「ドーンコーラス」の版間の差分
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'''ドーンコーラス'''(英:Dawn Chorus)とは、[[電磁波]]によって引き起こされる自然現象である。 |
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'''ドーンコーラス'''([[英語]]:dawn chorus)とは、地球の[[磁気圏]]と[[太陽風]]の[[相互作用]]により生じる[[自然現象]]で、[[オーディオアンプ]]を通じた観測では、[[明け方|夜明け]]頃に鳥の[[鳥類用語#さえずり|さえずり]]に似た可聴域の[[ノイズ]]として観測される。 |
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これは[[太陽]]から放出された電子が地球の[[ヴァン・アレン帯]]を通過する際、無線機で可聴域となる電波を発生する為だと考えられている。太陽が水平線に近い位置にある時は、高いところにある場合と比較して相対的にヴァン・アレン帯を通過する距離が長くなるために電波の発生量が多くなる。[[磁気嵐]]の際にはより頻繁に発生する。 |
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この電磁波現象の発生機構については、20世紀後半の[[プラズマ物理学]]の進展に伴い研究が進められたが、その周波数変動(さえずりの[[音色]]の変化)の詳細なメカニズムは20世紀末まで謎であった。21世紀に入って複数の人工衛星による高時間分解能のプラズマ波動観測やスーパーコンピュータによる計算機シミュレーションによる'''コーラス波'''の再現により、その周波数変動の謎は徐々に解き明かされてきている。 |
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同様の現象は、[[オーロラ]]の際にも観測され、「オーロラコーラス」と呼ばれている。雷などの空電によって無線機に音が入ることもあるが、こちらは笛のような鋭い音になるため「[[ホイッスラ]]」という。 |
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[[磁気嵐]]およびサブストームといった地球磁場の乱れに乗じ地球磁気圏尾部領域から内部磁気圏に高エネルギー電子(1keV-100keV)が注入され、この高エネルギー電子の地球磁場に対する温度異方性よって引き起こされる電子サイクロトロン波動の不安定性により発生するホイッスラーモード波が、磁気赤道付近で高エネルギー電子とサイクロトロン共鳴して速度位相空間で電子ホールと呼ばれるポテンシャル構造ができて非線形共鳴電流が形成されるため、周波数上昇を伴いながら成長し励起されることが明らかになった。 |
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==冨田勲== |
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ドーンコーラスの音色は時に非常に美しく、かつ神秘的でさえある。作曲家の[[冨田勲]]はこの音をサンプリングし、『[[ブラジル風バッハ]]』や『[[カノン (パッヘルベル)|パッヘルベルのカノン]]』といった曲にアレンジして収録したアルバム『[[ドーン・コーラス (冨田勲)|ドーン・コーラス]]』を1984年に発表している。この音源にはドーンコーラスだけでなく、「ボウ・ショック」(太陽から放出される[[プラズマ]]の激しい振動)や、帆座X星[[パルサー]]から発信された一秒11回のパルス電波の波形を音に変換したものなど、様々な「宇宙の声」が使われている。 |
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[[明け方]]([[wikt:dawn|dawn]])に多く発生するのは、磁気圏尾部の夜側から注入される高エネルギー粒子が東方向にドリフトして朝方の領域へと移動し、数kHzの可聴域でホイッスラーモード波を発生させるからである。 |
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[[category:大気|とんこらす]] |
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このコーラス波の発生過程において、大部分の共鳴電子はエネルギーを失い[[磁力線]]方向にピッチ角散乱されて極域の大気へと降下し[[オーロラ (代表的なトピック)|オーロラ]]を発光させる一方、一部の電子は非常に効率よく加速されて、[[ヴァン・アレン帯|放射線帯]]を形成する相対論的なエネルギー(MeV)を持つ電子が生成される。 |
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[[en:Dawn chorus (electromagnetic)]] |
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== 参考文献 == |
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* {{Cite journal|和書|author=大村善治 |title=宇宙の音、コーラスの謎を解く |journal=生存圏研究 |issn=1880649X |publisher=京都大学生存圏研究所 |year=2010 |volume=6 |pages=1-8 |naid=120005398833 |url=https://hdl.handle.net/2433/184815 |ref = harv}} |
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== 関連項目 == |
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* [[ドーン・コーラス (アルバム)]] - [[冨田勲]]のアルバムで、実際のドーンコーラスの波形をデジタルシンセサイザーに取り込み、音源としている。 |
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== 外部リンク == |
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* {{Wayback |url=http://www.spaceweathersounds.com/sndbites.htm |title=S. P. McGreevy's 1996-2014 Natural VLF Radio Phenomena Audio Files - Page 1 of 3 - and MP3 Albums |date=20140822185035 }}{{en icon}} |
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* [http://www.space.com/17708-weird-sounds-picked-up-by-space-probes-in-earth-s-magnetosphere-video.html Clearest record yet (2012) by NASA spacecraft]{{en icon}} |
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* [https://kotobank.jp/word/%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%B9-668693#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89 ドーンコーラス(ドーンコーラス)とは] - [[コトバンク]] |
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2023年7月17日 (月) 00:03時点における最新版
ドーンコーラス(英語:dawn chorus)とは、地球の磁気圏と太陽風の相互作用により生じる自然現象で、オーディオアンプを通じた観測では、夜明け頃に鳥のさえずりに似た可聴域のノイズとして観測される。
概説
[編集]第一次世界大戦中、通信兵が無線機に耳を澄ませていると、夜明けとその後しばらくの間、鳥のさえずりの様な、あるいは口笛のような、奇妙な音が聞こえてくることがあった。当時は原因不明であったが、鳥が朝、一斉に鳴き出す様子になぞらえてドーンコーラス(暁の合唱)と呼び、不思議がられてきた。
この電磁波現象の発生機構については、20世紀後半のプラズマ物理学の進展に伴い研究が進められたが、その周波数変動(さえずりの音色の変化)の詳細なメカニズムは20世紀末まで謎であった。21世紀に入って複数の人工衛星による高時間分解能のプラズマ波動観測やスーパーコンピュータによる計算機シミュレーションによるコーラス波の再現により、その周波数変動の謎は徐々に解き明かされてきている。
磁気嵐およびサブストームといった地球磁場の乱れに乗じ地球磁気圏尾部領域から内部磁気圏に高エネルギー電子(1keV-100keV)が注入され、この高エネルギー電子の地球磁場に対する温度異方性よって引き起こされる電子サイクロトロン波動の不安定性により発生するホイッスラーモード波が、磁気赤道付近で高エネルギー電子とサイクロトロン共鳴して速度位相空間で電子ホールと呼ばれるポテンシャル構造ができて非線形共鳴電流が形成されるため、周波数上昇を伴いながら成長し励起されることが明らかになった。
明け方(dawn)に多く発生するのは、磁気圏尾部の夜側から注入される高エネルギー粒子が東方向にドリフトして朝方の領域へと移動し、数kHzの可聴域でホイッスラーモード波を発生させるからである。
このコーラス波の発生過程において、大部分の共鳴電子はエネルギーを失い磁力線方向にピッチ角散乱されて極域の大気へと降下しオーロラを発光させる一方、一部の電子は非常に効率よく加速されて、放射線帯を形成する相対論的なエネルギー(MeV)を持つ電子が生成される。
参考文献
[編集]- 大村善治「宇宙の音、コーラスの謎を解く」『生存圏研究』第6巻、京都大学生存圏研究所、2010年、1-8頁、ISSN 1880649X、NAID 120005398833。
関連項目
[編集]- ドーン・コーラス (アルバム) - 冨田勲のアルバムで、実際のドーンコーラスの波形をデジタルシンセサイザーに取り込み、音源としている。