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[[ファイル:Upshot-Knothole GRABLE.jpg|thumb|250px|1953年に行われたW9核砲弾の実験。M65 280mmカノン砲で発射。核出力は広島に投下されたのと同じ15kt。]]
[[ファイル:Upshot-Knothole GRABLE.jpg|thumb|250px|1953年に行われたW9核砲弾の実験。M65 280mmカノン砲で発射。核出力は広島に投下されたのと同じ15kt。]]
'''TNT換算'''(ティーエヌティーかんさん、{{lang-en-short|TNT equivalent}})とは、[[爆薬]]の[[爆発]]などで放出される[[エネルギー]]を等エネルギー量の[[トリニトロトルエン]](TNT)の[[質量]]に換算する方法である。


TNT換算で得られる質量を'''TNT当量'''という。TNT当量が1[[トン]](1メトリックトン = 1000[[キログラム]])であるエネルギーを、1'''TNT換算トン'''、1'''TNTトン'''、あるいは誤解の余地がないときは単に1'''トン'''といい、必要に応じて[[キロ]] (1000)、[[メガ]] (100万) の[[SI接頭]]をつけて使う。
'''TNT換算'''(ティーエヌティーかんさん)とは、[[爆薬]]の[[爆発]]などで放出される[[エネルギー]]を等エネルギー量の[[トリニトロトルエン]](TNT)の[[質量]]に換算する方法である。

TNT換算で得られる質量を'''TNT当量'''という。TNT当量が1[[トン]](1メトリックトン = 1000[[キログラム]])であるエネルギーを、1'''TNT換算トン'''、1'''TNTトン'''、あるいは誤解の余地がないときは単に1'''トン'''といい、必要に応じて[[キロ]] (1000)、[[メガ]] (100万) の[[SI接頭]]をつけて使う。


ニュースなどでも「A国の原爆BはTNT換算で50キロトンの破壊力」などと表す使い方が一般的に見かけられる。TNT換算で評価できるのは爆発時の破壊力だけであり、[[核兵器]]の使用に伴う[[放射線障害]]や[[放射能汚染]]は考慮されない。
ニュースなどでも「A国の原爆BはTNT換算で50キロトンの破壊力」などと表す使い方が一般的に見かけられる。TNT換算で評価できるのは爆発時の破壊力だけであり、[[核兵器]]の使用に伴う[[放射線障害]]や[[放射能汚染]]は考慮されない。
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[[トリニトロトルエン|TNT]]とは高性能爆薬の名称である。TNT1[[グラム]]は、理論上は1160[[カロリー]]の[[化学エネルギー]]を有するが、TNT爆薬1グラムの爆発で放出されるエネルギーは、実際には980カロリーから1100カロリーまでの幅がある。
[[トリニトロトルエン|TNT]]とは高性能爆薬の名称である。TNT1[[グラム]]は、理論上は1160[[カロリー]]の[[化学エネルギー]]を有するが、TNT爆薬1グラムの爆発で放出されるエネルギーは、実際には980カロリーから1100カロリーまでの幅がある。


このため計算に便利なよう、'''1TNT換算グラムは1000カロリー'''と定義されている。つまり、1TNT換算トンなら10<sup>9</sup>(10億)カロリーである。
このため計算に便利なよう、'''1TNT換算グラムは1000カロリー'''と定義されている。したがって
* 1TNT換算キログラム = 10<sup>6</sup>[[カロリー]]
* 1TNT換算トン = 10<sup>9</sup>カロリー


カロリーには複数の定義があるが、通常は、1カロリー = 4.184 J([[ジュール]])(熱学カロリーであり、'''1TNT換算トン = 4.184×10<sup>9</sup> J'''となる。米国の[[NIST]]でもこの数値を採用している<ref>[https://www.nist.gov/pml/special-publication-811/nist-guide-si-appendix-b-conversion-factors/nist-guide-si-appendix-b8 Special Publication 811(NIST Guide to the SI), Appendix B.8: Factors for Units Listed Alphabetically] ton of TNT (energy equivalent)の欄、正確に「4.184E+09」としている。</ref>。
カロリーには複数の定義があるが、通常は、1カロリー = 4.184 J([[ジュール]])(熱学カロリー(thermochemical calorie))であり、'''1TNT換算トン = 4.184×10<sup>9</sup> J'''となる。米国の[[NIST]]でもこの数値を採用している<ref>[https://www.nist.gov/pml/special-publication-811/nist-guide-si-appendix-b-conversion-factors/nist-guide-si-appendix-b8 Special Publication 811(NIST Guide to the SI), Appendix B.8: Factors for Units Listed Alphabetically] ton of TNT (energy equivalent)の欄、正確に「4.184E+09」としている。</ref>。


== 由来 ==
== 由来 ==
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== 例 ==
== 例 ==
[[広島市]]に落とされた[[原子爆弾]]([[リトルボーイ]])は、TNT換算で15キロトンである(不確かさは20%)<ref>[https://permalink.lanl.gov/object/tr?what=info:lanl-repo/lareport/LA-08819 The Yields of the Hiroshima and Nagasaki Nuclear Explosions] By John Malik,LA-8819 UC-34,Sep.1985、冒頭のABSTRACT,p.1 又は、XI. CONCLUSIONS,p.25</ref>。これは
[[広島市]]に落とされた[[原子爆弾]]([[リトルボーイ]])は、TNT換算で16 kt ± 2 kt である([[リトルボーイ#核出力]])。これは


: 15×10<sup>3</sup> × 4.184×10<sup>9</sup> J = 6.276×10<sup>12</sup> J
: 16×10<sup>3</sup> × 4.184×10<sup>9</sup> J = 6.694×10<sup>13</sup> J


と換算できる。<!-- 単位はX(J/T)*Y(T)=Z(J)のように表記すべきか? -->
と換算できる。


[[長崎市]]に落とされた[[原子爆弾]]([[ファットマン]])は、TNT換算で21 kt ± 2 ktである。
また、比喩的に「メガトン級」や「ギガトン級」などという言葉が使われる事もある。

世界最大の水素爆弾とされる[[ツァーリ・ボンバ]]は、TNT換算で50メガトンである(諸説あり)。

比喩的に「メガトン級」や「ギガトン級」などという言葉が使われる事もある。


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| 4.184{{e|18}} J
| 4.184{{e|18}} J
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== その他 ==
[[長崎市]]に落とされた[[原子爆弾]]([[ファットマン]])は、TNT換算で21キロトンである(不確かさは10%)<ref>[https://permalink.lanl.gov/object/tr?what=info:lanl-repo/lareport/LA-08819 The Yields of the Hiroshima and Nagasaki Nuclear Explosions] By John Malik,LA-8819 UC-34,Sep.1985、冒頭のABSTRACT,p.1 又は、XI. CONCLUSIONS,p.25</ref>。

世界最大の水素爆弾とされる[[ツァーリ・ボンバ]]は、TNT換算で50メガトンである(諸説あり)。


== 出典 ==
== 出典 ==
<references/>
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[[Category:エネルギーの単位]]
[[Category:エネルギーの単位]]
[[Category:メートル法]]
[[Category:メートル法]]

2023年6月23日 (金) 11:19時点における最新版

TNT換算トン
TNT火薬500トンの爆発
記号 T, t
非SI単位
エネルギー
SI 4.184×109 J = 4.184 GJ
定義 109 cal
由来 TNT火薬1トンの爆発力
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1953年に行われたW9核砲弾の実験。M65 280mmカノン砲で発射。核出力は広島に投下されたのと同じ15kt。

TNT換算(ティーエヌティーかんさん、: TNT equivalent)とは、爆薬爆発などで放出されるエネルギーを等エネルギー量のトリニトロトルエン(TNT)の質量に換算する方法である。

TNT換算で得られる質量をTNT当量という。TNT当量が1トン(1メトリックトン = 1000キログラム)であるエネルギーを、1TNT換算トン、1TNTトン、あるいは誤解の余地がないときは単に1トンといい、必要に応じてキロ (1000)、メガ (100万) のSI接頭語をつけて使う。

ニュースなどでも「A国の原爆BはTNT換算で50キロトンの破壊力」などと表す使い方が一般的に見かけられる。TNT換算で評価できるのは爆発時の破壊力だけであり、核兵器の使用に伴う放射線障害放射能汚染は考慮されない。

なお、核爆弾以外の通常爆弾で、何トン爆弾という表現が使われることがあるが、これは爆弾の実際の質量であり、TNT当量ではない。

定義

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TNTとは高性能爆薬の名称である。TNT1グラムは、理論上は1160カロリー化学エネルギーを有するが、TNT爆薬1グラムの爆発で放出されるエネルギーは、実際には980カロリーから1100カロリーまでの幅がある。

このため計算に便利なよう、1TNT換算グラムは1000カロリーと定義されている。したがって、

  • 1TNT換算キログラム = 106カロリー
  • 1TNT換算トン = 109カロリー

カロリーには複数の定義があるが、通常は、1カロリー = 4.184 J(ジュール)(熱化学カロリー(thermochemical calorie))であり、1TNT換算トン = 4.184×109 Jとなる。米国のNISTでもこの数値を採用している[1]

由来

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1945年7月16日アメリカ合衆国で人類最初の原子爆弾の実験(トリニティ実験)が行われたが、これに先立つ5月17日に同所で108tのTNT火薬による予備実験が行われた。以来、核兵器の爆発力の測定の単位になった。

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広島市に落とされた原子爆弾リトルボーイ)は、TNT換算で16 kt ± 2 kt である(リトルボーイ#核出力)。これは、

16×103 × 4.184×109 J = 6.694×1013 J

と換算できる。

長崎市に落とされた原子爆弾ファットマン)は、TNT換算で21 kt ± 2 ktである。

世界最大の水素爆弾とされるツァーリ・ボンバは、TNT換算で50メガトンである(諸説あり)。

比喩的に「メガトン級」や「ギガトン級」などという言葉が使われる事もある。

グラム単位 記号 トン単位 記号 エネルギー
グラム g マイクロトン μT 4.184×103 J
キログラム kg ミリトン mT 4.184×106 J
メガグラム Mg トン t 4.184×109 J
ギガグラム Gg キロトン kt 4.184×1012 J
テラグラム Tg メガトン Mt 4.184×1015 J
ペタグラム Pg ギガトン Gt 4.184×1018 J

出典

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  1. ^ Special Publication 811(NIST Guide to the SI), Appendix B.8: Factors for Units Listed Alphabetically ton of TNT (energy equivalent)の欄、正確に「4.184E+09」としている。