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== 概要 ==
== 概要 ==
セマウル号の原型は[[1969年]]に登場した'''[[超特急]]観光号'''で、[[1974年]]の[[首都圏電鉄]]([[広域電鉄]])開業に合わせて現行名に改称した。だセマウル運動た朴正煕が暗殺された後の[[1980年]]、によって名称が廃止され名無しの「超特急」となった。[[1984年]]に名称復活
セマウル号の原型は[[1969年]]に登場した'''[[超特急]]・[[観光号 (韓国)|観光号]]'''で、[[1974年]]の[[首都圏電鉄]]([[広域電鉄]])開業に合わせて現行名に改称した。し、セマウル運動の推者であっ[[朴正煕暗殺事件|朴正煕が暗殺された]]ため、政治的影響によって[[1980年]]から[[1984年]]までの間は名称が廃止され名無しの「超特急」となっていた。
[[ファイル:Saemaeul Ticket 2006.png|サムネイル|2006年当時のセマウル号のチケット]]
[[韓国高速鉄道|韓国高速鉄道(KTX)]]開業以前の最[[優等列車]]で、客室は[[JR]]の[[グリーン車]]にあたる特室と[[普通車]]にあたる一般室がある。かつてはソウルと地方都市を結ぶ主要路線網羅しており、[[京釜線]]では18往復が設定され、最速列車は[[ソウル駅|ソウル]] - [[釜山駅|釜山]]を4時間10分で結び、途中停車駅も[[大田駅|大田]]と[[東大邱駅|東大邱]]のみであった。[[2004年]]のKTX開業以降は最優等列車としての座を譲り渡し、地方の中心駅への停車や運行本数の見直しなど抜本的な改革が行われた。


運行される列車は[[ディーゼル機関車]]牽引による[[客車]]のみであるが、[[1987]]から[[2013年]]1月まではプッシュ・プル方式の[[気動車]](PP動車)による運用も存在した。両者はほぼ同一で内装も変わらない(ただしPP動車の[[内燃機関|エンジン]]のある先頭と最後尾車両の客席については[[振動運動|振動]]と騒音が大きく、長時間乗車には不向きであった)。全列車が席[[指定席]]であり[[自由席]]は[[2000年]]ごろから1両だけ設定したが短期間で廃止された。その後[[2011年]]1月現在、平日に限り5号車1両を自由席として運用している。
[[韓国高速鉄道|韓国高速鉄道(KTX)]]開業以前の最[[優等列車]]で、客室は[[JR]]の[[グリーン車]]にあたる特室と[[普通車]]にあたる一般室があるが、一般客室でも日本のJR[[特別急行列車|特急]]のグリーン車並である。ソウルと地方都市を結ぶ主要路線網羅しており、かつて最速列車は[[ソウル駅|ソウル]][[釜山駅|釜山]]を4時間10分で結び、途中停車駅も[[大田駅|大田]]と[[東大邱駅|東大邱]]だけであった。また京釜線だけで18往復あった。


塗装は旧型客車と9201系動車(下記)が白地に窓周りが青の帯、[[ステンレス]]客車は青帯に白のアクセントが入っていた。PP動車(下記)は先頭車の[[運転席]]からボンネットにかけてが赤、それ以外はステンレス客車と同じだったが、後に両者とも緑と黄色の帯に塗り替えられた。その後[[鉄道庁 (韓国)|韓国鉄道庁]]の[[公社]]化(KORAILへの移行)に伴い、黄色・白・紺の帯に塗り替えられている。
[[2013年]][[2月]]現在のは[[機関車]]牽引による[[客車]]のみであるが、年[[1月]]まではプッシュ・プル方式の[[気動車]](PP動車)による運用も存在した。両者はほぼ同一で内装も変わらない(ただしPP動車の[[エンジン]]のある先頭と最後尾車両の客席については[[振動運動|振動]]と[[騒音]]が大きく、長時間乗車には不向きであ)。全列車が席[[指定席]]で、[[2000年]]ごろから1両だけ[[自由席]]にしたが短期間で廃止た。[[2011年]]1月現在、平日に限り5号車1両を自由席として運用している。


[[2014年]][[5月12日]]より当列車の後継として、[[韓国鉄道公社210000系電車|210000系電車]]を使用した'''[[ITX-セマウル]]'''が運行を開始し、同年[[6月30日]]には非電化区間のある[[中央線 (韓国)|中央線]]・[[東海南部線]]・[[長項線]]を除いた全てのセマウル号がITX-セマウルに置き換えられた。その後、中央線のセマウル号は2014年[[11月1日]]に運行区間短縮の上ITX-セマウルに置き換えられ、東海南部線での運行も[[2015年]][[4月1日]]をもって終了した。
旧型客車と9201系動車(下記)が白地に窓周りが青の帯、[[ステンレス]]客車は青帯に白のアクセントが入っていた。PP動車(下記)は先頭車の[[運転席]]からボンネットにかけてが赤、それ以外はステンレス客車と同じだったが、後に両者とも緑と黄色の帯に塗り替えられた。その後[[鉄道庁 (韓国)|韓国鉄道庁]]の[[公社]]化(KORAILへの移行)に伴い、黄色・白・紺の帯に塗り替えられている。


以降は長項線の列車([[龍山駅 (ソウル特別市)|龍山]] - [[益山駅|益山]])が唯一の運行路線となり、[[2018年]][[4月30日]]には老朽化した従来の客車での運行を終了。翌[[5月1日]]からはモノクラス化の上、[[ムグンファ号]]客車をセマウル号仕様に改造した客車(リミット車タイプをITX-セマウルと同一塗装に塗り替えたもの。但し電源車は以前からのものをそのまま流用)に置き換えて運行されている。
客車の老朽化に伴い、[[2018年]]までに退役することが決まっている。後継として、電車特急の'''[[ITX-セマウル]]'''が[[2014年]][[5月12日]]より運行を開始しており、同年[[6月30日]]には[[中央線 (韓国)|中央線]]・[[東海南部線]]・[[長項線]]以外の路線でのセマウル号がITX-セマウルに置き換えられ、[[釜山駅]]発着列車が廃止。[[2015年]][[3月30日]]をもって東海南部線での運行が終了し、[[ソウル駅]]発着列車が全廃となり、以降は長項線のみの運行となる。


[[2021年]][[1月4日]]、[[文在寅]][[大統領 (大韓民国)|大統領]]は全てのディーゼル機関車牽引による旅客列車を、[[2029年]]までに[[韓国鉄道公社150000系電車|KTX-イウム(150000系)]]に置き換える方針を発表した<ref>{{Cite news|url=https://www.yna.co.kr/view/AKR20210104091700001 |title=문대통령 "2029년까지 全디젤기관차 KTX-이음으로 대체"|date=2021-01-04|language=ko|publisher=[[聯合ニュース]]}}</ref>。これにより、全列車がディーゼル機関車牽引であるセマウル号は2029年までに消滅する見通しである。
=== KTXの開業による影響 ===
* 停車駅が増え(地方市郡の代表駅にも停車)、ソウル - 釜山間では最速でも5時間ほどかかるようになった。
* 京釜線では大幅に本数が削減され、[[2008年]]には、京釜線のみを走行する列車は5往復程度となった。しかし、その分が[[長項線]]や[[全羅線]]、[[東海南部線]]に振り向けられ、これらの線区では増発となった。
* 東大邱~慶州~蔚山・浦項を結ぶ連絡シャトル列車が10往復設定されたが、年内にすべて廃止され、ソウル直通列車が増発された。
* [[中央線 (韓国)|中央線]]・[[太白線]]系統の計3往復は2006年改正で廃止され、新たに[[京義線]]・[[鎮海線]]での短距離列車が設定された。(京義線セマウル号は[[2009年]]のソウル~汶山間広域電鉄化により廃止) たたし、[[中央線 (韓国)|中央線]]系統のセマウル号は[[2010年]][[12月15日]]から1日1往復で運行を再開した。


== 運行路線 ==
== 運行路線 ==
* [[長項線]]([[京釜線]]直通):龍山 - 天安 - 長項 - 益山(6往復)
* [[長項線]]([[京釜線]]直通):[[龍山駅 (ソウル特別市)|龍山]] - [[天安駅|天安]]経由 - [[益山]]間(1日5往復)
=== 停車駅 ===
:[[龍山駅 (ソウル特別市)|龍山駅]] - [[永登浦駅]] - [[水原駅 (京畿道)|水原駅]] - ([[平沢駅]]) - [[天安駅]] - [[牙山駅]] - [[温陽温泉駅]] - ([[新礼院駅]]) - [[礼山駅]] - ([[挿橋駅]]) - [[洪城駅]] - [[広川駅]] - [[大川駅 (忠清南道)|大川駅]] - [[熊川駅 (忠清南道)|熊川駅]] - [[舒川駅]] - [[長項駅]] - [[群山駅]] - [[益山駅]]
*( )は一部列車停車。


== セマウル号の気動車 ==
== セマウル号の気動車 ==
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=== DHC ===
=== DHC ===
[[ファイル:PP-DHC.jpg|thumb|right|セマウル号の気動車]]
[[ファイル:PP-DHC.jpg|thumb|right|セマウル号の気動車]]
[[1987年]]から2013年まで運行されていた2代目の気動車は全てプッシュ・プル気動車'''DHC''' (Diesel Hyduralic Car)であり、プッシュ・プルを略して'''PP動車'''とも呼ばれている。両端の先頭車のうち半室が機関室(PMCと呼ぶ)で残りが客室であり、中間車は[[付随車]]で、[[動力集中方式|集中動力方式]]であり、気動車というよりは狭い客室を備えた[[ディーゼル機関車]]と[[客車]]の組合せによる編成と考えてもよい。ただ、PP動車は力が弱く[[山岳]]路線に不向きだったため、[[勾配]]のきつい路線では大出力の機関車を利用した客車編成である。最高速度はいずれも140km/h。先頭車PMCには[[ドイツ]]製大出力エンジンを2基搭載している。そのためPMCの客室は騒音と振動が激しいが、中間車は無動力なので非常に静かである。2013年[[1月5日]]をもって気動車編成による運行を終了、両端先頭車は廃車となり、中間付随車については機関車牽引による客車として引き続き使用されてい
[[1987年]]から2013年まで運行されていた2代目の気動車は全てプッシュ・プル気動車'''DHC''' (Diesel Hyduralic Car)であり、プッシュ・プルを略して'''PP動車'''とも呼ばれている。両端の先頭車のうち半室が機関室(PMCと呼ぶ)で残りが客室であり、中間車は[[付随車]]で、[[動力集中方式|集中動力方式]]であり、気動車というよりは狭い客室を備えた[[ディーゼル機関車]]と[[客車]]の組合せによる編成と考えてもよい。ただ、PP動車は力が弱く[[山岳]]路線に不向きだったため、[[線形 (路線)#勾配|勾配]]のきつい路線では大出力の機関車を利用した客車編成である。最高速度はいずれも140km/h。先頭車PMCには[[ドイツ]]製大出力エンジンを2基搭載している。そのためPMCの客室は騒音と振動が激しいが、中間車は無動力なので非常に静かである。2013年[[1月5日]]をもって気動車編成による運行を終了、両端先頭車は廃車となり、中間付随車については機関車牽引による客車として引き続き使用されていたが、老朽化に伴い、[[2018年]][[4月30日]]をもって運行を終了した


'''101系'''は1987年から導入された。運行開始当初は211系。[[大宇重工業]]製で6両編成2本、5両編成2本の22両が製された。先頭車101型と付随車301・501型が一般室、601型は特室と食堂が半室ずつで構成されている。5両編成2本は111系増備の際に6両編成化された。
'''101系'''当初は211系)は[[1987年]]導入。[[大宇重工業]]製で6両編成2本、5両編成2本の22両が製された。先頭車101型と付随車301・501型が一般室、601型は特室と食堂が半室ずつで構成されている。5両編成2本は111系増備の際に6両編成化された。


[[ファイル:88 peace train of Korean National Railroad.jpg|thumb|right|登場当時の111系。1988年に運行された「世界平和列車」の装飾つき。]]
[[ファイル:88 peace train of Korean National Railroad.jpg|thumb|right|登場当時の111系。1988年に運行された「世界平和列車」の装飾つき。]]


'''111系'''(当初は231系)は[[1988年]]導入。101系に比べ出力を30パーセントアップした。大宇、現代精工、[[韓進重工業]]によって製造された。こちらは8両編成で、9両編成や2編成をつないだ16両編成も可能で、柔軟な運用に対応している。先頭車111型、[[付随車]]の301・501・521・571型が一般車、特室は611・681型、[[食堂車]]は801型である。国鉄による導入だけではなく、政府資金による調達車両を、国鉄で借り受けるリース方式による車両も多く、それによって急速かつ大量に導入することが出来た。なお、釜田-益山間併結で湖南線木浦、全羅線麗水行きになる列車が2往復ある
'''111系'''(当初は231系)は[[1988年]]導入。101系に比べ出力を30パーセントアップした。大宇、現代精工、[[韓進重工業]]によって製造された。こちらは8両編成で、9両編成や2編成をつないだ16両編成も可能で、柔軟な運用に対応している。先頭車111型、[[付随車]]の301・501・521・571型が一般車、特室は611・681型、[[食堂車]]は801型である。国鉄による導入だけではなく、政府資金による調達車両を、国鉄で借り受けるリース方式による車両も多く、それによって急速かつ大量に導入することが出来た。


'''251系'''は[[1992年]]導入の8両全特室編成で、基本性能は111系と変わらない。先頭車251型、付随車の701・751・781は全て特室、食堂車は871型である。こちらもリース方式で導入された車両が多い。現在、全特室編成はなくなり、111と251は混用して運行している
'''251系'''は[[1992年]]導入の8両全特室編成で、基本性能は111系と変わらない。先頭車251型、付随車の701・751・781は全て特室、食堂車は871型である。こちらもリース方式で導入された車両が多い。


なお、111・251系の合計は416両、101系22両を合わせて438両である。その後、[[踏切]][[事故]]などで3両が失われ、代替として[[2001年]]に4両が新造されたが、[[2003年]]陸橋落下による脱線事故で4両が失われた。
111・251系416両、101系22両を合わせて、合計438両が在籍していた。その後、[[踏切]][[事故]]などで3両が廃車され、代替として[[2001年]]に4両が新造された[[2003年]]には[[西大田駅]]付近で発生した陸橋落下による脱線事故で4両が廃車となった。


廃車後は数両が静態保存されている。111系126号([[京釜線]][[清道駅]]で保存)と130号([[大田鉄道車両管理段]]で保存)は韓国鉄道公社による[[鉄道記念物]]に指定されている。
また、食堂車は売店・カラオケルーム(K-POPのみ)・マッサージ機、PC(日本語入力は不可能)、ゲームを置いたカフェカーに改装されている。


=== 慶福号 ===
=== 慶福号 ===
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|title=慶福号
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DHCの車体を流用した、[[大統領]]や国賓を輸送する[[VIP]]専用車両である。4両編成2本の存在が明らかとなっているが、保安上の理由から内装・性能などの詳細は非公表であり、また大韓民国政府の保有である。外観は先頭形状が幾分異なる以外は、DHCと変わらない。主に国内輸送に用いられ、[[金大中]][[韓国大統領|大統領]]が[[ジョージ・ウォーカー・ブッシュ|ブッシュ]][[アメリカ合衆国大統領|米大統領]]を伴って[[都羅山駅]]と南北鉄道連結事業を視察した際にも利用された。
DHCの車体を流用した、[[大統領 (大韓民国)|大統領]]や国賓を輸送する[[要人|VIP]]専用車両である。4両編成2本の存在が明らかとなっているが、保安上の理由から内装の詳細は非公表であり、また大韓民国政府の保有である。外観は先頭形状が幾分異なる以外は、DHCと変わらない。主に国内輸送に用いられ、[[金大中]]大統領が[[ジョージ・ウォーカー・ブッシュ|ブッシュ]][[アメリカ合衆国大統領|米大統領]]を伴って[[都羅山駅]]と南北鉄道連結事業を視察した際にも利用された。


== セマウル号の客車 ==
== セマウル号の客車 ==
<!--鉄ピク'70年1月号にも記事があるとのこと-->[[ファイル:Saemaeul Exp passenger car of Korean National Railroad.jpg|thumb|right|初期のセマウル号の鋼製客車、1988年撮影]]
<!--鉄ピク'70年1月号にも記事があるとのこと-->[[ファイル:Saemaeul Exp passenger car of Korean National Railroad.jpg|thumb|right|初期のセマウル号の鋼製客車、1988年撮影]]


かつて<ref>鉄道ジャーナル 21号</ref>観光号車両は[[1969年]]以降に製造された車両で、日本の客室設備を参考にしていたため、新幹線[[新幹線0系電車|0系]]車両に塗色が似ていた。ステンレス製車両の導入により、旧型客車は全て[[ムグンファ号]]に格下げされた。
かつて<ref>鉄道ジャーナル 21号</ref>[[観光号 (韓国)|観光号]]で使われた車両は[[1969年]]以降に製造された車両で、日本の客室設備を参考にしていたため、新幹線[[新幹線0系電車|0系]]車両に塗色が似ていた。ステンレス製車両の導入により、旧型客車は全て[[ムグンファ号]]に格下げされた。


現在の客車は[[1986年]]から[[1991年]]にかけて、7000形機関車と共に製造されたもので、157両が登場した。車体はステンレス製で高速走行が可能なように足回りも強化してある。外観も内装も、続いて登場したPP動車(上記)の中間車と全く変わらない。
現在の客車は[[1986年]]から[[1991年]]にかけて、7000形機関車と共に製造されたもので、157両が登場した。車体はステンレス製で高速走行が可能なように足回りも強化してある。外観も内装も、続いて登場したPP動車(上記)の中間車と全く変わらない。
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[[1992年]]からPP動車を大量に導入したため、このステンレス新型客車にも余剰車両が発生し、[[1993年]]に56両が[[ムグンファ号]]に再び格下げとなった。ムグンファ号に格下げされた56両は「流線型」と称され、全特室列車として運行したが、[[2004年]]のKTX開業と共に定期運用から外れた。[[1999年]]と[[2001年]]に増発用として計14両(食堂車2)が新たに導入され、総数115両となっている。


ステンレス客車の内、定期運用から外れた食堂車だけで編成されるイベント列車「ワイントレイン」も臨時・団体列車で運行されている。
ステンレス客車の内、定期運用から外れた食堂車だけで編成されるイベント列車「ワイントレイン」も臨時・団体列車で運行されているが、2018年の[[長項線|長頂線]]セマウル号置き換えに伴い、ムグンファ号及びITX-セマウルに転用される一部の電源車以外は、耐用年数を超える事からすべて廃車される予定となっている。


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2023年12月24日 (日) 02:14時点における最新版

セマウル号
7300形ディーゼル機関車牽引のセマウル号
各種表記
ハングル 새마을호
漢字 새마을號
発音 セマウロ
(セマウ=ホ)
2000年式
MR式
英語
Saemaeul-ho
Saemaŭl-ho
Saemaeul
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セマウル号(セマウルごう)は、韓国鉄道公社(KORAIL)の列車種別。「セマウル」とは「新しい村」の意で、朴正煕政権が推進したセマウル運動にちなむ。2000年代初頭まで韓国を代表する優等列車であったが、韓国高速鉄道(KTX)や後継の種別となる「ITX-セマウル」の登場によって運行範囲が縮小され、2015年以降は長項線でのみ運行されている。

概要

[編集]

セマウル号の原型は1969年に登場した超特急観光号で、1974年首都圏電鉄広域電鉄)開業に合わせて現行名に改称した。ただし、セマウル運動の推進者であった朴正煕が暗殺されたため、政治的影響によって1980年から1984年までの間は名称が廃止されて名無しの「超特急」となっていた。

2006年当時のセマウル号のチケット

韓国高速鉄道(KTX)開業以前の最優等列車で、客室はJRグリーン車にあたる特室と普通車にあたる一般室がある。かつてはソウルと地方都市を結ぶ主要路線を網羅しており、京釜線では18往復が設定され、最速列車はソウル - 釜山を4時間10分で結び、途中停車駅も大田東大邱のみであった。2004年のKTX開業以降は最優等列車としての座を譲り渡し、地方の中心駅への停車や運行本数の見直しなど抜本的な改革が行われた。

運行される列車はディーゼル機関車牽引による客車のみであるが、1987年から2013年1月まではプッシュ・プル方式の気動車(PP動車)による運用も存在した。両者はほぼ同一で内装も変わらない(ただしPP動車のエンジンのある先頭と最後尾車両の客席については振動と騒音が大きく、長時間乗車には不向きであった)。全列車が座席指定席であり、自由席2000年ごろから1両だけ設定したが短期間で廃止された。その後2011年1月現在、平日に限り5号車1両を自由席として運用している。

塗装は旧型客車と9201系動車(下記)が白地に窓周りが青の帯、ステンレス客車は青帯に白のアクセントが入っていた。PP動車(下記)は先頭車の運転席からボンネットにかけてが赤、それ以外はステンレス客車と同じだったが、後に両者とも緑と黄色の帯に塗り替えられた。その後韓国鉄道庁公社化(KORAILへの移行)に伴い、黄色・白・紺の帯に塗り替えられている。

2014年5月12日より当列車の後継として、210000系電車を使用したITX-セマウルが運行を開始し、同年6月30日には非電化区間のある中央線東海南部線長項線を除いた全てのセマウル号がITX-セマウルに置き換えられた。その後、中央線のセマウル号は2014年11月1日に運行区間短縮の上ITX-セマウルに置き換えられ、東海南部線での運行も2015年4月1日をもって終了した。

以降は長項線の列車(龍山 - 益山)が唯一の運行路線となり、2018年4月30日には老朽化した従来の客車での運行を終了。翌5月1日からはモノクラス化の上、ムグンファ号客車をセマウル号仕様に改造した客車(リミット車タイプをITX-セマウルと同一塗装に塗り替えたもの。但し電源車は以前からのものをそのまま流用)に置き換えて運行されている。

2021年1月4日文在寅大統領は全てのディーゼル機関車牽引による旅客列車を、2029年までにKTX-イウム(150000系)に置き換える方針を発表した[1]。これにより、全列車がディーゼル機関車牽引であるセマウル号は2029年までに消滅する見通しである。

運行路線

[編集]

停車駅

[編集]
龍山駅 - 永登浦駅 - 水原駅 - (平沢駅) - 天安駅 - 牙山駅 - 温陽温泉駅 - (新礼院駅) - 礼山駅 - (挿橋駅) - 洪城駅 - 広川駅 - 大川駅 - 熊川駅 - 舒川駅 - 長項駅 - 群山駅 - 益山駅
  • ( )は一部列車停車。

セマウル号の気動車

[編集]

DEC

[編集]

セマウル号に最初に登場した気動車は、9201系ディーゼル動車(当初は201系)DECで、5両編成2本が1980年からソウル~全州の間で運行したが、数年で廃止され、車両はその後ムグンファ号に転用された。詳細はムグンファ号の記事参照。

DHC

[編集]
セマウル号の気動車

1987年から2013年まで運行されていた2代目の気動車は全てプッシュ・プル気動車DHC (Diesel Hyduralic Car)であり、プッシュ・プルを略してPP動車とも呼ばれている。両端の先頭車のうち半室が機関室(PMCと呼ぶ)で残りが客室であり、中間車は付随車で、集中動力方式であり、気動車というよりは狭い客室を備えたディーゼル機関車客車の組合せによる編成と考えてもよい。ただ、PP動車は力が弱く山岳路線に不向きだったため、勾配のきつい路線では大出力の機関車を利用した客車編成である。最高速度はいずれも140km/h。先頭車PMCにはドイツ製大出力エンジンを2基搭載している。そのためPMCの客室は騒音と振動が激しいが、中間車は無動力なので非常に静かである。2013年1月5日をもって気動車編成による運行を終了、両端先頭車は廃車となり、中間付随車については機関車牽引による客車として引き続き使用されていたが、老朽化に伴い、2018年4月30日をもって運行を終了した。

101系(当初は211系)は1987年導入。大宇重工業製で6両編成2本、5両編成2本の22両が製造された。先頭車101型と付随車301・501型が一般室、601型は特室と食堂が半室ずつで構成されている。5両編成2本は111系増備の際に6両編成化された。

登場当時の111系。1988年に運行された「世界平和列車」の装飾つき。

111系(当初は231系)は1988年導入。101系に比べ出力を30パーセントアップした。大宇、現代精工、韓進重工業によって製造された。こちらは8両編成で、9両編成や2編成をつないだ16両編成も可能で、柔軟な運用に対応している。先頭車111型、付随車の301・501・521・571型が一般車、特室は611・681型、食堂車は801型である。国鉄による導入だけではなく、政府資金による調達車両を、国鉄で借り受けるリース方式による車両も多く、それによって急速かつ大量に導入することが出来た。

251系1992年導入の8両全特室編成で、基本性能は111系と変わらない。先頭車251型、付随車の701・751・781は全て特室、食堂車は871型である。こちらもリース方式で導入された車両が多い。

111・251系416両、101系22両を合わせて、合計438両が在籍していた。その後、踏切事故などで3両が廃車され、代替として2001年に4両が新造された。2003年には西大田駅付近で発生した陸橋落下による脱線事故で4両が廃車となった。

廃車後は数両が静態保存されている。111系126号(京釜線清道駅で保存)と130号(大田鉄道車両管理段で保存)は韓国鉄道公社による鉄道記念物に指定されている。

慶福号

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慶福号
旧塗装時代(現在はITX-セマウルに準拠した塗装)
各種表記
ハングル 경복호
漢字 慶福號
発音 キョンボコ
(キョンボ=ホ)
日本語読み: けいふくごう
2000年式
MR式
Gyeongbok-ho
Kyŏngpok-ho
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DHCの車体を流用した、大統領や国賓を輸送するVIP専用車両である。4両編成2本の存在が明らかとなっているが、保安上の理由から内装等の詳細は非公表であり、また大韓民国政府の保有である。外観は先頭形状が幾分異なる以外は、DHCと変わらない。主に国内輸送に用いられ、金大中大統領がブッシュ米大統領を伴って都羅山駅と南北鉄道連結事業を視察した際にも利用された。

セマウル号の客車

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初期のセマウル号の鋼製客車、1988年撮影

かつて[2]観光号で使われた車両は1969年以降に製造された車両で、日本の客室設備を参考にしていたため、新幹線0系車両に塗色が似ていた。ステンレス製車両の導入により、旧型客車は全てムグンファ号に格下げされた。

現在の客車は1986年から1991年にかけて、7000形機関車と共に製造されたもので、157両が登場した。車体はステンレス製で高速走行が可能なように足回りも強化してある。外観も内装も、続いて登場したPP動車(上記)の中間車と全く変わらない。

1992年からPP動車を大量に導入したため、このステンレス新型客車にも余剰車両が発生し、1993年に56両がムグンファ号に再び格下げとなった。ムグンファ号に格下げされた56両は「流線型」と称され、全特室列車として運行したが、2004年のKTX開業と共に定期運用から外れた。1999年2001年に増発用として計14両(食堂車2)が新たに導入され、総数115両となっている。

ステンレス客車の内、定期運用から外れた食堂車だけで編成されるイベント列車「ワイントレイン」も臨時・団体列車で運行されているが、2018年の長頂線セマウル号置き換えに伴い、ムグンファ号及びITX-セマウルに転用される一部の電源車以外は、耐用年数を超える事からすべて廃車される予定となっている。

脚注

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関連項目

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外部リンク

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