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'''PCカード'''({{Lang-en-short|'''PC Card'''}})とは、日米協調して規格統一を行った[[パーソナルコンピュータ|パソコン]]用小型カード型[[インタフェース (情報技術)|インタフェース]]、およびその規格による[[拡張カード]]である。主に、[[ノートパソコン]]や小型の省スペース型[[デスクトップパソコン]]で利用される。PC向けインタフェース規格として初めて、本格的な[[プラグアンドプレイ]]、[[ホットスワップ]]を実現した。
'''PCカード'''({{Lang-en-short|'''PC Card'''}})とは、日米協調して規格統一を行った[[パーソナルコンピュータ|パソコン]]用小型カード型[[インタフェース (情報技術)|インタフェース]]、およびその規格による[[拡張カード]]である。主に、[[ノートパソコン]]や小型の省スペース型[[デスクトップパソコン]]で利用される。PC向けインタフェース規格として初めて、本格的な[[プラグアンドプレイ]]、[[ホットスワップ]]を実現した。


== 概要 ==
当初は「PCMCIAカード」「PCMCIAスロット」などと呼ばれたが、1993年に規格の統一呼称として「PCカード」が制定されたため、「PCMCIA」とは規格策定団体(のみ)を指すようになった。
当初は「PCMCIAカード」「PCMCIAスロット」などと呼ばれたが、1993年に規格の統一呼称として「PCカード」が制定されたため、「PCMCIA」とは規格策定団体(のみ)を指すようになった。


[[Industry Standard Architecture|ISA]]をベースに従来型のものを'''16ビットPCカード'''とい、[[Peripheral Component Interconnect|PCI]]をベースに32ビット化されものを'''CardBus'''('''カードバス'''いう。また、[[コンパクトフラッシュ]]は、16ビットPCカードを小型化したもので、サイズとピン数以外はほとんど同じ規格である。
[[Peripheral Component Interconnect|PCI]]をベースに32ビット化されPCカードを'''CardBus'''('''カードバス'''という。このため従来の[[Industry Standard Architecture|ISA]]をベースにPCカード規格区別するために[[レトロニム|後付け]]で'''16ビットPCカード'''と呼ぶ場合がある。また、[[コンパクトフラッシュ]]は、16ビットPCカードを小型化したもので、サイズとピン数以外はほとんど同じ規格である。


後継規格として[[ExpressCard]]があるが、これは[[Universal Serial Bus|USB]] 2.0と[[PCI Express]]をベースにしたもので、PCカードとの互換性はない。
後継規格として[[ExpressCard]]があるが、これは[[ユニバーサル・シリアル・バス|USB]] 2.0と[[PCI Express]]をベースにしたもので、PCカードとの互換性はない。


== 歴史 ==
== 歴史 ==
[[ファイル:MOdrive and PC-Card.JPG|thumb|300px|PCカードドライブ(上部)が付いた[[光磁気ディスク|MO]]ドライブ]]
[[ファイル:MOdrive and PC-Card.JPG|thumb|300px|PCカードドライブ(上部)が付いた[[光磁気ディスク|MO]]ドライブ]]
[[1985年]]、[[日本電子工業振興協会]] (JEIDA)(当時)に、ICメモリカード技術専門委員会が設置され、規格仕様の検討が開始された。当時はまだノートパソコンは存在せず、主に[[電子手帳]]向けの規格だった。
[[1985年]]、日本電子工業振興協会 (JEIDA当時)に、ICメモリカード技術専門委員会が設置され、規格仕様の検討が開始された。当時はまだノートパソコンは存在せず、主に[[電子手帳]]向けの規格だった。


[[1989年]]に、[[アメリカ合衆国|米国]]でパソコン用[[メモリーカード]]の規格統一のための組織、'''PCMCIA''' (Personal Computer Memory Card International Association) が設立されたのを受け、[[1990年]]にJEIDAの呼びかけで共同作業が開始され、JEIDAガイドラインVer4.0を基にして、PCMCIA Standard Release 1.0が発行された。当初は細部の互換性に欠けていたが、[[1993年]]PCカードガイドラインVersion4.2/PCMCIA Standard Release 2.1をもって互換性が得られ、統一呼称「PCカード/PC Card」と[[ロゴマーク]]が制定された。また、JEIDAガイドライン Ver.4.0以降、[[Advanced Technology Attachment|ATA]]/AIMS (Auto Indexing Mass Storage) などI/Oカード仕様も制定された。
[[1989年]]に、[[アメリカ合衆国|米国]]でパソコン用[[メモリーカード]]の規格統一のための組織、'''PCMCIA''' (Personal Computer Memory Card International Association) が設立されたのを受け、[[1990年]]にJEIDAの呼びかけで共同作業が開始され、JEIDAガイドラインVer4.0を基にして、PCMCIA Standard Release 1.0が発行された。当初は細部の互換性に欠けていたが、[[1993年]]PCカードガイドラインVersion4.2/PCMCIA Standard Release 2.1をもって互換性が得られ、統一呼称「PCカード/PC Card」と[[ロゴマーク]]が制定された。また、JEIDAガイドライン Ver.4.0以降、[[Advanced Technology Attachment|ATA]]/AIMS (Auto Indexing Mass Storage) などI/Oカード仕様も制定された。
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: 主にATAフラッシュメモリカードや各種I/Oカードに使われる。Expressでは無いPCカードの多くはType IIである。
: 主にATAフラッシュメモリカードや各種I/Oカードに使われる。Expressでは無いPCカードの多くはType IIである。
; Type III (10.5mm)
; Type III (10.5mm)
: 主にATA HDDカードに使われる。ただし、[[マイクロドライブ]]の登場後はほとんど使われなくなった。一部のネットワークカードで、[[Registered jack|モジュラープラグ]]をカード後直接挿せよう、この形状を採用したものもある。
: 主にATA HDDカードに使われる。ただし、[[マイクロドライブ]]の登場後はほとんど使われなくなった。一部のネットワークカードで、[[Registered jack|モジュラープラグ]]用のジャックをカード後備えべく、この形状を採用したものもある。
; Type IV(10.5mm超、非標準)
; Type IV(10.5mm超、非標準)
: 一部のHDDカードで使われていた。一般的ではなく、現在は全く使われていない。
: 一部のHDDカードで使われていた。一般的ではなく、その後は全く使われていない。


[[コネクタ]]はカードの一端に設けられ、68ピンである。コネクタ部および側面ガイド部の厚さはすべて3.3mmであり、中央部の部品実装部分の厚さのみ異なる。Type IIIカードはType IIの厚さを上方向に倍にしたような形状である。そのため、Type IIスロットが上下に2つある場合、利用できることが多い。また、カード後部に突起部のあるカードや、外部機器との接続ケーブルのコネクタを備えたものも多い。
[[コネクタ]]はカードの一端に設けられ、68ピンである。コネクタ部および側面ガイド部の厚さはすべて3.3mmであり、中央部の部品実装部分の厚さのみ異なる。Type IIIカードはType IIの厚さを上方向に倍にしたような形状である。そのため、Type IIスロットが上下に2つある場合、利用できることが多い。また、カード後部に突起部のあるカードや、外部機器との接続ケーブルのコネクタを備えたものも多い。専用の接続ケーブルを介さず、一般的な外部コネクタがカードと一体化したものはカプラレスとも呼称される


PCカードには5V駆動のものと3.3V駆動のものがある。5Vのみ対応の本体に3.3Vカードを挿すと危険なので、コネクタ部側面に誤挿入防止キーが設けられている。またCardBusでは、電気的特性の安定化のため、コネクタ部上面にグランドプレートと呼ばれる端子を備えている([http://www.hirose.co.jp/catalogj_hp/j64009012.pdf 参考][[Portable Document Format|PDF]]:[[ヒロセ電機]]の旧製品資料)
PCカードには5V駆動のものと3.3V駆動のものがある。5Vのみ対応の本体に3.3Vカードを挿すと危険なので、コネクタ部側面に誤挿入防止キーが設けられている。同様にCardBus非対応のスロットにはCardBus専用のカードは差さらないようになっている(両対応カードは差せる)。またCardBusでは、電気的特性の安定化のため、コネクタ部上面に金色のグランドプレートと呼ばれる端子を備えている。
[[File:PCCard CardBus.jpg|thumb|300px|CardBus(右)にはグランドプレートがあるが16ビットPCカード(左)にはない]]<ref>[http://www.hirose.co.jp/catalogj_hp/j64009012.pdf 旧製品資料(PDF)] - [[ヒロセ電機]]</ref>。


[[スロット]]側の形状もカードに合わせて決められている。入口にはふたが設けられており、PCカードを挿入していない状態における、ほこりの侵入防止している。一ではコストダウンのため、こ機構は廃されている。こうした機種は'''[[ダミー]]カード'''を挿入することで内部を保護することにしている。
[[スロット]]側の形状もカードに合わせて決められている。入口にはふたが設けられているか、カードサイズの枠の形状をした'''[[ダミー]]カード'''を挿入するようになっており、PCカードを挿入していない状態における異物の侵入防止はじめ内機構保護のための対策がとられている製品が一般的る。


Type IのカードはType IIのスロットに挿すことができる。また、Type II用スロットを重ねて設置することにより、Type I/IIカード最大2枚またはType IIIカード1枚を挿して使うことができ、ノートPCなどではこのようなスロットが一般的に採用されてきた。
Type IのカードはType IIのスロットに挿すことができる。また、Type II用スロットを重ねて設置することにより、Type I/IIカード最大2枚またはType IIIカード1枚を挿して使うことができ、ノートPCなどではこのようなスロットが一般的に採用されてきた。


しかし、年では以下のような理由により、小型の機種などでType IIスロット1つのみを備えるケースが多い。
しかし、2010頃まは以下のような理由により、Type IIスロット1つのみを備えるケースが多くなって
* フラッシュメモリカードの大容量化や超小型HDDカードの登場に伴い、Type IIIカードを使うことがほとんどなくなったため。
* フラッシュメモリカードの大容量化や超小型HDDカードの登場に伴い、Type IIIカードを使うことがほとんどなくなったため。
* 各種デバイスの内蔵化や、USBなど他のインタフェースの普及により、PCカードを同時に2枚も使う必要性が減ったため。
* 各種デバイスの内蔵化や、USBなど他のインタフェースの普及により、PCカードを同時に2枚も使う必要性が減ったため。
** 特にカプラレスのPCカード同士ではコネクタ口が物理干渉しやすく、隣接するスロットに2枚同時に挿すこと自体が困難。
* 本体の薄型化のため。
* 本体の薄型化のため。


またかつては[[ThinkPad]]などで、PCカードスロットを3つ設けた機種もあった。さらに、ドッキングステーションやポートリプリケーターを利用し、合計4つ利用できる機種もある。
またかつては[[ThinkPad]]などで、PCカードスロットを3つ設けた機種もあり、さらに、ドッキングステーションやポートリプリケーターを利用し、合計4つ利用できる機種もある。また、各社の[[PCI Express]]に対応した[[チップセット]]を搭載したモデルでは、本体はPCカードスロットのみとし、ドッキングステーションに[[ExpressCard]]スロットを持つものや、主にA4サイズ以上のモデルで、本体にPCカードとExpressCardの両スロットを備えるものがある。


通常、スロット横にはイジェクトボタンがあり、これを押すと挿入したPCカードが押し出され、取り外すことができる。また、機種によってはスライドスイッチ状になっているものもある。なお、PCカードのインタフェースポートやアンテナなど外部に露出している部分があれば、それをつまんでそのまま引き抜くこともできるが、カードに無理な力が加わるおそれもあるため、イジェクト機構を使うことが望ましい。
通常、スロット横にはイジェクトボタンがあり、これを押すと挿入したPCカードが押し出され、取り外すことができる。また、機種によってはスライドスイッチ状になっているものもある。なお、PCカードのインタフェースポートやアンテナなど外部に露出している部分があれば、それをつまんでそのまま引き抜くこともできるが、カードに無理な力が加わるおそれもあるため、イジェクト機構を使うことが望ましい。
また、ノートPCをケースから出し入れする際に、イジェクトボタンが飛び出した状態になることがある。これに気付かずに無理な力が加わると、イジェクトボタンの破損に繋がるので、取扱いに注意を払う部分である。

== ソケットサービスとカードサービス ==
{{節スタブ|date=2019年2月}}
一般にPCカードのドライバはいくつかの階層に分かれている。Windowsの普及によりこれらを意識する必要性は減っているが、Windows 9xでMS-DOS用ドライバで運用するときなどに理解が必要なケースもある。

ソケットサービスはPCカードスロットのコントローラチップを直接運用するもので、ハードウエアの違いを吸収する役割がある<ref>{{Cite web|和書|url=http://yougo.ascii.jp/caltar/ソケットサービス|title=ソケットサービス|publisher=ASCII用語辞典|accessdate=2019-02-05}}</ref>。カードサービスはPCカードとソケットサービスを仲介するドライバで、PCカードの使用するメモリアドレスなどのリソースを管理する<ref>{{Cite web|和書|url=http://yougo.ascii.jp/caltar/カードサービス|title=カードサービス|publisher=ASCII用語辞典|accessdate=2019-02-05}}</ref>。その上で各PCカードのイネーブラ(ドライバ)で認識させる形になる。サードパーティ製のPCカードスロット増設ボード製品の中にはソケットサービスのみが提供され、カードサービスはPC付属のドライバを使うような例もあるため、しばしばこれらを意識して区別する必要がある。

特にDOS上において特定のハードウエアを決め打ちすることで、これらのドライバを介さずに1つのドライバで特定のPCカードを半ば強制的に認識させるポイントイネーブラという形式のドライバもあるが、この場合は基本的にプラグアンドプレイに対応せず、他のPCカードとは併用できない。

== 32ビット規格と16ビット規格 ==
=== CardBusか否か ===
先述の通り、ハードウエア面においてCardBusは32ビット、従来のPCカードは16ビットの規格と言える。CardBusスロットは従来の16ビットPCカードを利用することもできるが、逆に従来の16ビットPCカードスロットでCardBus専用カードを利用することはできないため、先述のように物理的に挿入できないようになっている。カードによってはスイッチ切り替えで両方に対応させた製品もあり、差し込み部分の物理形状は16ビットPCカードと互換だが、CardBus特有のグランドプレートも断片的な形状のものが設置されている。

デスクトップ機において本来PCIスロットを使うような新しい規格のデバイスは、PCカードにおいては基本的にCardBusで提供される形になる。例えば多くの場合においてUSBポートを増設するPCカードはカードバス専用であり、[[mobio]]のような16ビット規格のPCカードスロットしか備えないPCでUSBカードを利用することはできない。

CardBusスロットは従来の16ビットPCカードスロットと比べて信号線の総延長の制限が厳しくなっており、デスクトップ機などにCardBusスロットを増設するPCIカードはPCIブラケットに直接PCカードを差せるような形状が基本である。フラットケーブルを引き回してカードスロット部分をフロントベイまで延長するタイプの製品では、ハードウエアとしてはCardBusカードを挿入可能であっても16ビットPCカードしか動作保証されていないことがある。

=== Windowsネイティブドライバか否か ===
[[Windows 9x系]]では、「システム」のプロパティで「パフォーマンス」タブにPCカードの項目があり、PCカードスロットが32ビットか否かが表示される。しかし紛らわしいことに、これは上記のCardBusか否かというハードウエアには全く関係が無い。ここで言うPCカードの32ビットとは、Windows 9xのネイティブドライバで動作していることを指し、使用しているドライバすなわちソフトウェア側の種別を表したものである。従来規格の16ビットPCカードスロットであっても32ビットOSであるWindows 9xではできるだけ32ビットドライバで運用すべきであるし、逆に32ビット規格であるCardBusスロットをリアルモード(すなわち16ビット)のドライバで運用することもできないわけではない。

この場合リアルモード(16ビット)とは、PCカードスロットのドライバがMS-DOS用のドライバをベースに動作している「MS-DOS互換モード」のデバイス状態を指す。したがって[[Windows NT系]]では16ビットのドライバは存在しない。リアルモードドライバで運用する場合にはデバイスマネージャでPCカードスロット(のネイティブドライバ)を無効に設定しておく形になり、無効になっているときはMS-DOS用ドライバの有無に関係なくシステムのプロパティではPCカードスロットがMS-DOS互換モードと表示される。MS-DOS用ドライバは一般にWindows 9xに付属するものではないため、必要であれば別途用意して組み込む必要がある。当然ながらWindowsネイティブドライバのほうが使い勝手がよく、PCカード側のドライバもWindows 9x用のものが利用できる。逆にPCカードスロットがリアルモードドライバ動作の場合はPCカード側のドライバもMS-DOS/Windows 3.1用ドライバを使用しなくてはならない。この場合はMS-DOS相当の段階で認識させるため、ホットプラグに対応しないものも多い。

Windows 9xをインストールするときに光学ドライブのような重要なストレージがPCカード経由で接続されている場合にはインストールが完了するまでMS-DOS用のドライバを使い続けなくてはならないため、PCカードスロットの32ビットドライバはインストールされない。この場合はインストール完了後に32ビットドライバに置き換えることが推奨されている。32ビットWindowsであえてリアルモードドライバを使用するケースとしては、Windows起動初期の段階から認識させる必要のある機器のほか、PCカード側で32ビットドライバが用意されていない場合なども挙げられる。例えばPC-9821Ne等に搭載されたJEIDA4.1/PCMCIA2.0規格のPCカードスロットの場合、Windows 95にはPCカードスロット側の32ビットネイティブドライバは用意されているものの、PCカード側の32ビットドライバがJEIDA4.2/PCMCIA2.1以降のPCカードスロットにしか対応していないというケースが少なくなかった。しかしMS-DOS/Windows 3.1用ドライバであればJEIDA4.1/PCMCIA2.0にも対応していたというPCカードもあるため、そのようなものはPCカードスロットをMS-DOS用ドライバで運用する形で利用できる可能性がある。このほか、DOS用ドライバとWindows用ドライバでは機能が異なるようなPCカードも挙げられる。一例として[[PC-9800シリーズ]]用[[サウンドカード]]CF-VEW213P([[パナソニック]])やLPM-SU98([[ロジテック]])を例に取ると、DOS用イネーブラは[[FM音源]]だけを有効にするもので、Windows用ドライバは[[PCM音源]]だけを有効にする排他仕様である。このためWindows上でどうしてもFM音源を使用したい場合にはPCM音源の使用を諦めて、PCカードスロットともどもDOS用ドライバのみで認識させるしか方法が無かった。


== 用途 ==
== 用途 ==
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** アナログ[[モデム]]
** アナログ[[モデム]]
** [[ISDN]][[ターミナルアダプタ]]
** [[ISDN]][[ターミナルアダプタ]]
** [[携帯電話]]・[[PHS]]データ通信カード
** [[携帯電話]]・[[PHS]]・[[WiMAX]]などの回線を使用した[[データ通信カード]]
* インタフェース系
* インタフェース系
** [[Small Computer System Interface|SCSI]]
** [[Small Computer System Interface|SCSI]]
** [[Advanced Technology Attachment|ATAPI]]
** [[Advanced Technology Attachment|ATAPI]]
** [[Universal Serial Bus|USB]]
** [[ユニバーサル・シリアル・バス|USB]]
** [[IEEE 1394]]
** [[IEEE 1394]]
** [[シリアルATA#eSATA|eSATA]]
** [[シリアルATA#eSATA|eSATA]]
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** [[ゲームポート]]
** [[ゲームポート]]


初期のSRAMカードやリニアフラッシュメモリカードは主記憶上に直接配置できる構造になっているが、現在のコンパクトフラッシュ等のメモリカードはATAのインタフェースを経由する形でI/Oカードとして実装されているものが多い。
初期のSRAMカードやリニアフラッシュメモリカードは主記憶上に直接配置できる構造になっているが、その後のコンパクトフラッシュ等のメモリカードはATAのインタフェースを経由する形でI/Oカードとして実装されているものが多い。


2006年時点では、各種デバイスの内蔵化やUSB2.0など、他のインタフェースの普及により、よく利用されるカードはメモリカードアダプタ、無線LAN、PHSデータカードなど、そのPCが発売当時に持っていなかったインタフェースの追加、増設用に限られてきている。また、一時期は、コンパクトフラッシュサイズも多かった。[[ネットブック]]などには、内蔵スペースや重量の問題もあり、PCカードスロットは設けられることは少ないが、2009年以降は、15~16型のオールインワンノートパソコンでも省かれる例が見られるようになった。ただし、スロットが無い場合はUSB2.0はもちろん、[[eSATA]]など、ひととおりの高速インタフェースや無線LANは完備していることが多い。
2006年時点では、各種デバイスの内蔵化やUSB2.0など、他のインタフェースの普及により、よく利用されるカードはメモリカードアダプタ、無線LAN、PHSデータカードなど、そのPCが発売当時に持っていなかったインタフェースの追加、増設用に限られてきている。また、一時期は、コンパクトフラッシュサイズも多かった。[[ネットブック]]などには、内蔵スペースや重量の問題もあり、PCカードスロットは設けられることは少ないが、2009年以降は、15から16型のオールインワンノートパソコンでも省かれる例が見られるようになった。ただし、スロットが無い場合はUSB2.0はもちろん、[[シリアルATA|eSATA]]など、ひととおりの高速インタフェースや無線LANは完備していることが多い。


技術向上により、転送速度が、CardBusベースPCカードの転送速度 (132MB/s) を上回るようなインタフェースも出てきており、そのような場合はCardBusが[[ボトルネック]]となって性能をフルに生かせないため、性能ダウン覚悟で繋ぐカードとなったり、発売されない可能性もある(代表例として、USB3.0は、600MB/sで、PCカードの速度より高速である)。このため、ノートPCでUSB2.0以上の高速インタフェースを増設する可能性がある場合は、ExpressCardのPCIExpressタイプ対応機が必要である。
技術向上により、転送速度が、CardBusベースPCカードの転送速度 (132MB/s) を上回るようなインタフェースも出てきており、そのような場合はCardBusが[[ボトルネック]]となって性能をフルに生かせないため、シリアルATA/eSATA (150MB/s) のように性能ダウン覚悟で繋ぐカードとなったり、USB3.0 (600MB/s) のように発売されない可能性もある。このため、ノートPCでUSB3.0クラスの高速インタフェースを増設する可能性がある場合は、ExpressCardのPCI Expressタイプ対応機が必要である。なおExpressCardをCardBusスロットに接続する変換アダプタもあるが、一般に通信カードなどのUSB2.0タイプの信号線を利用したExpressCard専用であり、PCI Expressタイプの信号線を利用するUSB3.0のようなExpressCardは動作しない


===画像===
<gallery>
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Image:USB2.0 CardBus Controller.jpg|4ポート USB 2.0 カード
Image:USB2.0 CardBus Controller.jpg|4ポート USB 2.0 カード
画像:PCMCIA-card-750px.jpg|無線LANカード
画像:PCMCIA-card-750px.jpg|無線LANカード

Image:AH-H407P expansion.jpg|[[AIR-EDGE]] PHS データ通信カード
image:wlan.JPG|2.4GHz無線LANカード
Image:Vodafone 3g smsize.jpg|英国[[ボーダフォン|vodafone]] データ通信カード

Image:Echo Indigo IO.jpg|サウンドカード
Image:Echo Indigo IO.jpg|サウンドカード
Image:Buffalo IFC-SCD2.jpg|SCSI カード
Image:Buffalo IFC-SCD2.jpg|SCSI カード
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* JEIDA4.0 / PCMCIA1.0 : FM TOWNS(II以降)、PC-9801NL、PC-98HA (HANDY98) など - メモリ空間拡張
* JEIDA4.0 / PCMCIA1.0 : FM TOWNS(II以降)、PC-9801NL、PC-98HA (HANDY98) など - メモリ空間拡張
* JEIDA4.1 / PCMCIA2.0 : [[PC-9821|PC-9821Ne]]、FM TOWNS II model SN、[[HP200LX]]など - [[Advanced Technology Attachment|ATA]]・I/Oカードに対応
* JEIDA4.1 / PCMCIA2.0 : [[PC-9821|PC-9821Ne]]、FM TOWNS II model SN、[[HP200LX]]など - [[Advanced Technology Attachment|ATA]]・I/Oカードに対応
* JEIDA4.2 / PCMCIA2.1 : PC-9821Np・NL/A以降
* JEIDA4.2 / PCMCIA2.1 : PC-9821Np・PC-9801NL/A以降
* CardBus - バス幅を16bitから32bitに拡張したもの。
* CardBus - バス幅を16ビットから32ビットに拡張したもの。
* CardBay - USB2.0やIEEE1394の規格を参考に開発されたCardBusの後継規格。ほとんど普及しなかった。
* [[ZVPort]] - 動画用
* {{仮リンク|Zoomed video port|en|Zoomed_video_portZVPort}}(ZV Port) - 動画用

== 脚注 ==
<references />


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[ExpressCard]]
* [[レガシーデバイス]]
* [[モバイルブロードバンド]]
* [[モバイルブロードバンド]]
* [[ドングル]]
* [[ドングル]]
* [[モデム]]
* [[モデム]]
* [[ラップトップ]]
* [[ラップトップ]]
* [[P2]] - [[SDメモリーカード]]をPCカード互換形状の筐体に搭載したもの。専用ドライバ必須


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{Commonscat|PC cards}}
{{Commonscat|PC cards}}
* [https://www.hpcfactor.com/support/cesd/h/0037.asp Understanding PC Card, PCMCIA, Cardbus, 16-bit, 32-bit.]
* [http://www.pcmcia.org/ PCMCIA]
* {{webarchive |url=https://web.archive.org/web/20080822091330/http://www.pcmcia.org/ |date=August 22, 2008 |title=PCMCIA official website }}
* [http://www.expresscard.org/ ExpressCard Techonology]
* [http://pcmcia-cs.sourceforge.net/ Linux PCMCIA Information Page (kernel 2.4 and earlier)]
* {{webarchive |url=https://web.archive.org/web/20111003223600/http://kernel.org:80/pub/linux/utils/kernel/pcmcia/pcmcia.html |date=October 3, 2011 |title=Linux Kernel 2.6 PCMCIA }}
* [http://tuxmobil.org/pcmcia_linux.html PCMCIA/CardBus Linux Status Survey]
* [http://pinouts.ws/pcmcia-pinout.html PCMCIA pinout]
* [http://pinouts.ws/pcmcia-pinout.html PCMCIA pinout]
* [https://pinouts.ru/Slots/PcCard_pinout.shtml PCMCIA (PC Card) pinout and signals]
* [https://www.sycard.com/pcard_qa.html Simple FAQ on PCMCIA & PC Card]
* [https://www.freebsd.org/doc/en_US.ISO8859-1/books/arch-handbook/pccard.html PC Card on FreeBSD]
* [https://www.freebsd.org/cgi/man.cgi?query=pccard&sektion=4&manpath=FreeBSD+10.3-RELEASE+and+Ports pccard(4) - FreeBSD manpage]
* [http://bxr.su/FreeBSD/sys/dev/pccard/ pccard(4) - FreeBSD implementation]


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{{Computer-stub}}
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[[Category:拡張カード]]

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2023年9月29日 (金) 06:19時点における版

PCカード: PC Card)とは、日米協調して規格統一を行ったパソコン用小型カード型インタフェース、およびその規格による拡張カードである。主に、ノートパソコンや小型の省スペース型デスクトップパソコンで利用される。PC向けインタフェース規格として初めて、本格的なプラグアンドプレイホットスワップを実現した。

概要

当初は「PCMCIAカード」「PCMCIAスロット」などと呼ばれたが、1993年に規格の統一呼称として「PCカード」が制定されたため、「PCMCIA」とは規格策定団体(のみ)を指すようになった。

PCIをベースに32ビット化されたPCカードをCardBusカードバス)という。このため、従来のISAをベースにしたPCカード規格を区別するために後付け16ビットPCカードと呼ぶ場合がある。また、コンパクトフラッシュは、16ビットPCカードを小型化したもので、サイズとピン数以外はほとんど同じ規格である。

後継規格としてExpressCardがあるが、これはUSB 2.0とPCI Expressをベースにしたもので、PCカードとの互換性はない。

歴史

PCカードドライブ(上部)が付いたMOドライブ

1985年、日本電子工業振興協会 (JEIDA、当時)に、ICメモリカード技術専門委員会が設置され、規格仕様の検討が開始された。当時はまだノートパソコンは存在せず、主に電子手帳向けの規格だった。

1989年に、米国でパソコン用メモリーカードの規格統一のための組織、PCMCIA (Personal Computer Memory Card International Association) が設立されたのを受け、1990年にJEIDAの呼びかけで共同作業が開始され、JEIDAガイドラインVer4.0を基にして、PCMCIA Standard Release 1.0が発行された。当初は細部の互換性に欠けていたが、1993年PCカードガイドラインVersion4.2/PCMCIA Standard Release 2.1をもって互換性が得られ、統一呼称「PCカード/PC Card」とロゴマークが制定された。また、JEIDAガイドライン Ver.4.0以降、ATA/AIMS (Auto Indexing Mass Storage) などI/Oカード仕様も制定された。

1995年PC Card Standardとして統一規格が発行され、CardBus、3.3Vカード、マルチファンクションカードなど各種の新規格も盛り込まれた。

ICメモリカード技術専門委員会は、PCカード技術専門委員会に改組された後、JEIDAは現電子情報技術産業協会 (JEITA) に引き継がれている。

形状

PCカード(下)とExpressCard2種

PCカードのサイズはクレジットカード大(長さ85.6mm×巾54.0mm)で、厚さにより以下のように分類される。

Type I (3.3mm)
主にSRAMカード、リニアフラッシュメモリカードに使われる。ただし、この種のメモリカードがほとんど使われなくなったことと、Type IIとしても実用上問題ないことから、Type Iのカードはあまり見られなくなった。
Type II (5mm)
主にATAフラッシュメモリカードや各種I/Oカードに使われる。Expressでは無いPCカードの多くはType IIである。
Type III (10.5mm)
主にATA HDDカードに使われる。ただし、マイクロドライブの登場後はほとんど使われなくなった。一部のネットワークカードで、モジュラープラグ用のジャックをカード後端に備えるべく、この形状を採用したものもある。
Type IV(10.5mm超、非標準)
一部のHDDカードで使われていた。一般的ではなく、その後は全く使われていない。

コネクタはカードの一端に設けられ、68ピンである。コネクタ部および側面ガイド部の厚さはすべて3.3mmであり、中央部の部品実装部分の厚さのみ異なる。Type IIIカードはType IIの厚さを上方向に倍にしたような形状である。そのため、Type IIスロットが上下に2つある場合、利用できることが多い。また、カード後部に突起部のあるカードや、外部機器との接続ケーブルのコネクタを備えたものも多い。専用の接続ケーブルを介さず、一般的な外部コネクタがカードと一体化したものはカプラレスとも呼称される。

PCカードには5V駆動のものと3.3V駆動のものがある。5Vのみ対応の本体に3.3Vカードを挿すと危険なので、コネクタ部側面に誤挿入防止キーが設けられている。同様にCardBus非対応のスロットにはCardBus専用のカードは差さらないようになっている(両対応カードは差せる)。またCardBusでは、電気的特性の安定化のため、コネクタ部上面に金色のグランドプレートと呼ばれる端子を備えている。

CardBus(右)にはグランドプレートがあるが16ビットPCカード(左)にはない

[1]

スロット側の形状もカードに合わせて決められている。入口にはふたが設けられているか、カードサイズの枠の形状をしたダミーカードを挿入するようになっており、PCカードを挿入していない状態における異物の侵入防止はじめ内部機構保護のための対策がとられている製品が一般的である。

Type IのカードはType IIのスロットに挿すことができる。また、Type II用スロットを重ねて設置することにより、Type I/IIカード最大2枚またはType IIIカード1枚を挿して使うことができ、ノートPCなどではこのようなスロットが一般的に採用されてきた。

しかし、2010年頃までには以下のような理由により、Type IIスロット1つのみを備えるケースが多くなっていた。

  • フラッシュメモリカードの大容量化や超小型HDDカードの登場に伴い、Type IIIカードを使うことがほとんどなくなったため。
  • 各種デバイスの内蔵化や、USBなど他のインタフェースの普及により、PCカードを同時に2枚も使う必要性が減ったため。
    • 特にカプラレスのPCカード同士ではコネクタ口が物理干渉しやすく、隣接するスロットに2枚同時に挿すこと自体が困難。
  • 本体の薄型化のため。

またかつてはThinkPadなどで、PCカードスロットを3つ設けた機種もあり、さらに、ドッキングステーションやポートリプリケーターを利用し、合計4つ利用できる機種もある。また、各社のPCI Expressに対応したチップセットを搭載したモデルでは、本体はPCカードスロットのみとし、ドッキングステーションにExpressCardスロットを持つものや、主にA4サイズ以上のモデルで、本体にPCカードとExpressCardの両スロットを備えるものがある。

通常、スロット横にはイジェクトボタンがあり、これを押すと挿入したPCカードが押し出され、取り外すことができる。また、機種によってはスライドスイッチ状になっているものもある。なお、PCカードのインタフェースポートやアンテナなど外部に露出している部分があれば、それをつまんでそのまま引き抜くこともできるが、カードに無理な力が加わるおそれもあるため、イジェクト機構を使うことが望ましい。 また、ノートPCをケースから出し入れする際に、イジェクトボタンが飛び出した状態になることがある。これに気付かずに無理な力が加わると、イジェクトボタンの破損に繋がるので、取扱いに注意を払う部分である。

ソケットサービスとカードサービス

一般にPCカードのドライバはいくつかの階層に分かれている。Windowsの普及によりこれらを意識する必要性は減っているが、Windows 9xでMS-DOS用ドライバで運用するときなどに理解が必要なケースもある。

ソケットサービスはPCカードスロットのコントローラチップを直接運用するもので、ハードウエアの違いを吸収する役割がある[2]。カードサービスはPCカードとソケットサービスを仲介するドライバで、PCカードの使用するメモリアドレスなどのリソースを管理する[3]。その上で各PCカードのイネーブラ(ドライバ)で認識させる形になる。サードパーティ製のPCカードスロット増設ボード製品の中にはソケットサービスのみが提供され、カードサービスはPC付属のドライバを使うような例もあるため、しばしばこれらを意識して区別する必要がある。

特にDOS上において特定のハードウエアを決め打ちすることで、これらのドライバを介さずに1つのドライバで特定のPCカードを半ば強制的に認識させるポイントイネーブラという形式のドライバもあるが、この場合は基本的にプラグアンドプレイに対応せず、他のPCカードとは併用できない。

32ビット規格と16ビット規格

CardBusか否か

先述の通り、ハードウエア面においてCardBusは32ビット、従来のPCカードは16ビットの規格と言える。CardBusスロットは従来の16ビットPCカードを利用することもできるが、逆に従来の16ビットPCカードスロットでCardBus専用カードを利用することはできないため、先述のように物理的に挿入できないようになっている。カードによってはスイッチ切り替えで両方に対応させた製品もあり、差し込み部分の物理形状は16ビットPCカードと互換だが、CardBus特有のグランドプレートも断片的な形状のものが設置されている。

デスクトップ機において本来PCIスロットを使うような新しい規格のデバイスは、PCカードにおいては基本的にCardBusで提供される形になる。例えば多くの場合においてUSBポートを増設するPCカードはカードバス専用であり、mobioのような16ビット規格のPCカードスロットしか備えないPCでUSBカードを利用することはできない。

CardBusスロットは従来の16ビットPCカードスロットと比べて信号線の総延長の制限が厳しくなっており、デスクトップ機などにCardBusスロットを増設するPCIカードはPCIブラケットに直接PCカードを差せるような形状が基本である。フラットケーブルを引き回してカードスロット部分をフロントベイまで延長するタイプの製品では、ハードウエアとしてはCardBusカードを挿入可能であっても16ビットPCカードしか動作保証されていないことがある。

Windowsネイティブドライバか否か

Windows 9x系では、「システム」のプロパティで「パフォーマンス」タブにPCカードの項目があり、PCカードスロットが32ビットか否かが表示される。しかし紛らわしいことに、これは上記のCardBusか否かというハードウエアには全く関係が無い。ここで言うPCカードの32ビットとは、Windows 9xのネイティブドライバで動作していることを指し、使用しているドライバすなわちソフトウェア側の種別を表したものである。従来規格の16ビットPCカードスロットであっても32ビットOSであるWindows 9xではできるだけ32ビットドライバで運用すべきであるし、逆に32ビット規格であるCardBusスロットをリアルモード(すなわち16ビット)のドライバで運用することもできないわけではない。

この場合リアルモード(16ビット)とは、PCカードスロットのドライバがMS-DOS用のドライバをベースに動作している「MS-DOS互換モード」のデバイス状態を指す。したがってWindows NT系では16ビットのドライバは存在しない。リアルモードドライバで運用する場合にはデバイスマネージャでPCカードスロット(のネイティブドライバ)を無効に設定しておく形になり、無効になっているときはMS-DOS用ドライバの有無に関係なくシステムのプロパティではPCカードスロットがMS-DOS互換モードと表示される。MS-DOS用ドライバは一般にWindows 9xに付属するものではないため、必要であれば別途用意して組み込む必要がある。当然ながらWindowsネイティブドライバのほうが使い勝手がよく、PCカード側のドライバもWindows 9x用のものが利用できる。逆にPCカードスロットがリアルモードドライバ動作の場合はPCカード側のドライバもMS-DOS/Windows 3.1用ドライバを使用しなくてはならない。この場合はMS-DOS相当の段階で認識させるため、ホットプラグに対応しないものも多い。

Windows 9xをインストールするときに光学ドライブのような重要なストレージがPCカード経由で接続されている場合にはインストールが完了するまでMS-DOS用のドライバを使い続けなくてはならないため、PCカードスロットの32ビットドライバはインストールされない。この場合はインストール完了後に32ビットドライバに置き換えることが推奨されている。32ビットWindowsであえてリアルモードドライバを使用するケースとしては、Windows起動初期の段階から認識させる必要のある機器のほか、PCカード側で32ビットドライバが用意されていない場合なども挙げられる。例えばPC-9821Ne等に搭載されたJEIDA4.1/PCMCIA2.0規格のPCカードスロットの場合、Windows 95にはPCカードスロット側の32ビットネイティブドライバは用意されているものの、PCカード側の32ビットドライバがJEIDA4.2/PCMCIA2.1以降のPCカードスロットにしか対応していないというケースが少なくなかった。しかしMS-DOS/Windows 3.1用ドライバであればJEIDA4.1/PCMCIA2.0にも対応していたというPCカードもあるため、そのようなものはPCカードスロットをMS-DOS用ドライバで運用する形で利用できる可能性がある。このほか、DOS用ドライバとWindows用ドライバでは機能が異なるようなPCカードも挙げられる。一例としてPC-9800シリーズサウンドカードCF-VEW213P(パナソニック)やLPM-SU98(ロジテック)を例に取ると、DOS用イネーブラはFM音源だけを有効にするもので、Windows用ドライバはPCM音源だけを有効にする排他仕様である。このためWindows上でどうしてもFM音源を使用したい場合にはPCM音源の使用を諦めて、PCカードスロットともどもDOS用ドライバのみで認識させるしか方法が無かった。

用途

以下のようなさまざまな用途のカードが市販されている。

初期のSRAMカードやリニアフラッシュメモリカードは主記憶上に直接配置できる構造になっているが、その後のコンパクトフラッシュ等のメモリカードはATAのインタフェースを経由する形でI/Oカードとして実装されているものが多い。

2006年時点では、各種デバイスの内蔵化やUSB2.0など、他のインタフェースの普及により、よく利用されるカードはメモリカードアダプタ、無線LAN、PHSデータカードなど、そのPCが発売当時に持っていなかったインタフェースの追加、増設用に限られてきている。また、一時期は、コンパクトフラッシュサイズも多かった。ネットブックなどには、内蔵スペースや重量の問題もあり、PCカードスロットは設けられることは少ないが、2009年以降は、15から16型のオールインワンノートパソコンでも省かれる例が見られるようになった。ただし、スロットが無い場合はUSB2.0はもちろん、eSATAなど、ひととおりの高速インタフェースや無線LANは完備していることが多い。

技術向上により、転送速度が、CardBusベースPCカードの転送速度 (132MB/s) を上回るようなインタフェースも出てきており、そのような場合はCardBusがボトルネックとなって性能をフルに生かせないため、シリアルATA/eSATA (150MB/s) のように性能ダウン覚悟で繋ぐカードとなったり、USB3.0 (600MB/s) のように発売されない可能性もある。このため、ノートPCでUSB3.0クラスの高速インタフェースを増設する可能性がある場合は、ExpressCardのPCI Expressタイプ対応機が必要である。なおExpressCardをCardBusスロットに接続する変換アダプタもあるが、一般に通信カードなどのUSB2.0タイプの信号線を利用したExpressCard専用であり、PCI Expressタイプの信号線を利用するUSB3.0のようなExpressCardは動作しない。

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規格

  • JEIDA1.0
  • JEIDA2.0
  • JEIDA3.0 : FM TOWNSネオジオなど - 「ICメモリカード」スロット
  • JEIDA4.0 / PCMCIA1.0 : FM TOWNS(II以降)、PC-9801NL、PC-98HA (HANDY98) など - メモリ空間拡張
  • JEIDA4.1 / PCMCIA2.0 : PC-9821Ne、FM TOWNS II model SN、HP200LXなど - ATA・I/Oカードに対応
  • JEIDA4.2 / PCMCIA2.1 : PC-9821Np・PC-9801NL/A以降
  • CardBus - バス幅を16ビットから32ビットに拡張したもの。
  • CardBay - USB2.0やIEEE1394の規格を参考に開発されたCardBusの後継規格。ほとんど普及しなかった。
  • Zoomed video port英語版(ZV Port) - 動画用

脚注

  1. ^ 旧製品資料(PDF) - ヒロセ電機
  2. ^ ソケットサービス”. ASCII用語辞典. 2019年2月5日閲覧。
  3. ^ カードサービス”. ASCII用語辞典. 2019年2月5日閲覧。

関連項目

外部リンク