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|属 = [[サツマイモ属]] ''[[:w:Ipomoea|Ipomoea]]''
|属 = [[サツマイモ属]] ''[[:w:Ipomoea|Ipomoea]]''
|種 = '''ヨウサイ''' ''I. aquatica''
|種 = '''ヨウサイ''' ''I. aquatica''
|学名 = ''[[w:Ipomoea aquatica|Ipomoea aquatica]]''<br>Forsskal.
|学名 = {{Snamei||Ipomoea aquatica}} {{AU|Forssk.}} {{Small|(1775)}}<ref name="YList">{{YList|id=6864|taxon=Ipomoea aquatica Forssk. ヨウサイ(標準)|accessdate=2022-10-22}}</ref>
|和名 =<br>ヨウサイ(蕹菜)
|和名 = ヨウサイ(蕹菜)
|英名 = '''[[w:Water Morning Glory|Water Morning Glory]]'''<br>water spinach<br>kang kong
|英名 = '''[[w:Water Morning Glory|Water Morning Glory]]'''<br>Water convolvulus{{sfn|板木利隆|2020|p=338}}<br>water spinach<br>kang kong
}}
}}
'''ヨウサイ'''(蕹菜{{ピン音|wēngcài}} ウォンツァイ、[[学名]]: ''Ipomoea aquatica'')は、[[ヒルガオ科]][[サツマイモ属]]の[[野菜]]。茎が空洞になっており、このため、[[中国語]]で{{Lang|zh|'''空心菜'''}}(コンシンツァ、{{ピン音|kōngxīncài}})や{{Lang|zh|'''菜'''}}(トツァ、{{ピン音|tōngcài}})と呼ばれる。漢名「空菜」を[[日本語]]読みして俗に'''クウシンサイ'''ともいうが、[[和名]]ではなく登録商標<ref>[(商品名)「空芯菜」第4343207号。1999年12月10日登録]</ref>
'''ヨウサイ'''(蕹菜{{sfn|農文協編|2004|p=31}}〈[[台湾語]][[白話字]]:èng-chhài、{{ピン音|wèng cài}} ウォンツァイ、[[学名]]: ''Ipomoea aquatica'')は、[[ヒルガオ科]][[サツマイモ属]]の[[野菜]]。'''クウシンイ'''(空心)、''''''の呼称で知られる。栽培[[中華人民共和国|中国]]南部や[[東南アジア]]などの熱帯アジア地域で、[[ニンニク]]炒めどにしてよ食べられている


== 名称 ==
== 名称 ==
多くの異なった名称でもよばれており、茎が空洞のためクウシンサイ(空芯菜)ともよばれ、またエンサイ(莚菜)などの別名がある{{sfn|主婦の友社編|2011|p=242}}。中国名は蕹菜(草菜、空心菜)<ref name="YList"/>。
別名が多い。
*'''クウシンサイ'''(空心菜)<ref name="YList"/>{{sfn|農文協編|2004|p=31}} - 茎が空洞になっていることから、[[中国語]]では{{Lang|zh-tw|'''空心菜'''}}(コンシンツァイ、{{ピン音|kōng xīn cài}})と書き、[[日本語]]でも「くうしんさい」の読み方で普及している。なお、同じ読みで「心」を「芯」に変えた、「空芯菜」という登録商標が日本で取得されている<ref>[(商品名)「空芯菜」第4343207号。1999年12月10日登録]</ref>。
*アサガオナ(朝顔菜)
*'''アサガオナ'''(朝顔菜)<ref name="YList"/>{{sfn|農文協編|2004|p=31}} - アサガオ菜{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=21}}。[[アサガオ]]のような淡紫色または白色の花を付けるため。
*エンサイ(蓊菜)は[[台湾語]]エンツァイ(蓊菜)の訛り。「エンサイ」「莚菜」が野菜、料理、飲料の名称として商標登録<ref>第4372141号。2000年3月31日登録。</ref><ref>第4512839号。2001年10月12日登録。</ref>。
*ムシロナが料理飲料など称として登録されている<ref>第4513683号。20011019日登録。</ref>。
*'''エンサイ'''<ref name="YList"/> - [[台湾語]]の蓊菜の訛り。「燕菜」とも書かれる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=21}}。「エンサイ」「莚菜」野菜・料理飲料の称として商標登録<ref>第4372141号。2000331日登録。</ref><ref>第4512839号。2001年10月12日登録
*[[沖縄県|沖縄]]ではウンチェー(蕹菜)、ウンチェーバー(蕹菜葉)と呼ばれる。「莚」は草[[むしろ]]を意味する漢字で本来、本種の意味はない。別名エン「蓊」の音を表すための代用[[当て字]]とみられる。
</ref>。「莚」は草[[むしろ]]を意味する漢字で本来、本種の意味はない。別名エン「蓊」の音を表すための代用[[当て字]]とみられる。
*'''ムシロナ'''
*'''ウンチェー''':[[沖縄県|沖縄]]ではウンチェー(蕹菜)、ウンチェーバー(蕹菜葉)と呼ばれる。
*'''チャウカンツォイ''':[[中華人民共和国]]の[[広東省]]では俗に食べ過ぎると[[痙攣]]を起こすともいわれ、[[広東語]]で抽筋菜(チャウカンツォイ、chau1gan1choi3)の俗称がある。
*'''ツウサイ'''(通菜){{sfn|農文協編|2004|p=31}} - 中国の福建省では{{Lang|zh|通菜}}('''トンツァイ'''、{{ピン音|tōng cài}})とも呼ばれる。
*'''カンコンサイ'''{{sfn|農文協編|2004|p=31}}


== 特徴 ==
[[中華人民共和国]][[広東省]]では、俗に食べ過ぎると[[痙攣]]を起こすともいわれ、[[広東語]]で抽筋菜(チャウカンツォイ、chau1gan1choi3)の俗称がある。

==特徴==
[[ファイル:Starr 080531-4958 Ipomoea aquatica.jpg|thumb|left|160px|ヨウサイ]]
[[ファイル:05252jfAngat River Pulilan Aquatic Plants Bulacanfvf 13.JPG|thumb|水上のヨウサイ農地]]
[[ファイル:05252jfAngat River Pulilan Aquatic Plants Bulacanfvf 13.JPG|thumb|水上のヨウサイ農地]]


つる性の[[一年草]]ないし[[多年草]]{{sfn|農文協編|2004|p=31}}。熱帯アジア原産と考えられており{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=21}}、[[熱帯アフリカ]]から[[東アジア]]まで広域にわたって野生している{{sfn|農文協編|2004|p=31}}。野菜としての利用は多湿の熱帯や[[湿地]](特に、[[中国]]南部、[[台湾]]、[[東南アジア]]の[[華僑]]居住地域、[[東インド]]、[[スリランカ]]の熱帯アジア地域)で多く栽培され、ときに[[水耕栽培]]もされる{{sfn|農文協編|2004|p=31}}。[[植物体]]の外見は同じヒルガオ科の[[サツマイモ]]に似ており、光沢のある緑色から濃緑色で無毛、[[茎]]は中空で、数[[メートル]] (m) 伸びて地上を這うか、あるいは水面に浮かぶ{{sfn|農文協編|2004|p=31}}。発根力が高く、地面や水面に接した茎は、節から容易に[[不定根]]を出して[[栄養繁殖]]もできる{{sfn|農文協編|2004|p=31}}。[[葉]]は[[互生]]し、やや長い[[葉柄]]がつく{{sfn|農文協編|2004|p=31}}。葉身は長さ5 - 15[[センチメートル]] (cm) の披針形、長卵形、心臓形などで、品種によって大きく異なる{{sfn|農文協編|2004|p=31}}。
つる性[[多年草]]だが、作物としては[[一年草]]扱い。[[東南アジア]]原産で、高温多湿の熱帯、[[湿地]]で多く栽培され、水耕栽培も可能。外見は[[サツマイモ]]に似ており、茎は中空で這う。葉は切れ目の入った長卵形。[[アサガオ]]のような淡紫色または白色の花を付けるため、'''朝顔菜'''(あさがおな)の別名もある。最低気温が10度を下回ると、茎も根も枯れる。

花芽をつけ始めるのは日中の長さが一定以上短くなると起こる([[光周性|短日条件]])とされ、サツマイモやアサガオに似た白色や桃色の花を葉腋につける{{sfn|農文協編|2004|p=31}}。


水辺に生育し、水面に茎(空洞で節がありフロートと同じ)を浮かせて進出する。汽水域でも成長可能である。暑さに強く水上で栽培すると大量に根を伸ばして水をよく吸収することから、近年では湖沼などの水質浄化活動によく用いられている<ref>「[http://school.gifu-net.ed.jp/ena-ahs/gakkasyokai.files/kankyou.files/katuyaku.files/agigawa.htm]阿木川ダム水質浄化実験」恵那農業高校 環境科学科</ref><ref>「[http://www.horikawa1000nin.jp/katudou/2010-07-21-kusinsainikki.htm]名古屋市堀川にて水質浄化実験」</ref>。
水辺に生育し、水面に茎(空洞で節がありフロートと同じ)を浮かせて進出する。汽水域でも成長可能である。暑さに強く水上で栽培すると大量に根を伸ばして水をよく吸収することから、近年では湖沼などの水質浄化活動によく用いられている<ref>「[http://school.gifu-net.ed.jp/ena-ahs/gakkasyokai.files/kankyou.files/katuyaku.files/agigawa.htm]阿木川ダム水質浄化実験」恵那農業高校 環境科学科</ref><ref>「[http://www.horikawa1000nin.jp/katudou/2010-07-21-kusinsainikki.htm]名古屋市堀川にて水質浄化実験」</ref>。


[[日本]]には古くは[[沖縄県]]方面を経て[[九州]]に渡来した。真夏でも収穫でき、時期的に希少な葉野菜となる。九州以北の露地栽培では花をつけても種をほぼつけず、自生繁殖による生態系への影響は低い。
[[日本]]には古くは[[沖縄県]]方面を経て[[九州]]に渡来した。真夏でも収穫でき、時期的に希少な葉野菜となる。沖縄では重要な野菜となっており、台風襲来後に傷んだ茎葉を刈り取るとすぐ次の側芽が伸びてきて収穫できる{{sfn|農文協編|2004|p=31}}。九州以北の露地栽培では花をつけても種をほぼつけず、自生繁殖による生態系への影響は低い。九州や南部地域では、かつては定着したが、一般的に栽培されるまでには至らなかった{{sfn|農文協編|2004|p=31}}
{{gallery|mode="Packed"
{{Clearleft}}
|ファイル:Starr 080531-4958 Ipomoea aquatica.jpg|茎葉
|ファイル:Ipomoea aquatica (Marsh Glory) flower W IMG 0405.jpg|花
|ファイル:Hình dạng rau muống.jpg|全体像
|ファイル:Ipomoea aquatica Blanco1.149.png|イラスト
}}


== 利用 ==
== 栽培 ==
播種時期の選定や低温障害を受けないようにすること、また十分水分を与えて[[肥料]]の効果が長続きするようにすれば、容易に栽培することができる{{sfn|農文協編|2004|p=33}}。多湿の土壌を好み、高温には非常に強い性質で、生育温度は25度前後{{sfn|農文協編|2004|p=32}}、発芽適温は25 - 30度とされる{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=140}}{{sfn|板木利隆|2020|p=338}}。その一方で低温にはきわめて弱く、気温が低くなると急速に戸建ちが悪くなって10度で発育が止まり、[[霜]]に遭うと枯死する{{sfn|農文協編|2004|p=32}}{{sfn|板木利隆|2020|p=338}}。乾燥を嫌うため、畑作の場合は生育中の水やりを怠らないようにする{{sfn|板木利隆|2020|p=338}}。
[[ファイル:Ipomoea aquatica cooked.jpg|thumb|ヨウサイの炒め物。]]


文献によって一年草か多年草の両方の記載が見られるが、これは栽培する地域によって越冬可能かどうかによるものと考えられている{{sfn|農文協編|2004|p=32}}。沖縄などを除く日本の中間地域では露地越冬は不可能なため一年草となり{{sfn|農文協編|2004|p=32}}、栽培期間は春(4月)から秋(9月)までで、芽先を収穫していくと次々に分枝して秋まで収穫できる{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=140}}。[[連作障害]]は出にくい{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=140}}。繁殖は[[種子繁殖]]か[[栄養繁殖]]の両方で行われる{{sfn|農文協編|2004|p=32}}。しかし秋に開花しても採種は困難で、一部の品種は[[遺伝]]的に開花結実しないため、[[挿し芽]]による栄養繁殖だけで維持増殖がされている{{sfn|農文協編|2004|p=32}}。
茎葉を主に[[炒め物]]、または中華風のおひたし (タン[燙]青菜) として、[[中華人民共和国|中国]]、[[台湾]]や[[フィリピン]]、[[ベトナム]]、[[タイ王国|タイ]]、[[マレーシア]]、[[インドネシア]]などの[[東南アジア]]で用いる。[[ニンニク]]と一緒に[[塩]]で炒めたり、[[魚醤]]の類や[[豆チ|豆豉]]で味付けして炒めたりすることが多い。[[調味料]]は[[シュリンプペースト]]や[[オイスターソース]]なども使われる。


中国などでは、畑、水田(浅水)、浮水の3種類の栽培法がある{{sfn|農文協編|2004|p=33}}。浮水栽培は、竹と縄で組んだ[[イカダ]]を池に浮かべて、そこに30 cm程度に伸びた挿し苗を植え付けて水上栽培する方法である{{sfn|農文協編|2004|p=33}}。日本では、多くは畑作栽培が行われており、直播き・育苗のどちらでも栽培できる{{sfn|農文協編|2004|p=33}}。
オーストラリアの[[先住民族]][[アボリジニ]]の間では[[ブッシュ・タッカー]]として古くから消費されてきた。


畑作の場合、20度を超えてから[[腐葉土]]を入れた育苗ポットに種を播いて苗作りを始める{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=140}}。畑は土壌水分含量が高く日当たりのよい場所を選び、苗を定植する2 - 3週間前に[[堆肥]]を施して耕しておいてから、高さ5 - 10[[センチメートル]] (cm) の[[畝]]を作る{{sfn|農文協編|2004|p=33}}{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=140}}。種を播いてから2週間ほどで発芽し、本葉が4、5枚になったら株間をゆったりとって畑に定植する{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=141}}。種からでも育てられるが、家庭では初夏に市販のクウシンサイ(ヨウサイ)のつる先10 cmくらいを挿し芽で発根させ、育てるほうが手軽にできる{{sfn|板木利隆|2020|p=340}}。
[[日本]]でも、[[沖縄県]]で従来より栽培されていたほか、[[九州地方]]などの温暖な地域で栽培が広がりつつあり、ヨウサイ栽培農家も増えている。消費者が入手または栽培するのも容易になりつつある。[[エスニック料理]]店や[[中華料理]]店で高級食材のメニューに載ることも増えている。


つるは極めて旺盛に伸びて畑全面を覆うようになるので、畝間を十分広くとって苗を植え付ける{{sfn|板木利隆|2020|p=339}}。地温維持と乾燥防止、[[雑草]]抑制対策のため畝には[[マルチング]]を施しても良く、資材はビニールの他、紙や藁を使ってもよい{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=141}}。良品多収のためには[[肥料]]切れを起こさないように管理する{{sfn|板木利隆|2020|p=338}}。[[追肥]]は草丈が15 cmくらいになったころから始め、畝間に[[ぼかし肥]]や[[鶏糞]]を与えるとよいとされる{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=141}}。株が高さ30 cmになったら収穫を始める合図で、芽先を15 - 20 cm切って随時収穫する{{sfn|農文協編|2004|p=33}}{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=141}}。そのあと、次々に側枝が伸びてくるため、伸びてきた側枝を20 - 30 cmの長さで収穫する{{sfn|農文協編|2004|p=33}}。つるの伸びが早いため、遅れないように次々と収穫する{{sfn|板木利隆|2020|p=338}}。つるが混み合ってくると軟弱な芽しか取れなくなってくるため、密になったところを刈り取って、つるをまばらにすると良くなる{{sfn|板木利隆|2020|p=340}}。
[[岐阜県立恵那農業高等学校]]では、水を入れた[[コンテナ]]で空心菜を栽培する方法「コンテナドボン栽培」を開発<ref>月刊現代農業2014年11月号に掲載</ref>。


[[日本]]でも、[[沖縄県]]で従来より栽培されていたほか、[[九州地方]]などの温暖な地域で栽培が広がりつつあり、栽培農家も増えている。消費者が入手または栽培するのも容易になりつつある。
[[名古屋市]][[堀川]]においては、ポットトレイに[[ペットボトル]]をつけた「ペットボトルミニ浮島」で、空心菜栽培を2010年に行い、1%程度の塩分を含む汽水域での栽培が可能であることを確認した。2017年2月には、竹をしならせ2重のビニールテープで固定した「竹製浮島」を考案し、同年7月名古屋市堀川で空心菜の栽培実験を行った。


コンテナ栽培でも育てやすく、家庭菜園にも向いている{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=21}}。[[岐阜県立恵那農業高等学校]]では、水を入れた[[コンテナ容器]]で栽培する方法「コンテナドボン栽培」を開発<ref>月刊現代農業2014年11月号に掲載</ref>。[[名古屋市]][[堀川]]において、ポットトレイに[[ペットボトル]]をつけた「ペットボトルミニ浮島」での栽培を2010年に行い、1%程度の塩分を含む汽水域での栽培が可能であることを確認した。2017年2月には竹をしならせ二重のビニールテープで固定した「竹製浮島」を考案し、同年7月に栽培実験を行った。
栄養価などホウレンソウと比較されることが多く、ホウレンソウに負けないほどの栄養価があり利用価値が高い。ただし、ホウレンソウと比較して[[シュウ酸]]の量が少ないと{{要出典範囲|薦めるホームページも多い|date=2019年7月}}が、実際にはホウレンソウ並みにシュウ酸を含んでいるので、ホウレンソウと同様に、[[尿管結石]]等の原因となる場合がある。
{{gallery|mode="Packed"
|ファイル:Ipomoea aquatica Nksw 3.jpg|菜園のヨウサイ
|ファイル:Kanko cultivation in Dili drainage ditch.jpg|川で栽培されるヨウサイ
|ファイル:Picking Ipomoea aquatica.JPG|ヨウサイの収穫
|ファイル:JMatungao9460fvf 09.JPG|出荷されるヨウサイ
}}


== 画像 ==
=== 病虫害 ===
台湾の文献では、[[白さび病]]、[[タニシ]]類、[[ヨトウムシ]]などが防除対策のいる病害虫としてあげられている{{sfn|農文協編|2004|p=33}}。ただし、日本ではほとんど問題にならず、[[ハスモンヨトウ]]の食害に遭う程度である{{sfn|農文協編|2004|p=33}}が、サツマイモ属に属するため、
<gallery>
[[アリモドキゾウムシ]]・[[イモゾウムシ]]の宿主植物となることから、沖縄県・奄美諸島から日本本土への植物体の持ち込みは[[検疫]]によって禁止されている。
ファイル:Ipomoea aquatica (Marsh Glory) flower W IMG 0405.jpg|ヨウサイの花。

ファイル:Hình dạng rau muống.jpg|ヨウサイの全体像。
=== 栽培品種 ===
ファイル:Ipomoea aquatica Blanco1.149.png|ヨウサイのイラスト。
中国南部では重要な野菜のひとつであり、記載されている品種の数も多い{{sfn|農文協編|2004|p=32}}。繁殖方法によって種子繁殖の品種の系統{{efn2|栄養繁殖によっても増やせるので兼用種ともいえる{{sfn|農文協編|2004|p=32}}。}}と、遺伝的にまったく開花結実しないため[[株分け]]による栄養繁殖の品種の系統に大別できる{{sfn|農文協編|2004|p=32}}。また、栽培条件によって水生と陸生にも系統分けができる{{sfn|農文協編|2004|p=32}}。日本の育苗会社が市販するものはほとんど固有品種名を持たず、「エンサイ」「カンコンサイ」などの作物名をそのまま用いており、市販品種間の形質差も明確な違いが見られないことから類似系統と考えられている{{sfn|農文協編|2004|p=32}}。
ファイル:Ipomoea aquatica Nksw 3.jpg|菜園のヨウサイ。

ファイル:Kanko cultivation in Dili drainage ditch.jpg|川で栽培されるヨウサイ。
下記は『広州蔬菜品種誌』にみられる品種を示したものである{{sfn|農文協編|2004|p=32}}。
ファイル:Picking Ipomoea aquatica.JPG|ヨウサイの収穫。
* 大骨青(青売) - 茎径1 cmで分枝はやや少なく、葉は深緑色で長さ11.5 cm、幅8 cmの長卵形で葉質はやわらかい。水田早熟栽培で、種子繁殖が行われる。{{sfn|農文協編|2004|p=32}}
ファイル:JMatungao9460fvf 09.JPG|出荷されるヨウサイ。
* 大鶏青(緑豆青) - 茎径1.5 cmで分枝はやや多く、葉は深緑色で長さ6 cm、幅7 cmの長卵形で質がやや劣る。水田栽培で、種子繁殖が行われる。{{sfn|農文協編|2004|p=32}}
ファイル:Kangkungblacan.jpg|ヨウサイの炒め物。
* 大鶏白(青葉白殻) - 茎径1.5 cmで分枝はやや多く、葉は深緑色で長さ12 cm、幅7 cmの長卵形で優良品種。畑作栽培で、種子繁殖が行われる。{{sfn|農文協編|2004|p=32}}
ファイル:Mie Kangkung.JPG|ヨウサイの入った[[麺|ヌードル]]。
* 大鶏黄(黄葉白殻) - 茎径1.5 cmで分枝はやや多く、葉は黄緑色で長さ11 cm、幅6.5 cmになる長卵形で優良品種。水田栽培で、種子繁殖が行われる。{{sfn|農文協編|2004|p=32}}
</gallery>
* 白殻(薄殻) - 茎径1.7 cmで分枝はやや少なく、葉は緑色で長さ15 cm、幅10 cmにもなる長卵形で優良品種。浮水栽培で旺盛な生育を示し、種子繁殖が行われる。{{sfn|農文協編|2004|p=32}}
* 剣葉通菜 - 茎径0.8 cmで分枝が多く、葉は青緑色で長さ4 - 7 cm、幅3 cmの長披針形。畑作と水田栽培の両方に対応し、種子繁殖が行われる。{{sfn|農文協編|2004|p=32}}
* 細通菜(蕹菜仔、鉄線梗) - 茎径0.5 cmと細く、葉は深緑色で長さ7 cm、幅3 cmの短披針形の優良品種。畑作栽培で収穫期間は長く、繁殖は株分けによって行われる。{{sfn|農文協編|2004|p=32}}
* 糸蕹(細通) - 茎径0.6 cmと細く、葉は深緑色で長さ4.5 cm、幅3.5 cmの短披針形の優良品種。茎と葉柄が紫紅色になるのが特徴。畑作栽培で収穫期間は長く、繁殖は株分けによって行われる。{{sfn|農文協編|2004|p=32}}

== 利用 ==
=== 食用 ===
[[ファイル:Ipomoea aquatica cooked.jpg|thumb|ヨウサイの炒め物]]

[[β-カロテン]]が豊富な[[緑黄色野菜]]で、食材としての[[旬]]は6 - 8月とされ、茎や葉は瑞々しくて茎に丸みがあり切り口が綺麗なものが市場価値の高い良品とされる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=21}}。風味は個性的で少しクセがある{{sfn|主婦の友社編|2011|p=242}}。茎葉を主に[[炒め物]]、または中華風のおひたし(タン[燙]青菜)として、[[中華人民共和国|中国]]、[[台湾]]や[[フィリピン]]、[[ベトナム]]、[[タイ王国|タイ]]、[[マレーシア]]、[[インドネシア]]などの[[東南アジア]]で用いる。茎が空洞で火の通りも早く、シャキシャキした歯ごたえが[[炒め物]]に向いている{{sfn|主婦の友社編|2011|p=242}}。中国南部ではよく食べられており[[ニンニク]]炒めにするのが一般的で{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=98}}、[[ナンプラー]]などの[[魚醤]]や[[豆豉]]で味付けして炒めたりすることが多い。[[調味料]]は[[シュリンプペースト]]や[[オイスターソース]]なども使われ{{sfn|主婦の友社編|2011|p=242}}、味付けによって中華風やタイ料理風にもなる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=21}}。さっと茹でて[[マヨネーズ]]和えにしてもおいしく食べられ{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=21}}、[[スープ]]の具にも使える{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=140}}。

オーストラリアの[[先住民族]][[アボリジニ]]の間では[[ブッシュ・タッカー]]として古くから消費されてきた。

ヨウサイの新芽は[[スプラウト]]として利用される{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=59}}。
{{gallery|mode="Packed"
|ファイル:Kangkungblacan.jpg|ヨウサイの炒め物
|ファイル:Mie Kangkung.JPG|ヨウサイの入った[[麺|ヌードル]]
}}

=== 水質浄化 ===
成長過程で窒素やリンを水からたくさん吸収するため水質浄化作用があるといわれており、岐阜県の[[阿木川ダム]]などで栽培されている<ref>{{Cite web|和書|url= https://www.water.city.nagoya.jp/file/1848.pdf |title= 水辺で育つ空芯菜で体に栄養、きれいな環境|publisher=名古屋市上下水道局 |accessdate=2020-02-04}}</ref>。

== 栄養価 ==
100[[グラム]] (g) あたりの[[熱量]]は17[[キロカロリー]] (kcal) ほどある{{sfn|主婦の友社編|2011|p=242}}。栄養価など[[ホウレンソウ]]と比較されることが多く、[[β-カロテン]]はホウレンソウの約4 - 5倍、[[カルシウム]]は約4倍、[[ビタミンB1]]と[[ビタミンC]]は約2倍ほど含んでいる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=242}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=21}}。[[ポリフェノール]]や[[鉄分]]も豊富で、疲労回復や[[貧血]]予防にも役立つといわれている{{sfn|主婦の友社編|2011|p=242}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=21}}。ただしホウレンソウとは違い、難溶性の[[シュウ酸カルシウム]]を多く含んでおり、えぐ味(シュウ酸味)を感じる原因となっている。シュウ酸カルシウムの毒性については経口データはないが、[[劇物]]のシュウ酸塩として、飲み込むと有害であると考えられるので区分4<ref>[https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ghs_symbol.html]厚生労働省:急性毒性(経口)の区分</ref>に分類されている<ref>[http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/03077256.pdf]安全データシート:しゅう酸カルシウム一水和物</ref>。シュウ酸カルシウムは[[尿道結石]]の原因にはならないが、食べ過ぎに注意することが必要である。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
<references group="注"/>
=== 出典 ===
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==関連項目==
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author =板木利隆|title = 決定版 野菜づくり大百科|date=2020-03-16|publisher = [[家の光協会]]|isbn=978-4-259-56650-0|pages =338 - 341|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|title = かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典|date=2012-07-10|publisher = [[成美堂出版]]|isbn=978-4-415-30997-2|pages =21|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|title = 有機・無農薬 家庭菜園 ご当地ふるさと野菜の育て方|date=2011-04-01|publisher = [[成美堂出版]]|isbn=978-4-415-30991-0|pages =140 - 141|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =主婦の友社編|title = 野菜まるごと大図鑑|date=2011-02-20|publisher = [[主婦の友社]]|isbn=978-4-07-273608-1|pages =242|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author = 農文協編|title = 野菜園芸大百科 第2版 20:特産野菜70種|date = 2004-03-31|publisher = [[農山漁村文化協会]]|isbn = 4-540-04123-1|pages = 31 - 33|ref=harv}}

== 関連項目 ==
{{Commonscat|Ipomoea aquatica}}
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* [[スプラウト]]
* [[中国野菜]]
* [[中国野菜]]
* [[キュウソネコカミ]]の曲


== 外部リンク ==
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[[Category:沖縄県の食文化]]
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ヨウサイ
ヨウサイ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ナス目 Solanales
: ヒルガオ科 Convolvulaceae
: サツマイモ属 Ipomoea
: ヨウサイ I. aquatica
学名
Ipomoea aquatica Forssk. (1775)[1]
和名
ヨウサイ(蕹菜)
英名
Water Morning Glory
Water convolvulus[2]
water spinach
kang kong

ヨウサイ(蕹菜[3]台湾語白話字:èng-chhài、拼音: wèng cài ウォンツァイ〉、学名: Ipomoea aquatica)は、ヒルガオ科サツマイモ属野菜クウシンサイ(空心菜)、エンサイの呼称でも知られる。栽培の中心は中国南部や東南アジアなどの熱帯アジア地域で、ニンニク炒めなどにしてよく食べられている。

名称

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多くの異なった名称でもよばれており、茎が空洞のためクウシンサイ(空芯菜)ともよばれ、またエンサイ(莚菜)などの別名がある[4]。中国名は蕹菜(草菜、空心菜)[1]

  • クウシンサイ(空心菜)[1][3] - 茎が空洞になっていることから、中国語では空心菜(コンシンツァイ、拼音: kōng xīn cài)と書き、日本語でも「くうしんさい」の読み方で普及している。なお、同じ読みで「心」を「芯」に変えた、「空芯菜」という登録商標が日本で取得されている[5]
  • アサガオナ(朝顔菜)[1][3] - アサガオ菜[6]アサガオのような淡紫色または白色の花を付けるため。
  • エンサイ[1] - 台湾語の蓊菜の訛り。「燕菜」とも書かれる[6]。「エンサイ」「莚菜」が野菜・料理・飲料の名称として商標登録[7][8]。「莚」は草むしろを意味する漢字で本来、本種の意味はない。別名エン「蓊」の音を表すための代用当て字とみられる。
  • ムシロナ
  • ウンチェー沖縄ではウンチェー(蕹菜)、ウンチェーバー(蕹菜葉)と呼ばれる。
  • チャウカンツォイ中華人民共和国広東省では俗に食べ過ぎると痙攣を起こすともいわれ、広東語で抽筋菜(チャウカンツォイ、chau1gan1choi3)の俗称がある。
  • ツウサイ(通菜)[3] - 中国の福建省では通菜トンツァイ拼音: tōng cài)とも呼ばれる。
  • カンコンサイ[3]

特徴

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水上のヨウサイ農地

つる性の一年草ないし多年草[3]。熱帯アジア原産と考えられており[6]熱帯アフリカから東アジアまで広域にわたって野生している[3]。野菜としての利用は多湿の熱帯や湿地(特に、中国南部、台湾東南アジア華僑居住地域、東インドスリランカの熱帯アジア地域)で多く栽培され、ときに水耕栽培もされる[3]植物体の外見は同じヒルガオ科のサツマイモに似ており、光沢のある緑色から濃緑色で無毛、は中空で、数メートル (m) 伸びて地上を這うか、あるいは水面に浮かぶ[3]。発根力が高く、地面や水面に接した茎は、節から容易に不定根を出して栄養繁殖もできる[3]互生し、やや長い葉柄がつく[3]。葉身は長さ5 - 15センチメートル (cm) の披針形、長卵形、心臓形などで、品種によって大きく異なる[3]

花芽をつけ始めるのは日中の長さが一定以上短くなると起こる(短日条件)とされ、サツマイモやアサガオに似た白色や桃色の花を葉腋につける[3]

水辺に生育し、水面に茎(空洞で節がありフロートと同じ)を浮かせて進出する。汽水域でも成長可能である。暑さに強く水上で栽培すると大量に根を伸ばして水をよく吸収することから、近年では湖沼などの水質浄化活動によく用いられている[9][10]

日本には古くは沖縄県方面を経て九州に渡来した。真夏でも収穫でき、時期的に希少な葉野菜となる。沖縄では重要な野菜となっており、台風襲来後に傷んだ茎葉を刈り取るとすぐ次の側芽が伸びてきて収穫できる[3]。九州以北の露地栽培では花をつけても種をほぼつけず、自生繁殖による生態系への影響は低い。九州や南部地域では、かつては定着したが、一般的に栽培されるまでには至らなかった[3]

栽培

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播種時期の選定や低温障害を受けないようにすること、また十分水分を与えて肥料の効果が長続きするようにすれば、容易に栽培することができる[11]。多湿の土壌を好み、高温には非常に強い性質で、生育温度は25度前後[12]、発芽適温は25 - 30度とされる[13][2]。その一方で低温にはきわめて弱く、気温が低くなると急速に戸建ちが悪くなって10度で発育が止まり、に遭うと枯死する[12][2]。乾燥を嫌うため、畑作の場合は生育中の水やりを怠らないようにする[2]

文献によって一年草か多年草の両方の記載が見られるが、これは栽培する地域によって越冬可能かどうかによるものと考えられている[12]。沖縄などを除く日本の中間地域では露地越冬は不可能なため一年草となり[12]、栽培期間は春(4月)から秋(9月)までで、芽先を収穫していくと次々に分枝して秋まで収穫できる[13]連作障害は出にくい[13]。繁殖は種子繁殖栄養繁殖の両方で行われる[12]。しかし秋に開花しても採種は困難で、一部の品種は遺伝的に開花結実しないため、挿し芽による栄養繁殖だけで維持増殖がされている[12]

中国などでは、畑、水田(浅水)、浮水の3種類の栽培法がある[11]。浮水栽培は、竹と縄で組んだイカダを池に浮かべて、そこに30 cm程度に伸びた挿し苗を植え付けて水上栽培する方法である[11]。日本では、多くは畑作栽培が行われており、直播き・育苗のどちらでも栽培できる[11]

畑作の場合、20度を超えてから腐葉土を入れた育苗ポットに種を播いて苗作りを始める[13]。畑は土壌水分含量が高く日当たりのよい場所を選び、苗を定植する2 - 3週間前に堆肥を施して耕しておいてから、高さ5 - 10センチメートル (cm) のを作る[11][13]。種を播いてから2週間ほどで発芽し、本葉が4、5枚になったら株間をゆったりとって畑に定植する[14]。種からでも育てられるが、家庭では初夏に市販のクウシンサイ(ヨウサイ)のつる先10 cmくらいを挿し芽で発根させ、育てるほうが手軽にできる[15]

つるは極めて旺盛に伸びて畑全面を覆うようになるので、畝間を十分広くとって苗を植え付ける[16]。地温維持と乾燥防止、雑草抑制対策のため畝にはマルチングを施しても良く、資材はビニールの他、紙や藁を使ってもよい[14]。良品多収のためには肥料切れを起こさないように管理する[2]追肥は草丈が15 cmくらいになったころから始め、畝間にぼかし肥鶏糞を与えるとよいとされる[14]。株が高さ30 cmになったら収穫を始める合図で、芽先を15 - 20 cm切って随時収穫する[11][14]。そのあと、次々に側枝が伸びてくるため、伸びてきた側枝を20 - 30 cmの長さで収穫する[11]。つるの伸びが早いため、遅れないように次々と収穫する[2]。つるが混み合ってくると軟弱な芽しか取れなくなってくるため、密になったところを刈り取って、つるをまばらにすると良くなる[15]

日本でも、沖縄県で従来より栽培されていたほか、九州地方などの温暖な地域で栽培が広がりつつあり、栽培農家も増えている。消費者が入手または栽培するのも容易になりつつある。

コンテナ栽培でも育てやすく、家庭菜園にも向いている[6]岐阜県立恵那農業高等学校では、水を入れたコンテナ容器で栽培する方法「コンテナドボン栽培」を開発[17]名古屋市堀川において、ポットトレイにペットボトルをつけた「ペットボトルミニ浮島」での栽培を2010年に行い、1%程度の塩分を含む汽水域での栽培が可能であることを確認した。2017年2月には竹をしならせ二重のビニールテープで固定した「竹製浮島」を考案し、同年7月に栽培実験を行った。

病虫害

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台湾の文献では、白さび病タニシ類、ヨトウムシなどが防除対策のいる病害虫としてあげられている[11]。ただし、日本ではほとんど問題にならず、ハスモンヨトウの食害に遭う程度である[11]が、サツマイモ属に属するため、 アリモドキゾウムシイモゾウムシの宿主植物となることから、沖縄県・奄美諸島から日本本土への植物体の持ち込みは検疫によって禁止されている。

栽培品種

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中国南部では重要な野菜のひとつであり、記載されている品種の数も多い[12]。繁殖方法によって種子繁殖の品種の系統[注 1]と、遺伝的にまったく開花結実しないため株分けによる栄養繁殖の品種の系統に大別できる[12]。また、栽培条件によって水生と陸生にも系統分けができる[12]。日本の育苗会社が市販するものはほとんど固有品種名を持たず、「エンサイ」「カンコンサイ」などの作物名をそのまま用いており、市販品種間の形質差も明確な違いが見られないことから類似系統と考えられている[12]

下記は『広州蔬菜品種誌』にみられる品種を示したものである[12]

  • 大骨青(青売) - 茎径1 cmで分枝はやや少なく、葉は深緑色で長さ11.5 cm、幅8 cmの長卵形で葉質はやわらかい。水田早熟栽培で、種子繁殖が行われる。[12]
  • 大鶏青(緑豆青) - 茎径1.5 cmで分枝はやや多く、葉は深緑色で長さ6 cm、幅7 cmの長卵形で質がやや劣る。水田栽培で、種子繁殖が行われる。[12]
  • 大鶏白(青葉白殻) - 茎径1.5 cmで分枝はやや多く、葉は深緑色で長さ12 cm、幅7 cmの長卵形で優良品種。畑作栽培で、種子繁殖が行われる。[12]
  • 大鶏黄(黄葉白殻) - 茎径1.5 cmで分枝はやや多く、葉は黄緑色で長さ11 cm、幅6.5 cmになる長卵形で優良品種。水田栽培で、種子繁殖が行われる。[12]
  • 白殻(薄殻) - 茎径1.7 cmで分枝はやや少なく、葉は緑色で長さ15 cm、幅10 cmにもなる長卵形で優良品種。浮水栽培で旺盛な生育を示し、種子繁殖が行われる。[12]
  • 剣葉通菜 - 茎径0.8 cmで分枝が多く、葉は青緑色で長さ4 - 7 cm、幅3 cmの長披針形。畑作と水田栽培の両方に対応し、種子繁殖が行われる。[12]
  • 細通菜(蕹菜仔、鉄線梗) - 茎径0.5 cmと細く、葉は深緑色で長さ7 cm、幅3 cmの短披針形の優良品種。畑作栽培で収穫期間は長く、繁殖は株分けによって行われる。[12]
  • 糸蕹(細通) - 茎径0.6 cmと細く、葉は深緑色で長さ4.5 cm、幅3.5 cmの短披針形の優良品種。茎と葉柄が紫紅色になるのが特徴。畑作栽培で収穫期間は長く、繁殖は株分けによって行われる。[12]

利用

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食用

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ヨウサイの炒め物

β-カロテンが豊富な緑黄色野菜で、食材としてのは6 - 8月とされ、茎や葉は瑞々しくて茎に丸みがあり切り口が綺麗なものが市場価値の高い良品とされる[6]。風味は個性的で少しクセがある[4]。茎葉を主に炒め物、または中華風のおひたし(タン[燙]青菜)として、中国台湾フィリピンベトナムタイマレーシアインドネシアなどの東南アジアで用いる。茎が空洞で火の通りも早く、シャキシャキした歯ごたえが炒め物に向いている[4]。中国南部ではよく食べられておりニンニク炒めにするのが一般的で[18]ナンプラーなどの魚醤豆豉で味付けして炒めたりすることが多い。調味料シュリンプペーストオイスターソースなども使われ[4]、味付けによって中華風やタイ料理風にもなる[6]。さっと茹でてマヨネーズ和えにしてもおいしく食べられ[6]スープの具にも使える[13]

オーストラリアの先住民族アボリジニの間ではブッシュ・タッカーとして古くから消費されてきた。

ヨウサイの新芽はスプラウトとして利用される[19]

水質浄化

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成長過程で窒素やリンを水からたくさん吸収するため水質浄化作用があるといわれており、岐阜県の阿木川ダムなどで栽培されている[20]

栄養価

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100グラム (g) あたりの熱量は17キロカロリー (kcal) ほどある[4]。栄養価などホウレンソウと比較されることが多く、β-カロテンはホウレンソウの約4 - 5倍、カルシウムは約4倍、ビタミンB1ビタミンCは約2倍ほど含んでいる[4][6]ポリフェノール鉄分も豊富で、疲労回復や貧血予防にも役立つといわれている[4][6]。ただしホウレンソウとは違い、難溶性のシュウ酸カルシウムを多く含んでおり、えぐ味(シュウ酸味)を感じる原因となっている。シュウ酸カルシウムの毒性については経口データはないが、劇物のシュウ酸塩として、飲み込むと有害であると考えられるので区分4[21]に分類されている[22]。シュウ酸カルシウムは尿道結石の原因にはならないが、食べ過ぎに注意することが必要である。

脚注

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注釈

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  1. ^ 栄養繁殖によっても増やせるので兼用種ともいえる[12]

出典

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  1. ^ a b c d e 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ipomoea aquatica Forssk. ヨウサイ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年10月22日閲覧。
  2. ^ a b c d e f 板木利隆 2020, p. 338.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 農文協編 2004, p. 31.
  4. ^ a b c d e f g 主婦の友社編 2011, p. 242.
  5. ^ [(商品名)「空芯菜」第4343207号。1999年12月10日登録]
  6. ^ a b c d e f g h i 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 21.
  7. ^ 第4372141号。2000年3月31日登録。
  8. ^ 第4512839号。2001年10月12日登録。
  9. ^ [1]阿木川ダム水質浄化実験」恵那農業高校 環境科学科
  10. ^ [2]名古屋市堀川にて水質浄化実験」
  11. ^ a b c d e f g h i 農文協編 2004, p. 33.
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 農文協編 2004, p. 32.
  13. ^ a b c d e f 金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編 2011, p. 140.
  14. ^ a b c d 金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編 2011, p. 141.
  15. ^ a b 板木利隆 2020, p. 340.
  16. ^ 板木利隆 2020, p. 339.
  17. ^ 月刊現代農業2014年11月号に掲載
  18. ^ 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 98.
  19. ^ 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 59.
  20. ^ 水辺で育つ空芯菜で体に栄養、きれいな環境”. 名古屋市上下水道局. 2020年2月4日閲覧。
  21. ^ [3]厚生労働省:急性毒性(経口)の区分
  22. ^ [4]安全データシート:しゅう酸カルシウム一水和物

参考文献

[編集]
  • 板木利隆『決定版 野菜づくり大百科』家の光協会、2020年3月16日、338 - 341頁。ISBN 978-4-259-56650-0 
  • 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、21頁。ISBN 978-4-415-30997-2 
  • 金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編『有機・無農薬 家庭菜園 ご当地ふるさと野菜の育て方』成美堂出版、2011年4月1日、140 - 141頁。ISBN 978-4-415-30991-0 
  • 主婦の友社編『野菜まるごと大図鑑』主婦の友社、2011年2月20日、242頁。ISBN 978-4-07-273608-1 
  • 農文協編『野菜園芸大百科 第2版 20:特産野菜70種』農山漁村文化協会、2004年3月31日、31 - 33頁。ISBN 4-540-04123-1 

関連項目

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外部リンク

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