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'''黄'''(ゆうおう、orpiment)<ref>[[文部省]]学術奨励審議会学術用語分科審議会編 『[[学術用語集]] 採鉱ヤ金学編』 [[日本鉱業会]]、1954年。([https://jglobal.jst.go.jp/ J-GLOBAL 科学技術総合リクセター])</ref>は、[[ヒ素]]の[[硫化鉱物]]である。'''石黄'''(せきおう)<ref name="terms">文部省編 『学術用語集 地学編』 [[日本学術振興会]]、1984年、ISBN 4-8181-8401-2。</ref>とも呼ばれる。
とも呼ばれる。


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==用途==
== 用途 ==
[[中世]]頃までは[[黄色]][[顔料]]として広く利用されていた。各地に産するが[[毒|毒性]]があり、その供給に限りがあるため、今日では顧みられない。純度の高いものは、輝きのある冴えたレモン色を呈する。普通には橙黄色~黄褐色を呈する。古画にあっては、荒粒で用いられ、現在でも豊かな黄色を保っている。しばしば、近い関係にある[[鶏冠石]] (リアルガー) を含んでいる。古代ローマ時代の[[博物誌|プリニウス]]や[[デ・アーキテクチュラ|ウィトルウィウス]]が言及している、古典時代から使用された顔料であり、[[黄鉛]]が発明されるまでは黄色の顔料として絵画に利用されていた。[[ティツィアーノ]]の[[バッカスとアリアドネ]] (1520〜1523年) などに印象的な使われ方を見る事ができる<ref>Lucas and Plesters, [https://www.nationalgallery.org.uk/upload/pdf/lucas_plesters1978.pdf|Titian's Bacchus and Ariadne], National Gallery Technical Bulletin, Vol. 2, p. 25-47 (1978) 中の p. 41</ref>。
[[中世]]頃までは黄色の[[顔料]]として広く利用されていた。[[毒性]]のために現在ではほとんど利用されていないが、'''雄黄色'''という言葉として残っている。


[[中医学]]では[[解毒剤]]や[[抗炎症剤]]して利用されていが、[[鶏冠石]](As<sub>4</sub>S<sub>4</sub>)の混同が見受けられ、鉱物としてどちらであかは定かではない
毒性のために現在ではんど利用されていないが、'''雄黄色'''いう言葉として残っている。

[[中医学]]では[[解毒剤]]や[[抗炎症剤]]として利用されているが、[[鶏冠石]](realgar、As<sub>4</sub>S<sub>4</sub>)との混同が見受けられ、鉱物としてどちらであるかは定かではない。なお、中国語では鶏冠石を「雄黄」、日本語で言う雄黄 (orpiment) を「'''雌黄'''」という<ref>[[地学団体研究会]]地学事典編集委員会編 『地学事典 増補改訂版』 [[平凡社]]、1981年、ISBN 4-582-11501-2。</ref>。

== 毒性と取り扱い ==

雄黄の毒性は[[ヒ素]]によるものだが、ヒ素単体よりも水溶性が高いため、劇物とは言われないが人体に対する毒性は強く、毒物として法令で指定されている<ref>[https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000303_20220617_504AC0000000068&keyword=%E6%AF%92%E7%89%A9%E5%8F%8A%E3%81%B3%E5%8A%87%E7%89%A9%E5%8F%96%E7%B7%A0%E6%B3%95] 毒物及び劇物取締法 別表 第一条 23</ref>。保護眼鏡と手袋を使い、また粉塵を吸い込まないようマスクをするなどして、塊でも粉体でも人体に直接に触れる事のないように取り扱う。保存には専用の容器を用意し、また飲食をする場所に持ち込むべきではない。容器外に飛散したり環境中に放出される事は厳に防ぐべきである。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* 『絵画技術入門―テンペラ絵具と油絵具による混合技法(新技法シリーズ)』 佐藤 一郎 著 美術出版社 1988.11 ISBN 4568321468 ISBN 978-4568321463
* [[松原聰]] 『フィールドベスト図鑑15 日本の鉱物』 [[学習研究社]]、2003年、ISBN 4-05-402013-5。
* 『絵画材料事典』 ラザフォード・J・ゲッテンス・ジョージ・L・スタウト著 森田恒之訳 美術出版社 1999.6 ISBN 4254252439
* [[松原聰]] 『フィールドベスト図鑑15 日本の鉱物』 [[学研ホールディングス|学習研究社]]、2003年、ISBN 4-05-402013-5。
* [[国立天文台]]編 『[[理科年表]] 平成19年』 [[丸善]]、2006年、ISBN 4-621-07763-5。
* [[国立天文台]]編 『[[理科年表]] 平成19年』 [[丸善]]、2006年、ISBN 4-621-07763-5。


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* [http://www.webmineral.com/data/Orpiment.shtml Orpiment Mineral Data](webmineral.com)
* [http://www.webmineral.com/data/Orpiment.shtml Orpiment Mineral Data](webmineral.com)


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[[nl:Orpiment]]
[[sk:Auripigment]]

2024年1月28日 (日) 08:40時点における最新版

雄黄
雄黄
雄黄
分類 硫化鉱物
化学式 As2S3
結晶系 単斜晶系
へき開 1方向に完全
断口 貝殻状
モース硬度 1.5~2
光沢 樹脂光沢
橙黄色
条痕 淡黄
比重 3.5
蛍光 無い
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
テンプレートを表示

雄黄(ゆうおう、orpiment)[1]は、ヒ素硫化鉱物である。石黄(せきおう)[2]とも呼ばれる。

化学組成:As2S3晶系単斜晶系比重:3.5、モース硬度:2。

用途

[編集]

中世頃までは黄色顔料として広く利用されていた。各地に産するが毒性があり、その供給に限りがあるため、今日では顧みられない。純度の高いものは、輝きのある冴えたレモン色を呈する。普通には橙黄色~黄褐色を呈する。古画にあっては、荒粒で用いられ、現在でも豊かな黄色を保っている。しばしば、近い関係にある鶏冠石 (リアルガー) を含んでいる。古代ローマ時代のプリニウスウィトルウィウスが言及している、古典時代から使用された顔料であり、黄鉛が発明されるまでは黄色の顔料として絵画に利用されていた。ティツィアーノバッカスとアリアドネ (1520〜1523年) などに印象的な使われ方を見る事ができる[3]

毒性のために現在ではほとんど利用されていないが、雄黄色という言葉として残っている。

中医学では解毒剤抗炎症剤として利用されているが、鶏冠石(realgar、As4S4)との混同が見受けられ、鉱物としてどちらであるかは定かではない。なお、中国語では鶏冠石を「雄黄」、日本語で言う雄黄 (orpiment) を「雌黄」という[4]

毒性と取り扱い

[編集]

雄黄の毒性はヒ素によるものだが、ヒ素単体よりも水溶性が高いため、劇物とは言われないが人体に対する毒性は強く、毒物として法令で指定されている[5]。保護眼鏡と手袋を使い、また粉塵を吸い込まないようマスクをするなどして、塊でも粉体でも人体に直接に触れる事のないように取り扱う。保存には専用の容器を用意し、また飲食をする場所に持ち込むべきではない。容器外に飛散したり環境中に放出される事は厳に防ぐべきである。

脚注

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  1. ^ 文部省学術奨励審議会学術用語分科審議会編 『学術用語集 採鉱ヤ金学編』 日本鉱業会、1954年。(J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター
  2. ^ 文部省編 『学術用語集 地学編』 日本学術振興会、1984年、ISBN 4-8181-8401-2
  3. ^ Lucas and Plesters, Bacchus and Ariadne, National Gallery Technical Bulletin, Vol. 2, p. 25-47 (1978) 中の p. 41
  4. ^ 地学団体研究会地学事典編集委員会編 『地学事典 増補改訂版』 平凡社、1981年、ISBN 4-582-11501-2
  5. ^ [1] 毒物及び劇物取締法 別表 第一条 23

関連項目

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参考文献

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外部リンク

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