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'''水上警察'''(すいじょうけいさつ)とは、[[水上]]で展開される[[警察]]活動又はそれを任務とする組織を指す。[[沿岸警備隊]]が設置されている国では、これとの分掌上、[[内水]]を所掌することが多いが、活動範囲や業務内容は国や時代によって異なっている。
{{出典の明記|date=2016年8月}}

'''水上警察'''(すいじょうけいさつ)とは、[[海]]・内水面等の水上や港湾・沿海域で展開される[[警察]]活動又はそれを任務とする警察組織を指す<ref>例えば東京湾岸署では河川域だけでなく、伊豆諸島域でも警備を実施している。[http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/1/tokyowangan/suizyo/suizyo.htm 水上安全 - 東京湾岸署]</ref>。


== 概要 ==
== 概要 ==
における警察活動としては、[[密輸]]・[[密漁]]等の[[犯罪]]の防止、水上交通秩序の維持、事故・災害時等における[[救助活動]]等があり、このため水上警察においては、船舶を使用しての警らや、船舶等への立ち入り検査等の活動が、[[税関]]や出入国管理機関、[[沿岸警備隊|沿岸警備機関]]等の行政機関と連携して実施される。国や時代により、出入国管理や検疫についても所掌するケースがあるが、現在の[[日本]]においてはこれらは別個の[[行政機関]]が所掌している。
における警察活動としては、[[密輸]]・[[密漁]]等の[[犯罪]]の防止、水上交通秩序の維持、事故・災害時等における[[救助活動]]等があり、このため水上警察においては、船舶を使用しての警らや、船舶等への立ち入り検査等の活動が、[[税関]]や[[出入国管理|出入国管理機関]]、[[沿岸警備隊]]等の行政機関と連携して実施される。国や時代により、出入国管理や検疫についても所掌するケースがあるが、現在の[[日本]]においてはこれらは別個の[[行政機関]]が所掌している。


水上での警ら活動等の上で船舶が必要不可欠であり、手漕ぎ通船や小蒸気船、小発動機船等が使用されてきたが、[[第一次世界大戦]]後の頃から、[[欧州]]諸国や[[アメリカ合衆国]]では小型高速艇技術の発達により水上警察活動にも[[モーターボート]]が使用されることが増え、次第に[[日本]]や[[中華民国]]等、当時の[[アジア]]諸国にも導入が進んだ。今日では各国で小型高速艇がひろく使用されている。
水上での警ら活動等の上で船舶が必要不可欠であり、手漕ぎ通船や小蒸気船、小発動機船等が使用されてきたが、[[第一次世界大戦]]後の頃から、[[欧州]]諸国や[[アメリカ合衆国]]では小型高速艇技術の発達により水上警察活動にも[[モーターボート]]が使用されることが増え、次第に[[日本]]や[[中華民国]]等、当時の[[アジア]]諸国にも導入が進んだ。今日では各国で小型高速艇がひろく使用されている。


== 日本の水上警察 ==
== 日本 ==
[[Image:Police patrol boat SOUYA.JPG|right|thumb|200px|[[稚内警察署]]所属警備艇そうや]]
[[Image:Police patrol boat SOUYA.JPG|right|thumb|250px|[[稚内警察署]]所属警備艇そうや]]
[[File:Okinawa Prefectural Police boat OKINAWA.jpg|250px|thumb|[[沖縄県警察]]所属警備艇「おきなわ」]]
[[日本の警察]]においては、水上警察活動は通常、管轄区域に水上を含む[[警察署]]の[[地域課]]が所掌している。管轄水域が小規模である場合は可搬式の舟艇や借上げ船舶により業務が実施されるが、水域が大きくなると専用の船舶(警備艇。公式には「警察用船舶」と称される)が配備される。本署から管轄水域が離れている場合や業務の増大等により、警備艇繋留施設の近隣で勤務するほうが効率的である場合は、水上[[交番|派出所]]・水上[[警備派出所]]等が設置される。更に水上警察活動に特化した警察署として[[水上警察署]]が設置されることもあったが、近年は警察署の再編に伴って陸上の警察署との統合等が進められる傾向にあり、水上警察署の数は減少している。
{{See also|警察用船舶}}
水上警察の業務内容や[[航行区域]]は時代によって異なっている。例えば、[[警視庁 (内務省)|東京警視本署]]時代の巡邏船は、船舶や橋梁の警備、停泊船の調査、遭難船の救助、密貿易の取締り、船火事の消火活動など多彩な任務にあたっていた。一方、[[戦後]]の[[日本]]では、海上警備救難を担当する[[海上保安庁]]の[[巡視船]]や[[消防本部|地方自治体の消防組織]]の[[消防艇]]などに多くの業務が移譲されている{{Sfn|小林|2008}}。


現代の[[日本の警察]]では、[[警察用船舶]]の運用は外勤警察の一環とされており、原則的には警察事象の多い水域を管理する[[警察署]]([[水上警察署]]など)に配置されて、所定の水域を警邏している{{Sfn|警察庁警察史編さん委員会|1977|p=922}}。また[[執行隊]]として[[水上警察隊]]が設置されている場合もある。[[航行区域]]としては、最も大型のものでも海岸から20海里までの沿海区域に限られる{{Sfn|警察庁生活安全局地域課|2015}}。[[海上保安庁]]との分担としては、一般的には河川と湖は警察、港区外は海上保安庁、港内は両者が協議して担当を決めるが、陸地から目視出来る範囲内での海上は警察になる事が多いとされる{{Sfn|小林|2008}}。
また、都道府県警察によっては、[[警察本部]]の生活安全部等の[[執行隊]]として[[水上警察隊]]を設置し、警察署ではなくこの隊で警備艇を集中運用する場合もある。


警察用船舶の乗員は、警察官ではなく、船艇操縦のために採用された専門職員があてられる。ただし乗員のなかには、長年の勤務を通じて警察官に任用される者もいれば、船好きが講じて船艇職員に配置換えされる警察官もいるとされる。[[東京湾岸警察署]]の場合、出動の際には、乗員2名に加えて、所要の警察官が搭乗する。誰がどの船に乗るかは一応割り振られているものの、水深など現場の状況によって派遣される船は適宜変更されるため、全員がどの船にも対応できるよう日常的に訓練している{{Sfn|小林|2008}}。
警備艇の運航は、資格を有する[[日本の警察官|警察官]]自身によって行われる場合もあるが、一般的には固有の乗員([[船長]]・機関長等)として技官等の職員が配置される場合が多い。この場合は更に、正規職員である場合と嘱託職員である場合がある。固有の乗員が配置される場合も、乗員だけでは警察官としての職務執行はできないため、警ら活動等は警察官を乗船させて実施される。


== アメリカ合衆国 ==
==各国の水上警察一覧 ==
[[アメリカ合衆国]]でも、海上での法執行は[[アメリカ沿岸警備隊|沿岸警備隊]]が担当しており{{Sfn|上野|1981|pp=238-239}}、[[アメリカ合衆国の警察|警察]]の舟艇部門は河川や港湾での治安の維持を任務として、外勤部門に設置されていることが多い{{Sfn|上野|1981|pp=103-104}}。
{{節stub}}

[[Image:Police boat 44.jpg|right|thumb|200px|香港警務処所属水警輪44号]]
== イギリス ==
* [[アメリカ合衆国]]
[[File:River Police at Speed (6086241465).jpg|thumb|250px|ロンドン警視庁「ニナ・マッケイ」]]
* [[イギリス]]
[[1798年]]、コルコーン[[治安判事]]{{enlink|Patrick Colquhoun}}の努力により、[[テムズ川]]において、[[ロンドン橋]]と[[タワーブリッジ|タワー橋]]の間の警戒・警備にあたる組織が設立され、[[1800年]]の法律によって正式に河川警察(River Police)として発足した{{Sfn|今野|2000|pp=150-151}}。これはイギリスの警察組織としては最初期のものであった{{Sfn|今野|2000|pp=21-28}}。
* 日本

* [[中華民国|台湾]]:水上警察に相当する組織として[[中華民国内政部|内政部]]警政署水上警察局が存在したが、海上警察機構の一元化を図る観点から、[[2000年]]1月28日以降、[[中華民国国防部|国防部]]海防司令部、[[中華民国財政部|財政部]]関税総局の取締機構等と統合され、[[行政院署]](沿岸警備隊に相当)となった。
コルコーン治安判事は更に進めて、単一の首都警察隊の設置を提唱したが、同時期の[[ナポレオン・ボナパルト]]の[[フランス第一帝政]]における[[秘密警察]]体制が連想されたためもあり、この時点では実現しなかった。その後、1829年に首都警察として[[ロンドン警視庁]]が成立すると{{Sfn|今野|2000|pp=21-28}}、1839年には、河川警察もその傘下に入った{{Sfn|今野|2000|pp=150-151}}。
* [[インド]]

* [[マレーシア]]
管内に河川がある警察は、その警邏や水路の保全などを所掌しているが、河川に港やドック、波止場などがある場合、それらは別の[[イギリスの警察#特別警察|特別警察]]の所掌となることもある。テムズ川の場合、ティルブリー港{{Enlink|Port of Tilbury}}はティルブリー港湾警察{{Enlink|Port of Tilbury Police}}が所掌しているが、波止場や倉庫のある河川自体は警視庁の海上警察隊{{Enlink|Metropolitan Police Marine Policing Unit}}の管轄であり、そこから河口までは、[[ケント (イングランド)|ケント]]および[[エセックス]]の[[イギリスの警察#地方警察|地方警察]]が河川警察を担当している{{Sfn|今野|2000|pp=150-151}}。

河川担当警察官は河川管理当局が定めた条例の執行にも責任を負っており、不審船舶に乗船して検査する権限を持っている。また河川警察では、遺体や財物回収のための潜水班も編成されている{{Sfn|今野|2000|pp=150-151}}。

== ドイツ ==
[[File:Cuxhaven polizei buergermeister brauer.jpg|thumb|250px|[[ハンブルク]]州警察「ビュルガーマイスター・ブラウアー」]]
ドイツでも、[[州警察 (ドイツ)|州警察]]に水上警察([[:de:Wasserschutzpolizei|{{Lang|de|Wasserschutzpolizei、WSP}}]])が設置されて、内水での法執行を担当している。例えばベルリン州警察の場合、方面本部の範囲を超える警備交通警察を所掌する事務統制本部に水上警察が設置されている{{Sfn|小島|2008}}。

一方、[[連邦政府 (ドイツ)|連邦政府]]の[[警備警察]]組織である[[連邦警察 (ドイツ)|連邦警察]]にも海上部隊({{Lang|de|Direktionsbereich Bundespolizei See}})が設置されているが、こちらは、連邦交通・デジタルインフラ省([[:de:Bundesministerium_für_Verkehr_und_digitale_Infrastruktur|BMVI]])や連邦財務省([[:de:Bundesministerium_der_Finanzen|BMF]])、[[連邦食糧・農業省]](BMEL)の関連部門とともに、連邦[[沿岸警備隊]]([[:de:Küstenwache_des_Bundes|{{Lang|de|Küstenwache des Bundes}}]])の構成要素となっており、内水に加えて領海・公海上での法執行も担当している{{Sfn|村上|1994}}。

== その他の各国・地域の水上警察 ==
[[Image:Police boat 44.jpg|right|thumb|250px|香港警務処所属水警輪44号]]
* [[中華民国|台湾]]:水上警察に相当する組織として[[中華民国内政部|内政部]]警政署水上警察局が存在したが、海上警察機構の一元化を図る観点から、[[2000年]]1月28日以降、[[中華民国国防部|国防部]]海防司令部、[[中華民国財政部|財政部]]関税総局の取締機構等と統合され、[[海巡署]](沿岸警備隊に相当)となった。
* [[インドネシア]]:国家警察本部海上警察局
* [[インドネシア]]:国家警察本部海上警察局
* [[タイ王国|タイ]]:[[タイ王国水上警察]]
* [[タイ王国|タイ]]:[[タイ王国水上警察]]
* [[香港]]:[[香港警務処]](警察)の中に管区の一つとして「水警」([[:en:Marine Region]])が設置されている。
* [[中華人民共和国|中国]]
* マケドニア:[[:en:Macedonian Lake Patrol Police|Macedonian Lake Patrol Police]] 国境地帯に位置する湖水のパトロール活動を実施。[[マケドニア軍]]の下部組織である。
* [[大韓民国|韓国]]
* [[ロシア]]
* [[香港]]:[[香港警務処]](警察)の中に管区の一つとして「水警」([[:en:Marine Region]])が設置されている。中国との海上境界のパトロールも行う
* [[ドイツ]]:[[:de:Wasserschutzpolizei]]
*マケドニア:[[:en:Macedonian Lake Patrol Police|Macedonian Lake Patrol Police]] 国境地帯に位置する湖水のパトロール活動を実施。[[マケドニア軍]]の下部組織である。

== 沿岸警備隊との違い ==
水上警察は[[沿岸警備隊]]と同一の組織、または同一の性格を持つ組織であると思われがちであるが、沿岸警備隊は[[準軍事組織]]であり、水上警察は[[文官|文民]]警察組織である。
:* 水上警察の船舶は、活動範囲が主に内水面で、近距離である反面狭隘・浅水深であることから沿岸警備隊の船舶に比較して小型の船舶が多い。また、隊員や船舶の武装の面においても水上警察は陸上における警察活動の延長線上にあることから、主に[[拳銃]](あるいは拳銃弾を発射する[[短機関銃]]や船舶に設置する[[放水砲|放水銃]])などに留まる。
:* 沿岸警備隊の船舶の場合は武装した船舶・航空機に対処する必要もあり、拳銃・短機関銃といった小型武器や放水銃のみならず、[[機関銃]]等の重火器ないし[[機関砲]]などの強武装が通常である。例えば[[アメリカ沿岸警備隊]]の[[ハミルトン級]]や[[ベア級カッター]]は[[フリゲート]]と同じ[[オート・メラーラ 76 mm 砲|Mk.75 76mm単装速射砲]]を装備しており、日本の[[海上保安庁]]でも「[[しきしま]]」や[[高速高機能大型巡視船]]など大型巡視船(PLH, PL)では[[エリコンKD 35 mm 機関砲|エリコン 35mm機関砲]]や[[ボフォース 40mm機関砲]]、[[とから型巡視船|とから型]]など中・小型巡視船(PM, PS)では[[M61_バルカン|20mm多銃身機関砲]]を装備するなど、その最大火力は警察を大きく上回っている。
また、両者の権限が競合する場合もあるが、沿岸警備隊の性質をもつ海上保安庁及びその職員には条約により付与された特殊な権限がある。
:* 日本の場合、[[海上保安庁]]が外洋、沿岸及び内海([[東京湾]]、[[大阪湾]]など)、港湾を管轄区域とするのに対し、水上警察は港湾地区(陸上地域を含む。)、内水([[運河]]、[[河川]]、[[湖沼]]など)を管轄区域とする。したがって、海の存在しない[[滋賀県警察]]にも[[琵琶湖]]を管轄する水上派出所が存在する。また、一般的に水上警察署は地上の管轄区域も存在する事が多い。
:* 警察官は一般[[司法警察職員]]であるため、[[海上保安庁]]の管轄区域と競合する場合でもその権限を行使することができる。しかし、日本においては都道府県警察単位で警察業務を実施していることから、当該警察の管轄範囲を超えた警察業務は原則としてできない(警察法第36条第2項・第60条の2・第61条・第61条の2・第65条参照)。これに対して、海上保安庁は国家行政機関であるとともに[[海上保安官]]は海上においては完全な司法警察権を有しており(海上保安庁は「海上において」司法警察権を行使する組織であることから海上保安官は「[[特別司法警察職員]]」という位置付けになっているにすぎず、[[麻薬取締官]]や[[労働基準監督官]]のように司法警察権の行使できる対象が限定されているわけではない)、管轄に関して柔軟な対応が可能であるといった特徴がある。
:* また、条約によって海上警備機関に対してのみ特別の権限が付与された事項([[公海]]上における[[海賊]]の[[拿捕]]や船舶の[[臨検]]など)に関しては海上保安官のみ管轄権を持つことになる(この部分においては、[[軍艦]]の享有する権限と競合する)。
:: ちなみに、海上保安庁の船舶は[[公海に関する条約]]及び[[海洋法に関する国際連合条約]]による特権を享有する。具体的には、政府公船(非商業的目的のために運航する軍艦以外の政府船舶)として、[[軍艦]]に準ずる特権([[臨検]]からの自由など)を享受することができる(海洋法条約第32条参照)。また、公海上においては旗国以外のいかなる管轄権にも服しない(公海条約第9条・海洋法条約第96条)。さらに、海上保安庁の船舶及び航空機は日本国の領海のみならず、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所において海賊船の拿捕権(公海条約第21条・海洋法条約第107条)・船舶の臨検を行う権利(海洋法条約第110条第5号)・外国船舶の追跡を行う権利(公海条約第23条第4号・海洋法条約第111条第5号。ただし追跡開始場所について制約がある。)を行使することができるが、都道府県警察の船舶及び航空機には、そのような特権は及ばない。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|last1=上野|first1=治男|year=1981|title=米国の警察|publisher=良書普及会|ncid=BN01113868|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|editor=警察庁警察史編さん委員会|year=1977|title=日本戦後警察史|publisher=[[警察協会]]|ncid=BA59637079|ref=harv}}
* {{Cite web|和書|author=警察庁生活安全局地域課|year=2015|title=警察用船舶の整備|url=https://www.npa.go.jp/yosan/kaikei/yosankanshi_kourituka/27review/pdf/27-19sannkousiryo.pdf|accessdate=2018/11/09|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|last=小島|first=裕史|year=2008|chapter=ドイツの警察制度|title=警察の進路―21世紀の警察を考える|publisher=[[東京法令出版]]|isbn=978-4809011924|pages=500-514|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|last=小林|first=義秀|title=港で働く船(第11回)警察艇|journal=[[世界の艦船]]|issue=698|pages=118-120|year=2008|month=11|publisher=[[海人社]]|naid=40016244404|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|last=今野|first=耿介|year=2000|title=英国警察制度概説|chapter=|publisher=[[原書房]]|isbn=978-4562032457|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|last=村上|first=暦造|year=1994 |title=国連海洋法条約に関する国内体制の調査研究事業報告書|chapter=新海洋秩序と海上保安法制-海外調査報告(ドイツ国境警備と海洋法)|publisher=[[海上保安協会]]|url=http://www.jcga.or.jp/reports/pdf/3betsu_1994.pdf|ncid=BB19845023|ref=harv}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commonscat|Water police}}
*[[沿岸警備隊]]
**[[複合艇]]
* [[河川哨戒艇]]
**[[河川哨戒艇]]
* [[水上警察署]]
* [[水上警察隊]]
* [[海上保安庁]]
* [[プロジェクトA]] - 香港の水上警察を題材とした映画
* [[プロジェクトA]] - 香港の水上警察を題材とした映画


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2024年3月7日 (木) 13:13時点における最新版

水上警察(すいじょうけいさつ)とは、水上で展開される警察活動又はそれを任務とする組織を指す。沿岸警備隊が設置されている国では、これとの分掌上、内水を所掌することが多いが、活動範囲や業務内容は国や時代によって異なっている。

概要[編集]

水上における警察活動としては、密輸密漁等の犯罪の防止、水上交通秩序の維持、事故・災害時等における救助活動等があり、このため水上警察においては、船舶を使用しての警らや、船舶等への立ち入り検査等の活動が、税関出入国管理機関沿岸警備隊等の行政機関と連携して実施される。国や時代により、出入国管理や検疫についても所掌するケースがあるが、現在の日本においてはこれらは別個の行政機関が所掌している。

水上での警ら活動等の上で船舶が必要不可欠であり、手漕ぎ通船や小蒸気船、小発動機船等が使用されてきたが、第一次世界大戦後の頃から、欧州諸国やアメリカ合衆国では小型高速艇技術の発達により水上警察活動にもモーターボートが使用されることが増え、次第に日本中華民国等、当時のアジア諸国にも導入が進んだ。今日では各国で小型高速艇がひろく使用されている。

日本[編集]

稚内警察署所属警備艇「そうや」
沖縄県警察所属警備艇「おきなわ」

水上警察の業務内容や航行区域は時代によって異なっている。例えば、東京警視本署時代の巡邏船は、船舶や橋梁の警備、停泊船の調査、遭難船の救助、密貿易の取締り、船火事の消火活動など多彩な任務にあたっていた。一方、戦後日本では、海上警備救難を担当する海上保安庁巡視船地方自治体の消防組織消防艇などに多くの業務が移譲されている[1]

現代の日本の警察では、警察用船舶の運用は外勤警察の一環とされており、原則的には警察事象の多い水域を管理する警察署水上警察署など)に配置されて、所定の水域を警邏している[2]。また執行隊として水上警察隊が設置されている場合もある。航行区域としては、最も大型のものでも海岸から20海里までの沿海区域に限られる[3]海上保安庁との分担としては、一般的には河川と湖は警察、港区外は海上保安庁、港内は両者が協議して担当を決めるが、陸地から目視出来る範囲内での海上は警察になる事が多いとされる[1]

警察用船舶の乗員は、警察官ではなく、船艇操縦のために採用された専門職員があてられる。ただし乗員のなかには、長年の勤務を通じて警察官に任用される者もいれば、船好きが講じて船艇職員に配置換えされる警察官もいるとされる。東京湾岸警察署の場合、出動の際には、乗員2名に加えて、所要の警察官が搭乗する。誰がどの船に乗るかは一応割り振られているものの、水深など現場の状況によって派遣される船は適宜変更されるため、全員がどの船にも対応できるよう日常的に訓練している[1]

アメリカ合衆国[編集]

アメリカ合衆国でも、海上での法執行は沿岸警備隊が担当しており[4]警察の舟艇部門は河川や港湾での治安の維持を任務として、外勤部門に設置されていることが多い[5]

イギリス[編集]

ロンドン警視庁「ニナ・マッケイ」

1798年、コルコーン治安判事 (Patrick Colquhounの努力により、テムズ川において、ロンドン橋タワー橋の間の警戒・警備にあたる組織が設立され、1800年の法律によって正式に河川警察(River Police)として発足した[6]。これはイギリスの警察組織としては最初期のものであった[7]

コルコーン治安判事は更に進めて、単一の首都警察隊の設置を提唱したが、同時期のナポレオン・ボナパルトフランス第一帝政における秘密警察体制が連想されたためもあり、この時点では実現しなかった。その後、1829年に首都警察としてロンドン警視庁が成立すると[7]、1839年には、河川警察もその傘下に入った[6]

管内に河川がある警察は、その警邏や水路の保全などを所掌しているが、河川に港やドック、波止場などがある場合、それらは別の特別警察の所掌となることもある。テムズ川の場合、ティルブリー港 (Port of Tilburyはティルブリー港湾警察 (Port of Tilbury Policeが所掌しているが、波止場や倉庫のある河川自体は警視庁の海上警察隊 (Metropolitan Police Marine Policing Unitの管轄であり、そこから河口までは、ケントおよびエセックス地方警察が河川警察を担当している[6]

河川担当警察官は河川管理当局が定めた条例の執行にも責任を負っており、不審船舶に乗船して検査する権限を持っている。また河川警察では、遺体や財物回収のための潜水班も編成されている[6]

ドイツ[編集]

ハンブルク州警察「ビュルガーマイスター・ブラウアー」

ドイツでも、州警察に水上警察(Wasserschutzpolizei、WSP)が設置されて、内水での法執行を担当している。例えばベルリン州警察の場合、方面本部の範囲を超える警備交通警察を所掌する事務統制本部に水上警察が設置されている[8]

一方、連邦政府警備警察組織である連邦警察にも海上部隊(Direktionsbereich Bundespolizei See)が設置されているが、こちらは、連邦交通・デジタルインフラ省(BMVI)や連邦財務省(BMF)、連邦食糧・農業省(BMEL)の関連部門とともに、連邦沿岸警備隊Küstenwache des Bundes)の構成要素となっており、内水に加えて領海・公海上での法執行も担当している[9]

その他の各国・地域の水上警察[編集]

香港警務処所属水警輪44号

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 上野, 治男『米国の警察』良書普及会、1981年。 NCID BN01113868 
  • 警察庁警察史編さん委員会 編『日本戦後警察史』警察協会、1977年。 NCID BA59637079 
  • 警察庁生活安全局地域課 (2015年). “警察用船舶の整備”. 2018年11月9日閲覧。
  • 小島, 裕史「ドイツの警察制度」『警察の進路―21世紀の警察を考える』東京法令出版、2008年、500-514頁。ISBN 978-4809011924 
  • 小林, 義秀「港で働く船(第11回)警察艇」『世界の艦船』第698号、海人社、2008年11月、118-120頁、NAID 40016244404 
  • 今野, 耿介『英国警察制度概説』原書房、2000年。ISBN 978-4562032457 
  • 村上, 暦造「新海洋秩序と海上保安法制-海外調査報告(ドイツ国境警備と海洋法)」『国連海洋法条約に関する国内体制の調査研究事業報告書』海上保安協会、1994年。 NCID BB19845023http://www.jcga.or.jp/reports/pdf/3betsu_1994.pdf 

関連項目[編集]