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|車両名 = ICE 2
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| 画像説明 = ICE 2
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| 運用者 = [[ドイツ鉄道]]
|編成 = 8両編成×44編成
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|営業最高速度 = 250km/h
| 製造年 = 1995年 - 1997年
|設計最高速度 = 280km/h
| 製造数 = 44編成
|全長 = 20,560mm (動力車)
| 運用開始 =
|車体長 = 26,400mm (客車)
|車両質量 = 77.5 t
| 編成 = 8両編成
|軸配置 = 4動軸 (B-B)
| 軌間 = 1,435 mm
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| 自重 = 77.5 t 動力車<br />45 - 50 t (客車)
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}}
'''ICE 2'''は、[[ドイツ鉄道]]が運行する高速列車[[ICE]]の第二世代車両である。[[1995年]] - [[1997年]]にかけて44編成が製造された。また、予備の動力車2両([[ICE#|ICE S]]を参照)と予備の制御客車1両も製造された
'''ICE 2'''は、[[ドイツ鉄道]]が運行する高速列車[[ICE]]の第二世代車両である。


== ICE 1との違い ==
== 概要 ==
ICEの高速鉄道網を長編成の[[ICE 1]]では不経済な旅客需要の少ない線区へも広げるため、1997年6月に短編成で分割併合に対応したICE 2が登場した<ref name="世界の高速列車II_p183">『世界の高速列車II』183頁</ref>。編成の一端を客室付きの制御客車とする[[プッシュプル列車|プッシュプル編成]]を組み、線区の輸送量に応じて併結運転も可能とすることで、輸送力の調整に対応できるようになった<ref name="世界の高速列車II_p182" />。[[1995年]] - [[1997年]]にかけて44編成が製造された。
[[ICE 1]]の成功により、ドイツ国内の[[インターシティ]]を順次ICEに置き換えることになった。しかし、ICE 1は標準で14両編成を組むものの、運行区間によっては輸送力が過剰となる場合があった。そのため、ICEの第二世代車両では、編成の一端に動力車を、もう一端には制御客車(運転台付き客車)を配し、この間に6両の客車を連結して8両編成の構成とした。短い編成とすることで需要の少ない区間への乗り入れを行えるようにしたほか、分割併合に対応することにより複数の行先をカバーできるようになった。


当初はケルン - ハノーバー - ベルリン間で運用を開始<ref name="世界の高速列車II_p183" />、後に運行範囲を拡大しドイツ国内各地で運用されている<ref name="世界の高速列車II_p183" />。
制御客車を先頭に走行する際には最高速度が200km/hに制限される。そのため高速運転時での運用に支障が生じるため、[[ドイツの高速鉄道路線|高速新線]]上では原則として、制御客車同士が向き合う形で2編成を併結して運行される。しかし、そのために輸送力の過剰化などのデメリットも否めない点が同系列のウィークポイントとなっている。


1998年には[[台湾高速鉄道]]の車両売り込みの一環として、[[アルストム]]と共同でICE 2の動力車の中間に[[TGV Duplex]]の中間客車を組成した「ユーロトレイン」(Eurotrain)を登場させた<ref name="世界の高速列車II_p185" />。しかし、台湾側は日本の700系新幹線ベースの車両の導入を決定したため、ユーロトレインの導入は実現しなかった<ref name="世界の高速列車II_p187" />。
== 編成 ==
== 編成 ==
先頭[[動力車]]1両、中間客車6両、制御客車1両の8両編成を組む。編成長は205mで、2編成の併結運転が可能である<ref name="世界の高速列車II_p182" />。車両形式は動力車が402形、中間客車は[[一等車]]が805形、[[二等車]]が806形、[[食堂車]]が807形、制御客車が二等車の808形で構成される。
=== 動力車(402形) ===
動力車は'''402形''' (''Baureihe 402'') と呼ばれる。形状はICE 1の動力車 (BR401) とほとんど差異はないが、分割併合に対応するため、先頭の連結器カバーの形状が異なっている。


車両はICE 1と比較して大きく設計変更されており<ref name="世界の高速列車II_p185" />、中間客車は1両あたり5tの軽量化が行われている<ref name="ICE列車ファミリー_p291">「ICE列車ファミリー」291頁</ref>。客室は[[コンパートメント席|区分室]]を設けず全車開放式座席とし、定員を増やしている<ref name="ICE列車ファミリー_p291" />。食堂車「ボードレストラン」はICE 1ではドームを高くするため屋根が張り出していたが、ICE 2では空気力学上の観点から他車と同じ高さに揃えられた<ref name="世界の高速列車II_p185">『世界の高速列車II』185頁</ref>。
制御方式も基本的にはICE 1と同様で、[[可変電圧可変周波数制御|インバータ制御]]方式を採用し、定格出力1,200kWの三相交流[[誘導電動機]]を4個搭載する。


動力車は分割併合に対応するため、先頭の連結器カバーの形状がICE 1と異なっている。連結器を使用する際には、カバーが左右に分かれて開く。このカバーの為、前照灯と空気取入口の位置がICE 1と比べ若干高くなっている。制御方式は基本的にはICE 1と同様で、[[可変電圧可変周波数制御|インバータ制御]]方式を採用し、定格出力1,200kWの三相交流[[誘導電動機]]を4個搭載する。
=== 客車 ===
[[File:ICE2 Erste Klasse.jpg|thumb|220px|1等車]]
[[File:ICE-2 Steuerwagen Fahrgastraum 0295.JPG|thumb|220px|2等車]]
ICE 1と異なり、[[コンパートメント席|区分室]]や多目的室(会議室)が廃止され、食堂車も縮小されるなど、接客サービスを簡素化し定員の増加を図った。


最高運転速度は動力車を先頭とする場合は280km/hであるが、制御車を先頭とした推進運転を行う際は推進時の座屈によって事故が発生する懸念があることから250km/hに制限される。これによって運用上の制限が課せられることから、以後のICEは動力分散方式を採用することとなった。
車体長は26,400mmで、ヨーロッパの客車の標準寸法である。自重は車種にもよるが、ICE 1より軽量化されており、45 - 50t程度である。[[鉄道車両の台車|台車]]は、枕バネを空気バネとしたSGP400を使用する。


<gallery>
制御客車と、編成中間の客車は、以下の形式が存在する。
Angermund ICE2 duo 402 031-030 als ICE 942 Berlin Hbf-Köln Hbf (33754015610).jpg|制御客車を先頭にして走行するICE2
; 開放式一等車(805形)<!--Apmz805形-->
13-05-09-ice-by-RalfR-08.jpg|改装後の1等車
: 区分室のない開放式[[一等車]]。6-7号車に連結される。
ICE-2 Steuerwagen Fahrgastraum 0295.JPG|2等車
; 開放式二等車(806形)<!--Bpmz806形-->
</gallery>
: 区分室のない開放式[[二等車]](例外あり)。2-4号車に連結される(4号車には区分室がある)。
; 食堂車(807形)<!--WSmz807形-->
: "''Bord Restaurant''"。レストランとビストロ(立食スペース)があり、その間に厨房がある。6号車に連結される。
; 開放式二等制御客車(808形)<!--Bpmzf808形-->
: 運転台付き開放式[[二等車]]で、制御客車。先頭形状は動力車と大差はないが、運転室後ろに機器スペースがある。1号車に連結される。


== ICE S ==
[[ファイル:ICE S Geisbergtunnel.jpg|thumb|ICE S]]
'''ICE S'''は、1997年に登場した高速試験用列車である<ref name="世界の高速列車II_p187">『世界の高速列車II』187頁</ref>。[[ICE 3]]の開発試験用としてデータ収集を行い、後に高速新線の計測用車両に転用された<ref name="世界の高速列車II_p187" />。Sはドイツ語で高速鉄道、高速走行を表す「Schnellfahrtzug」の頭文字である<ref name="世界の高速列車II_p187" />。

編成は5両編成で、先頭動力車2両と中間電動車2両、中間付随車1両で構成される<ref name="世界の高速列車II_p187" />。動力車はICE 2をベースに小変更を加えたものを両端に配置し、編成出力は中間電動車と合わせて13,600kWとなる<ref name="世界の高速列車II_p187" />。ドイツ鉄道と[[東日本旅客鉄道|JR東日本]]が共同開発を行う台車の走行試験でも用いられ<ref>「[http://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_1/33-37.pdf DB AG/JR共同開発台車の開発]」JR東日本</ref>、[[2001年]][[7月13日]]には最高速度393km/hを記録している<ref name="世界の高速列車II_p187" />。

計測車両への転用後は高速新線各線区を年に3回走行し、センサーとカメラで線路の状況を測定する<ref name="世界の高速列車II_p187" />。また、開業前の高速新線を走行しての線路状態の確認も行っている<ref name="世界の高速列車II_p187" />。編成は動力車の410形2両、中間の測定車810形1両の3両編成を組む<ref name="世界の高速列車II_p187" />。

== 脚注 ==
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
* 『世界の高速列車II』 地球の歩き方、ダイヤモンド社、2012年、182頁-187頁。ISBN 978-4-478-04279-3。
* 渡邉朝紀「[https://doi.org/10.1541/ieejjournal.117.289 ICE列車ファミリー]」『電気学会誌』1997年 117巻 5号 p.289-292, {{doi|10.1541/ieejjournal.117.289}}, [[電気学会]]。
** [https://doi.org/10.1541/ieejjournal.117.555a 正誤[Correction] IEEJ Journal. Vol.117 No.8 (1997) pp.555a-555a]

== 外部リンク ==
{{Commonscat|DBAG Class 402|ICE 2}}
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* [https://www.hochgeschwindigkeitszuege.com/deutschland/ice-2.php ICE 2 (Baureihe 402)] - Hochgeschwindigkeitszüge

{{ドイツの高速鉄道}}


{{DEFAULTSORT:ICE 2}}
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[[Category:ドイツの電車]]
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[[Category:ドイツの電気機関車]]
[[Category:高速鉄道車両]]
[[Category:高速鉄道車両]]
[[Category:1995年製の鉄道車両]]
[[Category:1995年製の鉄道車両]]

2023年8月26日 (土) 23:18時点における最新版

ICE 2
ICE 2
基本情報
運用者 ドイツ鉄道
製造所 アドトランツシーメンス
製造年 1995年 - 1997年
製造数 44編成
主要諸元
編成 8両編成
軌間 1,435 mm
電気方式 交流15kV 16.7Hz
最高運転速度 280 km/h[1]
設計最高速度 280 km/h
自重 77.5 t (動力車)
45 - 50 t (客車)
編成長 205 m[1]
全長 20,560 mm (動力車)
26,400 mm (客車)
台車 SGP400 (客車)
軸重 19.5 t[1]
主電動機出力 1,200 kW
編成出力 4,800 kW[1]
制御方式 VVVFインバーター制御
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ICE 2は、ドイツ鉄道が運行する高速列車ICEの第二世代車両である。

概要

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ICEの高速鉄道網を長編成のICE 1では不経済な旅客需要の少ない線区へも広げるため、1997年6月に短編成で分割併合に対応したICE 2が登場した[2]。編成の一端を客室付きの制御客車とするプッシュプル編成を組み、線区の輸送量に応じて併結運転も可能とすることで、輸送力の調整に対応できるようになった[1]1995年 - 1997年にかけて44編成が製造された。

当初はケルン - ハノーバー - ベルリン間で運用を開始[2]、後に運行範囲を拡大しドイツ国内各地で運用されている[2]

1998年には台湾高速鉄道の車両売り込みの一環として、アルストムと共同でICE 2の動力車の中間にTGV Duplexの中間客車を組成した「ユーロトレイン」(Eurotrain)を登場させた[3]。しかし、台湾側は日本の700系新幹線ベースの車両の導入を決定したため、ユーロトレインの導入は実現しなかった[4]

編成

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先頭動力車1両、中間客車6両、制御客車1両の8両編成を組む。編成長は205mで、2編成の併結運転が可能である[1]。車両形式は動力車が402形、中間客車は一等車が805形、二等車が806形、食堂車が807形、制御客車が二等車の808形で構成される。

車両はICE 1と比較して大きく設計変更されており[3]、中間客車は1両あたり5tの軽量化が行われている[5]。客室は区分室を設けず全車開放式座席とし、定員を増やしている[5]。食堂車「ボードレストラン」はICE 1ではドームを高くするため屋根が張り出していたが、ICE 2では空気力学上の観点から他車と同じ高さに揃えられた[3]

動力車は分割併合に対応するため、先頭の連結器カバーの形状がICE 1と異なっている。連結器を使用する際には、カバーが左右に分かれて開く。このカバーの為、前照灯と空気取入口の位置がICE 1と比べ若干高くなっている。制御方式は基本的にはICE 1と同様で、インバータ制御方式を採用し、定格出力1,200kWの三相交流誘導電動機を4個搭載する。

最高運転速度は動力車を先頭とする場合は280km/hであるが、制御車を先頭とした推進運転を行う際は推進時の座屈によって事故が発生する懸念があることから250km/hに制限される。これによって運用上の制限が課せられることから、以後のICEは動力分散方式を採用することとなった。

ICE S

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ICE S

ICE Sは、1997年に登場した高速試験用列車である[4]ICE 3の開発試験用としてデータ収集を行い、後に高速新線の計測用車両に転用された[4]。Sはドイツ語で高速鉄道、高速走行を表す「Schnellfahrtzug」の頭文字である[4]

編成は5両編成で、先頭動力車2両と中間電動車2両、中間付随車1両で構成される[4]。動力車はICE 2をベースに小変更を加えたものを両端に配置し、編成出力は中間電動車と合わせて13,600kWとなる[4]。ドイツ鉄道とJR東日本が共同開発を行う台車の走行試験でも用いられ[6]2001年7月13日には最高速度393km/hを記録している[4]

計測車両への転用後は高速新線各線区を年に3回走行し、センサーとカメラで線路の状況を測定する[4]。また、開業前の高速新線を走行しての線路状態の確認も行っている[4]。編成は動力車の410形2両、中間の測定車810形1両の3両編成を組む[4]

脚注

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  1. ^ a b c d e f 『世界の高速列車II』182頁
  2. ^ a b c 『世界の高速列車II』183頁
  3. ^ a b c 『世界の高速列車II』185頁
  4. ^ a b c d e f g h i j 『世界の高速列車II』187頁
  5. ^ a b 「ICE列車ファミリー」291頁
  6. ^ DB AG/JR共同開発台車の開発」JR東日本

参考文献

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外部リンク

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