多くの[[デジタルオーディオプレーヤー|音楽再生機器]]が対応している。
その他、[[東芝]]の[[gigabeat]]や[[パナソニック|Panasonic]]の[[D-snap]](内蔵メモリー型のみ、[[SDメモリーカード]]型は[[SD-Audio]]で[[CPRM]]によるセキュア化で再生可能。)など多くの[[デジタルオーディオプレーヤー]]が対応している。


携帯電話については[[2006年]]に発売された[[NTTドコモ]]「[[F902iS]]」を筆頭に、NTTドコモの端末がWindows Media Audioの再生に対応し、904iシリーズ以降の90xi端末はシリーズ全機種が再生に対応している。
携帯電話については[[2006年]]に発売された [[NTTドコモ]]「[[F902iS]]」を筆頭に、NTTドコモの端末がWindows Media Audioの再生に対応し、904iシリーズ以降の90xi端末はシリーズ全機種が再生に対応している。[[au (携帯電話)|au]]([[KDDI]]・[[沖縄セルラー電話]][[連合]])の携帯電話では、「[[LISMO]]([[au Music Port]])」で一度[[HE-AAC]]に変換、もしくは「[[LISMO Port]]」で一度[[ATRAC]]に変換した後、端末に転送することで再生できる。[[ソフトバンクモバイル]]の端末においては、「[[S!ミュージックコネクト]]」によってWMAに対応している。

[[au (携帯電話)|au]]の携帯電話では、「[[au LISTEN MOBILE SERVICE|LISMO]]([[ au Music Port ]])」で一度[[HE-AAC]]にファイル[[変換|コンバート]]、もしくは「[[ LISMO Port ]]」で一度[[ATRAC]]にファイル変換した後、端末に転送することで再生できる。
[[Android (オペレーティングシステム)|Android]]のスマートフォンであれば、標準搭載されている音楽再生ソフトは、WMA Losslessを除き、殆どの機種で対応している。{{要出典|date=2018年11月}}WMA Losslessは対応するソフトをインストールすることで、再生可能である。
[[ソフトバンクモバイル]]の端末においては、「[[S!ミュージックコネクト]]」によってWMAに対応している。


[[Rockbox]]を使用することで、通常は再生ができない[[iPod]]などでの再生が可能である。
[[Rockbox]]を使用することで、通常は再生ができない[[iPod]]などでの再生が可能である。


WMA LosslessWMA Proのハードウェアサポートは2007年現在、ごく一部でのみの対応にとどまっている。Microsoftの[[Zune]][[Xbox360]]は、WMA ProWMA Losslessの両方が再生可能。WMA Losslessは東芝のGigabeatの一部機種、[[Windows Mobile]]端末のWindows Media Player 10 Mobileで再生できる。なおWMA LosslessWMA Proは再生機器に応じて自動でステレオもしくはモノラルにダウンミックス、24ビットから16ビットにダウンコンバート、96KHzから48KHzにダウンサンプリングし再生することが可能である。
WMA Lossless/WMA Proのハードウェアサポートは2007年現在、ごく一部でのみの対応にとどまっている。マイクロソフトの[[Zune]], [[Xbox 360]]は、WMA Pro/WMA Losslessの両方が再生可能。WMA Losslessは東芝の Gigabeatの一部機種、[[Windows Mobile]]端末のWindows Media Player 10 Mobileで再生できる。なおWMA Lossless/WMA Proは再生機器に応じて自動でステレオもしくはモノラルにダウンミックス、24ビットから16ビットにダウンコンバート、96kHzから48kHzにダウンサンプリングし再生することが可能である。


==関連項目==
== 関連項目 ==
*[[Windows Media Video]]
* [[Windows Media Video]]
*[[Advanced Systems Format]]
*[[Windows Media Player]]
* [[Advanced Systems Format]]
*[[音声ファイルフォーマット]]
* [[音声ファイルフォーマット|音声ファイル形式]]
*[[データ圧縮]]
* [[データ圧縮]]


==外部リンク==
== 外部リンク ==
*[http://www.microsoft.com/japan/windows/windowsmedia/9series/codecs/audio.aspx Windows Media 9 シリーズ - 最高のオーディオ]
* [http://ja.filesupport.org/file-extension/wma .wmaファイル拡張子]
* [http://www.microsoft.com/japan/windows/windowsmedia/9series/codecs/audio.aspx Windows Media 9 シリーズ - 最高のオーディオ]


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{{圧縮フォーマット}}
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[[Category:コーデック]]
[[Category:コーデック]]
[[Category:音声ファイルフォーマット]]
[[Category:音声ファイルフォーマット]]
[[Category:マイクロソフト]]
[[Category:Windows Media]]
[[Category:音声処理]]
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[[cs:Windows Media Audio]]
[[da:Windows Media Audio]]
[[de:Windows Media Audio]]
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[[pam:Windows Media Audio]]
[[pl:Windows Media Audio]]
[[pt:Windows Media Audio]]
[[ru:Windows Media Audio]]
[[simple:WMA]]
[[sv:Windows Media Audio]]
[[tr:Windows Ortam Sesi]]
[[uk:WMA]]
[[vi:Windows Media Audio]]
[[yo:Windows Media Audio]]
[[zh:Windows Media Audio]]
[[zh-yue:WMA]]

2023年5月13日 (土) 16:53時点における最新版

Windows Media Audio
拡張子.wma .asf
MIMEタイプaudio/x-ms-wma
UTIcom.microsoft.windows-?media-wma
開発者マイクロソフト
種別音声

Windows Media Audio(ウィンドウズ メディア オーディオ、WMA)はマイクロソフトがWindows Mediaの中核を成す物として開発した音声コーデックの一つ。拡張子はwma。通常ASFに格納されて利用される。

元となるWindows Media Audio(WMA Std)の他に、圧縮アルゴリズムを一新し、多チャンネル高解像度に対応したWindows Media Audio Professional(WMA Pro)、可逆圧縮のWindows Media Audio Lossless(WMA Lossless)、音声コンテンツ向けのWindows Media Audio Voice(WMA Voice)がある。これらは各々の仕様が異なるためWMA Stdのみ対応の機器では再生できない。

概要

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バージョン 1.0

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WMAは1999年4月にWindows Media Technologies 4.0の一部として発表されたMP3AACVorbis等と同じく、修正離散コサイン変換をベースとしたコーデックである。最初のバージョンはWMA 1.0で開発段階ではMS Audioと呼ばれていた。トムソンがMP3のライセンスを保持し、Microsoft Windowsで利用するにはライセンス料が発生する為、代替形式を目指したのが開発の動機の一つと考えられている。マイクロソフトではWMAを、MP3と比較して半分のビットレートで同等の音質になる、CDと同等の音質を64kbpsで実現すると謳っていた。再生・圧縮ソフトウェアで自由に利用できるSDKを配布したことから、WMAに対応するフリーウェアが以降多数登場した。

バージョン 2

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1999年ビットストリーム構造と圧縮アルゴリズムを修正したWMA2をリリース。仕様は固定され以降のバージョンでは再生互換性を維持している。

ASF形式出力のみの対応であるWMAだが、WMA2をハックした海賊版であるDivX Audio ACMによりRIFF形式に対応し、AVI 形式の音声コーデックとして一時期使用された。

バージョン 7

[編集]

2000年Windows Media Player 7が公開され、WMA2 からWMA7となりプレイヤーでのエンコードに対応するなど普及を推進した。

バージョン 8

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2001年、Windows Media Player 8が公開され、WMA7からWMA8に改定。

バージョン 9

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2003年、Windows Media Player 9が公開され、WMA9となり、固定ビットレート(CBR)に加えて平均ビットレート(ABR)や、VBR(可変ビットレート圧縮)に対応することにより最大 20% 圧縮効率を向上させた。さらにWMA9 Pro/WMA9 Lossless/WMA9 Voiceの三種類のコーデックが新たに追加された。

バージョン 9.1

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2004年、Windows Media Player 10が公開され、WMA9.1/WMA9.1 Pro/WMA9.1 Losslessに改定。WMA9.1とWMA 9.1ProではCBRでの低遅延デコード、エンコードモードが追加された。

バージョン 9.2及び10 Pro

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2007年、Windows Media Player 11が公開され、WMA 9.2/WMA 9.2 Lossless/WMA 10 Proに改定。

WMA 9.2では、HE-AACでも採用されている SBRと呼ばれる技術を応用して、従来低ビットレートではカットされていた高音域が再生できるようになった。これによりWindows Media Player 11でエンコードされたファイルは従来に比べて高音質での再生が可能となったが、一部の再生ハードウェアではWMA 9対応を謳っていてもWMA 9.2との互換性に問題があり再生中にノイズが乗ることがある。この問題はWindows Media Player 11にパッチを当てることで解決するが、音質も従来のものに戻る[1]

WMA 10 ProはWMA 9 Proではビットレートが最低128kbpsまでだったのに対して、最低32kbpsまでのエンコードに対応した。低ビットレートにおいては、サンプリングレート補完モードによりWMA 9.2 Stdよりも最大二倍圧縮効率に優れるとされる。これは指定の半分のサンプリングレートでエンコードし、それに元のサンプリングレートの情報を添付し、再生時にWMA 10 Proにより元のレートに復元するというもので、再生品質は低下するものの従来のWMA 9 Proとの互換性を保っている。その他サンプリングレートとビット深度のオプションも増えて、非常に柔軟なコーデックとなっている。

Windows Vistaでは付属ゲームの効果音に使用され、サウンド レコーダーの標準形式となっている。

WMAはOSにバンドルするなど、MP3の置き換えを目指したが、MP3形式を置き換えるには至らなかった。一方、インターネットラジオなどのストリーミング配信では、それまで主流だったRealAudioに匹敵するまでに普及したが次第に衰退した。

種類

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Windows Media Audio (Std)

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WMAの最も基本となるコーデック

Windows Media Audio Pro

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サラウンドや、96kHzのサンプリングレートに対応するなどしたコーデック

Windows Media Audio Voice

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声の圧縮に特化したコーデック

Windows Media Audio Lossless

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可逆圧縮(ロスレス圧縮)に対応したコーデック

再生環境

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WMAは、様々な機器が対応しているが、マイクロソフト独自の形式であり、MP3等の形式と比べると汎用性で劣る。

FFmpeg計画によるリバースエンジニアリングにより、WMA Losslessを除きLinux等のPOSIX準拠のOSで再生が可能となっている。

Macintosh環境ではマイクロソフトが推奨するサードパーティのFlip4Mac QuickTimeコンポーネントによりWMA Voiceを除き再生が可能である。

ソニーウォークマンは初期のモデルではWMAを再生できなかった(当初はATRACのみだった)が、現在では再生可能である。その他、東芝gigabeatパナソニックD-snap(内蔵メモリ型のみ、SDメモリ型は SD-AudioCPRMによるセキュア化で再生可能)等多くの音楽再生機器が対応している。

携帯電話については2006年に発売された NTTドコモF902iS」を筆頭に、NTTドコモの端末がWindows Media Audioの再生に対応し、904iシリーズ以降の90xi端末はシリーズ全機種が再生に対応している。auKDDI沖縄セルラー電話連合)の携帯電話では、「LISMOau Music Port)」で一度HE-AACに変換、もしくは「LISMO Port」で一度ATRACに変換した後、端末に転送することで再生できる。ソフトバンクモバイルの端末においては、「S!ミュージックコネクト」によってWMAに対応している。

Androidのスマートフォンであれば、標準搭載されている音楽再生ソフトは、WMA Losslessを除き、殆どの機種で対応している。[要出典]WMA Losslessは対応するソフトをインストールすることで、再生可能である。

Rockboxを使用することで、通常は再生ができないiPodなどでの再生が可能である。

WMA Lossless/WMA Proのハードウェアサポートは2007年現在、ごく一部でのみの対応にとどまっている。マイクロソフトのZune, Xbox 360は、WMA Pro/WMA Losslessの両方が再生可能。WMA Losslessは東芝の Gigabeatの一部機種、Windows Mobile端末のWindows Media Player 10 Mobileで再生できる。なおWMA Lossless/WMA Proは再生機器に応じて自動でステレオもしくはモノラルにダウンミックス、24ビットから16ビットにダウンコンバート、96kHzから48kHzにダウンサンプリングし再生することが可能である。

関連項目

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外部リンク

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