「電束密度」の版間の差分
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{{出典の明記|date=2015年7月}} |
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{{物理学}} |
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{{物理量 |
{{物理量 |
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|英語= electric flux density |
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| 名称 = |
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|記号= {{mvar|'''D'''}} |
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| 英語 = electric flux density |
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|次元 = [[時間|T]] [[電流|I]] [[長さ|L]]{{sup-|2}} |
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| 画像 = |
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|階= ベクトル |
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| 記号 =''D'' |
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|SI= [[クーロン]]毎[[平方メートル]](C m{{sup-|2}}) |
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| 階 = |
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| SI =C/m<sup>2</sup> |
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| CGS = |
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| MTS = |
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| FPS = |
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| MKSG = |
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| CGSG = |
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| FPSG = |
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| プランク = |
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| 原子 = |
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}} |
}} |
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'''電束密度'''(でんそくみつど、{{Lang-en|electric flux density}})は、[[電荷]]の存在によって生じる[[ベクトル場]]である。 |
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'''電束密度'''(でんそくみつど、electric flux density)は、[[電磁気学]]における[[ベクトル場]]のひとつを表す物理量。[[国際単位系]]における単位は[C/m<sup>2</sup>]。[[電場]]と類似した概念であるが、[[誘電体]]を含む系において、[[電場]]の[[発散]](div)を考える際には分極電荷の影響を加味しなければならないのに対し、電束密度の[[発散]]は真電荷のみによって定まるという違いがある。'''電気変位'''(electric displacement)とも呼ばれる。 |
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'''電気変位'''({{en|electric displacement}})とも呼ばれる。[[国際単位系]](SI)における単位は[[クーロン]]毎[[平方メートル]](記号: C m{{sup-|2}})が用いられる。[[電場|電場の強度]]は電荷に[[力 (物理学)|力]]を及ぼす場であり、電束密度とは由来が全く異なる場であるが、両者は[[構成方程式]]によって結び付けられる。[[誘電分極]]を生じない真空([[自由空間]])においては電束密度と電場強度とが普遍定数により結び付けられて両者の違いが現れない。分極を生じる[[誘電体]]を考える場合には両者の違いが現れるが、誘電体を自由空間に分布する電荷の集まりであると考えることで、電束密度をあらわに用いる必要はなくなる。 |
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==定義== |
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電束密度'''''D''''' [C/m<sup>2</sup>] は、次のように定義される。 |
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:<math> |
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\boldsymbol{D} = \varepsilon_0 \boldsymbol{E} + \boldsymbol{P} |
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</math> |
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== 定義 == |
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ここで、 |
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電束密度は[[ガウスの法則]]によって定義される。 |
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{| |
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すなわち、ある領域 {{mvar|V}} を考え、その境界を {{mvar|∂V}} とする。領域 {{mvar|V}} の内部の電荷を {{mvar|Q{{sub|V}}}} とするとき、電束密度 {{mvar|'''D'''}} は |
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|<math>\varepsilon_0</math> ||: 真空の[[誘電率]] [F/m] |
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|- |
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<math>\oint_{\partial V} \boldsymbol{D}\cdot d\boldsymbol{S} =\lambda Q_V</math> |
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}} |
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|- |
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を満たすベクトル場として定義される。有理化係数 {{mvar|λ}} は、[[国際量体系]](ISQ)に代表される有理系において {{math|1=''λ'' = 1}}、[[ガウス単位系]]に代表される非有理系では {{math|1=''λ'' = 4π}} である。 |
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|<math>\boldsymbol{P}</math> ||: [[誘電分極|分極]] [C/m<sup>2</sup>] |
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{{See also|電磁気量の単位系}} |
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|} |
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[[発散定理]]により左辺は |
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<math>\oint_{\partial V} \boldsymbol{D}\cdot d\boldsymbol{S} |
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=\int_V (\nabla\cdot\boldsymbol{D})\, dV</math> |
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}} |
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と変形されて |
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<math>\int_V (\nabla\cdot\boldsymbol{D})\, dV =\lambda Q_V</math> |
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}} |
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となる。ここで領域を小さくする極限 {{mvar|V → 0}} を考えると |
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<math>\nabla\cdot\boldsymbol{D} =\lambda \rho</math> |
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}} |
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となり、ガウスの法則を微分により表すことができる。ここで[[電荷密度]]は |
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<math>\rho =\lim_{V\to 0} \frac{Q_V}{V}</math> |
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}} |
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である。 |
である。 |
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== |
== 電場の強度との関係 == |
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電束密度 {{mvar|'''D'''}} と電場の強度 {{mvar|'''E'''}} との関係は[[構成方程式]] |
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[[誘電体]]による[[誘電分極|分極]]の影響を考慮した[[電場]]を考える際、[[ガウスの法則]] |
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:<math>\int_S\varepsilon_0\boldsymbol{E}\cdot d\boldsymbol{S} = q</math> |
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<math>\boldsymbol{D} =\epsilon_0 \boldsymbol{E} +\lambda \boldsymbol{P}</math> |
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の右辺の[[電荷]]<math>q</math> には、[[真電荷]]<math>q_e</math> だけでなく、[[分極電荷]]<math>q_d</math> を加味する必要がある。 |
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}} |
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すなわち |
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で与えられる。比例係数 {{math|''ε''{{sub|0}}}} は[[電気定数]]と呼ばれる[[物理定数]]である。 |
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:<math>\int_S\varepsilon_0\boldsymbol{E}\cdot d\boldsymbol{S} = q_e + q_d</math> |
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二つの量は[[誘電体]]の[[物性]]を反映した[[誘電分極]] {{mvar|'''P'''}} により関係付けられる。 |
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である。しかし実際には、<math>q_d</math> は[[誘電分極|分極]]の複雑な影響の結果として現れるものであるため、直接には扱いにくいという欠点がある。これを避けるために、[[真電荷]]による寄与のみを考慮した仮想的な場として導入されたのが電束密度である。 |
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自由空間においては誘電分極を生じず、電束密度 {{mvar|'''D'''}} と電場の強度 {{mvar|'''E'''}} とは |
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分極ベクトルを<math>\boldsymbol{P}</math> とすると、<math>\boldsymbol{P}</math> は「単位面積を通過した分極電荷」を表しており、 |
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:<math>q_d = - \int_S\boldsymbol{P}\cdot d\boldsymbol{S}</math> |
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<math>\boldsymbol{D} =\epsilon_0 \boldsymbol{E}</math> |
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が成り立つ。これを用いると |
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}} |
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:<math>\int_S\varepsilon_0\boldsymbol{E}\cdot d\boldsymbol{S} = q_e - \int_S\boldsymbol{P}\cdot d\boldsymbol{S}</math> |
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によって関係付けられる。 |
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ここで、右辺第2項はあくまで([[誘電分極|分極]]による)[[電荷]]を表すものであり、本来は右辺に書くべき量であるが、左辺同様の面積分の形をしているため、移項してまとめることができる。 |
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:<math>\int_S(\varepsilon_0\boldsymbol{E} + \boldsymbol{P})\cdot d\boldsymbol{S} = q_e</math> |
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さらに<math>\varepsilon_0\boldsymbol{E} + \boldsymbol{P}</math> をまとめて<math>\boldsymbol{D}</math> と書けば |
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:<math>\int_S\boldsymbol{D}\cdot d\boldsymbol{S} = q_e</math> |
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となる。これにより、[[分極電荷]]が式の上に現れないようにすることができる。 |
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誘電体が局所性と電場に対する線形性を仮定できる場合には、[[誘電率]]が定義できて |
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<math>\boldsymbol{D}</math> の定義から |
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:<math>\varepsilon_0\boldsymbol{E} = \boldsymbol{D} - \boldsymbol{P}</math> |
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<math>\boldsymbol{D} =\epsilon \boldsymbol{E}</math> |
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すなわち、「[[電場]](の<math>\varepsilon_0</math>倍)は、[[真電荷]]による寄与<math>\boldsymbol{D}</math>と[[分極電荷]]による寄与<math>-\boldsymbol{P}</math>との和によって定まる」と考えることができる。<math>\boldsymbol{D}</math> の定義式からは、あたかも[[誘電分極|分極]]の影響を包含した量のように見えるが、そうではなく、「最終的な電場から、[[誘電分極|分極]]の寄与を差し引いたもの(<math>\varepsilon_0\boldsymbol{E} - (-\boldsymbol{P})</math>)」と考えるのが良い。 |
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}} |
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と表すことができる。 |
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誘電体が線形性を仮定できない場合は積分により |
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==線形応答による近似== |
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実際には、<math>\boldsymbol{P}</math> は<math>q_d</math> 同様に扱いにくいという問題があるため、たとえ<math>\boldsymbol{D}</math> を導入しても、上式から直接<math>\boldsymbol{E}</math> を求めることは困難である。そこで、近似として「[[誘電体]]を定めれば、外部の真電荷の分布が異なっても、<math>\boldsymbol{P}</math> と<math>\boldsymbol{E}</math> とは互いに比例するように落ち着く」と仮定し(<math>\boldsymbol{P} = \chi\boldsymbol{E}</math>)、この比例定数<math>\chi</math>(電気感受率)に分極の複雑な実態を押し込めて、その[[誘電体]]の性質として代表させる。 |
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<math>\boldsymbol{D} =\int \epsilon\, d\boldsymbol{E}</math> |
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}} |
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:<math> \boldsymbol{E} = \boldsymbol{D} / (\varepsilon_0 + \chi)</math> |
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となる。より一般には磁場との交叉項や[[ヒステリシス]]を考える必要がある。 |
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となり、[[電場]]が求められる。 |
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真空中では<math>\chi = 0</math> であるので、上の等式は「[[誘電体]]を置くことで、<math>\boldsymbol{D}</math> と<math>\boldsymbol{E}</math> の比が<math>\varepsilon_0</math> から<math>\varepsilon_0 + \chi</math> に増加した」と解釈することもできる。この<math>\varepsilon = \varepsilon_0 + \chi</math> を「[[誘電率]]」と呼ぶことから、<math>\varepsilon_0</math>は「真空の誘電率」と |
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呼ばれる(真空中で[[誘電分極]]が起こるわけではない)。また<math>\varepsilon_r = \varepsilon / \varepsilon_0</math> を「[[比誘電率]]」といい、誘電率が真空のときの何倍になるかを表している。すなわち |
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:<math> \boldsymbol{D} = (\varepsilon_0 + \chi)\boldsymbol{E} = \varepsilon\boldsymbol{E} = \varepsilon_r\varepsilon_0\boldsymbol{E}</math> |
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の関係がある。 |
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== 誘電体 == |
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物質によっては、[[誘電分極|分極]] '''''P''''' が[[電場]] '''''E''''' に比例せず、非線形の項が現れることがある。そのような物質に光を当てると[[非線形光学]]効果を示す。また、[[異方的]]な物質では、分極 '''''P''''' が電場 '''''E''''' と異なる向きに生じ、誘電率 ε が[[テンソル]]になる。詳細は'''[[誘電率]]'''を参照されたい。 |
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微分によって表したガウスの法則に真空における電束密度と電場の強度の関係を代入すれば |
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<math>\nabla\cdot \boldsymbol{E} =\frac{\lambda}{\epsilon_0} \rho_0</math> |
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となる。電荷密度の添え字 0 は真空に分布する電荷密度であることを意味している。 |
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一方、誘電体が存在する場合に誘電分極の定義式を代入すれば |
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==その他の定義== |
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[[誘電体]]を排除することができる巨視的な荷電物体(例えば液中に置かれた小球)が受ける電磁気力の大きさを用いて電束密度を定義することも出来る。電荷 q を持った物体が受ける電磁気力を K とすると、電束密度 D は物体を取り囲む誘電体の種類によらず次式で表される。 |
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<math>\nabla\cdot \boldsymbol{D} =\nabla\cdot (\epsilon_0\boldsymbol{E} +\lambda \boldsymbol{P}) =\lambda\rho</math> |
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}} |
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<math>\nabla\cdot \boldsymbol{E} =\frac{\lambda}{\epsilon_0} (\rho -\nabla\cdot \boldsymbol{P})</math> |
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となり、真空における関係式と比較すれば |
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<math>\rho_0 =\rho +\rho_P</math> |
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}} |
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である。ここで導入した誘電分極 {{mvar|'''P'''}} による電荷密度 |
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<math>\rho_P =-\nabla\cdot \boldsymbol{P}</math> |
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は[[分極電荷密度]]と呼ばれる。分極電荷密度と対比して {{mvar|ρ}} は真電荷密度と呼ばれる。 |
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誘電体も[[原子核]]や[[電子]]などの荷電粒子から構成されており、{{math|''ρ''{{sub|0}}}} を用いることは誘電体を真空に分布する荷電粒子の集まりであると考えていることに相当する。現実には全ての原子核や電子の運動の様子を知ることは不可能である。仮に全ての運動が分かったとしても、そこから誘電体としての性質を知ることはやはり困難である。 |
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{{DEFAULTSORT:てんそくみつと}} |
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真電荷密度 {{mvar|ρ}} は誘電体を誘電体として扱える程度のスケールでの平均値、すなわち |
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<math>\rho =\frac{Q_{\Delta V}}{\Delta V} =\frac{1}{\Delta V} \int_{\Delta V} \rho_0 dV</math> |
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}} |
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である。体積 {{mvar|ΔV}} は十分小さいが、誘電体が誘電体として振る舞う程度に原子核や電子を含む。 |
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導電を担う[[自由電子]]がなく、電子が原子核に束縛されている誘電体の内部においては、通常は正負の電荷が相殺されて真電荷密度は存在しない。分極電荷密度は {{mvar|ΔV}} より小さなスケールでの電荷密度であり、誘電分極により生じるわずかな電荷の分布の偏りを表す。 |
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== 参考文献 == |
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* {{Cite book|和書 |
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|author= 砂川重信 |
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|title= 理論電磁気学 |
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|year= 1999 |
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|edition= 第3版 |
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|publisher= 紀伊国屋書店 |
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|isbn= 4-314-00854-7 |
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|ref= sunakawa |
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}} |
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* {{Cite book|和書 |
|||
|author= J.D.Jackson |
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|translator= 西田稔 |
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|title= 電磁気学(上) |
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|year= 2002 |
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|edition= 原書第3版 |
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|series= 物理学叢書 |
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|publisher= 吉岡書店 |
|||
|isbn= 4-8427-0000-9 |
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|ref= jackson |
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}} |
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{{電磁気学}} |
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[[Category:電磁気学]] |
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[[Category:密度]] |
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[[Category:物理量]] |
2023年10月6日 (金) 09:06時点における最新版
電束密度 electric flux density | |
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量記号 | D |
次元 | T I L−2 |
種類 | ベクトル |
SI単位 | クーロン毎平方メートル(C m−2) |
電束密度(でんそくみつど、英語: electric flux density)は、電荷の存在によって生じるベクトル場である。 電気変位(electric displacement)とも呼ばれる。国際単位系(SI)における単位はクーロン毎平方メートル(記号: C m−2)が用いられる。電場の強度は電荷に力を及ぼす場であり、電束密度とは由来が全く異なる場であるが、両者は構成方程式によって結び付けられる。誘電分極を生じない真空(自由空間)においては電束密度と電場強度とが普遍定数により結び付けられて両者の違いが現れない。分極を生じる誘電体を考える場合には両者の違いが現れるが、誘電体を自由空間に分布する電荷の集まりであると考えることで、電束密度をあらわに用いる必要はなくなる。
定義[編集]
電束密度はガウスの法則によって定義される。 すなわち、ある領域 V を考え、その境界を ∂V とする。領域 V の内部の電荷を QV とするとき、電束密度 D は
を満たすベクトル場として定義される。有理化係数 λ は、国際量体系(ISQ)に代表される有理系において λ = 1、ガウス単位系に代表される非有理系では λ = 4π である。
発散定理により左辺は
と変形されて
となる。ここで領域を小さくする極限 V → 0 を考えると
となり、ガウスの法則を微分により表すことができる。ここで電荷密度は
である。
電場の強度との関係[編集]
電束密度 D と電場の強度 E との関係は構成方程式
で与えられる。比例係数 ε0 は電気定数と呼ばれる物理定数である。 二つの量は誘電体の物性を反映した誘電分極 P により関係付けられる。
自由空間においては誘電分極を生じず、電束密度 D と電場の強度 E とは
によって関係付けられる。
誘電体が局所性と電場に対する線形性を仮定できる場合には、誘電率が定義できて
と表すことができる。
誘電体が線形性を仮定できない場合は積分により
となる。より一般には磁場との交叉項やヒステリシスを考える必要がある。
誘電体[編集]
微分によって表したガウスの法則に真空における電束密度と電場の強度の関係を代入すれば
となる。電荷密度の添え字 0 は真空に分布する電荷密度であることを意味している。
一方、誘電体が存在する場合に誘電分極の定義式を代入すれば
となり、真空における関係式と比較すれば
である。ここで導入した誘電分極 P による電荷密度
は分極電荷密度と呼ばれる。分極電荷密度と対比して ρ は真電荷密度と呼ばれる。
誘電体も原子核や電子などの荷電粒子から構成されており、ρ0 を用いることは誘電体を真空に分布する荷電粒子の集まりであると考えていることに相当する。現実には全ての原子核や電子の運動の様子を知ることは不可能である。仮に全ての運動が分かったとしても、そこから誘電体としての性質を知ることはやはり困難である。
真電荷密度 ρ は誘電体を誘電体として扱える程度のスケールでの平均値、すなわち
である。体積 ΔV は十分小さいが、誘電体が誘電体として振る舞う程度に原子核や電子を含む。 導電を担う自由電子がなく、電子が原子核に束縛されている誘電体の内部においては、通常は正負の電荷が相殺されて真電荷密度は存在しない。分極電荷密度は ΔV より小さなスケールでの電荷密度であり、誘電分極により生じるわずかな電荷の分布の偏りを表す。
参考文献[編集]
- 砂川重信『理論電磁気学』(第3版)紀伊国屋書店、1999年。ISBN 4-314-00854-7。
- J.D.Jackson 著、西田稔 訳『電磁気学(上)』(原書第3版)吉岡書店〈物理学叢書〉、2002年。ISBN 4-8427-0000-9。