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「天狗裁き」の版間の差分

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『'''天狗裁き'''』(てんぐさばき)は、[[古典落語]]の演目。元々は[[上方落語]]の演目の一つである。長編落語『羽団扇』(演じ手は[[三遊亭圓歌 (2代目)|2代目三遊亭円歌]]など)の前半部分が独立して、一席の落語となった。現在の演出は、[[上方落語|上方]]の[[桂米朝 (3代目)|3代目桂米朝]]が発掘・再構成し復活させたものによる。[[東京]]では[[古今亭志ん生 (5代目)|5代目古今亭志ん生]]が得意とした。


現在の演出は、[[桂米朝 (3代目)|3代目桂米朝]]が発掘・再構成し復活させたものによる。江戸落語では[[金原亭馬生 (10代目)|10代目金原亭馬生]]のものが有名{{sfn|東大落語会|1969|pp=311|loc=『天狗裁き』}}。
== あらすじ ==
家で寝ていた[[八五郎]]が[[妻]]に揺り起こされる。「お前さん、どんな夢を見ていたんだい?」


== あらすじ ==
八五郎は何も思い出せないので「夢は見ていなかった」と答えるが、妻は納得せず、隠し事をしているのだと疑う。「夢は見ていない」「人には言えないような夢だったんでしょ」と押し問答になり、夫婦喧嘩になってしまう。
家で昼寝をしていた喜八は妻に揺り起こされる。寝言や寝顔などが、どうもおかしかったらしく「どんな夢を見ていたんだい?」と尋ねられるが、喜八はまったく覚えていないので「見ていない」と言う。しかし、妻は喜八が何か人には言えないような夢を見たために嘘をついたと考え、しつこく尋ね返す。喜八も「見てない」と繰り返すが、この押し問答は最終的に激しい夫婦喧嘩に発展する。


あまりに五月蝿いので喧嘩に気づいた隣人の徳がやってきて2人から事情を聞く。徳はたかが夢ごときでこんな喧嘩はいけないと仲裁するが、直後に喜八に「で、どんな夢を見たんだ?」と尋ねる。だから見てないと喜八も返すが、徳は納得せず、今度は喜八と徳が喧嘩を始める。この騒動を聞いて、今度は長屋の大家がやってきて、たかが夢ごときと2人を仲裁するが、やはり大家も喜八に「私には夢の内容を教えろ」と言う。やはり喜八が見てないと言うと、激怒した大家は長屋から出て行けと言う。
[[長屋]]の隣人が夫婦喧嘩に割って入るが、経緯を聞いた隣人も夢の内容を知りたがる。「そもそも夢は見ていないので話しようがない」と八五郎は言うが隣人は納得せず、またも押し問答から喧嘩になってしまう。


話が大きくなってしまい奉行所が裁くことになる。話を聞いた奉行は、こんなことでお上の手を煩わせるとは何事だと大家を注意する。こうして一件落着かと思いきや、奉行も喜八にどんな夢を見たのかと尋ねる。やはり喜八は見てないと答えると、激怒した奉行は、喜八を奉行所の庭木に吊るすよう命じる。
今度は長屋の大家が仲裁に入った。大家も八五郎の夢について知りたがる。八五郎は「夢を見ていない」と弁解するが大家に信じてもらえず、「隠し事をするような奴はこの長屋から出て行け」と言われてしまう。


庭木に吊るされ途方に暮れる喜八であったが突然、突風に身体を巻き上げられると、そのまま気づいたらどこかの山奥にいる。そして目の前には[[大天狗]]がおり、たまたま奉行所の上空を通ったところ理不尽な目に遭っているのを見つけたので助けてやったという。喜八は感謝するが、やはり大天狗も夢の内容を聞いてくる。喜八も見てないと同様に弁解するが、激怒した大天狗はその首を掴む。喜八は首筋に大天狗の長い爪が食い込むため悶え苦しむ。
八五郎が立ち退きを拒否したため、奉行所で詮議されることとなった。奉行は大家の訴えを「くだらない」と棄却するが、八五郎の夢に興味を持ち、見た夢のことを執拗に聞き出そうとする。八五郎は「夢は見ていない」と答えるが、奉行の怒りを買い、縛り上げられて奉行所の庭木に吊るされてしまう。


ここで喜八は妻に揺り起こされる。見れば自宅で昼寝していたようである。妻が言うにはだいぶうなされており、今までのことは夢であった。喜八が助かったと安心していると妻が言う。「どんな夢を見ていたんだい?」
吊るされた八五郎が途方に暮れていると、突風が吹いて八五郎の体が宙に浮く。気が付くと山奥にいて、目の前には大[[天狗]]が立っている。奉行所の上空を飛翔中、理不尽な責苦を負わされている八五郎に気が付いたので、助けてやったのだと大天狗は言う。大天狗も八五郎の夢のことを聞きたがる。「夢を見ていないので話しようがない」と八五郎は今まで同様に弁解するが、やはり信じてもらえない。大天狗は怒り出し、八五郎の喉元につかみかかる。首筋に大天狗の長い爪が食い込み、八五郎は苦しみ悶える。


== 脚注 ==
気が付くと八五郎は家で寝ていて、妻に揺り起こされていた。うなされていたようだ。「お前さん、どんな夢を見ていたんだい?」
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 演出など ==
== 参考文献 ==
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*TVなどの放送においては放送時間の関係のため、奉行所の場面で夢から醒めるという短縮バージョン、「夢の喧嘩」という題目で演じられる場合がある。
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*[[桂米助]](ヨネスケ)は、設定を現代に置き換え、天狗の代わりに[[長嶋茂雄]]を登場させた「長嶋裁き」を演じている。
| author = 東大落語会
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| year = 1969
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2023年10月22日 (日) 13:55時点における最新版

天狗裁き(てんぐさばき)は、古典落語の演目。元は上方落語であり、長尺の噺である羽団扇(はうちわ)の前半分と共通している[1][注釈 1]

現在の演出は、3代目桂米朝が発掘・再構成し復活させたものによる。江戸落語では10代目金原亭馬生のものが有名[2]

あらすじ

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家で昼寝をしていた喜八は妻に揺り起こされる。寝言や寝顔などが、どうもおかしかったらしく「どんな夢を見ていたんだい?」と尋ねられるが、喜八はまったく覚えていないので「見ていない」と言う。しかし、妻は喜八が何か人には言えないような夢を見たために嘘をついたと考え、しつこく尋ね返す。喜八も「見てない」と繰り返すが、この押し問答は最終的に激しい夫婦喧嘩に発展する。

あまりに五月蝿いので喧嘩に気づいた隣人の徳がやってきて2人から事情を聞く。徳はたかが夢ごときでこんな喧嘩はいけないと仲裁するが、直後に喜八に「で、どんな夢を見たんだ?」と尋ねる。だから見てないと喜八も返すが、徳は納得せず、今度は喜八と徳が喧嘩を始める。この騒動を聞いて、今度は長屋の大家がやってきて、たかが夢ごときと2人を仲裁するが、やはり大家も喜八に「私には夢の内容を教えろ」と言う。やはり喜八が見てないと言うと、激怒した大家は長屋から出て行けと言う。

話が大きくなってしまい奉行所が裁くことになる。話を聞いた奉行は、こんなことでお上の手を煩わせるとは何事だと大家を注意する。こうして一件落着かと思いきや、奉行も喜八にどんな夢を見たのかと尋ねる。やはり喜八は見てないと答えると、激怒した奉行は、喜八を奉行所の庭木に吊るすよう命じる。

庭木に吊るされ途方に暮れる喜八であったが突然、突風に身体を巻き上げられると、そのまま気づいたらどこかの山奥にいる。そして目の前には大天狗がおり、たまたま奉行所の上空を通ったところ理不尽な目に遭っているのを見つけたので助けてやったという。喜八は感謝するが、やはり大天狗も夢の内容を聞いてくる。喜八も見てないと同様に弁解するが、激怒した大天狗はその首を掴む。喜八は首筋に大天狗の長い爪が食い込むため悶え苦しむ。

ここで喜八は妻に揺り起こされる。見れば自宅で昼寝していたようである。妻が言うにはだいぶうなされており、今までのことは夢であった。喜八が助かったと安心していると妻が言う。「どんな夢を見ていたんだい?」

脚注

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注釈

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  1. ^ 羽団扇では喜八は夢の内容を覚えており、天狗には明かす[1]

出典

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  1. ^ a b 東大落語会 1969, pp. 360–361, 『羽団扇』.
  2. ^ 東大落語会 1969, pp. 311, 『天狗裁き』.

参考文献

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  • 東大落語会 (1969), 落語事典 増補 (改訂版(1994) ed.), 青蛙房, ISBN 4-7905-0576-6