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[[Image:Russian regalia.jpg|thumb|[[ロシア皇帝]]のレガリア]]
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'''レガリア'''({{lang-la|regalia}}{{lang-en|regalia}}リゲイリア)は、[[王権]]などを象徴し、それを持つことによって正統な[[王]]、[[君主]]であると認めさせる'''[[象徴]]'''となる'''物品'''である。また、王の所有する特権(貨幣[[鋳造権]]、[[採掘権]]など)を指すのにも使用される。


== 概説 ==
「王の物」を意味するラテン語 ''regalis'' の複数形で、1530年代から使用されるようになった<ref>[https://www.etymonline.com/word/regalia regalia | Origin and meaning of regalia by Online Etymology Dictionary]</ref><ref>王の所有物は一杯るので、[[絶対複数]](常に複数形の形で用いられる。しかし、[[ハルツ山地]]鉱山用の治水特権(ドイツ語:[[:de:Oberharzer Wasserregal|Oberharzer Wasserregal]])は、王の特権の一つなので単数形であらわす</ref>
「王の物」を意味する[[ラテン語]] ''[[wikt:regalis#ラテン語|regalis]]'' の[[複数形]]で、1530年代から使用されるようになった<ref>[https://www.etymonline.com/word/regalia regalia | Origin and meaning of regalia by Online Etymology Dictionary]</ref>{{efn2|王の所有物は多数り常に複数形([[絶対複数]])で用いられる。[[ハルツ山地]]鉱山用の治水特権(ドイツ語:[[:de:Oberharzer Wasserregal|Oberharzer Wasserregal]])は、そのような王の特権のうちの一つとして単数形であらわされた。}}


[[天叢雲剣]]などの刀剣、[[伝国璽]]などの印璽が用いられる例があるほか、西欧諸国においては[[西洋の冠|王冠]]・[[王笏]]・[[宝珠]]の3種がよくられる。あるいは広く、地位や官位を示す[[記章]]など。特に英米では、[[卒業式]]の正装一式をリゲイリアと呼び、[[ガウン]]・[[帽子]]・[[タッセル]]・[[頭巾|フード]]などからなる
[[天叢雲剣]]などの[[刀剣]]、[[伝国璽]]などの[[印璽]]が用いられる例があるほか、西欧諸国においては[[西洋の冠|王冠]]・[[王笏]]・[[宝珠]]の3種がよくられる。あるいは広く、地位や官位を示す[[記章]]など。

[[アフリカ]]のいくつかの国(アシャンティ王国<ref>African Axes 著:Carl Gösta Widstrand 出版:Almqvist & Wiksells Boktryckeri, 1958年 164 ページ</ref>、[[ダホメ王国]]<ref>Unesco Courier - 第 19 巻 - 27 ページ</ref>ほか<ref>[https://africa.uima.uiowa.edu/chapters/governance/regalia/?start=5 REGALIA BY MARY NOOTER ROBERTS UNIVERSITY OF CALIFORNIA, LOS ANGELES]([[アイオワ大学]])</ref>)、[[地中海]]の[[ミノス文明]]<ref>[[角田文衛]]・[[上田正昭]] 監修 『古代王権の誕生 Ⅰ 東アジア編』 [[角川書店]] 2003年 p.12.</ref>、[[古代中国]]・日本で[[斧|斧鉞]]は王権の象徴とされた<ref>{{kotobank|斧鉞-616228|デジタル[[大辞泉]]|斧鉞/鈇鉞}}</ref><ref>{{kotobank|斧鉞・鈇鉞-371342|精選版 [[日本国語大辞典]]|斧鉞・鈇鉞}}</ref>。中国の[[殷代]]頃には、黄鉞([[金|黄金]]飾りの鉞)は斬首刑用の道具として刑を執行する王の持ち物とされ王の象徴となっていた(ちなみに斧の刃を下にした象形文字が「王」の字となった<ref>日本大百科全書 第3巻 798 ページ</ref><ref>漢字: 生い立ちとその背景 岩波書店, 1970年 著:白川静 p.18</ref>)<ref>{{kotobank|鉞-36744|[[世界大百科事典]] 第2版|鉞}}</ref>。この伝統は古代日本にも伝わっている<ref>日本書紀 景行天皇</ref><ref>日本書紀 神功皇后</ref>。

特に英米では、[[卒業式]]の正装一式をリゲイリアと呼び、[[ガウン]]・[[帽子]]・[[タッセル]]・[[頭巾|フード]]などからなる。


== レガリアの例 ==
== レガリアの例 ==
;アジア
* [[三種の神器]] - 日本国天皇
* [[九鼎]] - [[三代 (中国史)#三代|中原]]の天子
* [[伝国璽]]- 中国皇帝
*[[三種の神器]] - 日本国天皇
* [[五種の神器]] - タイ国王
* [[五種の神器]] - タイ国王
;アフリカ
* [[ジョワユーズ]] - フランス国王
* [[連合王国の戴冠宝器]] - イギリス国王のレガリアである王冠、王笏、宝珠などを含む
* [[九鼎]] - 中国の周王朝
* [[黄金の床几]] - [[アシャンティ王国]]のレガリア、これをめぐって[[黄金の床几戦争]]が起きた。
* [[黄金の床几]] - [[アシャンティ王国]]のレガリア、これをめぐって[[黄金の床几戦争]]が起きた。

;中東
* ムハンマドの杖と聖外套 ‐ [[イスラム帝国]][[アッバース朝]]の[[カリフ]]権の象徴<ref>{{Cite web|和書|author=竹下正孝 |date= 2007 |url= http://www.jccme.or.jp/japanese/11/pdf/11-05/11-05-40.pdf |title= 文化紹介 イスラームにおける聖遺物 |work= 中東情勢分析 2007年10/11月号 |publisher= 中東協力センターニュース |accessdate=2018-04-23 |ref=take}} p.37</ref>
* {{ill2|オスマンの剣|en|Sword of Osman}} - オスマン帝国のスルタンの剣
* {{仮リンク|ジャムシードの杯|fa|جام_جم|en|Cup of Jamshid}} ‐ 多くの[[ペルシア文学|ペルシャ文学]]に登場し、それらの中で[[ペルシア帝国]]王継承の象徴とされた伝説上の支配者[[ジャムシード]]が所有した[[]]

;ヨーロッパ
* {{ill2|オランダのレガリア|en|Regalia of the Netherlands}}
* {{ill2|ギリシャのレガリア|en|Greek crown jewels}}
* {{ill2|フランス王国のレガリア|fr|Regalia du royaume de France}}([[ジョワユーズ]]、シャルルマーニュの冠など) - フランス国王
* [[連合王国の戴冠宝器]] - イギリス国王のレガリアである王冠、王笏、宝珠などを含む
* {{ill2|神聖ローマ帝国のレガリア|en|Imperial Regalia}}
* {{ill2|神聖ローマ帝国のレガリア|en|Imperial Regalia}}
* [[漁師の指輪]](漁夫の指輪とも) ‐ [[ローマ教皇]]のレガリア
* ムハンマドの杖と聖外套 ‐ [[イスラム帝国]][[アッバース朝]]の[[カリフ]]権の象徴<ref>{{Cite web
* [[聖イシュトヴァーンの王冠]] ‐ [[ハンガリー王国]]のレガリア
|author=竹下正孝

|date= 2007
;北米
|url= http://www.jccme.or.jp/japanese/11/pdf/11-05/11-05-40.pdf
* [[ウォーボンネット]] - [[ネイティブアメリカン]]の酋長や勇者が身に帯びる冠
|title= 文化紹介 イスラームにおける聖遺物
|work= 中東情勢分析 2007年10/11月号
|publisher= 中東協力センターニュース
|accessdate=2018-04-23
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== 特権 ==
== 特権 ==
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レガリアという言葉は、大公や皇帝等、称号に関わらず独占的に行使できる特権に対しても使用される。代表的な例として、自身の肖像が刻印された貨幣の鋳造権などである。支配力が弱い国家では、侵害されることが多かった。
レガリアという言葉は、大公や皇帝等、称号に関わらず独占的に行使できる特権に対しても使用される。代表的な例として、自身の肖像が刻印された貨幣の鋳造権などである。支配力が弱い国家では、侵害されることが多かった。


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== 脚注 ==
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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* [[戴冠式]]
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* [[玉座]]
* [[玉座]]
* [[玉璽]] - 中国の歴代王朝で使用した伝国璽や、古代中国王朝が属国の支配者に送った[[金印]]などの事。
* [[御倉板挙之神]] - 日本の神話に登場する[[高天原]]の統治権を象徴する首飾り。
* [[御倉板挙之神]] - 日本の神話に登場する[[高天原]]の統治権を象徴する首飾り。
* [[聖遺物]]
* [[玉璽]] 中国の歴代王朝で使用した伝国璽や、古代中国王朝が属国の支配者に送った[[金印]]などの事。
* {{仮リンク|クラウンジュエル (宝器)|en|Crown jewels}}
* {{仮リンク|ジャムシードの杯|en|Cup of Jamshid}} ‐ 多くのペルシャ文学に登場し、それらの中で[[ペルシア帝国]]王継承の象徴とされた伝説上の支配者[[ジャムシード]]が所有した杯。
* [[王権神授説]]
* [[漁師の指輪]]([[:en:Ring of the Fisherman|en]]、漁夫の指輪とも) ‐ ローマ法王のレガリア
** {{仮リンク|クワルナフ|en|Khvarenah}}(別名:カウィの光輪) - ゾロアスター教でアフラ・マズダーが王となるものに与える光輪

** [[ハンムラビ法典]] - [[シャマシュ]]神よりハンムラビ王へ王権の象徴として輪と聖杖を授けられる図が描かれている。
** [[皇帝教皇主義]]、{{ill2|帝王教権説|en|Regalism}} - キリスト教の権力より王権などが優越されるという考え方。
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[[Category:ラテン語の語句]]
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2023年11月1日 (水) 16:00時点における最新版

ロシア皇帝のレガリア
ボヘミア王のレガリアのレプリカ
ハンガリーのレガリア。聖イシュトヴァーンの王冠など

レガリアラテン語: regalia英語: regalia、リゲイリア)は、王権などを象徴し、それを持つことによって正統な君主であると認めさせる象徴となる物品である。また、王の所有する特権(貨幣鋳造権採掘権など)を指すのにも使用される。

概説[編集]

「王の物」を意味するラテン語 regalis複数形で、1530年代から使用されるようになった[1][注 1]

天叢雲剣などの刀剣伝国璽などの印璽が用いられる例があるほか、西欧諸国においては王冠王笏宝珠の3種がよく見られる。あるいは広く、地位や官位を示す記章など。

アフリカのいくつかの国(アシャンティ王国[2]ダホメ王国[3]ほか[4])、地中海ミノス文明[5]古代中国・日本で斧鉞は王権の象徴とされた[6][7]。中国の殷代頃には、黄鉞(黄金飾りの鉞)は斬首刑用の道具として刑を執行する王の持ち物とされ王の象徴となっていた(ちなみに斧の刃を下にした象形文字が「王」の字となった[8][9][10]。この伝統は古代日本にも伝わっている[11][12]

特に英米では、卒業式の正装一式をリゲイリアと呼び、ガウン帽子タッセルフードなどからなる。

レガリアの例[編集]

アジア
アフリカ
中東
ヨーロッパ
北米

特権[編集]

レガリアという言葉は、大公や皇帝等、称号に関わらず独占的に行使できる特権に対しても使用される。代表的な例として、自身の肖像が刻印された貨幣の鋳造権などである。支配力が弱い国家では、侵害されることが多かった。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 王の所有物は多数あり常に複数形(絶対複数)で用いられる。ハルツ山地鉱山用の治水特権(ドイツ語:Oberharzer Wasserregal)は、そのような王の特権のうちの一つとして単数形であらわされた。

出典[編集]

  1. ^ regalia | Origin and meaning of regalia by Online Etymology Dictionary
  2. ^ African Axes 著:Carl Gösta Widstrand 出版:Almqvist & Wiksells Boktryckeri, 1958年 164 ページ
  3. ^ Unesco Courier - 第 19 巻 - 27 ページ
  4. ^ REGALIA BY MARY NOOTER ROBERTS UNIVERSITY OF CALIFORNIA, LOS ANGELES(アイオワ大学)
  5. ^ 角田文衛上田正昭 監修 『古代王権の誕生 Ⅰ 東アジア編』 角川書店 2003年 p.12.
  6. ^ デジタル大辞泉斧鉞/鈇鉞』 - コトバンク
  7. ^ 精選版 日本国語大辞典斧鉞・鈇鉞』 - コトバンク
  8. ^ 日本大百科全書 第3巻 798 ページ
  9. ^ 漢字: 生い立ちとその背景 岩波書店, 1970年 著:白川静 p.18
  10. ^ 世界大百科事典 第2版『』 - コトバンク
  11. ^ 日本書紀 景行天皇
  12. ^ 日本書紀 神功皇后
  13. ^ 竹下正孝 (2007年). “文化紹介 イスラームにおける聖遺物”. 中東情勢分析 2007年10/11月号. 中東協力センターニュース. 2018年4月23日閲覧。 p.37

関連項目[編集]