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「キュウシュウヒメオオクワガタ」の版間の差分

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{{生物分類表
== キュウシュウヒメオオクワガタムシ ==
| 画像=[[画像:Dorcus montivagus adachii 2007 Kagoshima.jpg|250px]]
★キュウシュウヒメオオクワガタムシ Dorcus Montivagus adachii(Fujita et Ichikawa) ★体長:♂32-52mm ♀28-38mm ★色彩:♂♀ともに黒色(艶消し) ★特徴:頭部・前胸・上翅が短く、幅が広い。光沢を欠き艶消し状。 ★特記:♂個体の後脚にトゲ状の突起がある。♀も同様にある。 ★ 分布:九州 (中国地方広島辺りまで ? ) 
| 画像キャプション=九州亜種:羽化直後のキュウシュウヒメオオクワガタ:羽化直後のため体色が赤いが1か月後には艶消しの黒色に変る。(鹿児島県産)
| 名称=ヒメオオクワガタ
| 省略=昆虫綱
| 目=[[甲虫類|甲虫目]] Coleoptera
| 亜目=カブトムシ亜目 Scarabaeoidea
| 科=[[クワガタムシ|クワガタムシ科]] Lucanidae
| 亜科=クワガタムシ亜科 Lucaninae
| 属=[[クワガタ属]] ''Dorcus''
| 亜属=アカアシクワガタ亜属<br />subgen. ''Nipponodorcus''
| 種=[[ヒメオオクワガタ]] ''D. montivagus''
| 亜種='''キュウシュウヒメオオクワガタ'''<br />''D. montivagus adachii''
| 学名=''Dorcus montivagus adachii'' (Fujita et Ichikawa)
| 和名=キュウシュウヒメオオクワガタ
}}
'''キュウシュウヒメオオクワガタ''' (''Dorcus montivagus adachii'') は[[甲虫目]][[クワガタムシ科]][[クワガタ属]]に属する[[ヒメオオクワガタ]]の1[[亜種]]である。


== 記載の経緯 ==
九州全域(福岡県・佐賀県・長崎県・大分県・宮崎県・熊本県・鹿児島県。沖縄県を除く)に生息している高山系のクワガタムシの[[ヒメオオクワガタ]]の1亜種として、1987年3月発売の『月刊むし』No. 193において紹介された。それまではヒメオオクワガタとして日本全域が同一種と思われていたが、九州に生息していた個体の特徴が、本州・北海道・四国に生息しているものと異なることが発見されて、九州の個体群は亜種キュウシュウヒメオオクワガタとして[[記載]]<!-- 「学会に登録」とは記載のこと? -->された。


== 特徴 ==
生息地は熊本県南部周辺が南限であるとされていたが、2007年6月に鹿児島県北部で確認できたため『くわがたマガジン』No. 37に南限更新として紹介された。


; 原名亜種[[ヒメオオクワガタ]]
: 北海道・本州(千葉県を除く)・四国
; 亜種キュウシュウヒメオオクワガタ
: 九州(沖縄県を除く)


体長はオスが32 - 52mm、メスが28 - 38mm。


体色はオス、メスともに黒色(つや消し)、外観は頭部・前胸・上翅が短く、幅が広い。光沢を欠きつや消し状。


=== 原名亜種との相違点 ===
== 採集シーズン ==
* 頭部・前胸・上翅が短く、幅が広い。
* 光沢を欠き艶消し状。
* オスの大アゴが短い。
* オス、メスとも後足脛節の外側に棘が残っている。
*:原名亜種のオスにおいては外棘のない個体や痕跡のみの個体も多く見受けられる。ただこれは地理的な形質傾斜とする意見がある。


[[画像:兵庫ヒメオオクワガタ.JPG|thumb|right|250px|原名亜種 ヒメオオクワガタ・兵庫県産]]
採集シーズンとして晩夏から初秋とされているが、樹液採集については6~10月半ば頃までがシーズンと思われる。採集者の中には6~7月までの個体は越冬個体だから寿命が短いという採集者もいます。反対に9月以降の成虫は新成虫が多いと言う方も多い。 ヒメオオクワガタムシの採集シーズンにおいて7月半ばから8月下旬に♂ばかり採集で♀が一斉に産卵期に入ってか採れないという報告も多い。 耐寒性に強く、気温10度前後まで活動できることから、5月下旬から11月上旬まで活動が観察されている。植物サイクルとの関係で集まる樹木が変化するのが、歩くヒメオオクワガタムシにつながっていると考えられる。 ヒメオオクワガタムシのDorcus Motivagus(ラテン語のMonti 山 Vagus 彷徨う)と言う意味だそうです。生息域が冷温帯落葉広葉樹林(ブナ・ミズナラ林)でブナ純林より混成林の方がより多く採れるが、近年ブナ原生林が減少している。本州においては標高1000m前後。   寒冷地においては根食いの方が有利となるが、ミヤマクワガタムシの蝦夷型と産卵木の競合となるが、ミヤマクワガタムシがあまりつかない生木に近い硬い立ち枯れや、大木の部分枯れの地中部、また湿った場所にある腐った倒木の地表部に潜んでいることが多い。ブナ倒木の下部において湿気が多く水没したヒメオオクワガタムシの蛹や幼虫の残骸が発見されたりする。


== 生態 ==
成虫は原名亜種である[[ヒメオオクワガタ]]と同じく6月中旬から10月上旬にかけて高山のヤナギ類やノリウツギなどの木々にいるのが確認されており、生態的にはほぼ同じと思われる。ただ観察例として[[ノリウツギ]]やツル性の植物にいてヤナギにいなかった例もあれば、ヤナギに多数いた例が確認されているなど、ヤナギのみと言うことではなく、色々な木々に付いていてその汁を吸うものと考えられる。


原名亜種ヒメオオクワガタはヤナギ類と[[ダケカンバ]]を中心としたカンバ類が主なる木にいるが、ダケカンバは本州の奈良県以北及び四国の一部に植生しているだけで、九州の山地にはダケカンバは無い。このような樹種の違いもキュウシュウヒメオオクワガタの付く木々が違う理由である。
== ヒメオオクワガタムシの累代飼育 ==
[[画像:熊本ヒメオオクワガタ.JPG|thumb|right|250px|九州亜種 キュウシュウヒメオオクワガタ・熊本県産]]
累代飼育下ではヤナギの乾燥材や、びしょびしょの霊芝材の硬い部分での産卵成功例もあり、寒冷地の材の状況と合わせて考えると納得いく事例が多い。 2年1化とされているヒメオオクワガタムシは柔らかい材だと材の中に穴をあけ、潜り込みはするものの産卵は難しい。これは柔らかな材だと上記のような水没死の幼虫の可能性もあり、我屋においても2002.10.21の産卵記録での事例も一致する。 飼育についてのお勧めの材は 安く経費を抑えるのであれば、芯の多いコナラのB材なんかがいい。自然界においても節の部分からの採集記録がある。柔らかい木であれば自然界において2年1化するのに木ももたないのではないだろうか。 


幼虫においてはブナの倒木、立ち枯れに生息しており、これは原名亜種と同じである。
★累代飼育法としては・・・まず♂と♀の個別飼育をお薦めする。ヒメオオクワガタムシは見かけによらず♂による♀の挟み殺しが多く、長期間♂♀の同居飼育を行うと♂による♀殺しが起きる可能性がある。またヒメオオクワガタムシを入手する時期にもよるが、天然採集個体が多いことから、♀が既に交尾済みの持ち腹の可能性が高いので、単独飼育でも産むことが多い、♂♀を同居飼育をしたい場合にはなるべく大きめの♀と小さめな♂との同居が好ましい。飼育セットについては色々な実験を行った結果としてブナ生オガコをマット代わりにして埋め込み、産卵木を乗せる感じで良い。温度については高温は30℃近くまでは耐えられるが、蒸れには弱いので蒸れには注意が必要である。基本的には高い山に生息しているクワガタムシの為、温度は低い方がベストである。夏場は25℃以下、冬場は10℃ぐらいがベストである。出来る限りエアコンのある場所が良い。産卵適温は16℃前後と思われる。産卵材は出きる限りブナ材が良いが、なかなか入手しづらいこともあるのでコナラ材がお薦めである。材の加水については理想で言えば「しっとりしてて硬い材」が良い。シールドやビニールにて中フタを行なえば加水・霧吹きはしなくっても良いが、先に書いたように蒸れには弱いので蒸らさない意味でもエアコンが必要である。 幼虫は菌糸ビンでも昆虫マットでも育つが、現在実験的にブナの生オガコのみで幼虫を累代しているが結果は良好である。 羽化は♀は6月上旬~中旬にかけてが多く、♂は少し遅れ6月中旬~8月上旬が多い。


== 参考文献 ==
* {{Cite journal | 和書 | journal = 月刊むし | issue = No. 193 }}
* {{Cite journal | 和書 | journal = くわがたマガジン | issue = No. 37 }}


== 関連項目 ==
== ヒメオオクワガタムシ レッドデータ (希少野生動植物・昆虫類) ==
* [[ルッキング採集]]
■環境庁レッドデータ 指定外(全国的には普通種)


[[Category:ヒメオオクワガタ|きゆうしゆうひめおおくわかた]]
■都道府県別レッドデータ指定[http://www.hpmix.com/home/katuuya/R17.htm] 

★京都府ヒメオオクワガタムシ[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010/folder/886051.html]・・・絶滅寸前種指定 
★愛知県ヒメオオクワガタムシ[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010/folder/886042.html]・・・絶滅危惧1B類指定 
★群馬県ヒメオオクワガタムシ[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010/folder/886031.html]・・・絶滅危惧1B類指定 
★富山県ヒメオオクワガタムシ[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010/folder/886048.html]・・・危急種指定

★宮崎県ヒメオオクワガタムシ[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010/folder/886074.html]・・・準絶滅危惧NT指定
★高知県ヒメオオクワガタムシ[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010/folder/886069.html]・・・準絶滅危惧NT指定
★大阪府ヒメオオクワガタムシ[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010/folder/886053.html]・・・準絶滅危惧NT指定
★長野県ヒメオオクワガタムシ[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010/folder/886038.html]・・・準絶滅危惧NT指定
★兵庫県ヒメオオクワガタムシ[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010/folder/886054.html]・・・準絶滅危惧指定(県Cランク)
★滋賀県ヒメオオクワガタムシ[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010/folder/886047.html]・・・要注目種指定
★島根県ヒメオオクワガタムシ[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010/folder/886060.html]・・・要注意種指定
★静岡県ヒメオオクワガタムシ[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010/folder/886040.html]・・・環境指標種指定
★三重県ヒメオオクワガタムシ[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010/folder/886044.html]・・・絶滅危惧種2種指定

== ヒメオオクワガタムシ北上説(♂の後脛節外棘の有無の変化より考察) ==
全国のヒメオオクワガタムシを集めていく中でヒメオオクワガタムシ♂の後脛節外棘の有無の変化を発見し、ヒメオオクワガタムシ進化過程において退化していったものと思い、昆虫フィールドNO.38に投稿掲載となった。ヒメオオクワガタムシ北上説である。私が発表後くわがたマガジンNO.21において藤井弘氏が追加調査をしてくれた。やはり♂の外棘の有無を確認されている。ヒメオオクワガタムシの地域個体変化はないとされているが、地域変化があるのではないかと現在調査中である。●ブナの植樹層とヒメオオクワガタムシの地域変化が関係するかと言う点である。★北海道~石川県付近の日本海側のブナ帯、★岩手県~東京都辺りまでの太平洋側と群馬県南部~岐阜県南部へと続く内陸のブナ帯、★神奈川県箱根から静岡/愛知県への東海のブナ帯★石川県能登~近畿圏~中国地方へ続くブナ帯、★紀伊半島~四国~九州6県(沖縄県除く)へと続く太平洋及び九州型ブナ帯。この地域とのヒメオオクワガタムシの地域変化を調査している。また各ブナ帯が隣接している範囲に多産地が多いのにも興味を持っている。


== 外部リンク ==
●ヒメオオ専門ドルクスハンター・鍬匠甲冑屋 [http://www.hpmix.com/home/katuuya/katuuya/T1.htm]

★都道府県別ヒメオオクワガタムシの仔細データ及び狩猟記録 [http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2010]

★ヒメオオクワガタムシ2007年狩猟結果 [http://www.hpmix.com/home/katuuya/katuuya8/DI13.htm]

★ヒメオオクワガタムシ2006年狩猟結果 [http://www.hpmix.com/home/katuuya/katuuya8/DI4.htm]

★ヒメオオクワガタムシ2005年狩猟結果 [http://www.hpmix.com/home/katuuya/katuuya8/DI3.htm]

★ヒメオオクワガタムシ2004年狩猟結果 [http://www.hpmix.com/home/katuuya/katuuya8/DI6.htm]

★ヒメオオクワガタムシ2003年狩猟結果 [http://www.hpmix.com/home/katuuya/katuuya8/D8_1.htm#17]

★ヒメオオクワガタムシの標本 [http://www.hpmix.com/home/katuuya/katuuya/L9.htm]

★ヒメオオクワガタムシ累代飼育[http://blogs.yahoo.co.jp/katuuya2009]

2024年1月21日 (日) 13:14時点における最新版

ヒメオオクワガタ
九州亜種:羽化直後のキュウシュウヒメオオクワガタ:羽化直後のため体色が赤いが1か月後には艶消しの黒色に変る。(鹿児島県産)
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: 甲虫目 Coleoptera
亜目 : カブトムシ亜目 Scarabaeoidea
: クワガタムシ科 Lucanidae
亜科 : クワガタムシ亜科 Lucaninae
: クワガタ属 Dorcus
亜属 : アカアシクワガタ亜属
subgen. Nipponodorcus
: ヒメオオクワガタ D. montivagus
亜種 : キュウシュウヒメオオクワガタ
D. montivagus adachii
学名
Dorcus montivagus adachii (Fujita et Ichikawa)
和名
キュウシュウヒメオオクワガタ

キュウシュウヒメオオクワガタ (Dorcus montivagus adachii) は甲虫目クワガタムシ科クワガタ属に属するヒメオオクワガタの1亜種である。

記載の経緯

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九州全域(福岡県・佐賀県・長崎県・大分県・宮崎県・熊本県・鹿児島県。沖縄県を除く)に生息している高山系のクワガタムシのヒメオオクワガタの1亜種として、1987年3月発売の『月刊むし』No. 193において紹介された。それまではヒメオオクワガタとして日本全域が同一種と思われていたが、九州に生息していた個体の特徴が、本州・北海道・四国に生息しているものと異なることが発見されて、九州の個体群は亜種キュウシュウヒメオオクワガタとして記載された。

特徴

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生息地は熊本県南部周辺が南限であるとされていたが、2007年6月に鹿児島県北部で確認できたため『くわがたマガジン』No. 37に南限更新として紹介された。

原名亜種ヒメオオクワガタ
北海道・本州(千葉県を除く)・四国
亜種キュウシュウヒメオオクワガタ
九州(沖縄県を除く)

体長はオスが32 - 52mm、メスが28 - 38mm。

体色はオス、メスともに黒色(つや消し)、外観は頭部・前胸・上翅が短く、幅が広い。光沢を欠きつや消し状。

原名亜種との相違点

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  • 頭部・前胸・上翅が短く、幅が広い。
  • 光沢を欠き艶消し状。
  • オスの大アゴが短い。
  • オス、メスとも後足脛節の外側に棘が残っている。
    原名亜種のオスにおいては外棘のない個体や痕跡のみの個体も多く見受けられる。ただこれは地理的な形質傾斜とする意見がある。
原名亜種 ヒメオオクワガタ・兵庫県産

生態

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成虫は原名亜種であるヒメオオクワガタと同じく6月中旬から10月上旬にかけて高山のヤナギ類やノリウツギなどの木々にいるのが確認されており、生態的にはほぼ同じと思われる。ただ観察例としてノリウツギやツル性の植物にいてヤナギにいなかった例もあれば、ヤナギに多数いた例が確認されているなど、ヤナギのみと言うことではなく、色々な木々に付いていてその汁を吸うものと考えられる。

原名亜種ヒメオオクワガタはヤナギ類とダケカンバを中心としたカンバ類が主なる木にいるが、ダケカンバは本州の奈良県以北及び四国の一部に植生しているだけで、九州の山地にはダケカンバは無い。このような樹種の違いもキュウシュウヒメオオクワガタの付く木々が違う理由である。

九州亜種 キュウシュウヒメオオクワガタ・熊本県産

幼虫においてはブナの倒木、立ち枯れに生息しており、これは原名亜種と同じである。

参考文献

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  • 『月刊むし』No. 193。 
  • 『くわがたマガジン』No. 37。 

関連項目

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